• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1236250
審判番号 不服2008-10939  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-04-30 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2003- 47872「会話制御装置及び会話制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月16日出願公開、特開2004-258902〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は、平成15年2月25日の出願であって、その特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」と呼ぶ。)は、平成20年5月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1の記載等からみて、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 利用者から入力された発話内容を含む入力情報に基づいて、該入力情報に対応する回答文を検索する会話制御装置であって、
前記回答文には、特定の話題に誘導させるための内容が含まれ、
前記入力情報に含まれる文字列に基づいて該文字列の最小単位を構成する少なくとも一つの形態素を第一形態素情報として抽出する形態素抽出手段と、
一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す複数種類の第二形態素情報には前記回答文及び該回答文として選出され特定の話題に誘導させるための優先順位が対応付けられており前記第二形態素情報及び前記回答文を予め記憶する形態素記憶手段と、
前記形態素抽出手段で抽出された前記第一形態素情報に基づいて予め記憶された前記複数種類の第二形態素情報の中から該第一形態素情報を含む第二形態素情報を検索する第一検索手段と、
前記第一検索手段で複数の前記第二形態素情報が検索された場合には検索された該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための前記優先順位の大きさに応じて、前記複数の第二形態素情報の中から最も高い優先順位が対応付けられた又は最も低い優先順位が対応付けられた一の前記第二形態素情報を選出する選出手段と、前記選出手段で選出された前記第二形態素情報に基づいて、該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する回答文検索手段とを有する第二検索手段とを有することを特徴とする会話制御装置。」

なお、平成20年5月29日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1では、上記記載中の「最も高い優先順位が対応付けられた又は最も低い優先順位が対応付けられた」に対応する部分の記載は、「最も高い優先順位が対応付けられた又最も低い優先順位が対応付けられた」となっていたが、以下の事情を勘案すると、当該記載中の「又」は「又は」の誤記と認められるので、上記のとおりに認定した。
(1)上記補正後の請求項1の記載どおりの「最も高い優先順位が対応付けられた又最も低い優先順位が対応付けられた」なる記載では当該記載の文意が理解できない。
(2)当該記載を導入した上記平成20年5月29日付けの手続補正の補正の根拠を説明する同日付けの手続補正書(方式)の「2.補正の根拠の明示」の欄には、「補正事項 『・・・中から最も高い優先順位が対応付けられた又は最も低い優先順位が対応付けられた一の』は、明細書段落〔0226〕、〔0227〕、〔0228〕の記載に基づきます。」の旨の記載があり、さらに、そこで引用される明細書の段落〔0228〕には、「選出部380は、話題検索部360で複数の話題タイトルが検索された場合には、その検索された各話題タイトルに対応付けられた各優先順位の中から、最も高い優先順位を特定し、特定した優先順位に対応付けられた話題タイトルを選出する。なお、選出部380は、上記各優先順位の中から、最も低い優先順位を特定し、特定した優先順位に対応付けられた話題タイトルを選出してもよい。」と記載されている。


2.引用例記載の発明

当審による平成22年11月30日付けの拒絶理由通知書で引用した特開2002-297626号公報(以下、「引用例」と呼ぶ。)には、次の記載がある。

「【請求項1】 予め想定されるユーザの発言と、当該発言に対応する問い返し又は広告のアクションとが事例として複数記憶された事例記憶手段と、
ユーザの発言内容に対応する文字列情報を取得する文字列情報取得手段と、
前記文字列情報取得手段で取得した文字列情報を分析する前処理手段と、
前記前処理手段による分析結果に基づいて、前記事例記憶手段に記憶された事例に従いユーザに対するアクションを決定するアクション決定手段と、
前記アクション決定手段で決定した問い返し又は広告をユーザに提示する提示手段と、を具備することを特徴とする情報提示装置。」

