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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1236309
審判番号 不服2009-20078  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-20 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 平成10年特許願第363163号「遊技情報管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 7月 4日出願公開、特開2000-185158〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年12月21日の出願であって、平成21年7月14日付(発送日:7月21日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月20日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同日付で手続補正がなされた。その後、当審において平成22年11月30日付けで平成21年10月20日付けの手続補正を却下すると共に、同日付けで拒絶理由を通知し、平成23年2月3日付けで手続補正がなされたものである。


2.本件発明
平成23年2月3日付け手続補正により、特許請求の範囲は、
「【請求項1】
遊技客IDを記憶するカードと、遊技情報監視装置と、管理装置とを備え、
前記遊技情報監視装置は、前記カードに記憶されている遊技客IDと、対象とする遊技台の遊技台IDと、対象とする遊技台にて遊技している遊技客であって前記遊技客IDが対応付けられている遊技客が獲得した玉の計数値である賞球計数値と、当該遊技客が使用した玉の計数値である使用玉計数値と、を含む遊技データを、当該遊技データが変化したときを含むタイミングで前記管理装置に送信し、
前記管理装置は、前記遊技情報監視装置から送信される前記遊技データを受信して記憶し、
前記遊技情報監視装置に異常が発生した後に復旧した場合、
復旧した遊技情報監視装置は、
前記管理装置に記憶されている前記遊技データにおける遊技客ID毎の遊技データの賞球計数値と使用玉計数値に基づいて、異常が発生した時点における各遊技客が保持していた玉数を判別する、
遊技情報管理装置。
【請求項2】
遊技客IDを記憶するカードと、遊技情報監視装置と、管理装置とを備え、
前記遊技情報監視装置は、前記カードに記憶されている遊技客IDと、対象とする遊技台の遊技台IDと、対象とする遊技台にて遊技している遊技客であって前記遊技客IDが対応付けられている遊技客が獲得した玉の計数値である賞球計数値と、当該遊技客が使用した玉の計数値である使用玉計数値と、を含む遊技データを、当該遊技データが変化したときを含むタイミングで前記管理装置に送信し、更に前記遊技データを記憶し、
前記管理装置は、前記遊技情報監視装置から送信される前記遊技データを受信して記憶し、
前記管理装置に異常が発生した後に復旧した場合、
復旧した管理装置は、
前記遊技情報監視装置に記憶されている前記遊技データにおける遊技客ID毎の遊技データの賞球計数値と使用玉計数値に基づいて、異常が発生した時点における各遊技客が保持していた玉数を判別する、
遊技情報管理装置。」
と補正された。
そして、上記請求項1に係る発明を、以下「本件発明」という。


3.引用文献に記載された事項
(1)当審が通知した拒絶の理由において引用文献1として引用した特開平9-164259号公報には、図面とともに、以下の記載がある。
(ア)「【0006】本発明は、上述のような課題をいずれも解決するためになされたものであり、出玉の運搬を不要とするとともに、且つ、玉の補給が容易であり、しかも、偽造防止可能なパチンコ機の出玉交換方法及び装置を実現することを目的とする。加えて、豊富な交換景品を供給可能とすることも目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述のような課題を解決するために発明された第1?第5の解決手段について、その構成及び作用効果を、以下に説明する。
