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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1236273
審判番号 不服2008-28572  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-11-07 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2002- 97113「2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置及びその駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 1月 8日出願公開、特開2003- 5729〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯

本願は、平成14年3月29日の特許出願(パリ条約による優先権主張:平成13年6月7日、平成13年10月17日、大韓民国)であって、その後の手続きの経緯は以下のとおりである。

平成19年11月13日 拒絶理由通知(同年11月16日発送)
平成20年 3月17日 意見書・手続補正書
平成20年 8月 5日 拒絶査定(同年8月11日送達)
平成20年11月 7日 本件審判請求、手続補正書(以下、「本件補正」という。)
平成21年 1月16日 手続補正書(方式)(審判請求書の請求の理由)
平成21年12月25日 審尋(平成22年1月6日発送)
平成22年 4月 6日 回答書


2 本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
2-1 本件補正の内容
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし12に、

「【請求項1】 液晶パネルと、
制御信号とデータ信号を発生するシステム駆動部と、
前記システム駆動部から入力される信号で前記液晶パネルを駆動するためのタイミング信号を生成し出力するタイミングコントローラと、
前記タイミングコントローラから前記タイミング信号が入力され、前記データ信号が入力されて前記液晶パネルに画像を表示するゲートドライバ及びデータドライバと、
前記タイミングコントローラから前記タイミング信号を前記データドライバに供給するためのデータ整列部と、
前記制御信号が入力されて前記ゲートドライバ及びデータドライバに前記タイミング信号を供給するためのタイミング制御信号発生部と、
前記システム駆動部から発生した制御信号が入力され、前記ゲートドライバ及びデータドライバに極性制御信号を供給するための極性制御信号発生部を備えており、
前記極性制御信号発生部は、液晶の極性反転可否をチェックしてこれに対応して反転させる液晶極性反転駆動部と、奇数データのデータ遷移をチェックしてこれに対応してデータの極性を反転させる奇数データ極性反転駆動部と、偶数データのデータ遷移をチェックしてこれに対応してデータの極性を反転させる偶数データ極性反転駆動部とを具備すること
を特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項2】 前記奇数データ極性反転駆動部は、前記奇数データなどのデータ遷移をチェックする奇数データ遷移部と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する奇数データ極性反転信号合算部と、前記奇数データ遷移部と前記奇数データ極性反転信号合算部から信号を受けて出力データを反転させる
信号を出力する奇数データ極性反転信号出力部とを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項3】 前記偶数データ極性反転駆動部は、前記偶数データなどのデータ遷移をチェックする偶数データ遷移部と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する偶数データ極性反転信号合算部と、前記偶数データ遷移部と前記偶数データ極性反転信号合算部から信号を受けて出力データを反転させる信号を出力する偶数データ極性反転信号出力部とを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項4】 前記奇数データ遷移部は、現在のデータと以前のデータを比較してこれに対応してデータ遷移をチェックする二つのフリップフロップとエクスクルーシブ論理合のゲートを具備することを特徴とする請求項2記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項5】 前記偶数データ遷移部は、現在のデータと以前のデータを比較してこれに対応してデータ遷移をチェックする二つのフリップフロップとエクスクルーシブ論理合のゲートを具備することを特徴とする請求項3記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項6】 前記奇数データ極性反転信号合算部は、前記データ遷移部から前記データ遷移のあるデータ数を合算する合算器と、前記合算されたデータ数が基準値を超えるかをチェックする過半数検出器とを具備することを特徴とする請求項2記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項7】 前記偶数データ極性反転信号合算部は、前記データ遷移部から前記データ遷移のあるデータ数を合算する合算器と、前記合算されたデータ数が基準値を超えるかをチェックする過半数検出器とを具備することを特徴とする請求項3記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項8】 前記奇数データ極性反転信号出力部は、前記データ極性反転信号合算部からの極性反転信号を受けて出力データを反転させるためのマルチプレクサとを具備することを特徴とする請求項2記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項9】 前記偶数データ極性反転信号出力部は、前記データ極性反転信号合算部からの極性反転信号を受けて出力データを反転させるためのマルチプレクサとを具備することを特徴とする請求項3記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項10】 入力データを奇数及び偶数データに分割する段階と、前記奇数及び偶数データを奇数及び偶数データ極性反転駆動部にそれぞれ入力する段階と、前記奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階と、前記決定された数に対応して奇数及び偶数データの極性を反転させる段階を含み、
前記奇数及び偶数データの極性を反転させる段階は、前記奇数及び偶数データ遷移があるかをチェックするため、奇数及び偶数データと以前の奇数及び偶数データを比較する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階を含むことを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。