「【0018】(2)実施形態の詳細
図1は本発明の情報提示装置の一実施形態の構成であり、本発明の情報提示プログラムや該情報提示プログラムが記憶された記憶媒体の該プログラムが読みとられたコンピュータの構成を、概念的に表したものである。この概念構成図に示されるように、情報提示装置(コンピュータ)は、文字列情報取得手段1、前処理手段2、アクション決定手段3、提示手段4、広告取得手段5、辞書格納部6、ユーザ情報記憶手段7、課金手段8、課金情報提示手段9を備えている。前処理手段2は、嗜好表現抽出10を備えている。辞書格納部6は、広告情報辞書61、事例記憶手段62、関連語辞書63、嗜好表現ルール辞書64を備えている。
【0019】文字列情報取得手段1は、ユーザの発言又は発言に相当する内容を含む情報から文字列情報を取得する。例えば、入力手段としての、キーボード、マウス、マイク及びこのマイクからの音声の音声認識装置、その他の入力手段として機能する入力装置から文字列情報を直接取得する。また、文字列情報取得手段1は、通信手段やインターフェイスを介して、補助記憶装置や外部装置から、有線または無線で取得するようにしてもよい。外部装置としては、LAN接続された他のパーソナルコンピュータや、インターネットのワールド・ワイド・ウェブ(WWW)に接続された外部のパーソナルコンピュータなどが該当する。
【0020】前処理手段2は、文字列情報取得手段1で取得した文字列情報を、自立語と付属語からなる文節に区切り、文節情報を得る。前処理手段2は、区切った各文節に、肯定形、否定形、現在形、未来形などの付加情報を文節情報として付与する。また、前処理手段2は、嗜好表現抽出手段10を備えている。この嗜好表現抽出手段10は、取得した文字列情報から嗜好を表す嗜好情報を抽出するようになっている。
【0021】アクション決定手段3は、前処理手段2で得た文節情報に基づいて、予め用意された事例記憶手段62、関連語辞書63を参照しながら、エージェントが行うべきアクションを決定するようになっている。アクション決定手段3で決定するエージェントのアクションとして、ユーザの問い合わせに対する適切な応答、ユーザへの問い返し、提示する広告の決定などが行われる。後述するように、事例記憶手段62には、ユーザ発言を想定した、例えば「ユーザが『疲れた』と発言したときに第1候補のドリンク剤を提示する」というif-then形式のルール(事例)が格納されている。アクション決定手段3は、例えば、文節情報からキーワード「疲れ」がヒットすると、事例記憶手段62に格納された上記事例から、「第1候補のドリンク剤を提示する」というアクションを決定するようになっている。」

「【0026】広告取得手段5は、広告提供者から提供される広告情報を取得するようになっている。広告取得手段5が取得する広告情報としては、能動広告情報、回答広告情報、優先順位情報がある。能動広告情報は、システムがユーザに対して能動的に広告提示を行うための情報で、広告企業や広告商品と、それを広告するための文言や音声からなるアクション内容などから構成される。回答広告情報は、ユーザの発言や問い合せに応じて広告を行うための情報で、当該商品等の価格、効能、発売日など、ユーザの発言、問い合せに答える文言又や音声からなるアクション内容等から構成されている。優先順位情報は、競合する広告があった場合、どれを優先して広告するかを決定するのに使用される情報で、登録料等から構成される。また、広告取得手段5が広告情報を取得する方法としては、主として通信制御手段を介して広告提供者から送信される広告情報を取得する。なお、広告情報が記録されたフロッピーディスクやCD-ROM等の各種記録媒体を取得し、対応する記憶媒体駆動装置から広告情報を取得するようにしてもよい。広告取得手段5で取得した広告情報は、広告情報辞書61に格納されるようになっている。」

「【0037】優先順位情報は、競合する広告があった場合、どれを優先して広告するかを決定するのに使用される情報で、登録料等から構成される。広告の優先順位情報は、次のようなテーブルで格納されてる。
登録料1位:四共株式会社の「ロゲインJ」
登録料2位:中鵬薬品の「ネオビタドリンク」」

「【0049】以上のように構成された情報提示装置による処理動作について次に説明する。図5は、ユーザの疲れに関する発言を想定したドリンク剤の広告を提示する事例における、ユーザとエージェントとの会話例(a)、(b)と、この事例参照によるアクション決定手順を表すif-thenルール(c)を表したものである。図5(a)、(b)に示すように、ユーザ(User)が「最近体の疲れがとれなくてね。」と発言すると、この発言に対応する文字列情報を文字列情報取得手段1が取得する。この文字列情報の取得は、ユーザがキーボード12から入力する場合には入力データが文字列情報として取得され、マイクに向かって話している場合には、音声認識装置21で認識した音声に対応する文字列情報が取得される(以下同じ)。
【0050】次に、取得した文字列情報に対して前処理手段2が前処理を行い、文節情報を作成する。そして、アクション決定部は、作成した文節情報の各自立語と、事例辞書62の各事例の条件部分(if部分)を比較することで、キーワード(自立語)「疲れ」がヒットし、該当する事例のthen部分の規定から、「ドリンク剤(第1候補)」をアクションとして決定する。
【0051】この決定に基づいて、提示手段4は、第1候補のドリンク剤が何であるかを広告情報辞書61から辞書引きする(優先順位情報を参照する)。優先順位情報の第1候補が四共株式会社の「ロゲインJ」であれば、これに対するアクション内容を辞書引きし、その結果、提示手段4は、図5(a)、(b)に示すように、広告の文言「四共株式会社の「ロゲインJ」は、ばりばり働くビジネスマンにおすすめ。」をエージェント(Agent)のアクションとしてユーザに提示する。この広告の提示は、文字情報取得手段1が音声に基づく音声認識結果から取得している場合には、出力手段のスピーカから合成音声が出力され、キーボード等からテキストデータとして取得している場合には、表示装置14の表示画面に表示する。」