【0008】[第1の解決手段]請求項1に記載した第1の解決手段は、出玉の回収と回収出玉の計数と遊技玉の補給と識別データの読み出し自在なパチンコ機と、前記識別データに対応する玉数データを有し、前記パチンコ機と直接或いは間接的に通信可能なホストコンピュータと、玉数ごとの交換可能景品データを有し、記録媒体に記録されている識別データの読み取り及び交換可能景品の表示を自在とするとともに、前記ホストコンピュータと通信可能な景品検索装置とを用いた、パチンコ機の出玉交換方法に関する。このような第1の解決手段である本発明に係るパチンコ機の出玉交換方法においては、記録媒体を前記パチンコ機に装着することにより、前記パチンコ機はその識別データを読み取り、該識別データに関する伝文を前記ホストコンピュータに送信するとともに、計算された回収出玉の玉数データに関する伝文を前記ホストコンピュータに送信し、更に、前記ホストコンピュータは前記識別データに関する伝文と玉数データに関する伝文を受信して該当玉数データを加算更新し、玉要求の所定操作がなされることにより、前記パチンコ機は、要求する玉数に関する伝文を前記ホストコンピュータに送信し、更に、前記ホストコンピュータは、この伝文を受信して該当玉数データを減算更新するとともに、前記パチンコ機は遊技玉の補給がなされる。また、前記記録媒体が前記景品検索装置に装着されることにより、前記景品検索装置は、記録媒体に記録されている識別データを読み取るとともに、この識別データに関する伝文を前記ホストコンピュータに送信し、前記ホストコンピュータは、この伝文を受信して該当玉数データに関する伝文を前記景品検索装置に返送し、更に、前記景品検索装置は、受信伝文の玉数データの範囲で前記交換可能景品データを検索して景品を表示することを特徴とする。
【0009】ここで、「出玉の玉数データ」とは、出玉を計数して得られた玉数データの意味である。「識別データ」とは、記録媒体に予め記録されている個人識別データと、それぞれのパチンコ機に設定されているパチンコ機識別データとの少なくとも一方を含むものであり、特に、「記録媒体に記録されている識別データ」とは、個人に関する識別データを指す。「…データに関する伝文」とは、少なくとも…データを含むように作成された通信伝文の意味であり、「該当玉数データ」とは、識別データごとの玉数データのうち特定の識別データに対応する玉数データの意味である。」
(イ)「【0026】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態について説明する。図1?4は、請求項3に対応する本発明の実施の形態の第1例を示している。本第1例のパチンコ機の出玉交換装置は、遊技者ごとに異なる個人識別データを書き込んだ、記録媒体であるカード11を発行する発券機10と、パチンコ島に列設された複数のパチンコ機20と、出玉の一括管理処理等の中心となるホストコンピュータ40と、景品を検索・表示等する、景品検索装置である景品検索端末60とを備えている。各パチンコ機20及びホストコンピュータ40は、通信ネットワーク30に接続され、通信ネットワーク30を介して各種の伝文をやり取りすることで、互いに通信可能なものとなっている。景品検索端末60及びホストコンピュータ40も、通信ネットワーク50に接続され、通信ネットワーク50を介して各種の伝文をやり取りすることで、互いに通信可能なものとなっている。尚、通信伝文は、一般には各ネットワークに適合したフォーマットのものであれば良いが、アプリケーション上は例えばデータの先頭1バイトが種別を示すようなものとなっている。
【0027】更に、パチンコ機20は、特公平5-84196号公報等で公知の回収樋等などからなる図示しない出玉の回収機構に連結されており、この回収機構への出玉の経路に計数器22が設けられている。計数器22の計数値はコントローラ21に送出される。これにより、出玉の回収機構に連結されたパチンコ機20は、それぞれ、回収した出玉を計数する計数手段を具備したものとなっている。このようなパチンコ機20には、カード11の挿入口や読出回路等を持ったリーダ23が組み込まれ、このリーダ23はコントローラ21によって制御される。そして、この挿入口にカード11が挿入されると、リーダ23によってカード11から少なくとも個人識別データが読み取られ、この個人識別データがコントローラ21に送出される。尚、リーダ23には、カード排出スイッチ(後述する本発明の実施の形態の第3例を表す図7参照)を設けており、これを操作することで、カード11がリーダ23から排出される。これにより、パチンコ機20は、挿着された挿抜可能な記録媒体に記録されている個人識別データを読み取る読出手段を具備したものとなっている。
