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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1236263 |
審判番号 | 不服2008-18034 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-07-14 |
確定日 | 2011-05-06 |
事件の表示 | 特願2000-547723「ネットワーク内のデバイス-デバイス間命令及び制御のための方法及びシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月11日国際公開、WO99/57838、平成14年 5月21日国内公表、特表2002-514798〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、1999年5月7日(パリ条約に基づく優先権主張1998年5月7日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成20年4月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年7月14日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成20年8月8日付けで手続補正がなされたものである。 2.平成20年8月8日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成20年8月8日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] (1)補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。 【請求項1】 ネットワークを経て多数のデバイス間で命令し制御するための方法において、 (a) ネットワークに第1デバイスを接続する段階と、 (b) 第2デバイスを前記ネットワークに接続する段階とを含み、前記第2デバイスはネットワークに接続された少なくとも一つの他のデバイスにより前記第2デバイスを命令し制御するために構造化されたフォーマットでウェブアプリケーションインタフェース説明データを貯蔵し、 (c) 前記ネットワークを通じて前記第2デバイスから前記ウェブアプリケーションインタフェース説明データを受信する段階と、 (d) 前記第2デバイスの動作を制御するために前記ウェブアプリケーションインタフェース説明データを使用してネットワークを通じて前記第1デバイスから前記第2デバイスに制御及び命令データを伝送する段階とをさらに含み、 前記ウェブアプリケーションインタフェース説明データは、XMLフォーマットまたはHTMLフォーマットを有する方法。 本件補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ウェブアプリケーションインタフェース説明データ」について「XMLフォーマットまたはHTMLフォーマット」との限定を付加し、該ウェブアプリケーションインタフェース説明データの「貯蔵」について「構造化されたフォーマットで」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)刊行物 刊行物1.特開平7-44290号公報 刊行物2.道本健二,“解説XML あらゆるプログラムがHTMLで通信し始める”,日経バイト,第175号,(1998年2月22日),pp.212-217 (2-1)刊行物1の記載 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1には、図面と共に、以下の事項が記載されている。 (ア) 【0010】まず本発明では、マルチメディア機器を、個々にオブジェクトとしてとらえ、コントローラはそれらのオブジェクトを統合的に管理するというシステム制御手法を用いている。 【0011】個々のオブジェクトは、コントローラに管理される為に、自身が持っている機能・コントロール手段をコントローラに送りだす機能を有している。これによつて今までの様に予めコントローラ側に制御プログラムを準備する必要がなくなり、単にコントローラと接続するだけで制御を実現することが出来る。 (イ) 【0023】複数のマルチメデイア機器はそれぞれ4のLANを介して、コントローラと接続されている。今LAN はEthernetであるので、その通信プロトコル(TCP/IP)を処理するインターフェース部20が設けられている。これは専用LSI 等の利用で実現出来る。ここでは送られてきたメッセージそのものが取り出されたり、逆にコントローラへメッセージが送りだされる。メッセージの例として、Objective-Cでは、一般形は、以下で表現される。 【0024】[対象オブジェクト メソッド名:引数]他の言語では表現が異なるが、基本的には同様で、以下の指定が行われる (ウ) 【0036】図7はマルチメディア機器をマルチメディアコントローラに接続する前の状態を示す図である。