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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1236802
審判番号 不服2008-17750  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-10 
確定日 2011-05-12 
事件の表示 特願2003-296588「情報処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月17日出願公開、特開2005- 70898〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は,平成15年8月20日の出願であって,平成20年6月3日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年7月10日に審判請求がなされるとともに,同年8月7日付けで手続補正書が提出され,当審において平成22年10月12日付けで拒絶理由が通知され,これに対し,同年12月17日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。

第2 本願発明の内容

本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成22年12月17日に提出された手続補正書により補正された請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
デスクトップ画面上に複数のウィンドウ画面を表示可能な表示装置と、
画面の拡大・縮小を指示する操作部と、
前記操作部が拡大・縮小を指示した時にアクティブなウィンドウ画面の表示について、
前記操作部からの1回の指示毎に、該ウィンドウ画面が備える表示イメージの表示倍率を段階的に拡大・縮小する拡大・縮小手段と、
を具備することを特徴とする情報処理装置。」

第3 引用例

1 引用例1の記載内容と引用発明

(1)当審における平成22年10月12日付け拒絶理由に引用された,本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である「関口 哲司,「Let’s note ace/A44E [第3回]スマートポインター徹底活用大作戦!」,モバイルPC,日本,ソフトバンク株式会社,1999年4月1日,第5巻,第4号,p.146-147」(以下「引用例1」という。)には,図とともに,次の記載がある。なお,下線は,当審にて付加したものである。

(ア)「spec
CPU MMX Pentium 266Mhz
メモリ(最大) 64M(128M)バイトSDRAM
液晶ディスプレイ 11.3インチTFTカラー、
1024×768ドット(1677万色)」(第146頁上欄参照。)

(イ)「Let’s note ace /A44には、「スマートポインター」と呼ばれるポインティングデバイスが装備されていた。スマートポインターは一見何の変哲もないパッドのように見えるが、実はWindowsの操作を快適にするさまざまな機能が盛り込まれている。新しいLet’s note ace/A44Eではさらに操作性が改善された。今までスマートポインタ-を単なるパッドにしか使っていない人もいると思うので、今回は新スマートポインター▲2▼(注:引用例1の記載はローマ数字の2であるが,都合によりこのように表示する。以下同じ。)の徹底活用に挑戦してみた。」(第146頁左欄第1-11行参照。)

(ウ)「「ズーム機能」はアクティブウィンドウヘ表示されている文章全体を拡大、または、縮小する機能だ。フォントの大きさをアクティブに変える機能といえばわかりやすいだろう。ズーム機能を使用するには、Ctrlキーを押しながらスマートポインター▲2▼の右端ある矢印を指でなでればよい。」(第146頁右欄第3-9行参照。)

(2)ここで,引用例1において,スマートポインターが「Windowsの操作を快適にするさまざまな機能が盛り込まれている」ものとして紹介されていること,及び写真に見られる画面表示を参酌すると,引用例1に記載の「Let’s note ace/A44E」は,そのOS(オペレーティングシステム)としてWindowsを採用しているものといえる。

(3)そうすると,引用例1には

「液晶ディスプレイを備え,OS(オペレーティングシステム)としてWindowsを採用するとともに,
Ctrlキーを押しながらスマートポインター▲2▼の右端にある矢印を指でなでることにより,アクティブウィンドウヘ表示されている文章全体を拡大,または,縮小する「ズーム機能」を備えている
Let’s note ace /A44E。」との発明(以下「引用発明」という。)

が記載されていると認められる。

2 引用例2の記載内容と記載されている技術的事項

(1)当審における平成22年10月12日付け拒絶理由に引用された,本願の出願日前に日本国内で頒布された刊行物である「鷹野 美紀,「ズーム機能を120%使いこなす 目に優しい画面表示テクニック」,日経パソコン,日本,日経BP社,2001年9月17日,第393号,p112-119」(以下「引用例2」という。)には,図とともに,次の記載がある。なお,下線は,当審にて付加したものである。

(エ)「見やすい画面表示テクニックの基本は「ズーム」機能だ。Wordや「Excel」のツールバーにある「100%」などというボタンがそれ。このドロップダウンリストから例えば「200%」を選べば、書類が2倍に拡大表示される。」(第112頁中欄第2-7行参照。)

(オ)「ズーム機能で拡大しても、画面の表示方法が変わるだけで、フォントなど書類内容が大きくなるわけではない。ズーム機能を使わずにフォントサイズそのものを大きくすると、レイアウトが崩れてしまう上、印刷するときも大きいままなので注意しよう。
ズームに関してもう一つ覚えておきたいテクニックは、[Ctrl]+ホイールだ。[Ctrl]キーを押しながらマウスのホイールを回すと、10%ずつ拡大・縮小される。非常に簡単な操作で、微妙な調節もしやすいので、ホイール付きマウスをお使いの方はぜひ試していただきたい。」(第112頁右欄第1-12行参照。)

(2)そうすると,引用例2には,「ズーム機能における拡大・縮小処理を,[Ctrl]キーを押しながらマウスのホイールを回すことに応じて,10%ずつ段階的に拡大・縮小できるようなものとする。」ことが記載されているから,引用例2には,