【0028】パチンコ機20のコントローラ21は、プログラム処理によって、リーダ23から個人識別データを受けるとこれを記憶保持しておく。少なくともリーダ23のカード排出スイッチが操作されるまでは記憶・保持しておく。そして、計数器22から送出された出玉数データを受けると、その個人識別データとこの出玉数データとを組にして回収出玉数報告用通信伝文(第1種伝文)を作成する。この通信伝文は通信インターフェイス24及び通信ネットワーク30を介してホストコンピュータ40に送られる。これにより、パチンコ機20は、読出手段又は計数手段の処理に応じて、個人識別データ及び玉数データの双方を含む第1種伝文を送信するものとなっている。
【0029】パチンコ機20は、特公平5-84196号公報等で公知の図示しない管理装置用補給機構に連結され、コントローラ21の制御に応じて所定個数の遊技玉を補給機構からパチンコ機20のパチンコ台に補給する玉補給機25も設けられている。更に、パチンコ機20のコントローラ21には、ホストコンピュータ40から通信ネットワーク30及び通信インターフェイス24を介して遊技玉補給指令用通信伝文(第3種伝文)を受信したとき、玉補給機25を制御して補給動作をさせる処理を行うプログラムがインストールされている。これにより、パチンコ機20は、ホストコンピュータから送り出された第3種伝文を受信した場合に、この受信伝文に応じて自機の遊技玉を補給する補給手段を具備したものとなっている。」
(ウ)「【0031】ホストコンピュータ40は、CPU41と、これにバス結合したメモリ43や通信ネットワーク30側の通信インターフェイス42、通信ネットワーク50側の通信インターフェイス47とを備えたものである。メモリ43は、演算プログラム44と、出玉管理テーブル45と、応答プログラム46とが、ロード・アロケートされたRAMである。前記出玉管理テーブル45は、遊技者ごとの個人識別データに一致するIDと該当IDの玉数データと該当遊技者の氏名と該当遊技者の住所との各アイテムからなるレコードが、多数、迅速アクセスのために個人識別データ順にソートされたものである(図3参照)。これにより、ホストコンピュータ40は、個人識別データごとの玉数データを保持する記憶手段を具備したものとなっている。
【0032】演算プログラム44は、パチンコ機20から通信ネットワーク30を介して送信され、通信インターフェイス42で受信した回収出玉数報告用通信伝文(第1種伝文)を受け取ると、この通信伝文に含まれた個人識別データと出玉数データとに基づいて、この個人識別データとIDアイテムのデータとが一致するレコードを検索し、このレコードにおける玉数アイテムのデータに受信伝文の出玉数データを加算する処理を行う。これにより、ホストコンピュータ40は、パチンコ機から第1種伝文を受信した場合に、この受信伝文に応じてこの伝文内の個人識別データに対応する玉数データを加算更新する演算手段を具備したものとなっている。
【0033】演算プログラム44は、さらに、パチンコ機20から通信ネットワーク30を介して送信され通信インターフェイス42で受信した遊技玉補給要求用通信伝文(第2種伝文)を受け取ると、この通信伝文に含まれた個人識別データに基づいて、この個人識別データとIDアイテムのデータとが一致するレコードを検索し、このレコードにおける玉数アイテムのデータ値と1回当りの補給玉数とを比較して、玉数アイテムのデータ値が1回当り補給玉数以上のときだけ、玉数アイテムのデータ値から1回当り補給玉数を減算するとともに遊技玉補給指令用通信伝文(第3種伝文)の送信サブルーチンをコールする処理を行う。送信サブルーチンは通信インターフェイス42及び通信ネットワーク30を介して所定の遊技玉補給指令用通信伝文をパチンコ機20に送信する処理を行うものである。これにより、ホストコンピュータ40は、パチンコ機に向けて第3種伝文を送信する送信手段と、パチンコ機から第2種伝文を受信した場合に、この受信伝文に応じて、この伝文内の個人識別データに対応する玉数データを減算更新するとともに、自己の送信手段にパチンコ機20へ向けて第3種伝文の送信を行わせる演算手段とを具備したものとなっている。」
