• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04W
管理番号 1236251
審判番号 不服2008-12703  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-19 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2002-554987「通信システムにおける順方向出力制御の方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月11日国際公開、WO02/54617、平成16年10月28日国内公表、特表2004-533133〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2001年12月27日(パリ条約による優先権主張2001年1月5日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成19年1月18日付けの拒絶の理由の通知に対して、平成19年7月23日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたが、平成20年2月15日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年5月19日に審判請求がなされたものである。

2.本願発明について
本願の請求項13に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年7月23日付け手続補正書に記載された特許請求の範囲の請求項13に記載された次のとおりのものと認める。

「データ送信を保留しているアクセスターミナルを呼び出すこと;
パラメータの組に基づいてアクセスポイントを選択すること;
選択されたアクセスポイントからの順方向リンク信号の過剰なC/Iを観測すること;
上記選択されたアクセスポイントに過剰なC/I観測を送ること;及び
上記データ要求メッセージにしたがったデータレートで及び上記過剰なC/I観測にしたがった送信出力で上記選択されたアクセスポイントからデータを送信すること、
を具備する、一のアクセスターミナルに少なくとも一のアクセスポイントからのパケットデータ送信の方法。」

3.引用例
(1)原査定の拒絶の理由で引用された国際公開第99/23844号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

