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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1236804
審判番号 不服2008-24076  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-09-18 
確定日 2011-05-12 
事件の表示 特願2002-129345「携帯端末を用いた撮影画像の情報提供システム、撮影画像の情報提供方法、およびその方法をコンピュータに実行させるプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年11月14日出願公開、特開2003-323440〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成14年4月30日の出願であって、平成20年5月21日付けで拒絶理由が通知され、同年6月30日に手続補正がなされたが、同年8月13日付けで拒絶査定がされ、これに対し同年9月18日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同年10月20日に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成20年10月20日付けの手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成20年10月20日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正内容
平成20年10月20日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1を、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1のとおりに補正する補正事項を含むものである。

<本件補正前の特許請求の範囲の請求項1>
「【請求項1】 ユーザが撮影した画像を携帯端末からネットワークを介してセンタに送信し、該センタからネットワークを介して画像データに関する情報の提供を受ける携帯端末を用いた撮影画像の情報提供システムにおいて、
前記携帯端末は、
被対象物を撮影し画像データを得るための撮影手段と、
前記被対象物の撮影時における地図上の撮影位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記被対象物の撮影時における該被対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
検索要求時に前記撮影した被対象物の画像データ、撮影位置情報および距離情報を携帯端末から前記センタに送出し、また、前記センタから返答された検索結果を受けるための通信手段と、
検索に必要な操作をおこなうための操作手段と、
前記検索結果を画像、文字、音等を用いて出力するための出力手段と、
を備え、
前記センタは、
前記被対象物に関する画像データ、撮影位置情報および距離情報に関する検索用の情報が格納された検索用データベースと、
前記携帯端末から送出された前記撮影位置情報と前記距離情報とを用いて前記画像データの撮影場所を特定する撮影位置特定手段と、
前記検索用データベースにアクセスし、前記特定された撮影場所と、前記画像データを検索項目として該画像データに関連する情報を検索する検索手段と、
前記検索により得られた検索結果を前記携帯端末に送出する情報送出手段と、を備え、
前記検索手段は、前記検索結果を、概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報と、により構成し、詳細情報として前記基本情報に関連する情報を有する提供先リンクを検索し前記携帯端末に送出することを特徴とする携帯端末を用いた撮影画像の情報提供システム。」

<本件補正後の特許請求の範囲の請求項1>
「【請求項1】 ユーザが撮影した画像を携帯端末からネットワークを介してセンタに送信し、該センタからネットワークを介して画像データに関する情報の提供を受ける携帯端末を用いた撮影画像の情報提供システムにおいて、
前記携帯端末は、
被対象物を撮影し画像データを得るための撮影手段と、
前記被対象物の撮影時における地図上の撮影位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記被対象物の撮影時における該被対象物までの距離情報を取得する距離情報取得手段と、
検索要求時に前記撮影した被対象物の画像データ、撮影位置情報および距離情報を携帯端末から前記センタに送出し、また、前記センタから返答された検索結果を受けるための通信手段と、
検索に必要な操作をおこなうための操作手段と、
前記検索結果を画像、文字、音等を用いて出力するための出力手段と、
を備え、
前記センタは、
前記被対象物に関する画像データ、撮影位置情報および距離情報に関する検索用の情報が格納された検索用データベースと、
前記携帯端末から送出された前記撮影位置情報と前記距離情報とを用いて前記画像データの撮影場所を特定する撮影位置特定手段と、
前記検索用データベースにアクセスし、前記特定された撮影場所と、前記画像データを検索項目として該画像データに関連する情報を検索する検索手段と、
前記被対象物を分野別の指定に基づいて検索して得られた検索結果を前記携帯端末に送出する情報送出手段と、を備え、
前記検索手段は、前記検索結果を、前記分野別の概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報と、により構成し、当該詳細情報は、指定された前記分野内におけるより詳細な複数の詳細項目として前記携帯端末に送出され、当該複数の詳細情報のうちの携帯端末において指定された詳細項目に関連する提供先リンクを前記携帯端末に送出することを特徴とする携帯端末を用いた撮影画像の情報提供システム。」

2.本件補正に対する判断
本件補正のうちの上記補正事項は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「情報送出手段」が送出する「検索結果」を、「前記被対象物を分野別の指定に基づいて検索して得られた検索結果」とするものであって、「検索手段」が検索結果として得る「概要を示す基本情報」を、「分野別の概要を示す基本情報」とするとともに、「当該詳細情報は、指定された前記分野内におけるより詳細な複数の詳細項目として前記携帯端末に送出され、当該複数の詳細情報のうちの携帯端末において指定された詳細項目に関連する提供先リンクを前記携帯端末に送出する」ものに限定したものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か(上記改正前の特許法第17条の2第5項において読み替えて準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2-1.本願補正発明
本願補正発明は、上記「1.」の<本件補正後の特許請求の範囲の請求項1>の欄に転記したとおりのものである。

