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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04L |
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管理番号 | 1236279 |
審判番号 | 不服2008-31627 |
総通号数 | 138 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-06-24 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-12-15 |
確定日 | 2011-05-06 |
事件の表示 | 特願2002-367649「データを損失せずにアクティブ・スイッチ・ファブリックとスタンドバイ・スイッチ・ファブリックの間を切り換えるための方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 8月22日出願公開、特開2003-234757〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は,平成14年12月19日(パリ条約による優先権主張2001年(平成10年)12月21日,米国)に出願したものであって,本願の請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成20年4月30日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。 「複数の入力デバイスと複数の出力デバイスとの間に挿入された第1又は第2のスイッチ・ファブリックを通る複数の入力デバイスと複数の出力デバイスとの間のデータ・フローを制御するための方法であって,該第1のスイッチ・ファブリックがアクティブ・モードであり,該第2のスイッチ・ファブリックがスタンドバイ・モードである方法において, (a)該第1のスイッチ・ファブリックに該スタンドバイ・モードをとらせ,および該第2のスイッチ・ファブリックに該アクティブ・モードをとらせる前に,制御信号を生成するステップと, (b)該制御信号に応答して,該複数の入力デバイスから該第1のスイッチ・ファブリックへのデータの伝送を終了するステップと, (c)該制御信号に応答して,ドレイン・タイマを開始するステップと, (d)該ドレイン・タイマがタイムアウトになったか,又は該第1のスイッチ・ファブリックからスイッチ・ファブリック空信号を受けとったことに応答して,該第1のスイッチ・ファブリックに該スタンドバイ・モードをとらせ,および該第2のスイッチ・ファブリックに該アクティブ・モードをとらせるよう制御するステップと, (e)該ドレイン・タイマがタイムアウトになったか,又は該第1のスイッチ・ファブリックから該スイッチ・ファブリック空信号を受信したことに引きつづいて,リスタート・タイマを開始するステップと, (f)該リスタート・タイマがタイムアウトになったことに応答して,該複数の入力デバイスから第2のスイッチ・ファブリックに対してデータを送信するステップと, を含む方法。」 2.引用発明 原査定の拒絶の理由に引用され,本願の出願の日前である1990年(平成2年)9月11日に頒布された特開平2-228146号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに以下の記載がある。 (ア)「〔従来の技術〕 第7図は,一般的な2重化されたATM交換システムのブロック図である。同図において,10は複数本の入ハイウェイ(入HW),20は入ハイウェイ10ごとに設けられた入モジュール(CNV),30及び40は通話路セルスイッチを有する2重化されたATMスイッチ(#0,#1),50は出モジュール(OM),60は出モジュール50ごとに設けられた出ハイウェイ(出HW),および70は入モジュール20と出モジュール50で現用系と予備系とを切換える制御や各種呼処理を行う呼制御回路である。呼制御回路70は中央処理装置(CPU)で構成されるので,以下単にCPUという。」(第2頁左下欄第4?17行)。 (イ)「〔問題点を解決するための手段〕 第1図は,本発明の原理ブロック図である。 図示する自己ルーチング交換システムは,入モジュール120と出モジュール150と,2重化された通話路セルスイッチ130,140と入モジュールおよび出モジュールの呼を制御する呼制御回路170とを有する。 入モジュール120は到着セルを一時蓄積するバッファ121と,2重化された通話路セルスイッチ130,140を切換える際に所定の掃出し確認セルを発生す掃出し確認セル発生手段122と,バッファ121および掃出し確認セル発生手段122と2重化された通話路セルスイッチ130,140とを切換えて結合する選択手段123とを有する。 出モジュール150は2重化された通話路セルスイッチ130,140のいずれか一方を選択する選択手段151と,前記掃出し確認セルの到着を検出する掃出し確認セル検出手段152とを有する。 2重化された通話路セルスイッチ130,140の系の切換えは,入モジュール120から送出された掃出し確認セルを出モジュール150で検出した後に行う。」(第3頁右上第6行?同頁左下欄第8行)。 (ウ)「〔作用〕 はじめに,通常時,通話路セルスイッチ130が現用系であるとすると,入モジュール120に入ったセルはバッファ121および選択手段を介して通話路セルスイッチ130に入る。