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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65D
管理番号 1236375
審判番号 不服2010-18000  
総通号数 138 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-08-10 
確定日 2011-05-06 
事件の表示 特願2004-208028「封入構造体」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 2日出願公開、特開2006- 27652〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年7月15日の出願であって、平成22年5月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年8月10日に拒絶査定に対する不服審判請求がなされ、同日に手続補正がなされたものである。

第2.補正却下の決定
平成22年8月10日になされた手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
1.本件補正の内容
本件補正は、以下の補正事項aを有するものと認める。

補正事項a;特許請求の範囲の記載につき
「【請求項1】
矩形状シートが中央の折り線で二つに折り重ねられ、上記折り線を左側縁として上側縁、下側縁及び右側縁の全部がシールされ又は貼り合わされて内部に被封入体が封入されている一方、
上記左側縁及び上側縁には開封部が設けられ、該開封部から開封することによって被封入体が取り出し可能であるとともに、ホルダー類が得られるようにしたことを特徴とする封入構造体。
【請求項2】
上記表裏のシートのうちの少なくとも一方の全部又は一部が透明又は半透明である請求項1記載の封入構造体。
【請求項3】
上記開封部がマイクロミシン目、ミシン目あるいはハーフカットで構成されている請求項1記載の封入構造体。
【請求項4】
上記開封部が擬似接着されることによって構成されている請求項1記載の封入構造体。
【請求項5】
上記開封部が剥離可能なテープで構成されている請求項1記載の封入構造体。」
とあるのを

「【請求項1】
ダイレクトメールに適した封入構造体であって、
矩形状シートが中央の折り線で二つに折り重ねられ、上記折り線を左側縁として上側縁、下側縁及び右側縁の全部が超音波圧着又は熱圧着で帯状に固着されて内部に被封入体が封入されている一方、
上記右側縁及び上側縁にはマイクロミシン目、ミシン目あるいはハーフカットで構成さる開封部が設けられ、該開封部から開封することによって被封入体が取り出し可能であるとともに、右側縁及び上側縁を開封し下側縁を帯状に固着したホルダー類が得られるようにしたことを特徴とする封入構造体。
【請求項2】
上記表裏のシートのうちの少なくとも一方の全部又は一部が透明又は半透明である請求項1記載の封入構造体。」
と補正するものである。

2.判断
2.1 補正事項aの補正の目的要件について
上記補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内において、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された「封入構造体」を「ダイレクトメールに適した封入構造体」と、「シールされ又は貼り合わされて」を「超音波圧着又は熱圧着で帯状に固着されて」と、「開封部」を「右側縁及び上側縁にはマイクロミシン目、ミシン目あるいはハーフカットで構成」と、「ホルダー類」を「右側縁及び上側縁を開封し下側縁を帯状に固着した」と、それぞれ限定して、特許請求の範囲を減縮するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の規定に適合している。

2.2 独立特許要件について
上記補正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから、上記補正後の発明が独立して特許を受けることができるものであるのかどうかについて以下に検討する。

2.2.1 本願補正発明
本願の補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という)は、上記補正事項aの補正後の請求項1に記載されたとおりのものと認める。

2.2.2 引用例及びその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である登録実用新案第3035141号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面と共に次の記載がある。

(a)「図3に本考案の更に別の実施例を示している。この実施例においては、封筒1は例えばB5版またはA4版程度の大きさの雑誌などを送付するために用いる郵便用の封筒1である。この封筒1は例えばポリプロピレン(PP)シートからできており、50μ?1mm程度の厚さのプラスチックシートであり、上述の郵便物が入るような大きさで、好ましくはA4(210mm×297mm)の大きさよりも僅かに大きくしている。
この封筒の直交する2辺をそのまま用い、その対向する部分に図3(a)に示すように下辺に平行する部分2eと、その垂直辺の一方に連結する垂直辺2fからなる切離し用切込み2を表から裏に向けて連続して形成している。また、垂直辺2fには指掛け用凹部となる円弧状部2gを含めてもよい。 従って、この封筒1により郵便物を受取った後、この切離し用切込み2e、2f、2gに沿って封筒をカットすることにより、図3(b)に示すようなPPクリアフォルダーが形成される。なお、図3(a)に示すように、封筒1の底部をヒートシール6により融着させて形成することにより、図3(b)に示すように市販のクリアフォルダーに類似のPPクリアフォルダーが得られ好ましい。
このPPクリアフォルダーはプラスチックシートであるため汚れにくく、また材質として透明または半透明のものを用いることにより内容物もよく見ることができ、通常のクリアフォルダーと同等に用いることができる。」(段落【0024】?【0027】)

