• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1236368
審判番号 不服2010-7724  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-12 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2004-297619「ゴルフクラブヘッド及びこれを備えたゴルフクラブ」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 4月27日出願公開、特開2006-109920〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年10月12日の出願であって、平成18年6月26日付け及び平成21年6月17日付けで手続補正がなされ、平成22年1月27日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年4月12日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成21年6月17日付けの手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし6にそれぞれ記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。

「50cm^(3)以上700cm^(3)以下の中空部を有するゴルフクラブヘッドにおいて、ISO 10534-2に準拠して計測された6000Hzにおける吸音率が0.5以上0.99未満の吸音材を前記中空部内に設けるとともに、前記中空部の体積に対する前記吸音材の見かけ体積の割合が20%以上90%以下であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。」

第3 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平8-141115号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。

1 「【0002】
【従来の技術】近年、ウッドと称されるゴルフクラブヘッドは、品質の安定性,材料供給の容易性等の観点から、柿や桜等の天然木材に代え、ヘッド本体の外殻をステンレスやアルミニウム合金等の金属で成形した中空のメタルウッドやその内部にポリウレタン等の発泡合成樹脂製の芯材を充填したもの、又、ヘッド本体の外殻をカーボン繊維やガラス繊維等の繊維強化樹脂で成形して、その内部に同じく発泡合成樹脂からなる芯材を充填したカーボンウッド等が広く使用されている。
【0003】そして、従来、この種のウッドのゴルフクラブセットにあっては、番手が上がるに従いヘッド本体の外形を小さく形成すると共に、ウェイトを順次重くしている。即ち、通常、ドライバー(W♯1)は専ら飛距離を確保するために用いられ打球に正確性はさほど要求されないため、そのヘッド本体はセットの中で外形が最も大きくシャフトも最も長く形成されているが、番手が上がるに従い打球に正確性が求められる。
【0004】そのため、従来では、番手が上がるに従いフェース部の高さを低くしてロフト角を大きくし、且つソール部の寸法(トウ側とヒール側及びフェース側とバック側との間の寸法)を短くしてヘッド本体の外形を小さく形成している。而して、斯様にフェース部の高さを順次低くしてロフト角を大きくすると、ヘッド本体の重心が下がって打球が上がり易くなるため打球に正確性が増し、又、ソール部を小さくすることにより振り抜きが良好となって打球に正確性が増すため、結果的に番手が上がるに従いヘッド本体が小さく成形されている。
【0005】一方、上述したように、この種のゴルフクラブセットにあっては、番手が上がるに従いヘッド本体のウェイトが重く形成されているが、一般にシャフトが短いほど打球に正確性が増す。そのため、従来、番手が上がるに従いシャフトを短く形成して打球に正確性を増しているが、斯様にシャフトの長さが番手毎に異なるとスイングバランスが変化してしまうこととなる。
【0006】そこで、スイングバランスの調整のため、番手が上がるに従いヘッド本体のウェイトを重く形成しているのであって、通常、メタルウッドのゴルフクラブセットにあっては、ヘッド本体の外殻として一体的に成形されたソール部を番手が上がるに従い順次肉厚に成形し、又、カーボンウッドのセットにあっては、ヘッド本体の外殻全体を番手が上がるに従い順次肉厚に成形してスイングバランスの調整を図っている。」

2 「【0007】
【発明が解決しようとする課題】然し乍ら、斯様に外殻(ソール部や外殻全体)の肉厚が番手毎に異なると、打球音の音質がゴルフクラブ毎に異なり、セットとしての統一性が損なわれてしまうといった不具合が指摘されていた。又、図9に示すように昨今、中空のヘッド本体1の内面に樹脂層2を設けて、ヘッド本体1の内部に当該樹脂層2で囲まれる空洞部3を形成し、そして、個々のゴルフクラブヘッド毎にその空洞部3の形状と大きさ(空洞率)を調整することにより、セットとしての打球音の音質を略同一とする従来例が特開平6-190090号公報に開示されている。」

3 「【0022】更に又、図9に示す従来例では、ヘッド本体1の内部に設けた空洞部3の形状と空洞率の調整でゴルフクラブセットとしての打球音の音質を略同一としたが、本実施例にあっては、ヘッド本体4?6毎に充填された比重の異なる各芯材22?24が、夫々、セットとしてのゴルフクラブヘッドの打球音の音質を略同一なものとする。」

4 上記2及び3から、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「ゴルフクラブセットをなす個々のゴルフクラブヘッドであって、
中空のヘッド本体の内面に樹脂層を設けて、ヘッド本体の内部に当該樹脂層で囲まれる空洞部を形成し、個々のゴルフクラブヘッド毎にその空洞部の形状と大きさ(空洞率)を調整することにより、打球音の音質を略同一としたゴルフクラブセットをなす個々のゴルフクラブヘッド。」

第4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
1 引用発明の「『中空のヘッド本体』を有する『ゴルフクラブヘッド』」及び「『中空のヘッドの本体』の『内部』」は、それぞれ、本願発明の「中空部を有するゴルフクラブヘッド」及び「中空部」に相当する。