(エ)「【0057】次に、請求項5に対応する本発明の実施の形態の第3例について説明する。図6及び図7は、その概要構成図である。本例の構造の場合、複数のパチンコ機20によって構成される島ごとに、島管理装置(サブコンピュータ)100が設けられている。そして、パチンコ機から送り出される各種伝文、並びにホストコンピュータ40から送り出される各種伝文は、この島管理装置100を介して通信自在とされている。すなわち、本例の構造の場合、個人識別データ及び前記パチンコ機に設定されているパチンコ機識別データを含む第6種伝文と、回収出玉数報告用通信伝文である、前記計数手段で計数した玉数データ及び前記パチンコ機識別データを含む第7種伝文と、遊技玉補給要求用通信伝文である、玉要求の所定操作に応じて、前記パチンコ機識別データ及び要求した玉数を表わす要求玉数データを含む第8種伝文と、その他ホストコンピュータ40から送り出される通信伝文等とを、島管理装置100並びにネットワーク30を介して、通信自在である。」
(オ)「【0061】各パチンコ機20のパチンコ機識別データは、パチンコ機20内の制御器(コントローラ)内の記憶部(メモリ)内に記憶している。一方、記録媒体であるカードには、個人識別データと、このカードにより遊戯できる玉数或いは金額等のクレジット情報が記録されている。これら記憶は、磁気的、或いは電気的に行える。すなわち、このカードを磁気カードとしたり、或いは、ICカードとすることができる。この記憶は、更新可能である。
【0062】本例における構造の場合、遊技者が遊戯しようとする際には、先ず、記録媒体であるカードをリーダ23の装着口に挿着する。このリーダ23は、前記カードに記載されている個人識別データを読み取り、パチンコ機識別データとともに第6種伝文として、通信インターフェース24を介して島管理装置100に送信する。島管理装置100は、これら第6種伝文をネットワーク30を介してホストコンピュータ40に送信する。ホストコンピュータ40の記憶装置には、前記図3に示すデータ管理テーブルと図8に示すパチンコ機管理テーブルが設けられている。このうちのデータ管理テーブルは、前記第1例の構造と同様である。一方、パチンコ機管理テーブルは、各パチンコ機20にどのカードが挿着されて遊戯が行なわれているかを記録する。これとともに、第8種伝文に基づく、当該遊戯者が発する要求玉の数及びその累計、並びに遊戯開始時刻、終了時刻を記録する。これら各時刻は、例えば、前記第6種伝文の送信及びカードのリーダ23からの取り出しにより、認識できる。
【0063】このようなパチンコ機管理テーブルは、島管理装置100を介して送信された第6種、第7種、第8種、各伝文等に含まれる各識別データに基づいて作成される。上記送信が行なわれた段階では、先ず、遊戯者に係る第6種伝文に基づくIDと開始時刻とが設定される。第8種伝文に基づく補給玉の要求があると、当該パチンコ機20に対して島管理装置100から玉補給機25を介して遊戯玉が補給が補給される。これと同時に、島管理装置100は、要求された玉数のデータを、ネットワーク30を介してホストコンピュータ40に送信する。ホストコンピュータ40は、パチンコ機識別データを基にして前記図8に示す管理テーブルにアクセスする。そして、要求玉数を一旦、リセットした後、受信した要求玉数を書き込むとともに、要求玉数累計項目を加算更新する。そして、アクセスしたパチンコ機識別データにおいて該当する個人識別データに基づき、前記図3の管理テーブルをアクセスし、玉数を要求玉数で減算更新する。尚、玉補給時には、パチンコ機識別データとともに個人識別データを送信しても良い。この場合には、図8に示す管理テーブルを、パチンコ機識別データと、個人識別データとによりアクセスする。遊戯中における出玉の計数及び出玉データの更新、並びに景品交換の作用は、前述した第1例の場合と同様である。」

以上(ア)ないし(オ)の記載、および図面を総合すると、引用文献1には、
「A.パチンコ機20およびホストコンピュータ40がネットワーク30を介して接続されたパチンコ機の出玉交換装置である。
B.パチンコ機20は、遊技者を特定する個人識別データが記録されたカード11から当該識別データを読み出す手段を備え、読み出された個人識別データ、当該パチンコ機を特定するパチンコ機識別データ、および出玉を計数して得られた玉数データを含んだ伝文を作成し、当該伝文をネットワークを介してホストコンピュータに送信する。
C.ホストコンピュータ40は、パチンコ機20から送信された伝文を受信して、個人識別データごとの玉数データを記憶し、また、パチンコ機から送信される玉数データあるいは要求玉数データに基づいて、記憶した出玉データを加減算して更新し遊技者毎の持ち玉を管理する。」
という発明が開示されていると認めることができる。
(上記発明を、以下、「引用発明1」という。)


4.対比
引用発明1と本件発明を対比する。