上記(a)の記載における「封筒の直交する2辺をそのまま用い、その対向する部分に図3(a)に示すように下辺に平行する部分2eと、その垂直辺の一方に連結する垂直辺2fからなる切離し用切込み2を表から裏に向けて連続して形成している。」及び図面より、図面における2eを「上辺」、2f及び2gを「右辺」とする。

上記(a)の「封筒1の底部をヒートシール6により融着させて形成する」の記載及び図面より、底部のヒートシール6は「帯状」になっていることが示されているといえる。

以上の記載及び図面によれば、引用例1に記載された発明(以下「引用発明1」という)は次のとおりのものと認められる。

「封筒であって、
右辺、上辺には切離し用切込みで構成さる開封部が設けられ、該開封部から開封することによって内容物が取り出し可能であるとともに、上辺、右辺を開封し底部を帯状にヒートシールにより融着したPPクリアフォルダーが得られるようにした封筒。」

2.2.3 対比
本願補正発明と引用発明1を対比すると、引用発明1の「封筒」、「内容物」、「右辺」、「上辺」、「底部」、「切離し用切込み」、「PPクリアフォルダー」は、それぞれ本願補正発明の「封入構造体」、「被封入体」、「右側縁」、「上側縁」、「下側縁」、「ハーフカット」、「ホルダー類」に相当する。

すると本願補正発明と引用発明1は

「封入構造体であって、
右側縁及び上側縁にはマイクロミシン目、ミシン目あるいはハーフカットで構成さる開封部が設けられ、該開封部から開封することによって被封入体が取り出し可能であるとともに、右側縁及び上側縁を開封し下側縁を帯状に固着したホルダー類が得られるようにした封入構造体。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
本願補正発明が「ダイレクトメールに適した封入構造体」であるのに対して、引用発明1はそれについて不明である点

相違点2
本願補正発明が「矩形状シートが中央の折り線で二つに折り重ねられ、折り線を左側縁として上側縁、下側縁及び右側縁の全部が超音波圧着又は熱圧着で帯状に固着されて内部に被封入体が封入されている」構成を有しているのに対して、引用発明1はそれについて不明である点

2.2.4 相違点の検討
相違点1について
引用発明1は「封筒(封入構造体)」の発明であり、当該「封筒(封入構造体)」をダイレクトメールで使用し、そのために適した構造にすることは当業者が状況に応じて適宜なし得る事項である。

相違点2について
「矩形状シートが中央の折り線で二つに折り重ねられ、折り線を左側縁として上側縁、下側縁及び右側縁の全部を帯状に固着」する構成は、封書の技術分野において周知技術(特開平9-110051号公報、実願昭46-58327号(実開昭48-17219号)のマイクロフィルムを参照のこと)であり、当該周知技術を引用発明1に用いることは当業者にとり格別な困難性の無いことである。
その際に、固着手段として熱圧着により固着する構成は「プラスチックの固着」の技術分野において周知技術(特開2003-34336号公報を参照のこと)であり、当該周知技術である熱圧着をプラスチックであるポリプロピレン(PP)でできた引用発明1の固着手段として用いることは当業者にとり格別な困難性の無いことである。
また、同様に固着手段として超音波圧着により固着する構成も「プラスチックの固着」の技術分野において周知技術(特開昭63-272605号公報、特開平5-33860号公報を参照のこと)であり、当該周知技術である超音波圧着をプラスチックであるポリプロピレン(PP)でできた引用発明1の固着手段として用いることも当業者にとり格別な困難性の無いものである。

しかも本願補正発明が奏する効果も引用発明1に示された事項から当業者が予測できたものであって、格別顕著なものとはいえない。

以上のことから、本願補正発明は、原査定時に引用した引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

3.まとめ
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
1.本願発明

以上のとおり、本件手続補正は却下されたので、本願請求項1に係る発明は、本件補正a.の補正前の【請求項1】に記載した事項により特定されるものと認められる。
以下補正事項aの補正前の【請求項1】に係る発明を「本願発明」という。

2.引用例及びその記載事項

引用例及びその記載事項は、上記「第2.手続補正の却下」の項中の「2.2.2引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願補正発明は本願発明を限定的に減縮したものである。
そうすると、本願発明の構成に補正事項aの限定的減縮をした本願補正発明が、上記「2.2 独立特許要件」の項で検討したとおり、上記引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明できたものであるから、本願発明も同様の理由により引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明できたものである。

4.まとめ
そうすると、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び周知例に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
 
審理終結日 2011-03-09 
結審通知日 2011-03-10 
審決日 2011-03-25 
出願番号 特願2004-208028(P2004-208028)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高橋 裕一  
特許庁審判長 鳥居 稔
特許庁審判官 熊倉 強
谷治 和文
発明の名称 封入構造体  
代理人 手島 孝美  

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