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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1236286
審判番号 不服2009-4519  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-03-02 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2002-566680「ロケーション・システム」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 8月29日国際公開、WO02/67009、平成16年 9月30日国内公表、特表2004-530115〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2002年2月19日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2001年2月21日、英国)を国際出願日とする出願であって、平成20年11月21日付け(発送日同年12月1日)で拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年3月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成21年4月1日付けで手続補正がなされたものである。


2.本願発明について
本願の請求項1?11に係る発明は、平成21年4月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりである。

「【請求項1】
それぞれのロケーションが検出可能である複数のデバイス(14-17)と、デバイス(14-17)のロケーションを検出し登録するための基本システム(9-13)とを備えたロケーション・システムであって、基本システム(9-13)は、タイム・スロットのシーケンスで一度に1回デバイス(14-17)のロケーションを問い合わせ(51-55)、その結果それぞれのデバイス(14-17)のロケーションが繰り返し問い合わされるように構成され、該基本システム(9-13)は、該デバイス(14-17)の少なくともいくつかのうちの1つのデバイス(17)からの信号に応答して、該1つのデバイス(17)のロケーションを実質的に即時に問い合わせる(53、56-59)よう構成され、該タイム・スロットのシーケンスが、実質的に即時の問い合わせの次に来る1つのタイム・スロットだけ遅延させられ、その後、該シーケンスから失われるタイム・スロットがないように回復させられるロケーション・システム。」


3.引用例記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された本願の優先権主張の日前である1998年6月10日に頒布された英国特許出願公開2320089号明細書(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、

(1-1)
「(54)Detection system for determining positional and other information about objects
(57)A system for tracking the position of each of a plurality of labelled objects 10 in a specified environment by determining the transit time of ultrasound signals transmitted from a transmitter on each labelled object, to a plurality of ultrasound receivers 20-26 positioned at fixed points in or around the specified environment, and computing therefrom the distance of the transmitter from the receivers. The ultrasound transmissions are initiated by radio signals from a master transmitter 16 and each of the objects includes a radio receiver adapted to respond to the radio transmissions to initiate a burst of ultrasound. Each ultrasound transmitter/radio receiver combination on an object is referred to sa a transponder. In order to allow the system to adapt to different numbers of transponder-transmitters and differing demands for service (e.g. frequency of position determination per transponder-transmitter), a coordinating control system is provided for determining the order in which the object mounted transponder-transmitters are to be triggered by the radio transmissions, in response to updatable information relating to the objects and related service demands.
The control system may include a memory for storing relevant information about the different transponders with reference to their radio addesses,by which the order can be determined.The system can also be used to determine object orientation by monitoring the positions of two transmitters at spaced apart locations on an object and comparing their positions.It is preferable to address the two or more transmitters on the object in succession.」
((54) 物体に関する位置その他の情報を決定するための、検出システム
(57)ある特定の状況にある、複数のラベルされた対象物の各々の位置を、各々のラベルされた対象物上のトランスミッタから、その特定の状況の、中あるいは近傍の固定点に位置する複数の超音波レシーバ20-26へ、送信された超音波信号の伝搬時間を決定し、それらから、レシーバからトランスミッタまでの距離を計算することにより、追跡するシステム。
超音波トランスミッタは、マスタトランスミッタ16からの無線信号によってトリガされて、各々の対象物が、該無線トランスミッタに応答し、超音波のバーストを発するようになされた無線レシーバを含む。
対象物上の超音波トランスミッタ/無線レシーバのコンビネーションは、トランスポンダと呼ばれる。
システムに、トランスポンダ-トランスミッタの異なる番号、そして、サービスのための要求(例えば、トランスポンダ-トランスミッタ毎の位置決定のための周波数)を異ならせること、を適合させるために、調整制御システムは、トランスポンダ-トランスミッタが搭載されている対象物が、電波によってトリガされて、対象物に関する更新情報及び関係するサービス要求に応答する順番を決定するよう準備されている。
制御システムは、順番を決定する無線アドレスに関する、異なるトランスポンダについての関連情報を蓄積するメモリを含んでいてもよい。
また、制御システムは、対象物上の間隔をおいた位置にある2つのトランスミッタの位置をモニタすること、そして、それらの位置を比較すること、によって、対象物の方向を決定するために使用することもできる。
連続した対象物については、2つまたはそれ以上のトランスミッタに呼び出しをかけることが好ましい。)、