図7において4はデジタルデータの通信を行うためのLAN、1はシステム全体の動作を制御するマルチメディアコントローラである。2はLAN4に接続されるマルチメディア機器の構造を一般化したものである。205はマルチメディアコントローラ1に常駐し、システム全体の管理を行うソフトウェアオブジェクト(以後オブジェクトと略す)であるシステムディレクターオブジェクトである。 (エ)図7には、マルチメディア機器2の中に、マルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイル1061とマルチメディア機器オブジェクト1064とが格納されていることが記載されている。 (オ) 【0039】1061はマルチメディア機器2をマルチメディアコントローラ1にLAN4を介して接続した際にマルチメディアコントローラ1内に生成されるマルチメディア機器代理オブジェクトの仕様を記述するマルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイルである。マルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイル1061はマルチメディア機器2の操作パネルの仕様を記述するマルチメディア機器コントロールパネルオブジェクト記述部1062とマルチメディア機器2へのデータ入出力の代理を行うデータ入出力代理オブジェクトの仕様を記述するデータ入出力代理オブジェクト記述部1063から構成されている。特にマルチメディア機器コントロールパネルオブジェクト記述部はマルチメディア機器2の操作をGUIで行うためのコントロールパネルを記述するGUI記述言語の機能を実現している。 (カ) 【0040】図8はLAN4にマルチメディア機器2が接続されたときの状態を説明する図である。図8において1068はマルチメディアコントローラ1内に生成されるオブジェクトでありマルチメディアコントローラ1内においてマルチメディア機器2の代理として機能するマルチメディア機器代理オブジェクト1068である。マルチメディア機器代理オブジェクト1068はマルチメディア機器2のコントロールパネルとして機能するマルチメディア機器コントロールパネルオブジェクト1069、データ入力の際にマルチメディア機器データ入力オブジェクト1066の代理として機能するマルチメディア機器データ入力代理オブジェクト1070、同様にマルチメディア機器データ出力オブジェクト1067の代理として機能するマルチメディア機器データ出力代理オブジェクト1071から構成される。 (キ)図13には、データ入出力代理オブジェクト記述ファイルの中に、第1データ入力代理オブジェクト情報から第mデータ入力代理オブジェクト情報及び第1データ出力代理オブジェクト情報から第nデータ出力代理オブジェクト情報が格納されていることが記載されている。 (ク) 【0051】図13は代理オブジェクト記述ファイルのデータ入出力代理オブジェクト記述部の構成を示している。図13において、650はデータ入出力代理オブジェクト記述部、651は第1入力代理オブジェクト情報であり655は第m入力代理オブジェクト情報である。各入力代理オブジェクト情報は自己のオブジェクトID652、リンク先のデータ入力オブジェクトのIDを示すリンク先対応データ入力オブジェクトID653、入力することができるファイルタイプのリストである整合ファイルタイプリスト654から構成されている。659は第1出力代理オブジェクト情報、663は第n出力代理オブジェクト情報である。各出力代理オブジェクトは自己のオブジェクトID660、対応するデータ出力オブジェクトのIDを示す対応データ出力オブジェクトID、出力することができるファイルタイプのリストである整合ファイルタイプリスト662で構成されている。 (ケ) 【0059】図16、図17、図18に従ってLAN4にマルチメディア機器の例であるオブジェクト化されたデジタルVTR203が接続されたときの動作を説明する。デジタルVTR203をLANに接続すると(636)システムディレクターオブジェクト205がデジタルVTR203の接続を認識する(637)。次にシステムディレクターオブジェクト205はデジタルVTR203にデバイスIDを発送する(638)。 【0060】次にシステムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR203よりデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210をロードする(639)。次にシステムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210に基づきデジタルVTR代理オブジェクト220をマルチメディアコントローラ1中に生成する(640)。その結果図18で示した接続状態になる。次にデジタルVTR代理オブジェクト220はマルチメディアコントローラ1のディスプレー228にデジタルVTR203のアイコン表示229を表示する(641)。その後利用者の指示を待つ(642)。 (コ)図18には、デジタルVTR代理オブジェクト220の中に、デジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222と、デジタルVTRデータ出力代理オブジェクト223とが格納されていることが記載されている。 (サ) 【0091】デジタルVTR203のデータ入力代理オブジェクト222とデータ出力代理オブジェクト223がマルチメディアコントローラ中に生成されるとあたかもデジタルVTRデータ入力オブジェクト208やデジタルVTRデータ出力オブジェクト209であるかのように機能する。例えば他のマルチメディア機器のファイルをデジタルVTRにコピーする場合システムディレクターオブジェクト205はデジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222に入力することができるファイルのタイプを問い合わせる。システムディレクターオブジェクト205の問い合わせにたいしデジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222の整合ファイルタイプ返答手段は、デジタルVTR203が受け付けることのできるファイルタイプを返答する。 【0092】コピーしようとするファイルのファイルタイプがその中に存在すればコピーしようとしているファイルを有するマルチメディア機器の出力代理オブジェクトからデジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222へのリンクが設定される。デジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222のリンク情報更新手段681はデジタルVTRデータ入力オブジェクト208にメッセージを送ってデジタルVTRデータ入力オブジェクト208のリンク更新手段を起動しデジタルVTRデータ入力オブジェクト208のリンク情報688を更新する。 【0093】同時にコピーしようとしているファイルを有するマルチメディア機器のデータ出力代理オブジェクトがデータ出力オブジェクトのリンク情報を更新するメッセージを送出しリンク情報が更新されることでコピーしようとしているファイルを有するマルチメディア機器のデータ出力オブジェクトとデジタルVTRデータ入力オブジェクト208のリンクが設定される。 【0094】その後、コピーしようとしているファイルを有するマルチメディア機器のデータ出力オブジェクトのデータ送信手段が起動され、コピーしようとしているファイルを有するマルチメディア機器のデータ出力オブジェクトはデジタVTRデータ入力オブジェクトにメッセージを送り、データ受信手段1033とファイル書き込み手段1032を起動することでファイルのコピーが行われる。すなわちコピーの指示等をマルチメディアコントローラ内のデータ入力代理オブジェクトとデータ出力代理オブジェクトに指示すると、データ入力代理オブジェクトとデータ出力代理オブジェクトはそれぞれマルチメディア機器本体のデータ入力オブジェクトとデータ出力オブジェクトにメッセージを送出し、マルチメディア機器間のデータのリンクを設定するため実際のデータのコピーなどに関してマルチメディアコントローラが直接関与する必要はない。 上記(サ)の第0094段落の「デジタVTRデータ入力オブジェクト」は、「デジタルVTRデータ入力オブジェクト」の誤記であると認められる。 以上の刊行物1の記載によれば、刊行物1には、次の発明(以下、「刊行物1記載発明」という。)が記載されていると認められる。 「マルチメディア機器を、個々にオブジェクトとしてとらえ、コントローラはそれらのオブジェクトを統合的に管理するというシステム制御手法であって、 個々のオブジェクトは、コントローラに管理される為に、自身が持っている機能・コントロール手段をコントローラに送りだす機能を有し、 複数のマルチメデイア機器はそれぞれLAN4を介して、コントローラと接続されており、 ここでは送られてきたメッセージそのものが取り出されたり、逆にコントローラへメッセージが送りだされたりし、 メッセージの例として、Objective-Cでは、一般形は、[対象オブジェクト メソッド名:引数]と表現され、 マルチメディア機器をマルチメディアコントローラに接続する前の状態では、マルチメディア機器2の中に、マルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイル1061とマルチメディア機器オブジェクト1064とが格納されており、 マルチメディア機器2をマルチメディアコントローラ1にLAN4を介して接続した際にマルチメディアコントローラ1内には、マルチメディア機器代理オブジェクトの仕様を記述するマルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイル1061が生成され、 マルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイル1061はマルチメディア機器2の操作パネルの仕様を記述するマルチメディア機器コントロールパネルオブジェクト記述部1062とマルチメディア機器2へのデータ入出力の代理を行うデータ入出力代理オブジェクトの仕様を記述するデータ入出力代理オブジェクト記述部1063から構成され、 LAN4にマルチメディア機器2が接続されたとき、 