2-2.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-66350号公報(以下、「引用例1」という。)には、 図面と共に次の事項が記載されている。

あ.「【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、コンピュータ上の地図データを3次元データとして予め作成しておき、画像(CG画像と区別するため以降景観画像と呼ぶ)が入力されるときの位置とカメラの角度と焦点距離と画像サイズを撮影時に取得し、コンピュータ上の3次元地図空間内で実風景撮影時の位置とカメラの角度と焦点距離から眺望した場合のコンピュータグラフィックス(以下、CGとする。)画像内での地理的情報を取得し、その地理的情報を、実風景である景観画像に重畳表示することで対応付けを実現するものである。この地理的情報とは画像での、構造物等の名称またはその属性情報であり、属性情報とはその構造物に関するあらゆる属性(例えば輪郭、色等)についての情報を意味する。この明細書の中でも構造物という言葉を人工の構造物以外に、山や川や海等の天然の地形も含めて地図DBでの何らかの地理的構造を有するデータ全ての意味で用いることとする。地理的情報の取得にあたっては、カメラ位置、カメラ角、焦点距離、画像サイズを基に景観画像を求め、複数画像の構造物を求める。その構造物が写っているはずの景観画像の位置(以下、付与位置と称す)を求めて、構造物の名称または属性情報を重畳表示する。
【0009】さらに、景観画像での構造物とCG画像での構造物との対応付けの精度をさらに上げるためには、景観画像の各部分領域に対して先に獲得した構造物をパターンマッチングにより対応付ける。獲得した構造物を基にしてCG画像を作成し、景観画像の前記部分領域に対してパターンマッチングによりCG画像中の部分領域を対応付け、対応付けられた部分領域のもととなった構造物を求める。
【0010】ここで、CG画像の作成法の一例について述べる。先に取得したカメラ位置とカメラ角度と焦点距離と画像サイズを基に3次元地図DBにアクセスして、3次元地図空間内での視野空間を求める。視野空間中の構造物を求め、カメラ画面を投影面として、各構造物の立体データをこの投影面に3次元投影変換する。さらに各構造物の投影図形を構成する線データのうち、他の構造物に隠れて見えない線データを法線ベクトル法等の手法を用いて隠線消去する。隠線消去して残った線データを基にして、CG画像を領域分割する。3次元地図DBを利用しているため、各領域毎にその領域のもととなる構造物の名称を対応付けできる。
【0011】そうして、パターンマッチングにより景観画像の各部分領域に対応付けられたCG画像の部分領域の構造物名称を抽出する。抽出した構造物名称を重畳すべき実風景画像の位置座標を、3次元地図空間中での構造物の位置座標を先の投影面に3次元投影変換して求める。抽出した構造物名称を重畳すべき実風景画像の位置座標からラベル情報を作成する。ラベル情報を基に実風景である景観画像に構造物名称を重畳して、視覚機器に表示する。
【0012】本発明ではさらに、検索情報入力手段を設け、ユーザが景観画像中で検索したいと望む情報をユーザが入力すると、これを検索情報として受け取り、制御手段に渡す。検索情報の例としては、飲食店、銀行等の構造物の所有者の業務種別や、○○町や何丁目何番地といった土地の区割り情報や、何メートル以上の高さの物体かといった高さ情報等がありえる。検索情報は、地図情報に関する情報であれば何でもよい。制御手段は地図情報管理手段に対して検索情報を渡す。地図情報管理手段は、受け取った検索情報に適合する属性情報を有する構造物を抽出し、検索情報およびそれに適合する属性情報からなる検索結果情報を作成して制御手段に渡す。
【0013】制御手段は、通常の手順のラベル情報作成手段に各種情報を渡す際に、検索結果情報も渡す。ラベル情報作成手段では、通常の手順で構造物の名称またはその属性情報とその付与位置を求めた後、各構造物が検索結果情報中に含まれるか否かを確認する。ある構造物が検索結果情報中にあれば、ラベル情報中にその構造物が検索結果であることを表す情報を追加する。構造物の名称またはその属性情報とその付与位置に続けて、例えば、検索結果フラグを追加する。こうして作成されたラベル情報を制御手段に渡す。制御手段はラベル情報出力手段にラベル情報を渡すと、ラベル情報出力手段ではラベル情報中の検索結果フラグが“1”である項目については、視覚機器でユーザに検索結果であることがわかるように(例えば、描画色を特定の色に変更する等)して視覚機器に表示する。」