A.「Initially, the mobile station establishes communication with a base station using a predetermined access procedure. In this connected state, the mobile station can receive data and control messages from the base station, and is able to transmit data and control messages to the base station. The mobile station then monitors the forward link for transmissions from the base stations in the active set of the mobile station. The active set contains a list of base stations in communication with the mobile station. Specifically, the mobile station measures the signal-to-noise-and-interference ratio (C/I) of the forward link pilot from the base stations in the active set, as received at the mobile station. If the received pilot signal is above a predetermined add threshold or below a predetermined drop threshold, the mobile station reports this to the base station. Subsequent messages from the base station direct the mobile station to add or delete the base station (s) to or from its active set, respectively. The various operating states of the mobile station is described below.
If there is no data to send, the mobile station returns to an idle state and discontinues transmission of data rate information to the base station (s). While the mobile station is in the idle state, the mobile station monitors the control channel from one or more base stations in the active set for paging messages.
If there is data to be transmitted to the mobile station, the data is sent by a central controller to all base stations in the active set and stored in a queue at each base station. A paging message is then sent by one or more base stations to the mobile station on the respective control channels. The base station may transmit all such paging messages at the same time across several base stations in order to ensure reception even when the mobile station is switching between base stations. The mobile station demodulates and decodes the signals on one or more control channels to receive the paging messages.
Upon decoding the paging messages, and for each time slot until the data transmission is completed, the mobile station measures the C/I of the forward link signals from the base stations in the active set, as received at the mobile station. The C/I of the forward link signals can be obtained by measuring the respective pilot signals. The mobile station then selects the best base station based on a set of parameters. The set of parameters can comprise the present and previous C/I measurements and the bit-error-rate or packet-error-rate. For example, the best base station can be selected based on the largest C/I measurement. The mobile station then identifies the best base station and transmits to the selected base station a data request message (hereinafter referred to as the DRC message) on the data request channel (hereinafter referred to as the DRC channel). The DRC message can contain the requested data rate or, alternatively, an indication of the quality of the forward link channel (e.g., the C/I measurement itself, the bit-error-rate, or the packet-error-rate). In the exemplary embodiment, the mobile station can direct the transmission of the DRC message to a specific base station by the use of a Walsh code which uniquely identifies the base station. The DRC message symbols are exclusively OR'ed (XOR) with the unique Walsh code. Since each base station in the active set of the mobile station is identified by a unique Walsh code, only the selected base station which performs the identical XOR operation as that performed by the mobile station, with the correct Walsh code, can correctly decode the DRC message. The base station uses the rate control information from each mobile station to efficiently transmit forward link data at the highest possible rate.
At each time slot, the base station can select any of the paged mobile stations for data transmission. The base station then determines the data rate at which to transmit the data to the selected mobile station based on the most recent value of the DRC message received from the mobile station. Additionally, the base station uniquely identifies a transmission to a particular mobile station by using a spreading code which is unique to that mobile station. In the exemplary embodiment, this spreading code is the long pseudo noise (PN) code which is defined by IS-95 standard.」(第9頁第5行?第10頁第26行)
(当審訳:最初に、モバイル局は予め決められた接続手順を使用して基地局と通信を確立する。この接続状態において、モバイル局は基地局からデータおよび制御メッセージを受信でき、データおよび制御メッセージを基地局へ伝送することができる。モバイル局はそれからモバイル局のアクティブセットにある基地局から伝送のための順方向リンクを監視する。アクティブセットはモバイル局と通信にある基地局のリストを含む。特に、モバイル局は、モバイル局で受信されたとき、アクティブセットの基地局からの順方向リンクパイロットの信号対ノイズおよび妨害比(C/I)を測定する。もし受信されたパイロット信号が予め決められた追加閾値以上であるか、予め決められた削除閾値以下であるなら、モバイル局はこれを基地局へ報告する。基地局からの次のメッセージはそれぞれそのアクティブセットへまたはセットから基地局を追加しまたは削除するためモバイル局に送られる。モバイル局の様々な動作状態は以下に記述される。
もし送るデータがないなら、モバイル局はアイドル状態に戻り、基地局へのデータレート情報の伝送を中断する。モバイル局がアイドル状態にある間、モバイル局はページングメッセージのためアクティブセットの1つまたはそれ以上の基地局からの制御チャンネルを監視する。
もしモバイル局に伝送されるべきデータがあるなら、データは中央制御器によりアクティブセットの全ての基地局に送られ、各基地局で待ち行列に記憶される。ページングメッセージはそれから、1つまたはそれ以上の基地局によりそれぞれの制御チャンネル上でモバイル局に送られる。モバイル局が基地局間を切り換えている時でさえ受信を確保するため、基地局は複数の基地局から同じ時間に全てのかかるページングメッセージを伝送してもよい。モバイル局はページングメッセージを受信するため、1つまたはそれ以上の制御チャンネルの信号を復調しかつデコードする。
ページングメッセージのデコードで、かつデータ伝送が完了されるまで各時間スロットについて、モバイル局はモバイル局で受信されたとき、アクティブセットの基地局からの順方向リンク信号のC/Iを測定する。順方向リンク信号のC/Iはそれぞれのパイロット信号を測定することにより得られ得る。モバイル局はそれから一組のパラメータに基づいて最良基地局を選択する。その一組みのパラメータは現在および前回のC/I測定、およびビット誤り率またはパケット誤り率を含み得る。例えば、最良の基地局は最も大きいC/I測定に基づいて選択され得る。モバイル局はそれから最良の基地局を確認し、データ要求チャンネル(以後DRCチャンネルとして参照される)にデータ要求メッセージ(以後DRCメッセージとして参照される)を選択された基地局に伝送する。DRCメッセージは要求されたデータレート、あるいは代わりに順方向リンクチャンネルの質の表示(例えばC/I測定値それ自身、ビット誤り率、またはパケット誤り率)を含み得る。例示的実施例において、モバイル局は基地局を1つしかなく識別するウォルシュコードの使用により、特定の基地局にDRCメッセージの伝送を向け得る。DRCメッセージ記号は1つしかないウォルシュコードで排他的OR(XOR)される。モバイル局のアクティブセットにある各基地局が1つしかないウォルシュコードにより確認されるので、正確なウォルシュコードでモバイル局により実行されるように同一なXOR演算を実行する選択された基地局のみがDRCメッセージを正確に解読できる。基地局は順方向リンクデータを最大の可能なレートで効率的に伝送するため、各モバイル局からのレート制御情報を使用する。
各時間スロットで、基地局はデータ伝送のため呼出されたモバイル局の幾つかを選択できる。基地局はそれから、モバイル局から受信されたDRCメッセージの最近の値に基づいて選択されたモバイル局へデータを伝送するためのデータレートを決定する。加えて、基地局はそのモバイル局に1つしかない拡散コードを使用することにより特定のモバイル局への伝送を1つしかなく確認する。例示的実施例において、この拡散コードはIS-95標準により定義された長い擬似ノイズ(PN)コードである。)