マルチメディアコントローラ1内にオブジェクト1068が生成され、 オブジェクト1068は、マルチメディアコントローラ1内においてマルチメディア機器2の代理として機能するマルチメディア機器代理オブジェクト1068であり、 マルチメディア機器代理オブジェクト1068は、データ入力の際にマルチメディア機器データ入力オブジェクト1066の代理として機能するマルチメディア機器データ入力代理オブジェクト1070、同様にマルチメディア機器データ出力オブジェクト1067の代理として機能するマルチメディア機器データ出力代理オブジェクト1071から構成され、 データ入出力代理オブジェクト記述ファイルの中に、第1データ入力代理オブジェクト情報から第mデータ入力代理オブジェクト情報及び第1データ出力代理オブジェクト情報から第nデータ出力代理オブジェクト情報が格納されており、 各入力代理オブジェクト情報は自己のオブジェクトID652、リンク先のデータ入力オブジェクトのIDを示すリンク先対応データ入力オブジェクトID653、入力することができるファイルタイプのリストである整合ファイルタイプリスト654から構成され、 各出力代理オブジェクトは自己のオブジェクトID660、対応するデータ出力オブジェクトのIDを示す対応データ出力オブジェクトID、出力することができるファイルタイプのリストである整合ファイルタイプリスト662で構成され、 LAN4にマルチメディア機器の例であるオブジェクト化されたデジタルVTR203が接続されたとき、 デジタルVTR203をLANに接続すると、 システムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR203よりデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210をロードし、 システムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210に基づきデジタルVTR代理オブジェクト220をマルチメディアコントローラ1中に生成し、 デジタルVTR代理オブジェクト220の中に、デジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222と、デジタルVTRデータ出力代理オブジェクト223とが格納され、 コピーの指示等をマルチメディアコントローラ内のデータ入力代理オブジェクトとデータ出力代理オブジェクトに指示すると、データ入力代理オブジェクトとデータ出力代理オブジェクトはそれぞれマルチメディア機器本体のデータ入力オブジェクトとデータ出力オブジェクトにメッセージを送出し、マルチメディア機器間のデータのリンクを設定するため実際のデータのコピーなどに関してマルチメディアコントローラが直接関与する必要はない システム制御手法。」 (3)対比 本願補正発明と刊行物1記載発明とを以下で対比する。 刊行物1記載発明は、「マルチメディア機器を、個々にオブジェクトとしてとらえ、コントローラはそれらのオブジェクトを統合的に管理するというシステム制御手法」であり、「複数のマルチメデイア機器はそれぞれ4のLANを介して、コントローラと接続」されているので、刊行物1記載発明と本願補正発明とは、「ネットワークを経て多数のデバイスを命令し制御するための方法」である点で一致する。 刊行物1記載発明の「マルチメディア機器」は、制御される側なので、本願補正発明の「第2デバイス」に相当する。 そして、刊行物1記載発明では「LAN4にマルチメディア機器2が接続」されること、及び「LAN4にマルチメディア機器の例であるオブジェクト化されたデジタルVTR203が接続」されることが記載されているから、刊行物1記載発明と本願補正発明とは「第2デバイスを前記ネットワークに接続する段階を含」む点で一致する。 刊行物1記載発明は、「マルチメディア機器2の中に、マルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイル1061とマルチメディア機器オブジェクト1064とが格納されており」、「システムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210に基づきデジタルVTR代理オブジェクト220をマルチメディアコントローラ1中に生成し」、「デジタルVTR代理オブジェクト220の中に、デジタルVTRデータ入力代理オブジェクト222と、デジタルVTRデータ出力代理オブジェクト223とが格納され」、「コピーの指示等をマルチメディアコントローラ内のデータ入力代理オブジェクトとデータ出力代理オブジェクトに指示すると、データ入力代理オブジェクトとデータ出力代理オブジェクトはそれぞれマルチメディア機器本体のデータ入力オブジェクトとデータ出力オブジェクトにメッセージを送出」ものであるから、刊行物1記載発明の「デジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル」は、ネットワークに接続された他の機器によりマルチメディア機器を命令し制御するためのアプリケーションインタフェースを説明するものであると理解できる。 