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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1236859
審判番号 不服2008-6706  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-19 
確定日 2011-05-09 
事件の表示 特願2001-566181「基板熱管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成13年9月13日国際公開,WO01/67505、平成15年9月9日国内公表,特表2003-526921〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成13年2月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2000年3月7日,米国)を国際出願日とする出願であって,平成14年9月24日付け,同年11月8日付け,平成19年1月9日付け及び同年10月22日付けで手続補正がなされたところ,同年12月19日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,平成20年3月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年4月18日付けで手続補正がなされ,その後当審において,平成22年5月28日付けで審尋がなされ,同年8月31日に回答書が提出されたものである。

第2 平成20年4月18日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)について
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 本件補正の内容
本件補正は,平成19年10月22日付けで補正された本件補正前の請求項1を本件補正後の請求項1とする補正を含むものであって,本件補正前後の請求項1は,以下のとおりである。
(1)本件補正前の請求項1
「【請求項1】
ウェーハ表面に対して静止して置かれ,拡散器熱質量Mdと前記ウェーハ表面を加熱する加熱表面上に温度場Tdとを有する熱拡散器と,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msと前記熱拡散器に隣接する表面上にTdと異なる温度場Tsとを有する熱源と,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,リザーバ熱質量Mrを有し,熱搬送能力を備えた媒体を内部に包含する熱リザーバと,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,制御可能な温度Tskを有する熱搬送媒体を含み,かつシンク熱質量Mskを有する熱シンクと,
前記熱源に接続された少なくとも1つの制御可能な電源と,
を含むウェーハ熱管理装置であって,
前記熱シンク,前記熱源,前記熱リザーバ,前記熱拡散器,及び前記ウェーハ表面は一体化され,前記熱シンク及びウェーハ表面に結合する表面領域に広がる固体材料に亘る又は液体材料及び固体材料に亘る熱伝導によって不可分に連通しており,
前記熱シンク及び前記熱リザーバは,伝導及び対流熱伝達によって不可分に連通しており,
前記熱源が複数の独立制御可能な区域を含み,前記区域が異なる熱量を与えるようになっている,
ことを特徴とするウェーハ熱管理装置。」
(2)本件補正後の請求項1
「【請求項1】
ウェーハ表面に対して静止して置かれ,拡散器熱質量Mdと前記ウェーハ表面を加熱する加熱表面上に温度場Tdとを有する熱拡散器と,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msと前記熱拡散器に隣接する表面上にTdと異なる温度場Tsとを有する熱源と,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,リザーバ熱質量Mrを有し,熱搬送能力を備えた媒体を内部に包含する熱リザーバと,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,制御可能な温度Tskを有する熱搬送媒体を含み,かつシンク熱質量Mskを有する熱シンクと,
前記熱源に接続された少なくとも1つの制御可能な電源と,
を含むウェーハ熱管理装置であって,
前記熱シンク,前記熱源,前記熱リザーバ,前記熱拡散器,及び前記ウェーハ表面は一体化され,前記熱シンク及びウェーハ表面に結合する表面領域に広がる固体材料に亘る又は液体材料及び固体材料に亘る熱伝導によって不可分に連通しており,
前記熱シンク及び前記熱リザーバは,伝導及び対流熱伝達によって不可分に連通しており,
前記熱源が複数の独立制御可能な区域を含み,前記区域が異なる熱量を与えるようになっており,
前記制御可能な電源は制御装置(260)を含み,前記制御装置が前記熱源(240)に接続された前記電源(250)を制御し,前記熱源(340)内に埋め込まれた前記少なくとも一つの温度センサ(325)からの温度測定が,前記電源(350)を制御するために前記制御装置(360)へとフィードバックループを提供し,前記電源(350)は,前記熱源(340)に亘る温度プロフィールを制御するために,前記熱源(340)の前記加熱区域(320)への電力を制御する
ことを特徴とするウェーハ熱管理装置。」

2 補正事項の整理
本件補正のうち,本件補正後の請求項1に関する補正事項は,本件補正前の請求項1の「前記区域が異なる熱量を与えるようになっている,こと」を,本件補正後の請求項1の「前記区域が異なる熱量を与えるようになっており, 前記制御可能な電源は制御装置(260)を含み,前記制御装置が前記熱源(240)に接続された前記電源(250)を制御し,前記熱源(340)内に埋め込まれた前記少なくとも一つの温度センサ(325)からの温度測定が,前記電源(350)を制御するために前記制御装置(360)へとフィードバックループを提供し,前記電源(350)は,前記熱源(340)に亘る温度プロフィールを制御するために,前記熱源(340)の前記加熱区域(320)への電力を制御すること」と補正することである。

3 補正の目的の適否
本件補正後の請求項1に関する補正事項は,本件補正前の請求項1の「前記制御可能な電源」について,「制御装置(260)を含み,前記制御装置が前記熱源(240)に接続された前記電源(250)を制御し,前記熱源(340)内に埋め込まれた前記少なくとも一つの温度センサ(325)からの温度測定が,前記電源(350)を制御するために前記制御装置(360)へとフィードバックループを提供し,前記電源(350)は,前記熱源(340)に亘る温度プロフィールを制御するために,前記熱源(340)の前記加熱区域(320)への電力を制御する」構成を追加して,限定的に減縮したものであるから,特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