【請求項11】 前記全体の入力データのビットの数は18であることを特徴とする請求項10記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。

【請求項12】 前記奇数及び偶数データのビットの数はそれぞれ9であることを特徴とする請求項10記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。」

とあったものを、

「【請求項1】 液晶パネルと、
制御信号とデータ信号を発生するシステム駆動部と、
前記システム駆動部から入力される信号で前記液晶パネルを駆動するためのタイミング信号を生成し出力するタイミングコントローラと、
前記タイミングコントローラから前記タイミング信号が入力され、前記データ信号が入力されて前記液晶パネルに画像を表示するゲートドライバ及びデータドライバと、
前記タイミングコントローラから前記タイミング信号を前記データドライバに供給するためのデータ整列部と、
前記制御信号が入力されて前記ゲートドライバ及びデータドライバに前記タイミング信号を供給するためのタイミング制御信号発生部と、
前記システム駆動部から発生した制御信号が入力され、前記ゲートドライバ及びデータドライバに極性制御信号を供給するための極性制御信号発生部を備えており、
前記極性制御信号発生部は、液晶の極性反転可否をチェックしてこれに対応して反転させる液晶極性反転駆動部と、奇数データのデータ遷移をチェックしてこれに対応してデータの極性を反転させる奇数データ極性反転駆動部と、偶数データのデータ遷移をチェックしてこれに対応してデータの極性を反転させる偶数データ極性反転駆動部とを具備し、
前記奇数データ極性反転駆動部は、前記奇数データなどのデータ遷移をチェックする奇数データ遷移部と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する奇数データ極性反転信号合算部と、前記奇数データ遷移部と前記奇数データ極性反転信号合算部から信号を受けて出力データを反転させる信号を出力する奇数データ極性反転信号出力部とを具備し、
前記偶数データ極性反転駆動部は、前記偶数データなどのデータ遷移をチェックする偶数データ遷移部と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する偶数データ極性反転信号合算部と、前記偶数データ遷移部と前記偶数データ極性反転信号合算部から信号を受けて出力データを反転させる信号を出力する偶数データ極性反転信号出力部とを具備することを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項2】 前記奇数データ遷移部は、現在のデータと以前のデータを比較してこれに対応してデータ遷移をチェックする二つのフリップフロップとエクスクルーシブ論理合のゲートを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項3】 前記偶数データ遷移部は、現在のデータと以前のデータを比較してこれに対応してデータ遷移をチェックする二つのフリップフロップとエクスクルーシブ論理合のゲートを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項4】 前記奇数データ極性反転信号合算部は、前記データ遷移部から前記データ遷移のあるデータ数を合算する合算器と、前記合算されたデータ数が基準値を超えるかをチェックする過半数検出器とを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項5】 前記偶数データ極性反転信号合算部は、前記データ遷移部から前記データ遷移のあるデータ数を合算する合算器と、前記合算されたデータ数が基準値を超えるかをチェックする過半数検出器とを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項6】 前記奇数データ極性反転信号出力部は、前記データ極性反転信号合算部からの極性反転信号を受けて出力データを反転させるためのマルチプレクサとを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項7】 前記偶数データ極性反転信号出力部は、前記データ極性反転信号合算部からの極性反転信号を受けて出力データを反転させるためのマルチプレクサとを具備することを特徴とする請求項1記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置。

【請求項8】 入力データを奇数及び偶数データに分割する段階と、前記奇数及び偶数データを奇数及び偶数データ極性反転駆動部にそれぞれ入力する段階と、前記奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階と、前記決定された数に対応して奇数及び偶数データの極性を反転させる段階を含み、
前記奇数及び偶数データの極性を反転させる段階は、前記奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階を含むことを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。

【請求項9】 前記全体の入力データのビットの数は18であることを特徴とする請求項8記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。

【請求項10】 前記奇数及び偶数データのビットの数はそれぞれ9であることを特徴とする請求項8記載の2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。」
に補正しようとするものである。
(注:下線は補正箇所を明示するために請求人が付したものである。)

2-2 本件補正の目的
方法の発明が記載された本件補正後の請求項8ないし10は、同じく方法の発明が記載された本件補正前の請求項10ないし12を補正したものである。そこで、本件補正のうち本件補正前の請求項10についてする補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、「改正前特許法」という。)第17条の2第4項に掲げる事項のいずれを目的とするものであるのかについて、以下に検討する。

本件補正前の請求項10についてする補正は、本件補正前の請求項10に「前記奇数及び偶数データ遷移があるかをチェックするため、奇数及び偶数データと以前の奇数及び偶数データを比較する段階」とあったものを、「前記奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階」に補正する補正事項からなるものであって、「データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階」を追加する限定を含むものである。
したがって、本件補正は、改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とする補正事項を含む。

