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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1236253
審判番号 不服2008-13502  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-29 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2005-342658「固体電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 74072〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,平成16年2月5日(優先権主張:平成15年9月5日)に出願した特願2004-28876号の一部を平成17年11月28日に新たな特許出願としたものであって,平成20年4月24日付けで拒絶査定され,同年5月29日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正されたものである。
なお,本件について,平成22年10月26日付けで,期間を指定して審尋をおこなったが,期間内に回答がなかった。

2 本願発明
平成20年5月29日付けの手続補正は,補正前の請求項1,3,5,7を削除し,補正前の請求項1を引用する請求項2,補正前の請求項3を引用する請求項4,補正前の請求項5を引用する請求項6を,それぞれ新たに請求項1-3として整理したものであるから,前記補正は,特許法第17条の2第4項第1号に規定する,請求項の削除を目的とした適法なものである。したがって,本願の請求項1-3に係る発明は,平成20年5月29日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1-3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ,その請求項3に係る発明(以下「本願発明3」という。)は,次のとおりのものである。

「【請求項3】陽極部材,誘電体部材及び陰極部材からなるコンデンサ素子と,前記コンデンサ素子の陽極部材及び陰極部材に夫々接続された平板状の陽極側リードフレーム及び平板状の陰極側リードフレームと,前記コンデンサ素子を被覆するハウジングとを具える固体電解コンデンサであって,
前記陽極側リードフレームは,前記陽極部材の下方から,該固体電解コンデンサの下面に交差して繋がる第1側面まで,折れ曲がることなく延在するとともに,前記第1側面において前記ハウジングから露出した部分を有し,
前記陰極側リードフレームは,前記陰極部材の下方から,該固体電解コンデンサの下面に交差して繋がる第2側面まで,折れ曲がることなく延在するとともに,前記第2側面において前記ハウジングから露出した部分を有し,
前記第1側面においてハウジングから露出した陽極側リードフレームの第1側面露出部は,少なくとも2箇所に分離しており,該分離した少なくとも2箇所の間の位置には,前記ハウジングを構成する樹脂が入り込み,
前記第2側面においてハウジングから露出した陰極側リードフレームの第2側面露出部は,少なくとも2箇所に分離しており,該分離した少なくとも2箇所の間の位置には,前記ハウジングを構成する樹脂が入り込んでおり,
前記第1側面と第2側面とは,互いに対向していることを特徴とする固体電解コンデンサ。」

3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願前に頒布された刊行物である, 特開2003-234251号公報(以下「引用例1」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。

引用例1: 特開2003-234251号公報
(1a)「【請求項1】陽極をなす柱形状の陽極リード線及びその陽極リード線の周囲を覆う陰極層が陰極をなしてなるコンデンサ素子と,突出させた前記陽極に接続された陽極端子板及び前記コンデンサ素子をフェースダウンさせて前記陰極に接続された陰極端子板からなる端子板とが封止樹脂によって封止されると共に,前記端子板のそれぞれの表面は前記封止樹脂の同一面上に露出されてなるチップ型電解コンデンサにおいて,前記陽極端子板及び陰極端子板の少なくともいずれか一方に封止樹脂を係止する係止部が形成されたことを特徴とするチップ型電解コンデンサ。」(【特許請求の範囲】)

(1b)「【請求項6】前記係止部は,膨張した封止樹脂が露出した端子板の面と反対方向に付勢される態様で形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一に記載のチップ型電解コンデンサ。
【請求項7】前記係止部は,陽極リード線が設置された方向に開に形成されると共に,端子板が露出された面の方向に開の形状とされた端面を有する切り欠き部であることを特徴とする請求項6に記載のチップ型電解コンデンサ。」(【特許請求の範囲】)