4 独立特許要件の検討
以上で検討したとおり,本件補正後の請求項1に関する補正事項は,平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるから,本件補正後の請求項1に記載されている事項により特定される発明が,特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて,さらに検討を進める。

4-1 本件補正後の請求項1に係る発明
本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)は,本件補正により補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるものであって,以下のとおりのものと認める。
「【請求項1】
ウェーハ表面に対して静止して置かれ,拡散器熱質量Mdと前記ウェーハ表面を加熱する加熱表面上に温度場Tdとを有する熱拡散器と,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msと前記熱拡散器に隣接する表面上にTdと異なる温度場Tsとを有する熱源と,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,リザーバ熱質量Mrを有し,熱搬送能力を備えた媒体を内部に包含する熱リザーバと,
前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,制御可能な温度Tskを有する熱搬送媒体を含み,かつシンク熱質量Mskを有する熱シンクと,
前記熱源に接続された少なくとも1つの制御可能な電源と,
を含むウェーハ熱管理装置であって,
前記熱シンク,前記熱源,前記熱リザーバ,前記熱拡散器,及び前記ウェーハ表面は一体化され,前記熱シンク及びウェーハ表面に結合する表面領域に広がる固体材料に亘る又は液体材料及び固体材料に亘る熱伝導によって不可分に連通しており,
前記熱シンク及び前記熱リザーバは,伝導及び対流熱伝達によって不可分に連通しており,
前記熱源が複数の独立制御可能な区域を含み,前記区域が異なる熱量を与えるようになっており,
前記制御可能な電源は制御装置(260)を含み,前記制御装置が前記熱源(240)に接続された前記電源(250)を制御し,前記熱源(340)内に埋め込まれた少なくとも一つの温度センサ(325)からの温度測定が,前記電源(350)を制御するために前記制御装置(360)へとフィードバックループを提供し,前記電源(350)は,前記熱源(340)に亘る温度プロフィールを制御するために,前記熱源(340)の前記区域(320)への電力を制御する
ことを特徴とするウェーハ熱管理装置。」
なお,本件補正後の請求項1には,「前記少なくとも一つの温度センサ(325)」及び「前記熱源(340)の前記加熱区域(320)」と記載されているが,これらが「少なくとも一つの温度センサ(325)」及び「前記熱源(340)の前記区域(320)」の誤記であることは文脈上明らかであるから,補正発明を上記のように認定した。

4-2 引用例に記載された発明
(1)原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第99/45745号(1999年9月10日国際公開,以下「引用例1」という。)には,次の記載がある。
ア 「The present invention allows precise, flexible
specification of temperature profiles, bake equilibrium
temperatures, and chill equilibrium temperatures. For example,
when the system is being used to process integrated circuits formed
on a semiconductor wafer substrate (also referred to herein as
a "semiconductor device"), across-the-workpiece temperature
uniformity can be controlled to within 0.2°C at equilibrium, and
average workpiece temperature can be controlled to within 0.01°C
over time.『本発明は,温度プロフィール,加熱平衡温度,及び冷却平衡温度についての仕様を,正確で柔軟なものとする。例えば,システムが,半導体ウエハ基板(ここでは,「半導体装置」ともいう。)上に形成される集積回路を処理するのに用いられる場合,加工品全体にわたる温度は,平衡状態で0.2℃以内に均一に制御することができ,また,加工品の平均温度を,所定の時間まで0.01℃以内に制御することができる。』」(4頁22?30行)
イ 「Figs.1a, 1b, and 1c schematically represent three
configurations,respectively, of a preferred embodiment of
a combination baking and chilling apparatus 10 (hereinafter also
referred to as "bake/chill apparatus 10") suitable for cycling
a workpiece, such as semiconductor device 12, through a temperature
profile comprising at least one baking step and at least
one chilling step.『図1a,図1b,図1cは,それぞれ三つの構成を示す概略図であり,少なくとも一回の加熱工程と少なくとも一回の冷却工程とを含む温度プロフィールにより,半導体装置12等の加工品をサイクルするのに適した加熱と冷却の複合装置10(以下「加熱/冷却装置10」という)の好適な実施形態を示している。』」(14頁1?21行)
ウ 「Bakeplate 20 has a first major surface 22 for supporting
semiconductor device 12 such that heat energy from bakeplate 20