(1-2)「Standard receiver
A number of these are located at known locations around the environment (room) in the ultrasonic positioning system.
As shown in Figure 6 (A), each receiver 47 is triggered by a central controller 48 across a network 50 . Following a timing or reset signal 49 , the receiver monitors signals from a 40 KHz ultrasonic detector 52 for 20 ms as depicted in Figure 6 (B), and the time at which the incoming signal peaked for the first time is determined and held in the receiver. After the 20 ms window closes, the central controller 48 polls each receiver across the network 50 as depicted at 54 and 56 in Figure 6 (C), and retrieves the time value. The value from each receiver is either the time after the window opened at which the signal first peaked, or is zero (which indicates that no useful signal was detected).」(45頁10行?24行)
(標準的なレシーバ
超音波位置決定システムにおいては、レシーバのいくつかは、その状況(室)のあたりの位置既知の位置に配置されている。
図6(A)に示されているように、各々のレシーバ47は、ネットワーク50を通して、中央のコントローラ48によってトリガされる。タイミングあるいはリセット信号49に基づいて、レシーバは、図6(B)に示されているように、40KHz超音波検出器52からの信号を20ms間モニタし、その結果、入力信号が最初にピークに達する時刻が、決定されレシーバに保持される。20ms後ウインドが閉じ、中央のコントローラ48は、図6(C)の54,56で示されているように、ネットワーク50を通して、各々のレシバをポーリングし、時刻の値を検索する。各々のレシーバからの値は、ウインドが開いた後、信号が初めてピークに達した時刻、あるいは、ゼロである(これは、有用な信号が検出されなかったことを示す。)

が記載されている。

そして、これらの記載から、引用例1には、次のとおりの発明、

【引用例1に記載された発明】
「複数のラベルされた対象物の各々の位置を追跡する、各々のラベルされた対象物上のトランスポンダ(それぞれのロケーションが検出可能である複数のデバイス(14-17)に相当。)と、トランスポンダ(デバイス(14-17)に相当。)の位置(ロケーションに相当。)を追跡(検出し登録に相当。)するための、マスタトランスミッタ16及び超音波レシーバ20-26(基本システム(9-13)に相当。)とを備えた検出システム(ロケーション・システムに相当。)であって、マスタトランスミッタ16及び超音波レシーバ20-26(基本システム(9-13)に相当。)は、タイム・スロットのシーケンスで一度に1回トランスポンダ(デバイス(14-17)に相当。)の位置(ロケーションに相当。)をトリガ及びポーリングし(問い合わせ(51-55)に相当。)、その結果それぞれのトランスポンダ(デバイス(14-17)に相当。)の位置(ロケーションに相当。)が繰り返しトリガ及びポーリングされる(問い合わされるに相当。)ように構成された、
検出システム(ロケーション・システムに相当。)。」(以下、これを「引用例1に記載された発明」という。)

が記載されていると認められる。


4.対比・判断
本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。
引用例1に記載された発明における
「複数のラベルされた対象物の各々の位置を追跡する、各々のラベルされた対象物上のトランスポンダ」、「トランスポンダ」、「位置」、「追跡」、「マスタトランスミッタ16及び超音波レシーバ20-26」、「検出システム」、「トリガ及びポーリングし」
は、それぞれ、
本願発明における
「それぞれのロケーションが検出可能である複数のデバイス(14-17)」、「デバイス(14-17)」、「ロケーション」、「検出し登録」、「基本システム(9-13)」、「ロケーション・システム」、「問い合わせ(51-55)」
に相当する。

したがって、両者は、

【一致点】
「それぞれのロケーションが検出可能である複数のデバイス(14-17)と、デバイス(14-17)のロケーションを検出し登録するための基本システム(9-13)とを備えたロケーション・システムであって、基本システム(9-13)は、タイム・スロットのシーケンスで一度に1回デバイス(14-17)のロケーションを問い合わせ(51-55)、その結果それぞれのデバイス(14-17)のロケーションが繰り返し問い合わされるように構成された、
ロケーション・システム。」

で一致し、

【相違点1】
「本願発明では、基本システム(9-13)は、
デバイス(14-17)の少なくともいくつかのうちの1つのデバイス(17)からの信号に応答して、該1つのデバイス(17)のロケーションを実質的に即時に問い合わせる(53、56-59)よう構成され、該タイム・スロットのシーケンスが、実質的に即時の問い合わせの次に来る1つのタイム・スロットだけ遅延させられ、その後、該シーケンスから失われるタイム・スロットがないように回復させられる、のに対して、
引用例1に記載された発明では、マスタトランスミッタ16及び超音波レシーバ20-26(基本システム(9-13)に相当。)は、そもそも、
複数のトランスポンダ(デバイス(14-17)に相当。)の少なくともいくつかのうちの1つのトランスポンダからの信号に応答して、該1つのトランスポンダの位置(ロケーションに相当。)を実質的に即時に問い合わせるように構成されていない点」、