ここで、上記記載事項を各種常識に照らせば、以下のことがいえる。
(1)引用例の「情報提示装置」における、「ユーザの発言内容に対応する文字列情報」の取得と「問い返し又は広告」のユーザへの提示との間では、当然に、「ユーザの発言内容に対応する文字列情報」に基づく「問い返し又は広告」の検索が行われる。
(2)引用例の「情報提示装置」は、その機能からみて、「会話制御装置」とも呼び得るものであり、引用例でいう「問い返し又は広告」は、「回答文」とも呼び得るものである。
(3)引用例の「情報提示装置」で使用される広告情報中の「優先順位情報」は、段落【0026】にも記載されているように「競合する広告があった場合、どれを優先して広告するかを決定するのに使用される情報」であるが、そこでいう「競合する広告」のうちのどの「広告」がまず提示されるか、換言すれば、上記「優先順位情報」がどのように設定されるかによって、ユーザの話題が異なったものに誘導されることは明らかであるから、該「優先順位情報」が表す優先順位は、「特定の話題に誘導させるための優先順位」とも言い得る。そして、該「優先順位情報」に従って引用例の「情報提示装置」が提示する「広告」は、当然に「特定の話題に誘導させるための内容」を含んでいる。
(4)引用例の「前処理手段」は、段落【0020】に記載されているように、ユーザの発言内容に対応する文字列情報を自立語と付属語からなる文節に区切り文節情報を得るものである(ここでの「文節情報」は、下記(5)でいう記憶手段に予め記憶される文節情報と区別するため、以下「第一文節情報」と呼ぶ。)。
(5)引用例の「事例記憶手段」と「広告情報辞書」を含む「辞書格納部」は、「『複数種類の文節情報』と『優先順位情報』と『回答文』を相互に対応付けて上記(1)でいう検索に先立って格納しておくもの」といえるから、該「辞書格納部」は、「複数種類の文節情報には前記回答文及び該回答文として選出され特定の話題に誘導させるための優先順位が対応付けられており前記文節情報及び前記回答文を予め記憶する記憶手段」とも呼び得るものである。(ここでの「文節情報」は、上記「第一文節情報」と区別するため、以下「第二文節情報」と呼ぶ。)
(6)引用例の「アクション決定手段」は、段落【0021】の記載等から明らかなように、「前記前処理手段で得られた前記第一文節情報に基づいて予め記憶された前記複数種類の第二文節情報の中から該第一文節情報を含む第二文節情報を検索する」といった機能を有するものであり、当該機能を実現する部分は「第一検索手段」とも呼び得るものである。
(7)引用例の「アクション決定手段」と「提示手段」は、段落【0051】の記載等から明らかなように、その両方があいまって「前記第一検索手段で検索された第二文節情報に基づいて、該第二文節情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する」といった機能を有するものであり、当該機能を実現する部分は「回答文検索手段を有する第二検索手段」とも呼び得るものである。

したがって、引用例には、以下の発明(以下、「引用例記載発明」と呼ぶ。)が記載されているといえる。
「ユーザの発言内容に対応する文字列情報に基づいて、該文字列情報に対応する回答文を検索する会話制御装置であって、
前記回答文には、特定の話題に誘導させるための内容が含まれ、
前記文字列情報を自立語と付属語からなる文節に区切り第一文節情報を得る前処理手段と、
複数種類の第二文節情報には、前記回答文及び該回答文として選出された特定の話題に誘導させるための優先順位が対応付けられており前記第二文節情報及び前記回答文を予め記憶する記憶手段と、
前記前処理手段で得られた第一文節情報に基づいて予め記憶された前記複数種類の第二文節情報の中から該第一文節情報を含む第二文節情報を検索する第一検索手段と、
前記第一検索手段で検索された第二文節情報に基づいて、該第二文節情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する回答文検索手段を有する第二検索手段とを有する会話制御装置。」