can be transferred to semiconductor device 12 during baking.
Bakeplate 20 also includes second major surface 24 which
can be placed into thermal contact with cooling member 26.
"Thermal contact" means that bakeplate 20 and cooling member 26
are in sufficiently close proximity such that cooling effects of
cooling member 26 can be imparted to semiconductor device 12
through bakeplate 20. The most rapid cooling occurs when second
major surface 24 is in direct physical contact with cooling member
26 as shown in Fig.1c.『加熱プレート20は,半導体装置12を支持するための第1の主表面22を有し,この加熱プレート20からの熱エネルギーが,加熱中に半導体装置12に伝わるようになっている。また,加熱プレート20は,冷却部材26と熱接触するように配置される第2の主表面24も含む。「熱接触」とは,加熱プレート20と冷却部材26とが,極めて接近し,冷却部材26の冷却効果が,加熱プレート20を通して半導体装置12に伝わるようになっていることを意味する。最も急速な冷却は,図1cに示すように,第2の主表面24が冷却部材26と物理的に直接接触しているときに生じる。』」(15頁11?22行)
エ 「Cooling member 26 has relatively high thermal mass
as compared to semiconductor device 12 and bakeplate 20. Cooling
member 26 thus serves as a thermally massive heat sink and can be
maintained at any desired cooling temperature effective to provide
chilling, e.g., 15°C to 23°C being typical. Via thermal
conduction, bakeplate 20, and hence wafer 12, are rapidly chilled
when bakeplate 20 is placed into thermal contact with cooling member
26. Cooling member 26 includes cooling channels 28 which pass
through the interior of cooling member 26. This allows cooling
member 26 to be maintained at the desired cooling temperature by
circulating chilled cooling media, e.g., water or the like, through
cooling channels 28.『冷却部材26は,半導体装置12や加熱プレート20と比較して,比較的高い熱容量を有する。このため,冷却部材26は熱容量ヒートシンクとして機能し,例えば,典型例として15℃から23℃で冷却を行うのに効率的であるように,所望の冷却温度を保持することができる。加熱プレート20が冷却部材26と熱接触するように配置されると,熱伝導によって,加熱プレート20と,ひいてはウエハ12とが,急速に冷却される。冷却部材26は,冷却部材26の内部を貫通する冷却経路28を包含する。これにより,例えば水などの冷やされた冷却媒体が冷却経路28を循環することによって,冷却部材26が所望の冷却温度に保持される。』」(16頁12?22行)
オ 「In some instances, a desirable temperature profile for
bakeplate 20 can be achieved by maintaining thermal contact between
bakeplate 20 and cooling member 26 while both heating and chilling
semiconductor device 12 to some degree at the same time. Indeed,
simultaneous heating and cooling is particularly advantageous
for maintaining bakeplate 20, and hence wafer 12, at a desired
equilibrium temperature (which can be either a baking or chilling
equilibrium temperature, as desired) in which the bakeplate
equilibrium temperature is controlled to within +/-0.01 ℃.『場合によっては,加熱プレート20に対する望ましい温度プロフィールは,半導体装置12を,ある程度まで同時に加熱及び冷却している間に,加熱プレート20と冷却部材26との間の熱接触を維持することによって達成することができる。実際,加熱と冷却を同時に行うことは,望ましい平衡温度(必要により,加熱又は冷却の平衡温度のいずれかである)に,加熱プレート20と,ひいてはウエハ12とを維持するのに特に有用であり,これにより,加熱プレートの平衡温度は,±0.01℃以内に制御される。』」(17頁25行?18頁3行)
カ 「Specifically, during a temperature ramp period, portions
of wafer 12 proximal to edge 13 tend to "lead" interior portions of
wafer 12. That is, during baking ramps, edges 13 tend to be somewhat
hotter than interior portions of wafer 12, and during chilling ramps
or at equilibrium, edges 13 tend to be somewhat cooler.