い.「【0049】本景観ラベリングシステムは景観ラベリング端末40と景観ラベリングセンター50と通信網60で構成される。
【0050】景観ラベリング端末40は、画像を取得する画像取得部41と、画像取得時のカメラ位置を取得する位置情報取得部42と、画像取得時のカメラ角と焦点距離と画像サイズを取得するカメラ属性情報取得部43と、ユーザが検索したい情報を示す検索情報を入力する検索情報入力部44と、取得した画像を複数の部分領域に分割する画像処理部45と、画像の領域分割に関する情報とカメラ位置とカメラ角と焦点距離と画像サイズとを通信網60を介して景観ラベリングセンター50に送信し、景観ラベリングセンター50からラベル情報を受信する通信制御部46と、ラベル情報中の構造物の名称または属性情報を画像中の付与位置に対応する位置に重畳し、重畳された画像を視覚機器に出力し、その際ラベル情報中の検索結果識別フラグが“1”の項目については、ユーザが検索結果であることがわかるように描画色を変更して表示し、さらに隠面フラグが“1”の構造物について構造物の輪郭を特定の描画色でスケルトン表示するラベル情報出力部47と、上記各部を制御する端末制御部48で構成される。
【0051】景観ラベリングセンター50は通信網60を介して景観ラベリング端末40から前記画像の領域分割に関する情報とカメラ位置とカメラ角と焦点距離と画像サイズを受信し、景観ラベリング端末40にラベル情報を送信する通信制御部53と、地図情報を管理し、受信したカメラ位置とカメラ角と焦点距離と画像サイズを基に地図情報空間の中で視野空間を求め、その視野空間中に存在する構造物を獲得し、検索情報を受け取ると、該検索情報に適合する属性情報を有する構造物を抽出し、検索情報と属性情報からなる検索結果情報を作成する地図情報管理部51と、画像の前記部分領域に対して前記獲得した構造物をパターンマッチングにより対応付け、対応付けられた前記構造物の名称または属性情報および付与位置を含むラベル情報を作成し、検索結果情報中にある構造物についてはラベル情報中の検索結果フラグを“1”とし、さらに検索結果情報中の他の構造物に隠れて画像中に見えない構造物については構造物の名称または属性情報、構造物の輪郭および付与位置を含み、検索結果フラグと隠面フラグが共に“1”のラベル情報を作成するラベル情報作成部52と、上記各部を制御するセンター制御部54で構成される。」

ここで、上記各記載事項を関連図面及び各種常識に照らせば、以下のことがいえる。

(あ)上記記載事項中の「景観ラベリングシステム」は、ユーザが撮影した画像に関する情報を「景観ラベリング端末40」から「通信網60」を介して「景観ラベリングセンター50」に送信し、該「景観ラベリングセンター50」から「通信網60」を介して画像データに関する「ラベル情報」の提供を受けるものであるから、該「景観ラベリングシステム」は、「撮影画像の情報提供システム」とも呼び得るものである。
(い)上記記載事項中の「画像取得部41」が取得する画像は、景観画像であるから、該「画像取得部41」は、被対象物を撮影し画像データを得る機能を当然に有している。
(う)上記記載事項中の「位置情報取得部42」は、画像取得時のカメラ位置を取得する機能を有しているから、該「位置情報取得部42」は、前記被対象物の撮影時における地図上の撮影位置情報を取得する機能を有している。
(え)上記記載事項中の「景観ラベリング端末40」は、ユーザによる操作に基づいて下記「(か)」の欄に述べる「『検索手段』とも呼び得る手段」における検索に必要な情報を「景観ラベリングセンター50」に送信するものであるから、当然に、検索に必要な操作をおこなうための「操作手段」とも呼び得る手段を有している。また、「景観ラベリングセンター50」から受信したラベル情報を画像や文字で視覚機器に表示する「ラベル情報出力部47」を有しているから、検索結果を画像、文字を用いて出力する「出力手段」とも呼び得る手段も当然に有している。
(お)上記記載事項中の「地図情報管理部51」のうちの「視野空間中の構造物」を求める機能部分は、景観ラベリング端末から送出された撮影位置情報と焦点距離等からなる「カメラ属性情報」とも呼び得る情報と地図情報を用いて、地図情報空間の中における視野空間中の構造物の位置座標を求めており、該構造物の位置座標は、本願補正発明でいう「画像データの撮影場所」に他ならないから、該「地図情報管理部51」のうちの「視野空間中の構造物」を求める機能部分は、「画像データの撮影場所を特定する手段」とも呼び得るものである。
(か)上記記載事項中の「景観ラベリングセンター50」は、「地図情報管理部51」のうちの「構造物」を獲得する機能部分によって、3次元DBにアクセスして視野空間中の構造物を求めるとともに、「ラベル情報作成部52」によって、受信した画像の領域分割に関する情報を用いて該求めた構造物との対応付けを行っているから、該「地図情報管理部51」のうちの「構造物」を獲得する機能部分と「ラベル情報作成部52」とは、全体として、3次元DBにアクセスし、特定された撮影場所と、画像の領域分割に関する情報を検索項目として画像データに関連する情報を検索する「検索手段」とも呼び得る手段を有している。また、上記記載事項中の「景観ラベリングセンター50」が有する「通信制御部53」は、被対象物を検索して得られた「ラベル情報」を「景観ラベリング端末40」に送出する機能を有している。