B.「VI. Forward Link Architecture

In the exemplary embodiment, base station 4 transmits at the maximum power available to base station 4 and at the maximum data rate supported by the data communication system to a single mobile station 6 at any given slot. The maximum data rate that can be supported is dynamic and depends on the C/I of the forward link signal as measured by mobile station 6. Preferably, base station 4 transmits to only one mobile station 6 at any given time slot.」(第24頁第24行?第32行)
(当審訳:(6)順方向リンクアーキテクチュア
例示的実施例において、基地局4は、基地局4に利用可能な最大パワーで、かつ任意の与えられたスロットで単一のモバイル局6へデータ通信システムにより支持された最大データレートで伝送する。サポートされ得る最大データレートは動的であり、モバイル局6により測定されたような順方向リンク信号のC/Iに依存する。好ましくは、基地局4は任意の与えられた時間スロットでただ1つのモバイル局6へ伝送する。)

C.「1. A method for high speed packet data transmission from at least one base station to a mobile station comprising the steps of:
paging a mobile station of a pending data transmission;
measuring C/I of forward link signals from said at least one base station;
selecting a selected base station based on a set of parameters;
identifying said selected base station;
sending a data request message to said selected base station; and
transmitting data from said selected base station at a data rate in accordance with said data request message.」(第50ページ第1行?第10行)
(当審訳:データ送信を保留しているモバイル局を呼出し、
少なくとも1つの基地局からの順方向リンク信号のC/Iを測定し、
一組みのパラメータに基づいて選択された基地局を選択し、
前記選択された基地局を識別し、
前記選択された基地局へデータ要求メッセージを送り、
前記選択された基地局から前記データ要求メッセージに従ったデータレートでデータを伝送するステップを含む少なくとも1つの基地局からモバイル局への高速パケットデータ伝送の方法。)

以上の記載によれば、この引用例1には、以下の発明(以下、「引用例1発明」という。)が開示されていると認められる。

「データ送信を保留しているモバイル局を呼出し、
アクティブセットの基地局からの順方向リンク信号のC/Iを測定し、
一組みのパラメータに基づいて選択された基地局を選択し、
前記選択された基地局を識別し、
前記選択された基地局へC/I測定値を含むデータ要求メッセージを送り、
前記選択された基地局から前記データ要求メッセージに従ったデータレートでデータを伝送するステップを含む少なくとも1つの基地局からモバイル局への高速パケットデータ伝送の方法。」

(2)原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-55180号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

A.「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はCDMA無線通信システムにおけるCDMA無線加入者網システムの順方向トラヒックチャンネル電力制御の方法および装置(Method and apparatusof forward traffic channel power control for CDMA Wireless Local Loop System )に関し、特に詳細には前記システムの順方向電力制御の方法及びその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、符号分割多重接続方式(CDMA)の移動通信システムにおいて、順方向リンク(基地局から端末局への無線リンク)の電力制御は、各端末局へ通話情報を伝送するトラヒック(通話)チャンネル(以下、トラヒックチャンネルと称す)別に行れる。図4は、一般的なCDMA方式の無線加入者網システムの概念図を示している。図4で示すように、セルA(410)における端末局A(411)は、1個以上の端末機(例えば、音声電話機及びデータサービス用端末機)で構成され、これは基地局A(412)と通信するのに必要な全ての機能を有している。
【0003】基地局A(412)は端末局A(411)が通信するのに必要な各種の制御情報だけでなく、通話設定後にトラヒック情報を受信し、いろんな情報を端末局A(411)ヘ送信する機能を実施する。同様に、セルB(420)における基地局B(422)と端末局B(421)もそれぞれ前記セルA(410)の基地局A(412)と端末局A(411)とに相当する機能を実施する。各基地局(412、422)は、電波環境と端末局と基地局との間の距離による経路損失等を補償するために、通話中に順方向リンク(基地局から端末局方向へのリンク)のトラヒックチャンネル電力を制御する機能を実施する。従って、各基地局(412、422)は、自己セルの内における通話中の端末局の通話品質を維持するために、電波環境及び経路損失等に鑑みて、順方向トラヒックチャンネルの送信電力を制御するために、セルの縁付近に位置した各端末局(411、421)にはより多くの信号電力を送信するようになる。」