2-3 独立特許要件
そこで、本件補正後の請求項8に記載された事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかどうか(改正前特許法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に適合するか)について、以下に検討する。

2-3-1 特許法第36条第6項
本件補正後の特許請求の範囲の請求項8の記載が、特許法第36条第6項の規定を満たすか否かを検討する。

はじめに、本件補正後の請求項8の記載を分説すると、以下のとおりである。(当審注:符号a、b等は当審で付したものであり、下線部分が補正箇所である。)

a:入力データを奇数及び偶数データに分割する段階と、
b:前記奇数及び偶数データを奇数及び偶数データ極性反転駆動部にそれぞれ入力する段階と、
c:前記奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階と、前記決定された数に対応して奇数及び偶数データの極性を反転させる段階を含み、
d:前記奇数及び偶数データの極性を反転させる段階は、
d-1:前記奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、
d-2:前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階と、
d-3:前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、
d-4:合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階を
e:含むことを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。

本件補正により補正されたd-1、d-2を含む極性を反転させる段階の各発明特定事項d-1ないしd-4に対応する発明の詳細な説明を参酌すると、発明の詳細な説明には、以下の記載がある。

「【0059】
先記REV1駆動部(70)は、奇数番目データなどのデータ遷移をチェックする第1データ遷移部(72)と、データ遷移によるデータ極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定するREV1信号合算部(74)と、データ遷移チェック部(72)とREV1信号合算部(74)から信号を受けて出力データを反転させる信号を出力するREV信号出力部(76)とを具備する。
【0060】
第1データ遷移チェック部(72)は、二つのフリップフロップ(71、73)と、XOR(75)ゲートで構成される。現在データフリップフロップ(71)と以前データフリップフロップ(73)に入力される各データを比較してデータのハイ(1)とロー(0)の変化をチェックする。万が一データ遷移があると第1データ遷移チェック部(72)の出力はハイ(1)に、遷移がないとロー(0)に出力される。この際データなどは偶数と奇数に関係なく順次的に比較する。
【0061】
REV1信号合算部(74)は、R、G、Bそれぞれの奇数(Odd)番目データ各18個に対して第1データ遷移チェック部(72)を通してデータ遷移があるデータの数を合算器(ADDER、77)を使用して足し合わせる。この際、データ遷移がある際の出力であるハイ(1)の数字がR、G、Bデータ総数の半分である9つを超過するかをチェクする。万が一ハイ(1)の数字が9つを超過する場合、REVがハイ(1)になり、9つ以下である場合にはロー(0)になる。
【0062】
REV1信号出力部(76)は、2×1マルチプレクサ(79)を使用してREV信号合算部(74)の出力がハイ(1)である場合は出力データを反転させる信号をデータドライバ(53)に供給する。即ち、データ遷移される数が半分(9つ)を越える場合、遷移される量を減らすために出力データを反転させ{18-(9以上のデータ遷移される数)}ほど出力データが遷移されるようにする。」

また、【0064】ないし【0067】には、偶数番目データに対し、同様の処理を行うことが記載されている。

上記記載によると、発明の詳細な説明には、奇数番目データに関して、
ア:第1データ遷移部(72)は、「データ遷移をチェック」し、
イ:REV1信号合算部(74)は、「データ遷移があるデータの数を合算器(ADDER、77)を使用して足し合わせ」、
「データ遷移がある際の出力であるハイ(1)の数字がR、G、Bデータ総数の半分である9つを超過する」「場合、」その出力である「REVがハイ(1)になり、9つ以下である場合にはロー(0)にな」り、
ウ:REV1信号出力部(76)は、「REV信号合算部(74)の出力がハイ(1)である場合は出力データを反転させる信号をデータドライバ(53)に供給する」
動作を、この順に行うことが記載されている。また、偶数番目データに関して、同様の動作を行うことが記載がされている。

そこで、本件補正後の請求項8に記載された発明特定事項について検討すると、データの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階d-2が、データ数を合算する段階d-3に先行する段階として特定されている。このようにデータ数を合算する前に出力レベルを決定することは技術的に矛盾する。また、同請求項8に係る発明は、上記アないしウで説示したことから、発明の詳細な説明に記載した発明ではない。
したがって、上記請求項8の記載は、特許法第36条第6項第1号及び同第2号の規定する要件を満たすものではないから、本件補正後の請求項8に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、特許出願の際独立して特許を受けることができない。


2-3-2 特許法第29条の2
(a)上記「2-3-1」で検討したとおり、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないから、本件補正は却下すべきものである。仮に、上記データを合算する段階d-3が出力レベルを決定する段階d-2に先行すると解した場合についても、念のため、以下に検討する。