「ズーム機能における拡大・縮小処理を,操作部からの指示毎に,段階的に拡大・縮小できるようなものとする。」

という技術的事項が記載されていると認められる。

第4 対比・判断

1 対比

本願発明と引用発明とを比較する。

ア 引用発明の「Let’s note ace /A44E」は,そのOS(オペレーティングシステム)としてWindowsを採用するものである。ここで,Windowsは,マルチウィンドウ機能を有するOSであるから,引用発明の「Let’s note ace /A44E」は,本願発明と同様に「ディスクトップ画面上に複数のウィンドウ画面を表示可能な」ものであるといえる。
イ 引用発明の「液晶ディスプレイ」は,画面の表示を行うための装置であるから「表示装置」であるといえる。そうすると,前記アでの検討を参酌すれば,引用発明の「液晶ディスプレイ」は,本願発明の「ディスクトップ画面上に複数のウィンドウ画面を表示可能な表示装置」に相当するといえる。
ウ 引用発明における「Ctrlキー」と「スマートポインター▲2▼」は,その操作により,アクティブウィンドウヘ表示されている文章全体を拡大,または,縮小するズーム機能を実現させるものであるから,本願発明の「画面の拡大・縮小を指示する操作部」に相当する。
エ 引用発明は,Ctrlキーを押しながらスマートポインター▲2▼の右端にある矢印を指でなでることにより,アクティブウィンドウヘ表示されている文章全体を拡大,または,縮小するものであるから,Ctrlキー及びスマートポインター▲2▼によって拡大・縮小を指示したときに,アクティブなウィンドウ画面の表示について拡大・縮小が行われるものであると認められる。そうすると,引用発明は,本願発明と同様に「操作部が拡大・縮小を指示した時にアクティブなウィンドウ画面の表示について」拡大・縮小が行われるものであるといえる。
オ 引用発明は,アクティブウィンドウヘ表示されている文章全体を拡大,または,縮小する「ズーム機能」を備えるものである。ここで,「ズーム機能」とは,例えば,引用例2に見るように,フォントサイズそのものを大きくするのではなく,レイアウトを崩さず拡大・縮小を行う(即ち,表示されているすべてのものについて同率で拡大・縮小を行う)機能を指すものである(引用例2には,ズーム機能を使わずにフォントサイズそのものを大きくすると,レイアウトが崩れてしまうことが述べられているから,ズーム機能とは,フォントサイズそのものを大きくするのとは異なり,レイアウトを崩さず拡大・縮小をする機能であることが説明されている。)。そうすると,引用発明の「ズーム機能」は,本願発明の「ウィンドウ画面が備える表示イメージの表示倍率を拡大・縮小する」機能に相当するから,引用発明の「Let’s note ace /A44E」は,本願発明と同様に「ウィンドウ画面が備える表示イメージの表示倍率を拡大・縮小する拡大・縮小手段」を具備しているといえる。
カ 引用発明の「Let’s note ace /A44E」は,コンピュータ装置であるから,本願発明と同様に「情報処理装置」であるといえる。

2 一致点と相違点

そうすると,本願発明と引用発明の一致点と相違点は,次のとおりと認められる。

ア 一致点

「デスクトップ画面上に複数のウィンドウ画面を表示可能な表示装置と,
画面の拡大・縮小を指示する操作部と,
前記操作部が拡大・縮小を指示した時にアクティブなウィンドウ画面の表示について,該ウィンドウ画面が備える表示イメージの表示倍率を拡大・縮小する拡大・縮小手段と,
を具備することを特徴とする情報処理装置。」

イ 相違点

本願発明では,ウィンドウ画面が備える表示イメージの表示倍率の拡大・縮小が,「操作部からの1回の指示毎に」,「段階的に」行われるのに対し,引用発明では,それが明らかでない点。

3 判断

前記第3,2,(2)に見るように,引用例2には,「ズーム機能における拡大・縮小処理を,操作部からの指示毎に,段階的に拡大・縮小できるようなものとする。」との技術的事項が記載されていると認められる。
そうすると,引用発明において,引用例2に記載の技術的事項を適用して,ウィンドウ画面が備える表示イメージの表示倍率の拡大・縮小を,操作部からの指示毎に,段階的に行うようにし,相違点にかかる構成とすることは,当業者が適宜なし得たことといえる。また,その効果も,当業者が,予測できる範囲のものである。

4 結論

以上のとおり,相違点に係る構成は,当業者が容易に想到し得たものである。そして,本願発明の効果も,当業者が,予測できる範囲のものである。
そうすると,本件発明は,引用発明及び引用例2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

第5 むすび

以上のとおり,本願発明は,引用発明及び引用例2に記載の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法29条2項の規定により,特許を受けることができない。

したがって,その余の請求項について論及するまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-09 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願2003-296588(P2003-296588)
審決分類 P 1 8・ 537- WZ (G06F)
P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山崎 慎一  
特許庁審判長 手島 聖治
特許庁審判官 小林 義晴
山本 穂積
発明の名称 情報処理装置  
代理人 河野 哲  
代理人 村松 貞男  
代理人 蔵田 昌俊  
代理人 中村 誠  

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