B.「【0014】
【発明の実施の形態】本発明の実施の一形態を、図1乃至図3により説明する。図1は、CDMA無線加入者網システムの順方向トラヒックチャンネル電力制御方法の説明図である。本形態の順方向トラヒックチャンネルに対する電力制御方法は、次のようである。先ず、基地局においては、端末局が測定して報告した順方向トラヒックチャンネルからの受信ビットエネルギー/雑音比を受信する第1段階を行なう。前記第1段階から、基地局で管理する端末局の順方向チャンネルに割当てた全体電力が所定の電力臨界値に到る前の状態の正常モードであるか、又は所定の電力臨界値に到達後の状態の臨界モードであるか否かを判断する第2段階を行なう。図2に示すように、最大送信電力(Max)(101)は、一つの順方向トラヒックチャンネルに、最大に割当てることが可能な送信電力(又は、チャンネル利得)のことである。最小送信電力(Min)(102)は、一つの順方向トラヒックチャンネルに最小として割当てることが可能な送信電力(又はチャンネル利得)のことである。
【0015】正常モード(110)とは、基地局から、順方向チャンネルに予め割当てした全体の電力が未だ所定電力の臨界値(103)に到達していない場合のことである。臨界モード(120)とは、基地局から順方向チャンネルに予め割当てた全体の電力が所定の電力臨界値(103)に到達した後の場合のことである。もし、前記第2段階で正常モードである場合には、前記第1段階の端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比と、電力の制御臨界値(130)とを比較して、前記受信ビットエネルギー/雑音比と電力制御臨界値(130)との差異に相当する電力だけ、チャンネル送信電力の増減を調節する第3段階を行なうようにする。
【0016】即ち、端末局が、測定して報告した順方向トラヒックチャンネルの受信ビットエネルギー/雑音比が、前記電力制御臨界値(130)より小さければ、端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比と電力制御臨界値(130)との差異に相当する電力だけ、順方向トラヒックチャンネルの送信電力を増加させ、他方端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比が前記電力制御臨界値(130)より大きければ、端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比と電力制御臨界値(130)との差異に相当する電力だけ、順方向トラヒックチャンネルの送信電力を減少させるようにする。」

C.「【0020】一方、電力の制御臨界値(130)は音声及びデータの混用システムの環境に適用する場合には、音声トラヒックとデータトラヒックとに対して、それぞれ異なって設定することにより、順方向トラヒックチャンネルの電力を制御することもできる。即ち、前記端末局が測定して基地局に報告した受信ビットエネルギー/雑音比と、電力の制御臨界値とを比較する場合には、音声トラヒックに対する電力の制御臨界値をデータトラヒックに対する電力の制御臨界値より低く設定して運用することもできる。従って、音声トラヒックチャンネルに対する電力の制御の場合には、受信ビットエネルギー/雑音の比を音声の電力の制御臨界値と比較して、その差異だけ送信電力を増減するようになり、又データトラヒックに対する電力制御の場合には、データトラヒックの電力の制御値と、データの電力の制御臨界値と比較して、その差異だけデータトラヒックチャンネルの送信電力を増減させることもできる。
【0021】上記のように、正常モードと臨界モードにおいて、一つの順方向トラヒックチャンネルに割当てることが可能な電力を、最大送信電力(101)と最小送信電力(チャンネル利得)(102)との間で、増減を調節することによって、隣接セルによる順方向リンクの干渉信号を減少させることが可能になり、その結果、良質の通話品質を提供できるようになる。図3は、基地局で管理する全ての順方向チャンネルに割当てた全体の電力状態図を示している。チャンネル割当電力(310)は、基地局で管理する全ての順方向チャンネル(パイロットチャンネル、同期チャンネル、ページチャンネル、信号チャンネル及びトラヒックチャンネル等)に割当てた電力量を示しており、このような状態では、電力の制御方式が、正常モード(110)として、動作することになる。チャンネルの未割当電力(320)は、基地局で管理する全体電力の中で、未だ割当てられていない電力量のことである。」