してみると、刊行物1記載発明と本願補正発明とは、「前記第2デバイスはネットワークに接続された少なくとも一つの他の機器により前記第2デバイスを命令し制御するためにアプリケーションインタフェース説明データを貯蔵」する点、及び、「前記第2デバイスの動作を制御するために前記アプリケーションインタフェース説明データを使用してネットワークを通じて前記他の機器から前記第2デバイスに制御及び命令データを伝送する段階とをさらに含」む点で一致する。 刊行物1記載発明では、「デジタルVTR203をLANに接続すると」、「システムディレクターオブジェクト205はマルチメディア機器代理オブジェクト生成手段1047を用いてデジタルVTR203よりデジタルVTR代理オブジェクト記述ファイル210をロード」するものであるから、刊行物1記載発明と本願補正発明とは「前記ネットワークを通じて前記第2デバイスから前記アプリケーションインタフェース説明データを受信する段階」を含んでいる点で一致する。 すると、本願補正発明と刊行物1記載発明との一致点及び相違点は、以下のとおりである。 〈一致点〉 「ネットワークを経て多数のデバイスを命令し制御するための方法において、 (b) 第2デバイスを前記ネットワークに接続する段階を含み、前記第2デバイスはネットワークに接続された少なくとも一つの他の機器により前記第2デバイスを命令し制御するためにアプリケーションインタフェース説明データを貯蔵し、 (c) 前記ネットワークを通じて前記第2デバイスから前記アプリケーションインタフェース説明データを受信する段階と、 (d) 前記第2デバイスの動作を制御するために前記アプリケーションインタフェース説明データを使用してネットワークを通じて前記他の機器から前記第2デバイスに制御及び命令データを伝送する段階とをさらに含む、方法。」である点。 〈相違点1〉 本願補正発明は「第1デバイス」が制御側機器となっているため「多数のデバイス間で命令し制御する」ものであり、かつ、「ネットワークに第1デバイスを接続する段階」を有しているのに対して、刊行物1記載発明は「マルチメディアコントローラ」が制御側機器となってデバイスの制御のための命令を発しているから「デバイス間で命令し制御」するものではなく、かつ、「ネットワークにマルチメディアコントローラを接続する段階」を有しているか否かが不明である点。 〈相違点2〉 本願補正発明の「アプリケーションインタフェース説明データ」は、「構造化されたフォーマット」の「ウェブアプリケーションインタフェース説明データ」であって、「XMLまたはHTMLフォーマットを有する」ものであるのに対し、刊行物1記載発明の「アプリケーションインタフェース説明データ」は、構造化されたフォーマットではなく、ウェブアプリケーションインタフェース説明データでもなく、かつ、XML又はHTMLフォーマットを有するものでもない点。 (4)判断 (4-1)相違点1について 刊行物1記載発明は必ずマルチメディアコントローラを介してマルチメディア機器が制御されるシステム構造となっているが、コピーなどに関しては、一度マルティメディア機器間のリンクが設定されてしまえば、「実際のデータのコピーなどに関してマルチメディアコントローラが直接関与する必要はない」ものである。 そして、実際のデータのコピーに際しても、コピーが成功したか否かを確認するなど、リンクされたマルチメディア機器間での制御がなおも必要であることは、当業者にとって自明のことである。 してみれば、刊行物1記載発明において、マルチメディアコントローラと同等の制御の仕組み(他のマルティメディア機器からマルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイルを取得して、それに基づいてマルチメディア機器代理オブジェクトを生成して他のマルチメディア機器を制御する仕組み)をマルチメディア機器にも設け、マルチメディア機器間の制御はマルチメディアコントローラを介さずとも済むように構成することは、マルチメディアコントローラへのトラフィックやマルチメディア機器に搭載するプログラム量等を考慮し、当業者が適宜設計すべき事項に過ぎない。 そして、制御機器をネットワークに接続することは、当然に行われることに過ぎない。 (4-2)相違点2について 刊行物1記載発明のマルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイルは、「マルチメディア機器2へのデータ入出力の代理を行うデータ入出力代理オブジェクトの仕様を記述するデータ入出力代理オブジェクト記述部1063から構成され」、「データ入出力代理オブジェクト記述ファイルの中に、第1データ入力代理オブジェクト情報から第mデータ入力代理オブジェクト情報及び第1データ出力代理オブジェクト情報から第nデータ出力代理オブジェクト情報が格納されており」、「各入力代理オブジェクト情報は自己のオブジェクトID652、リンク先のデータ入力オブジェクトのIDを示すリンク先対応データ入力オブジェクトID653、入力することができるファイルタイプのリストである整合ファイルタイプリスト654から構成され」、「各出力代理オブジェクトは自己のオブジェクトID660、対応するデータ出力オブジェクトのIDを示す対応データ出力オブジェクトID、出力することができるファイルタイプのリストである整合ファイルタイプリスト662で構成され」ているものである。 