(1c)「【発明が解決しようとする課題】しかしながら,従来のチップ型電解コンデンサにおいては次のような問題があった。陰極端子板12の大部分は接続強度が弱い導電性接着剤17でコンデンサ素子14と接続されており,接続強度が導電性接着剤17よりも強い封止樹脂15との接続部分は陰極端子板12の縁の一部にすぎない。特に加熱時には,封止樹脂15が外方向に膨張することによって生じた応力が,コンデンサ素子14の周囲を固持しつつも陰極端子板12の上面にかかり,コンデンサ素子14と陰極端子板12とを相対的に離れさせるようになり,接続強度はさらに弱くなる。このように,実装基板等に実装する必要が生じるチップ型電解コンデンサにおいては,実装時の熱処理工程で,陽極端子板11及び陰極端子板12と封止樹脂15との接続強度が低くなり,コンデンサ素子14と陽極端子板11及び陰極端子板12との間の電気的接続不良が発生しやすかった。また,陽極をなす陽極リード線13と陽極端子板11との接続においても,接続具16による溶接でなされているのみである。従って,封止樹脂15が膨張した場合に発生する応力に対しては,接続具16を介した陽極リード線13と陽極端子板11との接続も前述の陰極端子板同様強固であるとは言い難かった。」(【0006】)

(1d)「本発明は,以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり,実装時の熱処理工程によって生じる封止樹脂の膨張に対しても,陽極端子板及び陰極端子板とコンデンサ素子との接続強度を維持することができるチップ型電解コンデンサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】前記課題を解決するために提供する本願第一の発明に係るチップ型電解コンデンサは,陽極をなす柱形状の陽極リード線及びその陽極リード線の周囲を覆う陰極層が陰極をなしてなるコンデンサ素子と,突出させた前記陽極に接続された陽極端子板及び前記コンデンサ素子をフェースダウンさせて前記陰極に接続された陰極端子板からなる端子板とが封止樹脂によって封止されると共に,前記端子板のそれぞれの表面は前記封止樹脂の同一面上に露出されてなるチップ型電解コンデンサにおいて,前記陽極端子板及び陰極端子板の少なくともいずれか一方に封止樹脂を係止する係止部が形成されたことを特徴とする。
係る構成とすることにより,陽極端子板及び陰極端子板の少なくともいずれか一方に形成された係止部が封止樹脂に嵌入した態様で設置されることになる。従って,陽極端子板及び陰極端子板が封止樹脂に対して強固に固定されるだけでなく,加熱処理工程時における封止樹脂の膨張によって生じる応力を軽減し,両端子板の剥離を防ぐことができる。」(【0007】-【0009】)

(1e)「前記課題を解決するために提供する本願第七の発明に係るチップ型電解コンデンサは,請求項6に記載のチップ型電解コンデンサにおいて,前記係止部は,陽極リード線が設置された方向に開に形成されると共に,端子板が露出された面の方向に開の形状とされた端面を有する切り欠き部であることを特徴とする。
係る構成とすることにより,膨張した封止樹脂が作用する応力方向を分散させることができ,結果として両電極板の剥離を防ぐことができる。」(【0020】-【0021】)

(1f)「【発明の実施の形態】以下に,本発明に係るチップ型電解コンデンサの一実施の形態における構成について図面を参照して説明する。図1は,本発明に係るチップ型電解コンデンサの一実施の形態における構成を示す斜視図である。図1に示すように,本発明に係るチップ型電解コンデンサ1は,コンデンサ素子14と,そのコンデンサ素子14を橋渡しするように設置された陽極端子板11及び陰極端子板12とが封止樹脂15によって封止されてなる。前記コンデンサ素子14は,陽極となるほぼ円柱形状の陽極リード線13と,その陽極リード線13の外表面に誘電体層(図示せず)を介して形成された陰極(層)とから構成される。すなわち,略直方体形状をなすコンデンサ素子14の一方の端部から外方に向かって前記陽極リード線13が突出している。陽極端子板11の上面には接続具16が設置されており,その接続具16に前記陽極リード線13が溶接で接続されていることによって前記陽極端子板11と前記陽極リード線13とが間接的に電気的接続されている。さらに,陰極端子板12の上面には,コンデンサ素子14の外周面である陰極(層)が導電性接着剤17を介して電気的に接続されている。
また,従来と同様に本発明でも封止樹脂15はコンデンサ素子14,接続具16,陽極端子板11及び陰極端子板12を覆うように封止しているが,陽極端子板11及び陰極端子板12のそれぞれの下面は,チップ型電解コンデンサ1の製品として電極をなすために封止樹脂15から露出している。
ここで,本発明に係るチップ型電解コンデンサにおいては,陽極端子板11及び陰極端子板12の少なくとも何れか一方に係止部101が形成されている。この係止部101は,図1に示すように陽極端子板11及び陰極端子板12の少なくとも何れか一方の端面に形成された突起部101a,溝部101c及び同様に端面をハの字形状とした切り欠き部101bといった形状が挙げられる。,この切り欠き部101bが形成される箇所は,陽極端子板11及び陰極端子板12が相互に対向する位置関係ではなく,相反する方向に開となるように設定されることが望ましい。
図2は,本発明に係るチップ型電解コンデンサの一実施の形態における構造を示す上面(透過)図である。図2に示すように,陽極端子板11及び陰極端子板12には,陽極リード線13が設置されている方向にそれぞれ相反して開となるように切り欠き部101bが形成されている。」(【0026】-【0029】)