したがって、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「ユーザが撮影した画像に関する情報を景観ラベリング端末から通信網を介して景観ラベリングセンターに送信し、該景観ラベリングセンターから通信網を介して画像データに関する情報の提供を受ける景観ラベリング端末を用いた撮影画像の情報提供システムにおいて、
前記景観ラベリング端末は、
被対象物を撮影し画像データを得るための画像取得部と、
前記被対象物の撮影時における地図上の撮影位置情報を取得する位置情報取得部と、
前記被対象物の撮影時におけるカメラ属性情報を取得するカメラ属性情報取得部と、
前記画像データを複数の部分領域に分割する画像処理部と、
検索要求時に前記撮影した被対象物の画像の領域分割に関する情報、撮影位置情報およびカメラ属性情報を景観ラベリング端末から前記景観ラベリングセンターに送出し、また、前記景観ラベリングセンターから返答された検索結果を受けるための通信制御部46と、
検索に必要な操作をおこなうための操作手段と、
前記検索結果を画像、文字を用いて出力するための出力手段と、
を備え、
前記景観ラベリングセンターは、
前記被対象物に対するCG画像データ、撮影位置情報およびカメラ属性情報に関する検索用の情報が格納された3次元地図DBと、
前記景観ラベリング端末から送出された前記撮影位置情報と前記カメラ属性情報とを用いて前記画像データの撮影場所を特定する手段と、
前記3次元DBにアクセスし、前記特定された撮影場所と、前記画像の領域分割に関する情報を検索項目として画像データに関連する情報を検索する検索手段と、
前記被対象物を検索して得られた検索結果を前記景観ラベリング端末に送出する通信制御部53と、を備えた撮影画像の情報提供システム。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-216309号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

う.「【0017】操作部16は、利用者による各種の入力を受け付ける。例えば、対象物の特定処理の開始を指示したり、多数の対象物が検索された場合に、その中から所望の対象物を探し出す操作などを行うことができる。また、例えば山、川、海、谷、橋、神社、寺院、ビルディングなどといった、対象物の種類を選択する選択手段としても機能させることができる。さらに、上述の位置情報取得部12,方位情報取得部13,距離情報取得部14,仰角情報取得部15などにおいて利用者が手動で各種の情報を指示する場合には、この操作部16を用いることができる。利用者が操作部16から入力を行う場合には、表示部17とともに用いて行うことができる。この操作部16についても、不要であれば設けなくてもよい。」

え.「【0019】制御部18は、位置情報取得部12により検出した現在位置と方位情報取得手段で検出した方向に基づいて対象物データベース11を検索し、対象物を特定する。このとき、例えば現在位置や方向について、ある程度の誤差を考慮した上で、対象物の検索を行うとよい。また、同じ方向に複数の対象物が検索される場合がある。そのような場合の対象物の特定精度を向上させるため、距離情報取得部14で取得した現在位置から対象物までの距離に関する情報を用いたり、仰角情報取得部15で取得した仰角に関する情報を用いて、対象物の検索を行い、あるいは検索された対象物を絞り込むことができる。仰角に関する情報は、例えば高い対象物や、高度の高い場所から対象物を見下ろす際に、対象物の特定精度を向上させることができる。これらの距離や仰角についても、ある程度の誤差を見込むことができる。もちろん、例えば距離の場合、値が設定されていなくても視認できる距離範囲に限定して検索を行うなど、検索条件については種々の工夫を行うとよい。さらに、操作部16において対象物の種類が選択される場合には、選択された対象物の種類によって、対象物を絞り込むことができる。絞り込んだ対象物が複数存在する場合には、例えば利用者からの指示に従い、候補となる対象物に関する情報を表示部17に順次表示させたり、一覧表示させるなどの制御を行うことができる。特定した対象物に関する情報は、表示部17に表示させる。あるいは、図示しない記憶手段に記憶させたり、他の処理手段あるいは外部機器に出力することもできる。」