To compensate for such temperature edge effects, bakeplate 20
advantageously may incorporate two independent heating zones
including at least a first inner heating zone portion underlying
at least the interior portion of wafer 12 and a second outer,
annular shaped heating zone portion underlying at least portions
of annular member 40. The boundary between the two heating zones
can be placed under annular member 40, under wafer 12, and/or
under gap 63, as desired.『特に,温度が変化する間は,エッジ13に近接するウエハ12の部分は,ウエハ12の内側部分よりも「先に変化する」傾向にある。すなわち,加熱上昇時には,エッジ13はウエハ12の内側部分よりもいくらか高温になる傾向にあり,冷却降下時又は平衡時には,エッジ13はいくらか低温になる傾向にある。このような温度のエッジ効果を補うためには,加熱プレート20は,少なくともウエハ12の内側部分の下に位置する第1の内側加熱ゾーン部分と,少なくとも環状部材40の部分の下に位置する第2の外側環状加熱ゾーン部分とを含む,2つの独立した加熱ゾーンを組み込むことが有用である。2つの加熱ゾーン間の境界は,必要により,環状部材40の下とウエハ12の下と隙間63の下,あるいはそれらのいずれかに配置することができる。』」(20頁11行?21頁5行)
キ 「Such first and second heating zone portions preferably
would be independently controllable so that the temperature profile
across the diameter of semiconductor device 12 can be made more
uniform by independently adjusting the heat output of each zone
portion. Thus, if temperature edge effects were to be observed,
the second heating zone portion could be adjusted to output a lower
or higher amount of heating energy, as appropriate, relative to
the first heating zone portion in order to reduce, and preferably
eliminate, such effects. The different heating zones may,
if desired, be controlled by separate heater controllers.