D.「【0023】図1は、本実施形態の装置の構成を示すブロック図である。図に示すように、基地局から、トラヒックチャンネルを通じて、伝達されるトラヒック情報信号を受信する端末局受信機(211)と、受信された信号から、トラヒックチャンネルを通じて、伝達された情報を得るために、逆拡散過程を行なって、受信データを復調する端末局トラヒックチャンネル復調機(212)と、前記復調された受信データからトラヒックチャンネルの受信ビットエネルギー/雑音の比を測定する端末局順方向トラヒックチャンネル受信ビットエネルギー/雑音の比の測定部(213)と、前記トラヒックチャンネルの受信ビットエネルギー/雑音の比をディジタル変調する端末局変調機(214)と、変調された信号を基地局へ伝送する端末局送信機(215)と、前記端末局の送信データを受信する基地局受信機(221)と、前記受信データを基底帯域でのディジタルを復調する基地局ディジタル復調機(222)と、前記復調された端末局測定の受信ビットエネルギー/雑音の比の情報のエラーの有無を判定する基地局レコーダ(223)と、エラーの有無の検査が終了した情報を受け、前記端末局の測定受信ビットエネルギー/雑音の比と、順方向トラヒックチャンネルの電力の制御臨界値とを比較して、順方向トラヒックチャンネルに対する電力増加、又は減少を決定する基地局での送信電力の決定及び送信電力の調整部(224)と、前記基地局での送信電力の決定及び送信電力の調整部で決定された電力に相応するトラヒックチャンネル変調利得により、トラヒック情報信号を変調する基地局でのトラヒックチャンネル変調機(225)と、及び前記変調されたトラヒック情報信号をトラヒックチャンネルを通じて、端末局に伝送する基地局送信機(226)とを有している。前記端末局装置(210)は、音声だけでなく、データサービスの機能等があり、又基地局装置(220)は、端末局装置(210)からの音声トラヒック及びデータトラヒック情報に対して、CDMA信号処理等を行った後に、送受信する機能等を有している。」

以上の記載によれば、この引用例2には、以下の技術事項が開示されていると認められる。

「端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比が電力制御臨界値(130)より大きければ、端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比と電力制御臨界値(130)との差異に相当する電力だけ、基地局からの順方向トラヒックチャンネルの送信電力を減少させ、一つの順方向トラヒックチャンネルに割当てることが可能な電力を、最大送信電力(101)と最小送信電力(チャンネル利得)(102)との間で、増減を調節することによって、隣接セルによる順方向リンクの干渉信号を減少させることが可能になり、その結果、良質の通話品質を提供できるるCDMA無線通信システムにおける順方向トラヒックチャンネル電力制御の方法。」

4.対比
本願発明と引用例1発明を対比する。

引用例1発明の「モバイル局」、「基地局」は、本願発明の「アクセスターミナル」、「アクセスポイント」にそれぞれ相当する。

引用例1発明において、「選択された基地局」は「アクティブセットの基地局」から選択されるので、「アクティブセットの基地局」は「選択された基地局」を含んでおり、引用例1発明の「アクティブセットの基地局からの順方向リンク信号のC/Iを測定」することと、本願発明の「選択されたアクセスポイントからの順方向リンク信号の過剰なC/Iを観測すること」とは、選択されたアクセスポイントからの順方向リンク信号のC/Iを観測することで共通する。

引用例1発明の「前記選択された基地局へC/I測定値を含むデータ要求メッセージを送」ることと、本願発明の「上記選択されたアクセスポイントに過剰なC/I観測を送ること」とは、上記選択されたアクセスポイントにC/I観測を送ることで共通する。

引用例1発明の「前記選択された基地局から前記データ要求メッセージに従ったデータレートでデータを伝送する」ことと、本願発明の「上記データ要求メッセージにしたがったデータレートで及び上記過剰なC/I観測にしたがった送信出力で上記選択されたアクセスポイントからデータを送信すること」とは、上記データ要求メッセージにしたがったデータレートで上記選択されたアクセスポイントからデータを送信することで共通する。

したがって、両者は、
「データ送信を保留しているアクセスターミナルを呼び出すこと;
パラメータの組に基づいてアクセスポイントを選択すること;
選択されたアクセスポイントからの順方向リンク信号のC/Iを観測すること;
上記選択されたアクセスポイントにC/I観測を送ること;及び
上記データ要求メッセージにしたがったデータレートで上記選択されたアクセスポイントからデータを送信すること、
を具備する、一のアクセスターミナルに少なくとも一のアクセスポイントからのパケットデータ送信の方法。」
で一致するものであり、次の点で相違している。