(b)本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項8に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「入力データを奇数及び偶数データに分割する段階と、前記奇数及び偶数データを奇数及び偶数データ極性反転駆動部にそれぞれ入力する段階と、前記奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階と、前記決定された数に対応して奇数及び偶数データの極性を反転させる段階を含み、
前記奇数及び偶数データの極性を反転させる段階は、前記奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階を含むことを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。」

(c)先願発明
原審の拒絶の理由で引用され、本願の最先の優先日前の他の特許出願であって、本願の最先の優先日後に出願公開された特願2000-144973号(以下、「先願」という。出願人:株式会社アドバンスト・ディスプレイ、発明者:西村 優、出願日:平成12年5月17日、公開日:平成13年11月22日、特開2001-324965号公報参照。)の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下「先願明細書等」という。)には、以下の記載がある。

(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像データを符号化する符号化回路、この符号化回路によって符号化された画像データを複数の信号線を介して伝送する制御回路、この制御回路によって伝送される画像データを復号化すると共に、復号化された画像データに基づき駆動信号を出力する液晶駆動回路、この液晶駆動回路の出力する駆動信号により画像を表示する表示部を備えたことを特徴とする液晶表示装置。
【請求項2】 符号化回路は、画像データの第一の極性から第二の極性への同時変化が少なくなるように構成されたことを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置。

・・・

【請求項4】 伝送される画像データは、同一時点で過半数の画像データが同時変化しないように符号化されることを特徴とする請求項1または請求項2記載の液晶表示装置。
【請求項5】 符号化回路は、複数に分割されると共に、分割された各符号化回路に対応して、画像データを伝送する信号線が分割されていることを特徴とする請求項1?請求項4のいずれか一項記載の液晶表示装置。
【請求項6】 符号化回路は、画像データの奇数列及び偶数列に対応するように分割されていることを特徴とする請求項5記載の液晶表示装置。」

(2)「【0004】
【発明が解決しようとする課題】
多くのデータがパラレルに伝送された場合、信号線からの放射(不要輻射)や同時変化による電源、グランドからの放射が多くなり、EMI(Electromagnetic Interference)が問題となる。このため、放射を低減するためにタイミングコントローラ2から複数のデータ信号を異なる位相で出力することが考えられるが、データの位相マージンが減少し、セットアップタイムやホールドタイムを確保できなくなる。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、全てのデータに対して位相マージンを十分確保でき、信号線や電源、グランドからの放射を低減することができる液晶表示装置を得ることを目的としている。」

(3)「【0019】
次に、図4について説明する。
図4は、データ符号化回路11により、フラグを別のデータ線に設け、時間軸上の同一位置すなわち同一時点でのデータ極性反転数が、過半数を超えた場合、過半数を超えないようにデータを反転させ、フラグを立てる。復号化回路12では、フラグに従いデータを再度反転させ、もとのデータに戻す。
【0020】
実施の形態2によれば、入力データに対応して、出力する複数データの同時変化数が少なくなるように、入力データを変換するとともに、変換したことを示すフラグを付加して出力するデータ符号化機能を持つデータ符号化回路と、液晶駆動回路内でデータに付加されたフラグに従って、入力された複数データを元のデータに戻す復号化機能を持つ液晶駆動回路を有することにより、多くのデータがパラレル伝送される場合のデータの同時変化を減らすことができ、信号線からの不要輻射や電源、グランドからの放射を低減することができる。」

(4)「【0024】
実施の形態4.
図6は、この発明の実施の形態4による液晶表示装置のデータ符号化回路及び復号化回路を示す概略図である。
図6において、11はデータを符号化するデータ符号化回路で、偶数列と奇数列でデータを二分割して符号化するよう二つに分けられている。12は符号化されたデータを復号化する復号化回路であり、偶数列と奇数列のデータを復号化するよう二分割されている。
実際の液晶表示装置では、表示される画面の近傍のデータが似ている場合が多く、偶数列と奇数列でデータを二分割することで、効率よく同時変化数を判定し削減することができる。
【0025】
実施の形態4によれば、複数のデータを表示列の奇数列及び偶数列に分割し、分割したデータ毎にデータの符号化及び復号化することにより、データの変化が比較的同時に発生するブロック毎に符号化し、多くのデータがパラレル伝送される場合のデータの同時変化をさらに低減することができ、信号線からの不要輻射や同時スイッチングによる電源、グランドからの放射をさらに低減することができる。」