で相違する。

そこで、上記【相違点1】について検討する。
「(中央装置CE1のような)基本システムは、
(端末装置TE2_(1)?TE2_(n)のような)複数のデバイスの優先する1つのデバイスからの割込信号に応答して、該1つのデバイスのデータを実質的に即時にポーリングするよう構成され、通常のポーリング動作が、実質的に即時のポーリングの1つのタイム・スロットだけ遅延させられ、その後、該通常のポーリング動作から失われるタイム・スロットがないように通常のポーリング動作へ復帰させられる。」
ことは周知である(以下、これを「周知の技術思想」という。)

(例えば、原査定の備考においても挙げた、平成3年2月15日に頒布された特開平3-35635号公報の、
「第1図はブロック図、第2図は信号の伝送状況を示すタイミングチャートであり、第1図においては、中央装置(以下、CE)1と複数の端末装置(以下、TE)2_(1)?2_(n)とが共通の伝送路3,4により接続され、・・・
こゝにおいて、CE1のTX11は、一定周期により各TE2_(1)?2_(n)を順次に指定する個別ポーリング信号を送信し、これをRX221により受信したTE2_(i)は、TX21_(i)によりデータを送信するものとなっており、このデータはCE1のRX12により受信され、これによりデータの収集が各TE2_(1)?2_(n)から順次かつ反復して行なわれるものとなっている。
しかし、いずれのTE2_(j)において直ちに送信すべきデータが発生した場合は、・・・この優先する割込信号のみがCE1のINT14へ送信される。
この状況は、第2図のとおりであり、伝送路3による伝送(a)によりTE2_(14) へのポーリングP_(14 )が送信されると、伝送路4による伝送(b)によりTE2_(14) がデータD_(14) の送信を行なうものとなっており、これについで、TE2_(5) において直ちに送信すべきデータが発生すると、直列伝送路5による伝送(c)により、PRO24_(5) から割込信号IT_(05) の送信がなされ、・・・これの後に伝送(a)によりTX11から送信する割込ポーリング信号P_(00) の受信により、割込信号IT_(05) の送信元であるTE2_(5) が伝送(b)によりデータD_(05) を送信する。
すると、これの受信に応じ、CE1が伝送(a)により応答信号ACKを送信するため、これの受信により各TE2_(1)?TE2_(n )では新たな割込信号の送信禁止状態が解除される。・・・
割込信号の送信禁止状態解除後には、通常のポーリング動作へ復帰し、最初の個別ポーリングポーリングP_(14 )につぐ同信号P_(15 )の送信が行なわれる。」(2頁右上欄9行?3頁左上欄19行)の記載参照。)

から、
引用例1に記載された発明に上記周知の技術思想を適用して、
そのマスタトランスミッタ16及び超音波レシーバ20-26(基本システム(9-13)に相当。)を、
複数のトランスポンダ(デバイス(14-17)に相当。)の優先する1つ(少なくともいくつかのうちの1つに相当。)のトランスポンダ(デバイス(17)に相当。)からの割込み信号(信号に相当。)に応答して、該1つのトランスポンダ(デバイス(17)に相当。)の位置(ロケーションに相当。)を実質的に即時にトリガ及びポーリング(問い合わせる(53、56-59)に相当。)するよう構成され、通常のトリガ及びポーリング動作(タイム・スロットのシーケンスに相当。)が、実質的に即時のトリガ及びポーリングの1つのタイム・スロット(実質的に即時の問い合わせの次に来る1つのタイム・スロットに相当。)だけ遅延させられ、その後、該通常のトリガ及びポーリング動作(シーケンスに相当。)から失われるタイム・スロットがないように通常のトリガ及びポーリング動作へ復帰(失われるタイム・スロットがないように回復に相当。)させられるように構成することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、本願発明の効果は、引用例1に記載された発明及び周知の技術思想に基づいて当業者が予測可能な範囲のものである。


5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知の技術思想に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願発明が、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項2?11に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-02 
結審通知日 2010-12-06 
審決日 2010-12-17 
出願番号 特願2002-566680(P2002-566680)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 江塚 政弘
特許庁審判官 山川 雅也
松浦 久夫
発明の名称 ロケーション・システム  
代理人 岡部 讓  
代理人 朝日 伸光  
代理人 岡部 正夫  
代理人 臼井 伸一  
代理人 越智 隆夫  
代理人 加藤 伸晃  

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