Alternatively, the zones may share a common controller that controlsthe zones so that their respective heat outputs can be controlled
in the desired manner.『このような第1及び第2の加熱ゾーン部分は,好ましくは独立して制御することができ,それぞれのゾーン部分の熱出力を独立して調整することによって,半導体装置12の直径方向にわたる温度プロフィールをより均一にすることができる。したがって,もし仮に,温度のエッジ効果が観察されたならば,第2の加熱ゾーン部分は,こうした影響を低減,好ましくは除去するために,第1の加熱ゾーン部分に対して適切なように,より低い又はより高い加熱エネルギー量を出力するように調整される。必要であれば,異なる加熱ゾーンを,別々のヒータコントローラによって制御することができる。あるいは,これらのゾーンが,各ゾーンを制御する共通のコントローラを共有することで,それぞれの熱出力を所望の方法で制御することもできる。』」(20頁11行?21頁5行)
ク 「Accordingly, it is much more desirable to monitor
the temperature of semiconductor device 12 indirectly by attaching
a suitable temperature sensor to annular member 40, particularly
when the thermal capacity of annular member 40 is matched to that
of wafer 12 as discussed above. Under such circumstances, the actual
temperature of the top surface of semiconductor device 12
substantially corresponds to the temperature of the top surface
of annular member 40 at substantially all times during baking and/or
chilling, even during temperature ramps. Indeed, the difference
in temperature between the top surface of annular member 40 and
the top surface of semiconductor device 12 is substantially
constant, and more preferably negligible, as a practical matter.『したがって,特に上記で述べたように,環状部材40の熱容量が,ウエハ12の熱容量と一致する場合には,適切な温度センサを環状部材40に取りつけることにより,間接的に半導体装置12の温度を監視することがより望ましい。このような状況において,半導体装置12の上部表面の実際の温度は,加熱時及び/又は冷却時,また温度変化時においてさえ,ほぼ全ての時点において,環状部材40の上部表面の温度とほぼ一致する。実際,環状部材40の上部表面と半導体装置12の上部表面との温度差は,実行上,ほぼ一定であり,より好ましくは無視することができる。』」(23頁11?25行)
ケ 「Accordingly, Fig.10 is a schematic diagram of
one embodiment of an innovative control system 300 of the present
invention in which DC power is modulated using a high frequency PWM
control signal to control the heat output of a low thermal mass
bakeplate of the present invention. In system 300, resistor 302
represents the resistance of the bakeplate. As an overview,
controller 304 develops a high frequency, pulse width modulated
control signal in response to temperature signals generated by
temperature sensor 306. Temperature sensor is thermally coupled to
bakeplate 302, as indicated by double-headed arrow 305. The PWM
control signal is used to operate switch 342 for the "on" portion
of the duty cycle of each pulse of the control signal. This
establishes a corresponding voltage across resistor 302 that is
proportional to the duty cycle of the PWM control signal. The power