以上の記載事項(1)ないし(4)と図面から、先願明細書等に記載された発明を認定する。

(ア)上記(4)の「【0024】実施の形態4.・・・、11はデータを符号化するデータ符号化回路で、偶数列と奇数列でデータを二分割して符号化するよう二つに分けられている。」との記載から、実施の形態4による液晶表示装置において、データ符号化回路11の入力データを奇数列及び偶数列に分割することが読み取れる。

(イ)上記(4)の「図6において、11はデータを符号化するデータ符号化回路で、偶数列と奇数列でデータを二分割して符号化するよう二つに分けられている。」との記載から、実施の形態4による液晶表示装置において、奇数列及び偶数列で分割されたデータをデータ符号化回路11の分割された2つの符号化回路(図6)にそれぞれ入力することが読み取れる。

(ウ)上記(4)の「【0024】実施の形態4.・・・、偶数列と奇数列でデータを二分割することで、効率よく同時変化数を判定し削減することができる。」との記載から、奇数列及び偶数列に分割された入力データの同時変化数を判定することが読み取れる。

(エ) 上記(3)の「図4は、データ符号化回路11により、フラグを別のデータ線に設け、時間軸上の同一位置すなわち同一時点でのデータ極性反転数が、過半数を超えた場合、過半数を超えないようにデータを反転させ、フラグを立てる。」との記載から、実施の形態2のデータ符号化回路11により、同一時点でのデータ極性反転数が全体の入力データAないしCのビット(図4)の過半数を超えた場合、過半数を超えないように入力データの極性を反転させ、フラグを立てることが読み取れる。また、全体の入力データAないしCのビットの過半数以下の場合、入力データを反転なく出力することは自明である。

(オ)上記(1)の記載(特に、請求項4ないし6を参照。)や先願明細書等全体の記載から、実施の形態4によるデータ符号化回路11の2つの符号化回路は、上記実施の形態2によるデータ符号化回路11と同様のデータ符号化を行うことが読み取れる。
そして、上記(イ)ないし(エ)で述べた読み取れる事項や自明な事項をまとめると、奇数列及び偶数列のデータを2つの符号化回路にそれぞれ入力し、奇数列及び偶数列のデータ極性反転数を判定し、それぞれのデータ極性反転数がそれぞれの全体の入力データのビットの過半数を超えた場合、奇数列及び偶数列のデータの極性を反転させ、フラグを立て、それぞれのデータ極性反転数がそれぞれの全体の入力データのビットの過半数以下の場合、反転なく入力データを出力させることが読み取れる。

(カ)上記(1)の記載(特に、請求項1、2、4ないし6を参照。)、上記(4)の「【0024】実施の形態4.図6は、この発明の実施の形態4による液晶表示装置のデータ符号化回路及び復号化回路を示す概略図である。・・・【0025】実施の形態4によれば、複数のデータを表示列の奇数列及び偶数列に分割し、分割したデータ毎にデータの符号化及び復号化する」の記載や先願明細書等全体の記載から、奇数列及び偶数列に分割したデータ毎に符号化及び復号化して液晶表示装置を駆動する、液晶表示装置の駆動方法が読み取れる。

してみると、上記技術的事項(ア)ないし(カ)を総合勘案すれば、先願明細書等には、

「入力データを奇数列及び偶数列に分割する段階と、奇数列及び偶数列のデータをデータ符号化回路11の2つの符号化回路にそれぞれ入力する段階と、奇数列及び偶数列のデータ極性反転数を判定する段階と、
それぞれのデータ極性反転数がそれぞれの全体の入力データのビットの過半数を超えた場合、奇数列及び偶数列のデータの極性を反転させ、フラグを立て、それぞれのデータ極性反転数がそれぞれの全体の入力データのビットの過半数以下の場合、反転なく入力データを出力させる段階を含むデータ符号化回路11を有する液晶表示装置の駆動方法。」
の発明(以下、「先願発明」という。)が記載されている。

(d)対比
本願補正発明と先願発明とを対比する。

まず、上記対比に当たり、本願補正発明の「データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階」は「奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階」に先行する段階として特定されている点は、上記「2-3-2(a)」のとおり、前記各段階が前後したものと解した。

また、
(ア)本願補正発明の「前記決定された数」は、その記載前に「決定」なる記載がなく、明確ではない。
(イ)本願補正発明の「奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階」及び「合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階」において、「合算されたデータ数」は奇数データ数と偶数データ数とをそれぞれ合算するものか、あるいは、奇数データ数と偶数データ数とを合算するものか、必ずしも明確ではない。
(ウ)本願補正発明の「全体の入力データ」は奇数データと偶数データのそれぞれを意味するものか、あるいは、奇数データと偶数データとを合わせた入力データを意味するものか、必ずしも明確ではない。
(エ)本願補正発明の「奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階」後にある「奇数及び偶数データの極性を反転させる段階」では、前記データ遷移のあるデータ数をチェックする段階と実質的に同じ段階(「前記奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数・・・段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、・・・」)を重ねて行うものとも解せるが、このように解すると、当該「(エ)」の項で指摘している本願補正発明の「奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階」の技術的意義が一義的なものといえなくなってしまう。