(1g)図1は,引用例1に記載された発明の一実施の形態における構造を示す斜視図,図2は上面(透過)図であって,上記摘記(1f)を参酌すると,これらの図から,
陽極となるほぼ円柱形状の陽極リード線13,その陽極リード線の外表面に誘電体層を介して形成された陰極(層)とから構成されるコンデンサ素子14と,
前記陽極リード線に電気的接続された,上面に接続具16が設置された平板状の陽極端子板11と,
前記陰極(層)に電気的に接続されている陰極端子板12と,
前記コンデンサ素子を覆うように封止している封止樹脂15とを具えるチップ型電解コンデンサであって,
前記陽極端子板11は,陽極リード線13の下方から,チップ型電解コンデンサ1の下面に交差して繋がる第1側面まで,折れ曲がることなく延在するとともに,前記第1側面において封止樹脂15から露出した部分を有し,
前記第1側面において封止樹脂から露出した陽極端子板の第1側面露出部は,2箇所に分離しており,該分離した2箇所の間の位置には,前記封止樹脂を構成する樹脂が入り込み,
前記陽極端子板は,前記2箇所の第1側面露出部の間の位置に,前記第1側面から後退した切り欠き部を有し,
前記切り欠き部の前記第1側面と垂直な内側面は,前記封止樹脂が更に深く入り込んだハの字形状の端面とされた係止部とされており,
前記陰極端子板12は,前記陰極(層)の下方から,該チップ型電解コンデンサ1の下面に交差して繋がる第2側面まで,折れ曲がり延在するとともに,前記第2側面において前記封止樹脂15から露出した部分を有し,
前記第2側面において封止樹脂から露出した陰極端子板の第2側面露出部は,2箇所に分離しており,該分離した少なくとも2箇所の間の位置には,前記封止樹脂を構成する樹脂が入り込んでおり,
前記陰極端子板は,前記2箇所の第2側面露出部の間の位置に,前記第2側面から後退した切り欠き部を有し,
前記切り欠き部の前記第2側面と垂直な内側面は,前記封止樹脂が更に深く入り込んだハの字形状の端面とされた係止部とされており,
前記第1側面と第2側面とは,互いに対向していることを特徴とするチップ型電解コンデンサの構造を看取することができる。

4 当審の判断
(1)引用例1に記載の発明
引用例1の上記摘記(1a)-(1g)を総合勘案すれば,引用例1には,
「陽極となるほぼ円柱形状の陽極リード線,その陽極リード線の外表面に誘電体層を介して形成された陰極(層)とから構成されるコンデンサ素子と,前記陽極リード線に電気的接続された,上面に接続具が設置された平板状の陽極端子板と,前記陰極(層)に電気的に接続されている陰極端子板と,前記コンデンサ素子を覆うように封止している封止樹脂とを具えるチップ型電解コンデンサであって,
前記陽極端子板は,前記陽極リード線の下方から,該チップ型電解コンデンサの下面に交差して繋がる第1側面まで,折れ曲がることなく延在するとともに,前記第1側面において前記封止樹脂から露出した部分を有し,
前記第1側面において封止樹脂から露出した陽極端子板の第1側面露出部は,2箇所に分離しており,該分離した2箇所の間の位置には,前記封止樹脂を構成する樹脂が入り込み,
前記陽極端子板は,前記2箇所の第1側面露出部の間の位置に,前記第1側面から後退した切り欠き部を有し,
前記切り欠き部の前記第1側面と垂直な内側面は,前記封止樹脂が更に深く入り込んだハの字形状の端面とされた係止部とされており,
前記陰極端子板は,前記陰極(層)の下方から,該チップ型電解コンデンサの下面に交差して繋がる第2側面まで,折れ曲がり延在するとともに,前記第2側面において前記封止樹脂から露出した部分を有し,
前記第2側面において封止樹脂から露出した陰極端子板の第2側面露出部は,2箇所に分離しており,該分離した少なくとも2箇所の間の位置には,前記封止樹脂を構成する樹脂が入り込んでおり,
前記陰極端子板は,前記2箇所の第2側面露出部の間の位置に,前記第2側面から後退した切り欠き部を有し,
前記切り欠き部の前記第2側面と垂直な内側面は,前記封止樹脂が更に深く入り込んだハの字形状の端面とされた係止部とされており,
前記第1側面と第2側面とは,互いに対向していることを特徴とするチップ型電解コンデンサ。」
の発明(以下,「引用例1発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)本願発明3と引用例1発明との対比・判断
ア 本願発明3と引用例1発明とを対比すると,引用例1発明の「陽極となるほぼ円柱形状の陽極リード線」,「誘電体層」,「陰極(層)」,「コンデンサ素子を覆うように封止している封止樹脂」,「チップ型電解コンデンサ」は,それぞれ本願発明3の「陽極部材」,「誘電体部材」,「陰極部材」,「コンデンサ素子を被覆するハウジング」,「固体電解コンデンサ」に相当する。