(3)原査定時に引用された特開2002-108873号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。

お.「【0044】図8は、クライアント装置10のディスプレイデバイス13に実際に表示される合成画像の例を示している。この例で示される合成画像は、前述のように、クライアント装置10にて撮影されて送出されたイメージ情報を元に、センターシステム30のサーバ32にてパターンマッチングがなされ、関連するインフォメーションが抽出されてクライアント装置10に戻されたものである。この例では、イメージ情報の上に、4種類のオブジェクトインフォメーションが重ね合わされている。ここでは、4種類の記号によって、『この情報だけ』、『クリックによりテキスト情報を得る』、『クリックにより音声情報を得る』、『クリックによりウェブ情報を得る』を識別している。
【0045】例えばユーザが、イメージ情報の各オブジェクトの中からB会社(B Ltd.)の記号位置に、ポインティングデバイス15を用いてカーソルを移動し、クリックをしたものとする。マイクロプロセッサ21は、B会社(B Ltd.)が選択されたことを認識し、コミュニケーションデバイス26を介して、図5(b)に示すような詳細オブジェクトインフォメーションリクエストのデータ構造によって、認識された内容を含むパケットをセンターシステム30に送出する。センターシステム30は、このパケットに基づいて、図6(b)に示すような詳細オブジェクトインフォメーション応答の詳細情報130にB会社(B Ltd.)のウェブ情報(ウェブインフォメーション)を格納し、例えば、パケットによってクライアント装置10に返信する。このパケットを受信したユーザは、B会社(B Ltd.)のウェブ情報を例えばディスプレイデバイス13によって閲覧することができる。同様に、Xデパート(X Department)やY商店(Y Store)のテキスト情報、7階にあるE商店(7F E store)の音声情報を得ることが可能である。尚、Aビルディング(A bld)、3階にあるZ商店(3F Z store)、S通り(S street)、N通り(N street)には、付加情報が存在していない。
【0046】また、図8に示すような合成情報を取得したユーザは、音声入出力装置14、ポインティングデバイス15、テキスト入力デバイス16を用いて、特定の部位に対して音声、映像、テキスト入力を実施し、個人情報であることを示した状態にてその情報をセンターシステム30に送信することで、自分自身、即ち、移動体(人)独自の風景情報をセンターシステム30のイメージDB(個人用)35およびオブジェクトインフォメーションDB(個人用)36に格納することができる。ここでは、例えば、営業者が、自分の訪問先や得意先の情報をイメージと共にセンターシステム30に格納し、必要に応じてセンターシステム30にアクセスすることで情報を得るような利用形態が考えられる。」

2-3.本願補正発明と引用発明との対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、以下のことがいえる。
(1)引用発明の「通信網」、「景観ラベリングセンター」、「画像取得部」、「撮影位置情報」、「位置情報取得部」はそれぞれ、本願補正発明の「ネットワーク」、「センタ」、「撮影手段」、「撮影位置情報」、「位置情報取得手段」に相当する。
(2)引用発明の「ラベリング端末」と本願補正発明の「携帯端末」とは、ユーザが使用する「端末」である点で共通する。
(3)引用発明の「カメラ属性情報」と本願補正発明の「距離情報」とは、「撮影場所(視野空間中の構造物の位置座標)を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」である点で共通し、引用発明の「カメラ属性情報取得部」と本願補正発明の「距離情報取得手段」とは、「撮影場所(視野空間中の構造物の位置座標)を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」を取得する「情報取得手段」である点で共通する。
(4)引用発明の「被対象物の画像の領域分割に関する情報」と本願補正発明の「被対象物の画像データ」とは、「被対象物の画像に対応する情報」である点で共通し、引用発明の「通信制御部46」と本願補正発明の「通信手段」とは、検索要求時に「被対象物の画像に対応する情報」、「撮影位置情報」および「撮影場所(視野空間中の構造物の位置座標)を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」を端末からセンタ(景観ラベリングセンター)に送出し、返答された検索結果を受けるための通信手段である点で共通する。
(5)引用発明の「3次元DB」に格納されている被対象物に関するCG画像データも「被対象物に関する画像データ」の一種といえるから、該「3次元DB」と本願補正発明の「検索用データベース」とは、「被対象物に関する画像データ」、「撮影位置情報」および「撮影場所(視野空間中の構造物の位置座標)を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」に関する検索用の情報を格納するデータベースである点で共通する。
(6)引用発明の「画像データの撮影場所を特定する手段」と本願補正発明の「撮影位置特定手段」とは、端末から送出された「撮影位置情報」と「撮影場所(視野空間中の構造物の位置座標)を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」を用いて画像データの撮影場所を特定する点で共通する。
(7)引用発明の「検索手段」と本願補正発明の「検索手段」とは、特定された撮影場所(視野空間)と被対象物の画像に関するデータを検索項目として画像データに関連する情報をデータベースから検索する点で共通する。
(8)引用発明の「通信制御部53」と本願補正発明の「情報送出手段」とは、被対象物を指定に基づいて検索して得られた検索結果を端末に送出している点で共通する。