3.対比
本願発明と引用例記載発明を対比すると、両者間には以下の対応関係があるといえる。
(1)引用例記載発明の「ユーザの発言内容に対応する文字列情報」は、本願発明の「利用者から入力された発話内容を含む入力情報」に相当する。
(2)引用例記載発明の「第一文節情報」と本願発明の「第一形態素情報」とは、「第一検索手段による検索のための情報」(以下、「第一検索情報」と呼ぶ。)である点で共通し、引用例記載発明の「前処理手段」と本願発明の「形態素抽出手段」とは、「利用者から入力された発話内容を含む入力情報から第一検索情報を抽出する手段」である点で共通する。
(3)引用例記載発明の「第二文節情報」と本願発明の「第二形態素情報」とは、「第一検索手段による検索の対象となる情報」(以下、「第二検索情報」と呼ぶ。)である点で共通し、引用例記載発明の「記憶手段」と本願発明の「形態素記憶手段」とは、「複数種類の第二検索情報には、前記回答文及び該回答文として選出された特定の話題に誘導させるための優先順位が対応付けられており前記第二検索情報及び前記回答文を予め記憶する記憶手段」である点で共通する。
(4)引用例記載発明の「第一検索手段」と本願発明の「第一検索手段」とは、「第一検索情報に基づいて予め記憶された前記複数種類の第二検索情報の中から該第一検索情報を含む第二検索情報を検索する第一検索手段」である点で共通する。
(5)引用例記載発明の「回答文検索手段を有する第二検索手段」と本願発明の「第二検索手段」とは、「第二検索情報に基づいて、該第二検索情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する回答文検索手段を有する第二検索手段」である点で共通する。

したがって、本願発明と引用例記載発明の間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「利用者から入力された発話内容を含む入力情報に基づいて、該入力情報に対応する回答文を検索する会話制御装置であって、
前記回答文には、特定の話題に誘導させるための内容が含まれ、
前記入力情報から第一検索情報を抽出する手段と、
複数種類の第二検索情報には、前記回答文及び該回答文として選出された特定の話題に誘導させるための優先順位が対応付けられており前記第二検索情報及び前記回答文を予め記憶する記憶手段と、
前記第一検索情報に基づいて予め記憶された前記複数種類の第二検索情報の中から該第一検索情報を含む第二検索情報を検索する第一検索手段と、
前記第二検索情報に基づいて、該第二検索情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する回答文検索手段を有する第二検索手段とを有する会話制御装置。」である点。

(相違点1)
本願発明の「第一検索情報」(第一形態素情報)は、「入力情報に含まれる文字列に基づいて該文字列の最小単位を構成する少なくとも一つの形態素」であるのに対し、引用例記載発明の「第一検索情報」(第一文節情報)は、「入力情報に含まれる文字列に基づいて該文字列の最小単位を構成する少なくとも一つの形態素」ではない点。

(相違点2)
本願発明の「第二検索情報」(第二形態素情報)は、「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す複数種類の第二形態素情報」であるのに対し、引用例記載発明の「第二検索情報」(第二文節情報)は「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す複数種類の第二形態素情報」ではない点。

(相違点3)
本願発明の「第二検索手段」は、「前記第一検索手段で複数の前記第二形態素情報が検索された場合には検索された該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための前記優先順位の大きさに応じて、前記複数の第二形態素情報の中から最も高い優先順位が対応付けられた又は最も低い優先順位が対応付けられた一の前記第二形態素情報を選出する選出手段」と「回答文検索手段」とを有し、該「回答文検索手段」は、「前記選出手段で選出された前記第二形態素情報に基づいて、該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する」ものであるのに対し、引用例記載発明の「第二検索手段」は、「前記第一検索手段で複数の前記第二形態素情報が検索された場合には検索された該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための前記優先順位の大きさに応じて、前記複数の第二形態素情報の中から最も高い優先順位が対応付けられた又は最も低い優先順位が対応付けられた一の前記第二形態素情報を選出する選出手段」を有するものではなく、「回答文検索手段」は、「前記選出手段で選出された前記第二形態素情報に基づいて、該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する」ものではない点。