output of the heater is then proportional to the square of such
voltage.『したがって,図10は,本発明の革新的な制御システム300の一実施形態の概略図であり,本発明では,高周波のPWM制御信号を使用して直流電力を変調し,本発明の低熱容量の加熱プレートの熱出力を制御する。システム300では,抵抗302は加熱プレートの抵抗を表す。概ね,コントローラ304は,温度センサ306によって発生した温度信号に応答して,高周波のパルス幅変調した制御信号が発生する。温度センサは,二重方向矢印305で示されるように,加熱プレート302と熱的に結合している。PWM制御信号は,制御信号の各パルスにおけるデューティサイクルの「オン」部分で,スイッチ342を作動させるのに使用される。これにより,PWM制御信号のデューティサイクルに比例した,抵抗302に掛かる電圧を発生する。そして,ヒータの電力出力は,この電圧の二乗に比例している。』」(40頁13?25行)
(2)上記(1)ア及びイによれば,引用例1に記載された発明は,少なくとも一回の加熱工程と少なくとも一回の冷却工程とを含む温度プロフィールにより,半導体装置12等の加工品をサイクルするのに適した加熱/冷却装置10であり,また,半導体ウエハ基板を半導体装置ともいうのであるから,加熱・冷却工程を含む温度プロフィールにより,半導体ウエハ基板12を熱サイクルするのに適した加熱/冷却装置10に関するものである。
(3)上記(1)ウによれば,引用例1には,加熱プレート20は,半導体装置12を支持するための第1の主表面22を有し,この加熱プレート20からの熱エネルギーが,加熱中に半導体装置12に伝わることが記載されているから,半導体ウエハ基板12を支持するための第1の主表面22を有し,加熱中に,熱エネルギーを半導体ウエハ基板12に伝える加熱プレート20が開示されている。
(4)上記(1)ウ及びエによれば,引用例1には,加熱プレート20と冷却部材26とが,極めて接近し,冷却部材26の冷却効果が,加熱プレート20を通して半導体装置12に伝わること,及び,冷却部材26は,熱容量ヒートシンクとして機能し,内部を貫通する冷却経路28を包含し,冷却媒体が冷却経路28を循環することが記載されている。したがって,引用例1には,加熱プレート20と極めて接近することで,冷却効果を加熱プレート20を通して半導体ウエハ基板12に伝える熱容量ヒートシンクとして機能し,内部を貫通する冷却経路28に冷却媒体が循環する冷却部材26と,冷却媒体が循環する冷却経路28が開示されている。
(5)上記(1)ケによれば,引用例1には,制御システム300では,高周波のPWM制御信号を使用して直流電力を変調し,低熱容量の加熱プレートの熱出力を制御することが記載されているから,高周波のPWM制御信号を使用して直流電力を変調し,加熱プレートの熱出力を制御する制御システム300が開示されている。
(6)上記(1)カ及びキによれば,引用例1には,加熱プレート20は,少なくともウエハ12の内側部分の下に位置する第1の内側加熱ゾーン部分と,少なくとも環状部材40の部分の下に位置する第2の外側環状加熱ゾーン部分とを含む,2つの独立した加熱ゾーンを組み込むこと,及び,第1及び第2の加熱ゾーン部分は,好ましくは独立して制御することができ,それぞれのゾーン部分の熱出力を独立して調整することが記載されている。したがって,引用例1には,加熱プレート20が,ウエハ12の内側部分の下に位置する第1の内側加熱ゾーン部分と,少なくとも環状部材40の部分の下に位置する第2の環状の外側加熱ゾーン部分とを含む,2つの独立した加熱ゾーンを組み込み,第1及び第2の加熱ゾーン部分を独立して制御し,それぞれのゾーン部分の熱出力を独立して調整することが開示されている。
(7)上記(1)キ,ク及びケによれば,引用例1には,各ゾーンを制御する共通のコントローラを共有することで,それぞれの熱出力を所望の方法で制御すること,適切な温度センサを環状部材40に取りつけることにより,間接的に半導体装置12の温度を監視すること,コントローラ304は,温度センサ306によって発生した温度信号に応答して,高周波のパルス幅変調した制御信号が発生すること,PWM制御信号のデューティサイクルに比例した,抵抗302に掛かる電圧を発生し,ヒータの電力出力は,この電圧の二乗に比例していることが記載されている。したがって,図10における制御システム300の構成を参酌すると,引用例1には,制御システム300では,コントローラ304が,環状部材40に取りつけられた温度センサ306によって生じた温度信号に応答して,高周波のパルス幅変調した制御信号を発生させ,PWM制御信号のデューティサイクルに比例したレジスタ302の電圧の二乗に比例したヒータの電力を出力し,各加熱ゾーン部分のそれぞれの熱出力を制御することが開示されている。
(8)よって,引用例1には,以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「半導体ウエハ基板12を支持するための第1の主表面22を有し,加熱中に,熱エネルギーを半導体ウエハ基板12に伝える加熱プレート20と,
加熱プレート20と極めて接近することで,冷却効果を加熱プレート20を通して半導体ウエハ基板12に伝える熱容量ヒートシンクとして機能し,内部を貫通する冷却経路28に冷却媒体が循環する冷却部材26と,
冷却媒体が循環する冷却経路28と,
高周波のPWM制御信号を使用して直流電力を変調し,加熱プレートの熱出力を制御する制御システム300と,