2 引用発明において、中空のヘッド本体の内面に樹脂層が設けられ、「中空部(ヘッド本体の内部)」に当該樹脂層で囲まれる空洞部が形成されることから、引用発明の「樹脂層」と本願発明の「吸音材」とは、「中空部内に設けられた所定の部材」である点で一致するといえる。

3 上記1及び2から、本願発明と引用発明とは、
「中空部を有するゴルフクラブヘッドにおいて、所定の部材を前記中空部内に設けた、ゴルフクラブヘッド。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1:
前記中空部が、本願発明では、「50cm^(3)以上700cm^(3)以下」のものであるのに対して、引用発明では、容積が明らかでないものである点。

相違点2:
前記部材が、本願発明では、「吸音材」であって、「ISO 10534-2に準拠して計測された6000Hzにおける吸音率が0.5以上0.99未満」で、「前記中空部の体積に対する前記吸音材の見かけ体積の割合が20%以上90%以下」のものであるのに対して、引用発明では、樹脂層である点。

第5 判断
上記相違点1及び2について検討する。
1 相違点1について
(1)引用例の「従来、この種のウッドのゴルフクラブセットにあっては、番手が上がるに従いヘッド本体の外形を小さく形成する」(上記第3の1【0003】参照。)及び「メタルウッドのゴルフクラブセットにあっては、ヘッド本体の外殻として一体的に成形されたソール部を番手が上がるに従い順次肉厚に成形し、又、カーボンウッドのセットにあっては、ヘッド本体の外殻全体を番手が上がるに従い順次肉厚に成形してスイングバランスの調整を図っている」(上記第3の1【0006】参照。)との記載からも明らかなように、引用発明において、ゴルフクラブのヘッド本体の外殻の大きさ及び肉厚は、当業者が番手等に応じて適宜決定すべき設計事項というべきものであるから、ヘッド本体の外殻の大きさ及び肉厚に応じて定まるヘッド本体の中空部の容積も、同様の設計事項というべきものである。

(2)したがって、引用発明において、ヘッド本体の中空部の容積を「50cm^(3)以上700cm^(3)以下」とし、上記相違点1に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

2 相違点2について
(1)引用発明において、中空のヘッド本体の内面に樹脂層が設けられ、ヘッド本体の内部に当該樹脂層で囲まれる空洞部が形成され、個々のゴルフクラブヘッド毎にその空洞部の形状と大きさ(空洞率)が調整されることにより、ゴルフクラブセットの打球音の音質が略同一とされるところ、前記樹脂層の吸音性が、前記空洞部の形状及び大きさ(空洞率)とともに、ゴルフクラブの打球音の音質に影響を及ぼすことは当業者に自明であるから、前記樹脂層を構成する樹脂として、どのような吸音性を有するものを用いるかは、前記空洞部の形状及び大きさ(空洞率)とともに、当業者が、ゴルフクラブの使用者から求められる打球音の音質等に応じて適宜決定すべき設計事項というべきものである。

(2)したがって、引用発明において、前記樹脂層を構成する樹脂として、「ISO 10534-2に準拠して計測された6000Hzにおける吸音率が0.5以上0.99未満」のものを用いるとともに、前記空洞部の大きさ(空洞率)を、「10%より大きく80%より小さい」ものとすることは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

(3)上記(2)の「『ISO 10534-2に準拠して計測された6000Hzにおける吸音率が0.5以上0.99未満』の『樹脂層を構成する樹脂』」は、本願発明の「吸音材」に相当する。

(4)本願明細書の「吸音材6の見かけ体積とは、繊維や樹脂等の材料自体の体積に加えて、繊維集合体における繊維間の空間の体積や、発泡樹脂における発砲の空気部の体積をも含む体積のことである。」(【0022】参照。)及び「実施例7の断面図が図6であり、同図に示すように、実施例7では、石英ガラスウールよりなる吸音材6をフェース部2、クラウン部3、ソール部4、及びサイド部5の内面に接着剤又は粘着剤にて固着したもので、吸音材6の中心付近が空洞とされている。」(【0042】参照。)との記載によれば、本願発明の「吸音材の見かけ体積」には、吸音材の中心付近にある空洞の体積は含まれないと解される。
また、上記(2)のように、空洞部の大きさ(空洞率)を10%より大きく80%より小さいものとした引用発明は、中空部の容積に対する前記空洞部を囲む樹脂層の体積の割合が20%以上90%以下のものであるといえる。
そうすると、上記(2)のように、空洞部の大きさ(空洞率)を10%より大きく80%より小さいものとした引用発明は、本願発明の「中空部の体積に対する吸音材の見かけ体積の割合が20%以上90%以下」との事項を備えているといえる。

(5)上記(2)ないし(4)から、引用発明において、上記相違点2に係る本願発明の構成となすことは、当業者が適宜なし得た設計上のことである。

3 効果について
本願発明の奏する効果は、当業者が引用発明の奏する効果から予測することができた程度のものである。

4 まとめ
したがって、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものである。

第6 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-02 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2004-297619(P2004-297619)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安久 司郎  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 菅野 芳男
桐畑 幸▲廣▼
発明の名称 ゴルフクラブヘッド及びこれを備えたゴルフクラブ  
代理人 特許業務法人サンクレスト国際特許事務所  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