イ 引用例1発明の「陽極端子板」及び「陰極端子板」と,本願発明3の「陽極側リードフレーム」及び「陰極側リードフレーム」とは,「陽極側の端子」及び「陰極側の端子」である点で一致する。

そうすると,本願発明3と引用例1発明は,
「陽極部材,誘電体部材及び陰極部材からなるコンデンサ素子と,前記コンデンサ素子の陽極部材及び陰極部材に夫々接続された平板状の陽極側の端子及び陰極側の端子と,前記コンデンサ素子を被覆するハウジングとを具える固体電解コンデンサであって,
前記陽極側の端子は,前記陽極部材の下方から,該固体電解コンデンサの下面に交差して繋がる第1側面まで,折れ曲がることなく延在するとともに,前記第1側面において前記ハウジングから露出した部分を有し,
前記陰極側の端子は,前記陰極部材の下方から,該固体電解コンデンサの下面に交差して繋がる第2側面まで延在するとともに,前記第2側面において前記ハウジングから露出した部分を有し,
前記第1側面においてハウジングから露出した陽極側の端子の第1側面露出部は,少なくとも2箇所に分離しており,該分離した少なくとも2箇所の間の位置には,前記ハウジングを構成する樹脂が入り込み,
前記第2側面においてハウジングから露出した陰極側の端子の第2側面露出部は,少なくとも2箇所に分離しており,該分離した少なくとも2箇所の間の位置には,前記ハウジングを構成する樹脂が入り込んでおり,
前記第1側面と第2側面とは,互いに対向している固体電解コンデンサ。」
である点で一致し,次の点で相違する。

相違点1:本願発明3では,陰極側リードフレームは,前記陰極部材の下方から,該固体電解コンデンサの下面に交差して繋がる第2側面まで「折れ曲がることなく」延在する「平板状」のものであるのに対して,引用例1発明では,陰極端子板は「折れ曲がり」延在するものである点。

相違点2:本願発明3は,陽極側リードフレーム及び陰極側リードフレームを具えるのに対して,引用例1には,陽極端子板及び陰極端子板が,リードフレームであるとは明記されていない点。

上記各相違点について検討する。
・相違点1について
チップ型電解コンデンサの陰極端子板として「折れ曲がることなく」延在する「平板状」のものは,下記の周知文献1-3にも記載されているように周知であるから,引用例1発明において,陰極端子板として,折れ曲がることなく延在する平板状のものを使用することは当業者が適宜なし得たことである。
そして,このような構成を採用したことによる効果も,当業者が予測する範囲内のものである。
したがって,引用例1発明において,相違点1に係る本願発明3の構成を容易に想到できたものと認められる。

・相違点2について
チップ型電解コンデンサの陽極側の端子,及び,陰極側の端子をリードフレームとすることは,下記の周知文献1-3にも記載されているように周知であるから,引用例1発明において,陽極端子板及び陰極端子板をリードフレームとすることは当業者が適宜なし得たことである。
そして,このような構成を採用したことによる効果も,当業者が予測する範囲内のものである。
したがって,引用例1発明において,相違点2に係る本願発明3の構成を容易に想到できたものと認められる。