4.当審の判断

(1)上記相違点について

ア.(相違点1)、(相違点2)について
下記(ア)?(エ)の事情を勘案すると、引用例記載発明の「第一検索情報」(第一文節情報)を「入力情報に含まれる文字列に基づいて該文字列の最小単位を構成する少なくとも一つの形態素」とし、「第二検索情報」(第二文節情報)を「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す複数種類の第二形態素情報」とすること、換言すれば、引用例記載発明において、相違点1、2に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)いわゆる「形態素」が、「文字列の最小単位を構成する」ものであり、また、「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる」ものであることや、当該「形態素」によって発言内容が表わされ得ることは、当業者に周知の事項である。
(イ)引用例記載発明は、「ユーザの発言内容に対応する文字列情報に基づいて、該文字列情報に対応する回答文を検索する」ものであり、そこで使用する「第一検索情報」、「第二検索情報」は、発言内容を表し得るものであれば足り、発言内容を表し得るものの中から具体的にどのような情報を該「第一検索情報」、「第二検索情報」として使用するかは、当業者が適宜決定すべき事項である(このことは、引用例の請求項1に「前処理手段」による分析内容の限定が無いことからも明らかである。)。
(ウ)上述したように上記「形態素」によっても発言内容が表わされ得ることは当業者に周知であり、当該「形態素」も引用例記載発明の「第一検索情報」、「第二検索情報」として使用し得ることは、当業者に自明である。
(エ)以上のことは、取りも直さず、引用例記載発明の「第一検索情報」(第一文節情報)を「入力情報に含まれる文字列に基づいて該文字列の最小単位を構成する少なくとも一つの形態素」とし、「第二検索情報」(第二文節情報)を「一つの文字、複数の文字列又はこれらの組み合わせからなる形態素を示す複数種類の第二形態素情報」とすることが、当業者にとって容易であったことを意味している。

イ.(相違点3)について
下記(オ)、(カ)の事情を勘案すると、引用例記載発明の「第二検索手段」を、「前記第一検索手段で複数の前記第二形態素情報が検索された場合には検索された該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための前記優先順位の大きさに応じて、前記複数の第二形態素情報の中から最も高い優先順位が対応付けられた又は最も低い優先順位が対応付けられた一の前記第二形態素情報を選出する選出手段」をも有するものとし、「回答文検索手段」を、「前記選出手段で選出された前記第二形態素情報に基づいて、該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する」ものとすること、換言すれば、引用例記載発明において、相違点3に係る本願発明の構成を採用することも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(オ)引用例の段落【0049】?【0051】に示される例では、「第一検索手段」(アクション決定手段)により複数の第二検索情報が検索されることは許容されておらず、該例に示される「会話制御装置」(情報提示装置)は、優先順位(第1候補か第2候補か)も加味した一つのアクションに対応した一つの第二検索情報が検索されるように構成され、該一つの第二検索情報に対応する一つのアクションに対応する回答文が回答されるように構成されたもの(以下、「構成a」と呼ぶ。)と解されるが、それを、「第一検索手段」(アクション決定手段)により複数の第二検索情報が検索されることを許容するようにした上で、複数の第二検索情報が検索された場合には該複数の第二検索情報の中から優先順位により一つの第二検索情報を選出し、選出した一つの第二検索情報に対応付けられた回答文を回答するように構成されるもの(以下、「構成b」と呼ぶ。)としても、所期の目的を達成し得ることは当業者に自明であるし、上記構成aと上記構成bに作用効果上格別の差異があるとも考えられないから、そのいずれを採用するかは、当業者が設計事項として適宜決定し得た事項というべきである。
(カ)以上のことと、上記ア.で検討したところを併せ考えれば、引用例記載発明の「第二検索手段」を、「前記第一検索手段で複数の前記第二形態素情報が検索された場合には検索された該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための前記優先順位の大きさに応じて、前記複数の第二形態素情報の中から最も高い優先順位が対応付けられた又は最も低い優先順位が対応付けられた一の前記第二形態素情報を選出する選出手段」をも有するものとし、「回答文検索手段」を、「前記選出手段で選出された前記第二形態素情報に基づいて、該第二形態素情報に対応付けられ特定の話題に誘導させるための内容が含まれた前記回答文を検索する」ものとすることも当業者が容易に推考し得たことといえる。

(2)本願発明の効果について
本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用例の記載事項や周知の事項から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。


5.むすび
以上によれば、本願発明は、引用例記載発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-07 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2003-47872(P2003-47872)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之和田 財太  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 池田 聡史
長島 孝志
発明の名称 会話制御装置及び会話制御方法  
代理人 三好 秀和  
代理人 三好 秀和  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