そこで、発明の詳細な説明を参酌し、

(ア)「決定された数」は、「奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数」と解釈し、
(イ)「奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階」は、「奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数をそれぞれ合算する段階」と解釈し、
(ウ)「合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階」は、「それぞれ合算されたデータ数がそれぞれの全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、それぞれ合算されたデータ数がそれぞれの全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階」と解釈し、
(エ)「前記奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階」は、「奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階及び奇数及び偶数データの極性を反転させる段階」に含まれる
と解釈して、上記対比をする。

(1)先願発明の「奇数列」、「偶数列」、「奇数列のデータ」、「偶数列のデータ」、「入力データを奇数列及び偶数列に分割する段階」、「判定する」は、それぞれ本願補正発明の「奇数」、「偶数」、「奇数データ」、「偶数データ」、「入力データを奇数及び偶数データに分割する段階」、「チェックする」に相当する。

(2)先願発明の「データ極性反転」、「データ極性反転数」は、それぞれ本願補正発明の「データ遷移」、「データ遷移のあるデータ数」に相当する。また、先願発明の「データ極性反転数」と、本願補正発明の「合算されたデータ数」とは、共に、「データ遷移のあるデータ数」の点で共通する。

(3)先願発明の「入力データのビットの過半数を越えた場合」、「入力データのビットの過半数以下の場合」は、それぞれ本願補正発明の「入力データのビットの半数を超えると」、「入力データのビットの半数以下であると」に相当する。

(4)先願発明の「フラグ」はデータ極性反転数に応じて入力データを反転させたことを示すものであって、「1」または「0」の値で出力されるものといえ、また、本願補正発明の「出力レベル」はデータ遷移によるデータ極性が変化される信号の数に応じた値で出力されるものといえるから、先願発明の「フラグを立て」るは、本願補正発明の「出力レベルを決定す」るに相当する。

(5)先願発明における液晶表示装置の「データ符号化回路11の2つの符号化回路」は、奇数列及び偶数列のデータをそれぞれ入力するものであり、データ極性を反転させるものであるから、本願補正発明の「奇数及び偶数データ極性反転駆動部」に相当する。
また、先願発明における「液晶表示装置」は前記データ符号化回路11がデータ極性を反転する2つの符号化回路を有するから、本願補正発明の「2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置」に相当する。

(6)先願発明の「奇数列及び偶数列のデータ極性反転数を判定する段階と、それぞれのデータ極性反転数がそれぞれの全体の入力データのビットの過半数を超えた場合、奇数列及び偶数列のデータの極性を反転させ、フラグを立て・・・る段階」と、本願補正発明の「奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階」とは、
「前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数をチェックする段階」の点で共通する。

(7)先願発明の「それぞれのデータ極性反転数がそれぞれの全体の入力データのビットの過半数を超えた場合、奇数列及び偶数列のデータの極性を反転させ、・・・、それぞれのデータ極性反転数がそれぞれの全体の入力データのビットの過半数以下の場合、反転なく入力データを出力させる段階」と、本願補正発明の「合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階」とは、
「データ遷移のあるデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、前記データ遷移のあるデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階」の点で共通する。

したがって、両者は、

「入力データを奇数及び偶数データに分割する段階と、前記奇数及び偶数データを奇数及び偶数データ極性反転駆動部にそれぞれ入力する段階と、前記奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階と、前記決定された数に対応して奇数及び偶数データの極性を反転させる段階を含み、
前記奇数及び偶数データの極性を反転させる段階は、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数をチェックする段階と、前記データ遷移のあるデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、前記データ遷移のあるデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階を含むことを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。」
の点で一致するが、以下の点で一応相違する。

[相違点1]
データ遷移のあるデータ数を得る際に、本願発明では奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階を含むのに対し、先願発明ではそのようなチェックする段階を含むのか否か不明な点。

[相違点2]
データ遷移のあるデータ数を得る際に、本願発明では奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階を含むのに対し、先願発明ではそのような合算する段階を含むのか否か不明な点。