周知文献1:特開2002-175938号公報
(周1a)「【請求項1】陽極導出線を有し且つ弁作用金属から成る陽極体の表面に,誘電体酸化皮膜と電解質層と陰極層とを順次積層形成してその外周が前記陰極層とされたコンデンサ素子をリードフレームに実装した後に,該コンデンサ素子を被覆するように外装樹脂を形成するとともに,陽極端子と陰極端子のコンデンサの外周に臨む角部が切り欠き状となるように切り込み加工を実施し,前記コンデンサ素子を含む所定領域を前記リードフレームから切り出して所定形状とする切断線が,前記切り込み加工部上となるチップ型固体電解コンデンサにおいて,前記切り出しにおける切断を前記切り込み加工部側より実施することを特徴とするチップ型固体電解コンデンサ。」(【特許請求の範囲】)

(周1b)「例えば,前記実施例においては,前記陽極端子5の形状を断面視形状がL字状のものとしているが,本発明はこれに限定されるものではなく,図11に示すように,陽極端子5’を平板状とし,前記陽極導出線4と陽極端子5’とを導電性を有する円柱状の補助リード線30にて接続するようにしても良い。」(【0030】)

(周1c)図11は,周知文献1に記載された発明のその他の形態のチップ型固体電解コンデンサを示す断面図であって,同図から,陽極端子5’及び陰極端子6が平板状であることを看取することができる。

周知文献2:特開2002-25858号公報
(周2a)「その結果,リードフレームまたは絶縁基板も平板状ですみ,段差を有する基板を用いなくてもよく,非常に安価に製造することができる。」(【0024】)

(周2b)図1は,周知文献2に記載された発明による固体電解コンデンサの一実施形態の断面説明図であって,同図から,第1のリード2及び第2のリード3が平板状であることを看取することができる。

周知文献3:特開2001-244147号公報
(周3a)「【請求項6】(a)コンデンサ素子を形成する工程,(b)板状の第1リードおよび第2リードが相対向するようにリードフレームを形成する工程,(c)前記リードフレームの裏面に前記第1リードおよび第2リード間の間隙部分を閉塞するようにテープを貼着する工程,(d)前記第1リード上にコンデンサ素子の外周壁の一面を導電性接着剤により固定する工程,(e)前記第2リード上に金属ワイヤの一端部をボンディングする工程,(f)該金属ワイヤの他端部と前記コンデンサ素子の陽極リードを電気的に接続する工程,および(g)前記第1リードおよび第2リード上のコンデンサ素子部を被覆する工程を有する固体電解コンデンサ素子の製法。」(【特許請求の範囲】)

(周3b)図1は,周知文献3に記載された発明による固体電解コンデンサの一実施形態の断面説明図であって,同図から,第1リード2及び第2リード3が平板状であることを看取することができる。

なお,審判請求人は,審判請求書の請求の理由において,「(3)本願発明が特許されるべき理由」として,「・・・即ち,本願発明では当該対向面に充填部を設けたことにより耐湿特性が改善できるという引用文献1にない有利な効果があります(段落0010を参照下さい)。垂直面は対向面より固体電解コンデンサ外周から遠いので,仮に充填部を垂直面に形成したとしても,耐湿特性の改善に対する寄与度は,充填部を対向面に形成したものと比較して小さいものとなります。この点に,充填部を対向面に形成したことの意義があります。」,及び,「・・・それに対して,本願発明では充填部は第1(又は第2)側面から後退した後退部に形成されているため,充填部を切断工具で切断することはありませんので,上述の剥離が生じることはありません。よって,充填部を垂直面ではなく対向面に設けたことによりリードフレームとハウジングとの密着強度を向上させることができます。」旨を主張するが,本願発明3は,「充填部」を発明特定事項として含まないから,審判請求人の前記主張は,本願発明3の進歩性の有無についての判断にあたっては,請求項の記載に基づかない主張であって採用することはできない。

5 むすび
以上のとおり,本願発明3は,引用例1に記載された発明と周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

したがって,本願は,他の請求項について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-02 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2005-342658(P2005-342658)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 秀介近藤 聡  
特許庁審判長 河口 雅英
特許庁審判官 加藤 浩一
市川 篤
発明の名称 固体電解コンデンサ  
代理人 ▲角▼谷 浩  
代理人 ▲角▼谷 浩  

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