a.引用発明1の「個人識別データ」、「カード11」、「パチンコ機20」、「ホストコンピュータ40」、「パチンコ機識別データ」は、それぞれ本件発明の「遊技客ID」、「カード」、「遊技情報監視装置」、「管理装置」、「遊技台ID」に相当する。
そして、引用発明1の「パチンコ機の出玉交換装置」は、本件発明の「遊技情報管理装置」に対応する。
b.引用発明1の「伝文」は、「個人識別データ」、「パチンコ機識別データ」および「玉数データ」を含んでおり、この「玉数データ」は、対象とするパチンコ機にて遊戯している特定の遊技者が遊戯した結果の出玉に対応しているから、当該「玉数データ」が「遊技客が獲得した玉の計数値である賞球計数値と、当該遊技客が使用した玉の計数値である使用玉計数値と、を含む」ものであるかは別にして、引用発明1の「伝文」は本件発明の「遊技データ」に対応する。

したがって、引用発明1と本件発明は、
<一致点>
「遊技客IDを記憶するカードと、遊技情報監視装置と、管理装置とを備え、
前記遊技情報監視装置は、前記カードに記憶されている遊技客IDと、対象とする遊技台の遊技台IDと、を含む遊技データを、前記管理装置に送信し、
前記管理装置は、前記遊技情報監視装置から送信される前記遊技データを受信して記憶する、
遊技情報管理装置。」
で一致し、そして以下の点で相違する。

<相違点1>
本件発明は、遊技情報監視装置から管理装置へ送信される遊技データに、「対象とする遊技台にて遊技している遊技客であって前記遊技客IDが対応付けられている遊技客が獲得した玉の計数値である賞球計数値と、当該遊技客が使用した玉の計数値である使用玉計数値」が含まれているのに対し、引用発明1の伝文には「玉数データ」が含まれているものの、本件発明のようなデータではない点。
<相違点2>
本件発明は、遊技データを「遊技データが変化したときを含むタイミング」で管理装置に送信するのに対し、引用発明1の伝文の送信タイミングは不明である点。
<相違点3>
本件発明は、「前記遊技情報監視装置に異常が発生した後に復旧した場合、復旧した遊技情報監視装置は、前記管理装置に記憶されている前記遊技データにおける遊技客ID毎の遊技データの賞球計数値と使用玉計数値に基づいて、異常が発生した時点における各遊技客が保持していた玉数を判別する」ものであるのに対し、引用発明1は上記構成を有していない点。


5.判断
<相違点1>について
当審が通知した拒絶の理由において引用文献2として引用した特開昭55-16608号公報には、遊技機が、遊技者を特定する個人ナンバーと、遊技機を特定する台番号と、遊技者が遊技機に打球を発射した個数(つまりは使用玉数)と、入賞により得られた入賞玉数とを管理装置に送信し、管理装置は送信されたデータを記憶するもの(特に、公報第2ページ左下欄第9行?第3ページ左下欄第6行、第6ページ右下欄第3行?第8ページ右上欄第2行,第1図,第2図,第6図参照)が記載されており、また、当審が通知した拒絶の理由において引用文献4として引用した特開平3-272790号公報にも、パチンコ機(制御ユニット)から管理装置へ、遊技者を特定するカードに記録されているナンバーと、パチンコ機を特定する台番号と、出玉数(賞球数)と、回収玉数(使用玉数)を送信するもの(特に、公報第12ページ右下欄第12行?第13ページ右上欄,表1参照)が記載されているから、引用発明1において「伝文」に「遊技客が獲得した玉の計数値である賞球計数値と、当該遊技客が使用した玉の計数値である使用玉計数値」を含ませる程度のことは、引用文献2あるいは引用文献4に記載されたものから当業者が容易に想到し得たと認められる。
<相違点2>について
特定情報を収集あるいは検出し、その情報を他の機器に送信するような機器において、情報が収集できたタイミングもしくは情報が変化したタイミングで当該情報を他の機器に送信することは、ごく普通に行われている手順であり、周知技術といえるものであるから、引用発明1において、伝文(遊技データ)が変化したタイミングで送信することは当業者が適宜なし得るものと認められる。
<相違点3>について
本件発明における「前記遊技情報監視装置に異常が発生した後に復旧した場合、復旧した遊技情報監視装置は、前記管理装置に記憶されている前記遊技データにおける遊技客ID毎の遊技データの賞球計数値と使用玉計数値に基づいて、異常が発生した時点における各遊技客が保持していた玉数を判別する」という事項は、本願明細書の段落【0015】の記載、および平成23年2月3日付け意見書からみれば、「遊技情報監視装置に異常が発生し、その後復旧した遊技情報監視装置は、管理装置に記憶されている遊技台および遊技客毎の遊技データ(賞球計数値と使用玉計数値)に基づいて異常発生直後の状態に復旧され、各遊技客が保持していた玉数が判別できるようになる」ことを意味していると解釈できる。