(e)判断
以下、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
データ遷移のあるデータ数を得るため、データ遷移をチェックする段階を含むように構成することは周知の技術(例えば、特開2000-207077号公報(特に、「【0027】図6のトランジション検出セル(TDC)は直列接続された第2及び第3フリップフロップ(52、54)と、フリップフロップ(52、54)に蓄積されたビットデータなどを比較するエクスクルーシブオアゲート(Exclusive OR Gate)(EOX)とを具備する。第2及び第3フリップフロップ(52、54)はそれぞれインターフェース(34)からのデータクロック(DCLK)に同期してそれぞれn番目のデータとn-1番目のデータをラッチしている。エクスクルーシブオアゲート(EOX;56)は前記第2及び第3フリップフロップ(52、54)からラッチされたデータを受けてそれぞれのデータの値を比較してその比較結果によってトランジション検出信号(TS)を生成出力する。即ち前記エクスクルーシブオアゲート(56)は第2及び第3フリップフロップ(52、54)から″0″″0″または″1″″1″のデータが入力されるとデータトランジションがないことを表す″0″値のトランジション検出信号(TS)を出力し、″0″″1″または″1″″0″のデータが入力されるとデータトランジションを表す″1″値のトランジション検出信号(TS)を出力する。このような18個のトランジション検出セル(TDC1?TDC18)はそれぞれ1ビットずつのデータを受けてそれぞれ直前周期のデータと比較して各該当ビットのトランジション状態を検出してその検出信号(TS1?TS18)を図5の計数器(46)に出力する。」)の記載を参照。)に過ぎず、該周知の技術を参酌すれば、先願発明において、データ極性反転数を判定するため、奇数列及び偶数列データのデータ極性反転を判定する段階を含む構成として、上記相違点1に係る構成とすることは、課題解決の具体化手段における微差と言える。したがって、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

[相違点2]について
データ遷移のあるデータ数を得るため、データ遷移のあるデータ数を合算する段階を含むように構成することは周知の技術であり(例えば、上記特開2000-207077号公報(特に、【0028】の「計数器(46)はトランジション検出アレイ(44)からの18個のトランジション検出信号(TS1?TS18)の中の特定の論理値を有するトランジション検出信号(TS)の数を数えてトランジションビット数(VBN)として閾値比較器(48)に供給する。、上述した計数器(46)としては加算器(adder)を使用できる。」)、特開平4-303234号公報(特に、【0011】の「加算器」)の記載を参照。)、該周知の技術を参酌すれば、先願発明において合算する段階を含む構成として、上記相違点2に係る構成とすることは、課題解決の具体化手段における微差と言える。したがって、上記相違点2は実質的な相違点ではない。

以上のとおり、上記相違点1、2は、いずれも実質的な相違点ではないから、本願補正発明と先願発明とは実質的に同一である。そして、先願発明をした者が本願補正発明の発明者と同一の者であるとも、また、本願の出願の時にその出願人と先願の出願人とが同一の者であるともいえない。
よって、本願補正発明は、特許法第29条の2の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。


2-4 まとめ
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成20年3月17日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項10に係る発明は、特許請求の範囲の請求項10に記載された次のとおりのものである。

「入力データを奇数及び偶数データに分割する段階と、前記奇数及び偶数データを奇数及び偶数データ極性反転駆動部にそれぞれ入力する段階と、前記奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階と、前記決定された数に対応して奇数及び偶数データの極性を反転させる段階を含み、
前記奇数及び偶数データの極性を反転させる段階は、前記奇数及び偶数データ遷移があるかをチェックするため、奇数及び偶数データと以前の奇数及び偶数データを比較する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階を含むことを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。」
(以下、「本願発明」という。)


4 先願発明
原審の拒絶の理由で引用され、本願の最先の優先日前の他の特許出願であって、本願の最先の優先日後に出願公開された先願及び先願明細書等の記載事項は、上記「2-3-2(c)」に記載したとおりである。


5 対比
本願発明と先願発明とを対比する。

本願発明は、上記「2」で検討した本願補正発明における「前記奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階と、前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階」から、「前記データ遷移によるデータの極性が変化される信号の数を把握して出力レベルを決定する段階」との限定事項を削除し、上記「2-3-2(d)」の対比で相違点1とした「奇数及び偶数データ遷移をチェックする段階」を「前記奇数及び偶数データ遷移があるかをチェックするため、奇数及び偶数データと以前の奇数及び偶数データを比較する段階」としたものである。