したがって、本願補正発明と引用発明との間には、以下の一致点、相違点があるといえる。

(一致点)
「ユーザが撮影した画像に関する情報を端末からネットワークを介してセンタに送信し、該センタからネットワークを介して画像データに関する情報の提供を受ける端末を用いた撮影画像の情報提供システムにおいて、
前記端末は、
被対象物を撮影し画像データを得るための撮影手段と、
前記被対象物の撮影時における地図上の撮影位置情報を取得する位置情報取得手段と、
前記被対象物の撮影時における撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報を取得する情報取得手段と、
検索要求時に被対象物の画像に対応する情報、撮影位置情報および撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報を端末から前記センタに送出し、また、前記センタから返答された検索結果を受けるための通信手段と、
検索に必要な操作をおこなうための操作手段と、
前記検索結果を画像、文字を用いて出力するための出力手段と、
を備え、
前記センタは、
前記被対象物に関する画像データ、撮影位置情報および撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報に関する検索用の情報が格納された検索用データベースと、
前記端末から送出された前記撮影位置情報と前記撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報を用いて前記画像データの撮影場所を特定する手段と、
前記検索用データベースにアクセスし、前記特定された撮影場所と、前記被対象物の画像に対応する情報を検索項目として前記被対象物の画像データに関連する情報を検索する検索手段と、
前記検索手段による検索結果を前記端末に送出する情報送出手段と、を備えた撮影画像の情報提供システム。」である点。

(相違点1)
本願補正発明の上記一致点でいう「端末」は、「携帯端末」であるのに対し、引用発明の上記一致点でいう「端末」(景観ラベリング端末)は、「携帯端末」であるとは必ずしも言えない点。

(相違点2)
本願補正発明は、ユーザが撮影した「画像」を「端末」からセンタに送信し、画像データに関する情報の提供を受けるものであって、その「検索手段」が検索項目とする「被対象物の画像に対応する情報」は「画像データ」であり、それに伴い、「端末」が有する「通信手段」は、検索要求時に「撮影した被対象物の画像データ」を送出するものとされているのに対し、引用発明は、ユーザが撮影した「画像」を「端末」からセンタに送信して画像データに関する情報の提供を受けるものものではなく、その「検索手段」が検索項目とする「被対象物の画像に対応する情報」は「画像データ」ではなく、それに伴い、「端末」が有する「通信手段」は、検索要求時に「撮影した被対象物の画像データ」を送出するものとはされていない点。

(相違点3)
本願補正発明の上記一致点でいう「画像データの撮影場所を特定する手段」(撮影位置特定手段)が画像データの撮影場所を特定するために用いる情報は、「撮影位置情報」と「距離情報」であり、それに伴い、本願補正発明の「情報取得手段」(距離情報取得手段)は、撮影時における「被対象物までの距離情報」を取得するものとされ、また、「通信手段」が送出する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」、「検索用データベース」が格納する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報に関する検索用の情報」も、それぞれ「距離情報」、「距離情報に関する検索用の情報」とされているのに対し、引用発明の上記一致点でいう「画像データの撮影場所を特定する手段」が画像データの撮影場所を特定するために用いる情報は、その一方は「撮影位置情報」であるものの他方は「距離情報」ではなく、それに伴い、引用発明の「情報取得手段」(カメラ属性情報取得部)は、撮影時における「被対象物までの距離情報」を取得するものとはされておらず、また、「通信手段」が送出する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」、「検索用データベース」が格納する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報に関する検索用の情報」も、それぞれ「距離情報」、「距離情報に関する検索用の情報」とはされていない点。

(相違点4)
本願補正発明の「情報送出手段」は、「被対象物を分野別の指定に基づいて検索して得られた検索結果」を送出するものであり、また送出される該「検索結果」は、「分野別の概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報」により構成されるものであるのに対し、引用発明の「情報送出手段」は、「被対象物を分野別の指定に基づいて検索して得られた検索結果」を送出するものではなく、また送出される該「検索結果」も、「分野別の概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報」により構成されるものではない点。