[相違点]
本願発明では、選択されたアクセスポイントからの順方向リンク信号の過剰なC/Iを観測すること、上記選択されたアクセスポイントに過剰なC/I観測を送ること、上記過剰なC/I観測にしたがった送信出力で上記選択されたアクセスポイントからデータを送信すること、を具備するのに対し、引用例1発明では、選択された基地局からの順方向リンク信号のC/Iを測定し、選択された基地局へ送信するものの、観測するのは過剰なC/Iではなく、選択された基地局に送るのも過剰なC/I観測ではなく、過剰なC/I観測にしたがった送信出力で上記選択されたアクセスポイントからデータを送信することを具備していない点。

5.当審の判断
上記相違点について検討する。

引用例2には、端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比(本願発明の「C/I」に相当する。)が電力制御臨界値(130)より大きければ、端末局が測定して報告した受信ビットエネルギー/雑音比と電力制御臨界値(130)との差異に相当する電力だけ、順方向トラヒックチャンネルの送信電力を減少させるCDMA無線通信システムにおける順方向トラヒックチャンネル電力制御に関する技術が記載されている。また、CDMA無線通信システムの電力制御において、端末局で受信電力やC/I等の測定された受信品質(CDMA無線通信システムの電力制御において、受信品質をC/I値ではなく受信電力や受信レベルとすることも良く行われている。)と必要とされる受信品質との差、すなわち、過剰な受信品質、を測定して、この差を表す情報である電力制御情報を基地局に送信して、基地局でこの電力制御情報に従った送信出力で送信することは周知技術(例えば、特開平8-223113号公報の【0021】、【0024】には、基地局において、受信信号電力から所要受信信号電力を減じて得られる値の大きさに応じて、複数のビットで電力制御信号を送ることが記載されており、国際公開第00/45527号の第8頁第37行?第9頁第16行には、受信した受信電力制御コマンドのエネルギーを計算し、このエネルギーをエネルギーしきい値と比較し、計算されるエネルギーがしきい値を超えるとき、移動通信装置は送信機がその送信電力を減少させるように要求するコマンドを送り返すこと、この電力制御コマンドは送信電力の変化の方向と量を示すマルチビット電力制御コマンドへ容易に拡張できることが記載されている。)である。そして、引用例1発明と引用例2とは、CDMA無線通信システムという共通の技術分野に属しており、CDMA無線通信システムにおいては、送信電力を必要最低限に制御して、できるだけ干渉を減らすようにすることは当然追求すべき課題であり、引用例1発明においても当然有する課題であるので、引用例1発明に引用例2に記載された技術を適用することは当業者が容易に想到し得るものであり、その際に上記周知技術を考慮すれば、引用例1発明において、端末局で受信ビットエネルギー/雑音比と電力制御臨界値(130)との差(本願発明の「過剰なC/I」に相当)を計算して、その差を基地局に報告して、基地局で報告された差にしたがった送信出力で送信する、すなわち、選択されたアクセスポイントからの順方向リンク信号の過剰なC/Iを観測すること、上記選択されたアクセスポイントに過剰なC/I観測を送ること、上記過剰なC/I観測にしたがった送信出力で上記選択されたアクセスポイントからデータを送信すること、を具備する構成とすることは当業者が容易に想到し得たものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1発明及び引用例2に記載された技術事項、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項13に係る発明は、引用例1発明及び引用例2に記載された技術事項、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-11-25 
結審通知日 2010-11-30 
審決日 2010-12-14 
出願番号 特願2002-554987(P2002-554987)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04W)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 倉本 敦史  
特許庁審判長 江口 能弘
特許庁審判官 清水 稔
青木 健
発明の名称 通信システムにおける順方向出力制御の方法及び装置  
代理人 村松 貞男  
代理人 岡田 貴志  
代理人 勝村 紘  
代理人 堀内 美保子  
代理人 野河 信久  
代理人 白根 俊郎  
代理人 河井 将次  
代理人 市原 卓三  
代理人 橋本 良郎  
代理人 山下 元  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 佐藤 立志  
代理人 河野 哲  
代理人 福原 淑弘  
代理人 砂川 克  
代理人 竹内 将訓  
代理人 中村 誠  
代理人 河野 直樹  
代理人 風間 鉄也  
代理人 峰 隆司  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