上記「2-3-2(d)」(ア)ないし(ウ)で説示したものと同様に本願発明を解し、更に、
(エ’)本願発明の「奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階」後にある「奇数及び偶数データの極性を反転させる段階」では、前記データ遷移のあるデータ数をチェックする段階と実質的に同じ段階(「前記奇数及び偶数データ遷移があるかをチェックするため、・・・段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、・・・」)を重ねて行うものとも解せるが、このように解すると、当該「(エ’)」の項で指摘している本願発明の「奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階」の技術的意義が一義的なものといえなくなってしまうから、発明の詳細な説明を参酌し、
(エ’)「前記奇数及び偶数データ遷移があるかをチェックするため、奇数及び偶数データと以前の奇数及び偶数データを比較する段階と、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数を合算する段階と、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、合算されたデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階」は、「奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックする段階及び奇数及び偶数データの極性を反転させる段階」に含まれる
と解釈して検討すると、両者は、
「入力データを奇数及び偶数データに分割する段階と、前記奇数及び偶数データを奇数及び偶数データ極性反転駆動部にそれぞれ入力する段階と、前記奇数及び偶数データでデータ遷移のあるデータ数をチェックし、前記決定された数に対応して奇数及び偶数データの極性を反転させる段階を含み、
前記奇数及び偶数データの極性を反転させる段階は、前記奇数及び偶数データ遷移のある奇数及び偶数データ数をチェックする段階と、前記データ遷移のあるデータ数が全体の入力データのビットの半数を超えると奇数及び偶数データを反転させて、前記データ遷移のあるデータ数が全体の入力データのビットの半数以下であると反転なく入力データを出力させる段階を含むことを特徴とする2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置の駆動方法。」
の点で一致し、上記相違点2で一応相違するとともに、更に、以下の相違点1’で一応相違する。

[相違点1’]
データ遷移のあるデータ数が、全体の入力データのビットの半数を超えるか否かを判断する際に、本願発明では奇数及び偶数データ遷移があるかをチェックするため、奇数及び偶数データと以前の奇数及び偶数データを比較する段階を含むのに対し、先願発明ではこのような段階を含むのか否か不明な点。


6 判断
以下、上記相違点1’、2について検討する。

[相違点1’]について
データ遷移があるのかをチェックするために、データと以前のデータを比較する段階を含むように構成することは周知の技術(例えば、上記特開2000-207077号公報(特に、「【0027】図6のトランジション検出セル(TDC)は直列接続された第2及び第3フリップフロップ(52、54)と、フリップフロップ(52、54)に蓄積されたビットデータなどを比較するエクスクルーシブオアゲート(Exclusive OR Gate)(EOX)とを具備する。第2及び第3フリップフロップ(52、54)はそれぞれインターフェース(34)からのデータクロック(DCLK)に同期してそれぞれn番目のデータとn-1番目のデータをラッチしている。エクスクルーシブオアゲート(EOX;56)は前記第2及び第3フリップフロップ(52、54)からラッチされたデータを受けてそれぞれのデータの値を比較してその比較結果によってトランジション検出信号(TS)を生成出力する。即ち前記エクスクルーシブオアゲート(56)は第2及び第3フリップフロップ(52、54)から″0″″0″または″1″″1″のデータが入力されるとデータトランジションがないことを表す″0″値のトランジション検出信号(TS)を出力し、″0″″1″または″1″″0″のデータが入力されるとデータトランジションを表す″1″値のトランジション検出信号(TS)を出力する。このような18個のトランジション検出セル(TDC1?TDC18)はそれぞれ1ビットずつのデータを受けてそれぞれ直前周期のデータと比較して各該当ビットのトランジション状態を検出してその検出信号(TS1?TS18)を図5の計数器(46)に出力する。」)の記載を参照。)に過ぎず、該周知の技術を参酌すれば、先願発明におけるデータ極性反転数を判定するため、奇数及び偶数データと以前の奇数及び偶数データを比較する段階を含む構成として、上記相違点1’に係る構成とすることは、課題解決の具体化手段における微差と言える。したがって、上記相違点1’は実質的な相違点ではない。

[相違点2]
相違点2は、上記「2-3-2(e)」で検討したとおり、実質的な相違点ではない。

以上のとおり、上記相違点1’、2は、いずれも実質的な相違点ではないから、本願発明と先願発明とは実質的に同一である。そして、先願発明をした者が本願発明の発明者と同一の者であるとも、また、本願の出願の時にその出願人と先願の出願人とが同一の者であるともいえない。
したがって、本願発明は、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


7 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法29条の2の規定により、特許を受けることができないものであるから、本願は、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-01 
結審通知日 2010-12-06 
審決日 2010-12-17 
出願番号 特願2002-97113(P2002-97113)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 161- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 後藤 亮治  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 森 雅之
越川 康弘
発明の名称 2ポートデータ極性反転器を有する液晶表示装置及びその駆動方法  
代理人 加藤 伸晃  
代理人 臼井 伸一  
代理人 朝日 伸光  
代理人 越智 隆夫  
代理人 岡部 正夫  
代理人 岡部 讓  

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