通話路セルスイッチ130を通ったセルは,出モジュール150の選択手段151および掃出し確認セル検出手段152を介して,次のリンクに出力される。 ここで,通話路セルスイッチ130から140への切換え要求があると,呼制御回路110は入モジュール120中に設けられた掃出し確認セル発生手段122を制御して,掃出し確認セルを発生させる。 この掃出し確認セルは選択手段123を通って通話路セルスイッチ130に与えられ,出モジュール150の選択手段151を通って掃出し確認セル検出手段152に到着する。掃出し確認セル検出手段152が掃出し確認セルを検出すると,この旨を呼制御回路170に通知する。そして,呼制御回路170は入モジュール120の選択手段123を制御して,バッファ121内の待合せセルを通話路セルスイッチ140に出力させる。この待合せセルは,掃出し確認セルが送出される時点から入モジュール120に入ったセルである。一方,呼制御回路170は,出モジュール150の選択手段151を切換えて,通話路セルスイッチ140を接続する。これにより,入モジュール120,通話路スイッチ140および出モジュール150のルートが設定される。 上記の動作において,掃出し確認セルが出モジュール150で検出されたときには必ず,通話路セルスイッチ130内のセルはすべて掃出されている。したがって,従来の問題点を解決できる。」(第3頁左下欄第9行?同頁右下欄第20行)。 上記摘記事項(イ)において,「通話路セルスイッチ(130)」と「通話路セルスイッチ(140)」は通話路セルスイッチ自体の構成としては本質的に同じものであるから,前者を第1の通話路セルスイッチ,後者を第2の通話路セルスイッチと称することができ,摘記事項(ア)も参照すると,各々,現用系,予備系をなしており, 上記摘記事項(ウ)の「そして,呼制御回路170は入モジュール120の選択手段123を制御して,バッファ121内の待合せセルを通話路セルスイッチ140に出力させる。この待合せセルは,掃出し確認セルが送出される時点から入モジュール120に入ったセルである。」との記載によれば,該切替え要求に応答して,入モジュールから該第1の通話路セルスイッチへのセルの伝送は当然終了しており, 上記摘記事項(ウ)の「掃出し確認セルは・・・到着する。」との記載は,立場換えると受けとることである。 したがって,上記摘記事項(イ)の装置構成,及び当該装置におけるセルの流れの制御方法に関した同摘記事項(ウ)の記載によれば,引用文献には, 「入モジュールと出モジュールとの間に挿入された第1又は第2の通話路セルスイッチを通る入モジュールと出モジュールとの間のセルの流れを制御するための方法であって,該第1の通話路セルスイッチが現用系であり,該第2の通話路セルスイッチが予備系である方法において, (a)該第1の通話路セルスイッチに該予備系をとらせ,および該第2の通話路セルスイッチに該現用系をとらせる前に,切替え要求を生成するステップと, (b)該切替え要求に応答して,該入モジュールから該第1の通話路セルスイッチへのセルの伝送を終了するステップと, (d)該第1の通話路セルスイッチから掃出し確認セルを受けとったことに応答して,該第1の通話路セルスイッチに該予備系をとらせ,および該第2の通話路セルスイッチに該現用系をとらせるよう制御するステップと, (f)該入モジュールから第2の通話路セルスイッチに対してセルを送信するステップと, を含む方法。」(以下,「引用発明」という。)が開示されている。 3.対比 そこで,本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明の「入モジュール」は,セルが入力されるデバイスであるから,「入力デバイス」いうこともでき,同様に「出モジュール」も「出力デバイス」ということもできる。 引用発明において,データは「セル」の形式で運ばれているのであるから,引用発明の「セル」,「セルの流れ」は本願発明の「データ」,「データ・フロー」に含まれるものである。 引用発明の「通話路セルスイッチ」はスイッチ・ファブリックの一種である。 引用発明の「現用系」はアクティブ・モードにあることを意味し,同様に「予備系」はスタンドバイ・モードであることを意味する。 引用発明の「切替え要求」は装置における動作を要求するものであるから,信号の形態で実行され,必要な制御をなすものであるから,当然に制御信号を生成している。 引用発明の「掃出し確認セル」はスイッチ・ファブリック(通話路セルスイッチ)内のセルが空になったことを通知する信号といえるから,本願発明の「スイッチ・ファブリック空信号」に相当する。 したがって,本願発明と引用発明は,次の点で一致し,相違する。 (一致点) 入力デバイスと出力デバイスとの間に挿入された第1又は第2のスイッチ・ファブリックを通る入力デバイスと出力デバイスとの間のデータ・フローを制御するための方法であって,該第1のスイッチ・ファブリックがアクティブ・モードであり,該第2のスイッチ・ファブリックがスタンドバイ・モードである方法において, (a)該第1のスイッチ・ファブリックに該スタンドバイ・モードをとらせ,および該第2のスイッチ・ファブリックに該アクティブ・モードをとらせる前に,制御信号を生成するステップと, (b)該制御信号に応答して,該入力デバイスから該第1のスイッチ・ファブリックへのデータの伝送を終了するステップと, (d)該第1のスイッチ・ファブリックからスイッチ・ファブリック空信号を受けとったことに応答して,該第1のスイッチ・ファブリックに該スタンドバイ・モードをとらせ,および該第2のスイッチ・ファブリックに該アクティブ・モードをとらせるよう制御するステップと, (f)該入力デバイスから第2のスイッチ・ファブリックに対してデータを送信するステップと, を含む方法。 (相違点1) 入力デバイス及び出力デバイスに関して,本願発明は「複数」であるのに対して,引用発明は複数かどうかは不明である。 (相違点2) 本願発明は「(c)制御信号に応答して,ドレイン・タイマを開始するステップと」を備えているが,引用発明には,ドレイン・タイマに係る構成はない。また,これに伴って, (d)のステップにおいて,本願発明は,引用発明の構成である「スイッチ・ファブリック空信号を受けとったことに応答して」の条件以外に,「ドレイン・タイマがタイムアウトになったか」との条件にも基づいて,「第1のスイッチ・ファブリックに該スタンドバイ・モードをとらせ,および該第2のスイッチ・ファブリックに該アクティブ・モードをとらせるよう制御」しているが,引用発明はこの構成も当然に備えていない。 (相違点3) 本願発明は,「(e)該ドレイン・タイマがタイムアウトになったか,又は該第1のスイッチ・ファブリックから該スイッチ・ファブリック空信号を受信したことに引きつづいて,リスタート・タイマを開始するステップと, (f)該リスタート・タイマがタイムアウトになったことに応答」して,複数の入力デバイスから第2のスイッチ・ファブリックに対してデータを送信しているが,引用発明には,(e)に係るステップ,及び(e)に係るステップに基づいて,「リスタート・タイマがタイムアウトになったことに応答」の条件はなく,(d)のステップの「第1のスイッチ・ファブリックからスイッチ・ファブリック空信号を受けとったこと」を条件に「入力デバイスから第2のスイッチ・ファブリックに対してデータを送信」している。 4.当審の判断 そこで,相違点1?3について検討する。 (相違点1について) 摘記事項(ア)及び関連図である図7には,複数の入力デバイス(入モジュール)及び出力デバイス(出モジュール)が従来例として開示されており,引用発明もこの従来例を前提に技術改良をしたものといえるから,引用文献における引用発明に係る記載中に,複数の入力デバイス及び出力デバイスが明示されていないのは,単なる省略ということもできる程度のことであって,「複数」とすることに格別な創意工夫を要するものとはいえない。 (相違点2について) 例えば,原審の拒絶理由通知で引用された特開平7-336360号公報の段落【0017】,特開2001-345812号公報の段落【0032】?【0036】あるいは,特開2000-286850号公報の段落【0044】に記載されているように,現用系でフローしているデータが空になったことを契機にして,スタンドバイ・モードとアクティブ・モードを切替える手法に加えて,タイマによるタイムアウトをも契機として採用することは周知技術と言い得るものであるから,「(c)制御信号に応答して,ドレイン・タイマを開始するステップと」を付加し,「スイッチ・ファブリック空信号を受けとったことに応答して」の条件以外に,「ドレイン・タイマがタイムアウトになったか」にも基づいて,「第1のスイッチ・ファブリックに該スタンドバイ・モードをとらせ,および該第2のスイッチ・ファブリックに該アクティブ・モードをとらせるよう制御」する程度のことは,当業者が容易になし得たものにすぎない。 (相違点3について) 現用系と予備系のスイッチ・ファブリック間の切替えにおいて,スイッチ・ファブリックにつながる入力側あるいは出力側の状態を考慮して,現用系スイッチ・ファブリックが空になってからさらに一定の余裕を持たせる必要性があることは,例えば,特開2001-53796号公報の段落【0017】に開示されているように当業者にとって周知の技術的課題といえるものであるから,引用発明において,この余裕を持たせるとの技術的課題に沿って,ドレイン・タイマに加えてさらにタイマを設けることは当然の技術的付加の域を出ない。したがって,引用発明に,スイッチ・ファブリック空信号を受信したことに引きつづいて,リスタート・タイマ付加し,該リスタート・タイマがタイムアウトになったことに応答して,複数の入力デバイスから第2のスイッチ・ファブリックに対してデータを送信するように変更することは,単なる設計的付加にすぎない。 そして,本願発明の作用・効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび 以上のとおり,本願発明は,引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-11-24 |
結審通知日 | 2010-11-29 |
審決日 | 2010-12-20 |
出願番号 | 特願2002-367649(P2002-367649) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H04L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 吉田 隆之 |
特許庁審判長 |
山本 春樹 |
特許庁審判官 |
猪瀬 隆広 萩原 義則 |
発明の名称 | データを損失せずにアクティブ・スイッチ・ファブリックとスタンドバイ・スイッチ・ファブリックの間を切り換えるための方法および装置 |
代理人 | 加藤 伸晃 |
代理人 | 越智 隆夫 |
代理人 | 岡部 讓 |
代理人 | 臼井 伸一 |
代理人 | 朝日 伸光 |
代理人 | 岡部 正夫 |