してみると、刊行物1記載発明のマルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイルは、入力代理オブジェクトのオブジェクトID、リンク先対応データ入力オブジェクトID、入力に関する整合ファイルタイプリスト、出力代理オブジェクトのオブジェクトID、対応データ出力オブジェクトID及び出力に関する整合ファイルタイプリストの情報から構成されている。 そして、これらの情報は、ID又は、ファイルタイプのリストという型式のデータであるから、このようなデータを記述するために、データの値そのものと、データの意味(属性)とがわかるような記述方法、例えば周知のマークアップ記述言語を用いることは、当業者ならば通常に行うことである。 周知のマークアップ記述言語の例としては、例えばHTMLやXMLが知られており、HTMLやXMLが構造化されたフォーマットを持つこと、及び、HTMLやXMLをやり取りするアプリケーションがウェブアプリケーションと呼ばれることも周知である。 さらに、コンピュータ間で送受されるデータにHTML又はXMLを用い、「表示/印刷からプログラミング、そしてデータ通信/データベース管理へと拡張」することも周知である(例えば、刊行物2の第212頁図1の見出しを参照)。 以上から、刊行物1記載発明のマルチメディア機器代理オブジェクト記述ファイルすなわちアプリケーション説明データを、HTMLやXMLフォーマットによって構造化し、ウェブアプリケーション説明データとすることは、当業者が容易になし得る。 (4-3)本願補正発明の効果について 本願補正発明の全体を総合してみても、その効果は、刊行物1記載発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。 (4-4) 上記(4-1)から(4-3)のとおり、本願補正発明は、刊行物1記載発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明について 平成20年8月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成19年10月18日付け誤訳訂正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 ネットワークを経て多数のデバイス間で命令し制御するための方法において、 (a) ネットワークに第1デバイスを接続する段階と、 (b) 第2デバイスを前記ネットワークに接続する段階とを含み、前記第2デバイスはネットワークに接続された少なくとも一つの他のデバイスにより前記第2デバイスを命令し制御するためにウェブアプリケーションインタフェース説明データを貯蔵し、 (c) 前記ネットワークを通じて前記第2デバイスから前記ウェブアプリケーションインタフェース説明データを受信する段階と、 (d) 前記第2デバイスの動作を制御するために前記ウェブアプリケーションインタフェース説明データを使用してネットワークを通じて前記第1デバイスから前記第2デバイスに制御及び命令データを伝送する段階とをさらに含む方法。」 (1)刊行物 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物、及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。 (2)対比・判断 本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「ウェブアプリケーションインタフェース説明データ」の限定事項である「XMLフォーマットまたはHTMLフォーマット」との構成を省き、該ウェブアプリケーションインタフェース説明データの「貯蔵」の限定事項である「構造化されたフォーマットで」との構成を省いたものである。 そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、上記刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、刊行物1記載発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1記載発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-26 |
結審通知日 | 2010-11-30 |
審決日 | 2010-12-14 |
出願番号 | 特願2000-547723(P2000-547723) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 石井 茂和 |
特許庁審判長 |
大野 克人 |
特許庁審判官 |
安久 司郎 丸山 高政 |
発明の名称 | ネットワーク内のデバイス-デバイス間命令及び制御のための方法及びシステム |
代理人 | 志賀 正武 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |
代理人 | 渡邊 隆 |