(相違点5)
本願補正発明の「検索手段」による「検索結果」を構成する「詳細情報」は、「指定された前記分野内におけるより詳細な複数の詳細項目」として送出されるものであり、該「検索手段」は、「当該複数の詳細情報のうちの携帯端末において指定された詳細項目に関連する提供先リンク」を送出するものであるのに対し、引用発明の「検索手段」による「検索結果」には「詳細情報」に相当する情報はなく、該「検索手段」は、「当該複数の詳細情報のうちの携帯端末において指定された詳細項目に関連する提供先リンク」を送出するものでもない点。

2-4.判断
上記相違点について検討する。

(相違点1について)
一般に画像の情報提供システムのユーザ側端末を携帯可能な構成とすることは、ごく普通に行われていることであること(必要であれば例えば上記引用例2の図4?6等を参照されたい。)、引用発明にそのようなごく普通に採用されている構成を採用できない理由はないこと、等の事情にかんがみれば、引用発明の「端末」を、「携帯端末」とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

(相違点2について)
以下の事情を勘案すると、引用発明を、ユーザが撮影した「画像」を端末からセンタに送信して画像データに関する情報の提供を受けるものものとし、その「検索手段」が検索項目とする「被対象物の画像に対応する情報」を「画像データ」とし、それに伴い、「端末」が有する「通信手段」を、検索要求時に「撮影した被対象物の画像データ」を送出するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(1)端末とセンタからなる画像の情報提供システムにおいて、センタ(センターシステム)に検索を要求するために、撮影された画像データ(イメージ情報)そのものをセンタに送出すること、及び、送出された画像データを元にセンタで検索(パターンマッチング)を行うことは、上記引用例3等にも示されるように(上記「2-2.」の「(3)」の「お.」の欄で摘記した事項)周知である。
(2)引用発明も端末とセンタからなる情報提供システムであり、そこにおいても、上記(1)に示した周知の技術が有用な場合があることは、当業者に自明であるし、またそのようにできない理由はない。したがって、引用発明において、「端末」が有する「通信手段」を、「撮影した被対象物の画像データ」(撮影した画像データそのもの)を送出するものとし、それに伴い、(センタが有する)「検索手段」が検索項目として用いる情報も送出された該「画像データ」とすることも、当業者が容易に推考し得たことというべきである。

(相違点3について)
以下の事情を勘案すると、引用発明の上記一致点でいう「画像データの撮影場所を特定する手段」が画像データの撮影場所を特定するために用いる情報を「撮影位置情報」と「距離情報」とし、それに伴い、引用発明の「情報取得手段」(カメラ属性情報取得部)を、撮影時における「被対象物までの距離情報」を取得するものとし、また、「通信手段」が送出する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」、「検索用データベース」が格納する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報に関する検索用の情報」も、それぞれ「距離情報」、「距離情報に関する検索用の情報」とすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(1)上記「2-2.」の「(2)」の「え.」の欄に摘記した引用例2の記載からも伺い知れるように、撮影場所を特定するための情報として、現在位置から対象物までの距離に関する情報を用いてもよいことは、当業者に自明である。
(2)引用発明において、撮影場所を特定するための情報として上記のような対象物までの距離に関する情報を用いることが有用な場合があることは、当業者に自明であるし、また、そのようにできない理由はない。
(3)引用発明において、上記距離情報を用いる場合に、引用発明の「情報取得手段」(カメラ属性情報取得部)を撮影時における「被対象物までの距離情報」を取得するものとし、「通信手段」が送出する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報」、「検索用データベース」が格納する「撮影場所を特定するために撮影位置情報と共に用いられる情報に関する検索用の情報」も、それぞれ「距離情報」、「距離情報に関する検索用の情報」とすべきことは当然であり、また、そのようにできない理由はない。