一方、当審が通知した拒絶の理由において引用文献4として引用した特開平3-272790号公報には以下の発明が開示されている。
A.パチンコ機100、(カード)発行機200、精算機300、管理装置400、および、これらを結合するデータ伝送路500からなる遊技機である。
(公報第2ページ右下欄第16行?第3ページ右上欄第1行、第1図参照)
B.パチンコ機100と一対一に対応して制御ユニット160が設けられており、制御ユニット160は、ユニット制御装置180およびユニットコントローラ190を含んでいる。
(公報第5ページ右上欄第1行?右下欄第12行、第10ページ右下欄第5行?第11ページ左上欄第4行、第14図、第17図、第21図、第23図参照)
C.ユニットコントローラ190は、パチンコ機からの信号に基づいて、出玉数、アウト玉数、持玉数、売上金額等の稼働データを演算し、パチンコ機に関する稼働情報(遊技状態)等を生成し、それらをユニットメモリ550の送信データエリアSDAに書き込む。ユニットメモリ550に書き込まれた稼働データ等は、管理装置500に送られ、また、管理装置から送られてくるデータも受信エリアRDAに書き込まれ、ユニットコントローラ190がこれを読み取ることによってデータの送受信が行われる。
(公報第12ページ右下欄第12行?第15ページ左上欄、表1?表6参照)
D.ユニットコントローラ190では、パチンコ機の各種センサで検出された信号に基づいて、総賞球数、出玉数、アウト玉数、差数、持ち玉数を演算し、最後に打ち止め演算レジスタに総賞球数を加算する。
(公報第57ページ左下欄第5行?第19行、第74図参照)
E.管理装置400は、ユニットコントローラ190から送られた稼働データを主記憶装置に記録し、停電時にハードディスク記録装置403にセーブされる。
(公報第26ページ右上欄第7行?右下欄第11行、第28ページ左下欄第9行?右下欄第2行、表1、表18参照)
F.管理装置400がユニット側の異常を認めたとき、管理装置400に記憶されている稼働データ等をユニット側(パチンコ機)に送信し、ユニット側は送信された稼働データ等で送受信データ領域のデータを書き換え復旧させる。
(公報第34ページ左上欄第12行?第37ページ右上欄第10行、第46ページ左上欄第18行?第47ページ左上欄第15行、表27[B0H:ユニット復旧データ]、第55図、第63図参照)

これらのことから、引用文献4には、パチンコ機から稼働データ(出玉数やアウト玉数)等を管理装置に送信し、管理装置が当該稼働データを記憶しておくものにおいて、パチンコ機に異常が発生あるいは停電して、その後復旧したとき、管理装置が記憶しておいた稼働データ等を復旧データとしてパチンコ機に送信し、パチンコ機は当該復旧データに基づいて復旧され、持ち玉数等を判別できるようになることが記載されているといえる。
したがって、引用発明1において、パチンコ機(遊技情報監視装置)に異常が発生した後に復旧したとき、ホストコンピュータ(管理装置)が記憶しておいた稼働データに基づいて異常発生前の状態に復旧させることは、引用文献4に記載されたものから当業者が容易に想到し得たものと認められる。
さらに、本件発明の作用効果等を勘案しても、本件発明に格別の点は認められない。


6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明1および引用文献2、4に記載されたものに基づいて、当業者が容易に発明することができたと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-03 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-24 
出願番号 特願平10-363163
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 足立 俊彦  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
発明の名称 遊技情報管理装置  
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所  

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