(相違点4について)
以下の事情を勘案すると、引用発明の「情報送出手段」を、「被対象物を分野別の指定に基づいて検索して得られた検索結果」を送出するものとし、また送出される該「検索結果」を、「分野別の概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報」により構成されるものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(1)端末とセンタからなる情報提供システムにおいて、センタで検索して得られた検索結果を、概要を示す「基本情報」(オブジェクトインフォメーション)と、該基本情報に対する前記端末の選択に基づき送出する「詳細情報」とにより構成することは、上記引用例3等にも示されるように(上記「2-2.」の「(3)」の「お.」の欄で摘記した事項)周知である。
(2)また、情報処理分野において、被対象物の検索を行う場合に、被対象物の「分野」(種類)を指定(選択)することによって被対象物を絞り込むことや、絞り込んだ分野別の情報を検索結果として表示させたりすることは、上記引用例2等にも記載があるように(上記「2-2.」の「(2)」の「え.」の欄で摘記した事項)周知である。
(3)引用発明も被対象物の検索を行う、端末とセンタからなる情報提供システムであり、上記(1)、(2)に示した周知の技術が有用な場合があることは、当業者に自明であるし、またそのようにできない理由はない。また、上記(相違点1について)で検討したように、引用発明の「端末」を、「携帯端末」とすることは、当業者が適宜に採用することができる構成にすぎない。
(4)上記(1)?(3)のことは、取りも直さず、引用発明の「情報送出手段」を、「被対象物を分野別の指定に基づいて検索して得られた検索結果」を送出するものとし、また送出される該「検索結果」を、「分野別の概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報」により構成されるものとすることが、当業者にとって容易であったことを意味している。

(相違点5について)
以下の事情を勘案すると、引用発明の「検索手段」による「検索結果」を構成する「詳細情報」を、「指定された前記分野内におけるより詳細な複数の詳細項目」として送出されるものとし、該「検索手段」を「当該複数の詳細情報のうちの携帯端末において指定された詳細項目に関連する提供先リンク」を送出するものとすることは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(1)端末とセンタからなる情報提供システムにおいて、送出される情報を構成する「詳細情報」を、より詳細な「複数の詳細項目」とすることも、例えば特開平11-142171号公報等に示されるように周知(周知技術A)であり、引用発明において、上記(相違点4について)の欄で検討したところにしたがって、「検索結果」を「分野別の概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報」により構成する際に、該「詳細情報」を、「より詳細な複数の詳細項目」とする周知技術をも併せて採用することは当業者が容易に推考し得たことである。
(2)端末とセンタからなる情報提供システムにおいて、「詳細情報」を、「端末において指定された詳細項目」に関連する「提供先リンク」の形式で提供することは、上記引用例3等に示されるように(上記「2-2.」の「(3)」の「お.」の欄で摘記した事項)周知であり、引用発明において、上記(相違点4について)の欄で検討したところにしたがって、「検索結果」を「分野別の概要を示す基本情報と、該基本情報に対する前記携帯端末の選択に基づき送出する詳細情報」により構成する際に、該「詳細情報」を、「端末において指定された詳細項目」に関連する「提供先リンク」とする周知技術をも併せて採用することは当業者が容易に推考し得たことである。
(3)上記(1)、(2)のことは、取りも直さず、引用発明において「検索手段」による「検索結果」を構成する「詳細情報」を、「指定された前記分野内におけるより詳細な複数の詳細項目」として送出されるものとし、該「検索手段」を「当該複数の詳細情報のうちの携帯端末において指定された詳細項目に関連する提供先リンク」を送出するものとすることが、当業者にとって容易であったことを意味している。

(本願発明の効果について)
本願発明の奏する効果は、引用発明及び周知の事項から予測される範囲内のものにすぎず、格別なものということはできない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3.むすび
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成20年6月30日付け手続補正書の請求項1に記載されたとおりのものである。
そして、その平成20年6月30日付け手続補正書の請求項1に記載された事項は、上記「第2」の「1.」の<本件補正前の特許請求の範囲の請求項1>の欄に転記したもとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2」の「2.」の「2-2.」の項に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、前記「第2」で検討した本願補正発明における「前記被対象物を分野別の指定に基づいて検索して得られた検索結果」の限定を省いて「検索により得られた検索結果」とし、「前記分野別の概要を示す基本情報」の限定を省いて「概要を示す基本情報」とし、「当該詳細情報は、指定された前記分野内におけるより詳細な複数の詳細項目として前記携帯端末に送出され、当該複数の詳細情報のうちの携帯端末において指定された詳細項目に関連する提供先リンクを前記携帯端末に送出する」の限定を省いて「詳細情報として前記基本情報に関連する情報を有する提供先リンクを検索し前記携帯端末に送出する」としたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、さらに特定の限定を施したものに相当する本願補正発明が前記「第2」の「2.」の項に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、上記特定の限定を省いた本願発明は、上記特定の限定に関して参酌した上記周知技術Aを参酌するまでもなく、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-09 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-28 
出願番号 特願2002-129345(P2002-129345)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
P 1 8・ 575- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 波内 みさ  
特許庁審判長 小曳 満昭
特許庁審判官 加内 慎也
岩崎 伸二
発明の名称 携帯端末を用いた撮影画像の情報提供システム、撮影画像の情報提供方法、およびその方法をコンピュータに実行させるプログラム  
代理人 酒井 昭徳  

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