を含む,加熱・冷却工程を含む温度プロフィールにより,半導体ウエハ基板12を熱サイクルするのに適した加熱/冷却装置10であって,
加熱プレート20が,ウエハ12の内側部分の下に位置する第1の内側加熱ゾーン部分と,少なくとも環状部材40の部分の下に位置する第2の環状の外側加熱ゾーン部分とを含む,2つの独立した加熱ゾーンを組み込み,第1及び第2の加熱ゾーン部分を独立して制御し,それぞれのゾーン部分の熱出力を独立して調整するようになっており,
制御システム300では,コントローラ304が,環状部材40に取りつけられた温度センサ306によって生じた温度信号に応答して,高周波のパルス幅変調した制御信号を発生させ,PWM制御信号のデューティサイクルに比例したレジスタ302の電圧の二乗に比例したヒータの電力を出力し,各加熱ゾーン部分のそれぞれの熱出力を制御する
ことを特徴とする加熱/冷却装置10。」

4-3 補正発明と引用発明との対比
(1)引用発明の「半導体ウエハ基板12」は,補正発明の「ウェーハ」に相当する。そして,引用発明の「加熱プレート20」は,補正発明の「熱源」に対応し,また,半導体ウエハ基板12を支持するための第1の主表面22を有しているのであるから,半導体ウエハ基板12に対し静止して置かれているものである。さらに,引用発明の「加熱プレート20」は,加熱プレートとして機能するために,何某かの熱源熱質量と何某かの温度場とを有していることは明らかである。したがって,引用発明の「半導体ウエハ基板12を支持するための第1の主表面22を有し,加熱中に,熱エネルギーを半導体ウエハ基板12に伝わる加熱プレート20」は,補正発明の「前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msと前記熱拡散器に隣接する表面上にTdと異なる温度場Tsとを有する熱源」に対応し,補正発明と引用発明とは,補正発明が,約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msと前記熱拡散器に隣接する表面上にTdと異なる温度場Tsとを有することは別にして,「前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,熱源熱質量Msと温度場Tsとを有する熱源」である点で共通する。
(2)引用発明の「冷却媒体」は,冷却部材26の内部を貫通する冷却経路28を循環するものであり,また,冷却媒体としての機能からみて熱搬送能力を備えていることは明らかであるから,補正発明の「媒体」に相当する。そして,引用発明の「冷却部材26」は,冷却部材として機能するために,何某かのリザーバ熱質量を有していることも明らかである。したがって,引用発明の「加熱プレート20と極めて接近することで,冷却効果を加熱プレート20を通して半導体ウエハ基板12に伝える熱容量ヒートシンクとして機能し,内部を貫通する冷却経路28に冷却媒体が循環する冷却部材26」は,補正発明の「前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,リザーバ熱質量Mrを有し,熱搬送能力を備えた媒体を内部に包含する熱リザーバ」に対応し,補正発明と引用発明とは,補正発明が,ウェーハ表面に対して静止して置かれていることは別にして,「リザーバ熱質量Mrを有し,熱搬送能力を備えた媒体を内部に包含する熱リザーバ」である点で共通する。
(3)引用発明の「冷却媒体」は,冷却部材26が,冷却効果を半導体ウエハ基板12に伝える熱容量ヒートシンクとして機能するために,冷却部材26の内部を貫通する冷却経路28を循環するものであり,また,何某かの制御可能な温度を有していることは明らかであるから,補正発明の「熱搬送媒体」に相当する。そして,引用発明の「冷却部材26」は,冷却部材として機能するために,何某かのシンク熱質量を有していることも明らかである。したがって,引用発明の「冷却媒体が循環する冷却経路28」は,補正発明の「前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,制御可能な温度Tskを有する熱搬送媒体を含み,かつシンク熱質量Mskを有する熱シンク」に対応し,補正発明と引用発明とは,補正発明が,ウェーハ表面に対して静止して置かれていることは別にして,「制御可能な温度Tskを有する熱搬送媒体を含み,かつシンク熱質量Mskを有する熱シンク」である点で共通する。
(4)引用発明の「制御システム300」は,高周波のPWM制御信号を使用して直流電力を変調し,加熱プレートの熱出力を制御するのであるから,加熱プレートに接続され,制御可能なものである。したがって,引用発明の「高周波のPWM制御信号を使用して直流電力を変調し,加熱プレートの熱出力を制御する制御システム300」が,補正発明の「前記熱源に接続された少なくとも1つの制御可能な電源」に相当する構成を有していることは明らかである。
(5)引用発明の「加熱/冷却装置10」は,加熱・冷却工程を含む温度プロフィールにより,半導体ウエハ基板12を熱サイクルするのであるから,半導体ウエハ基板12の熱管理を行うものである。したがって,引用発明の「加熱・冷却工程を含む温度プロフィールにより,半導体ウエハ基板12を熱サイクルするのに適した加熱/冷却装置10」は,補正発明の「ウェーハ熱管理装置」に相当する。
(6)引用発明の「冷却部材26」は,加熱プレート20と極めて接近することで,冷却効果を加熱プレート20を通して半導体ウエハ基板12に伝える熱容量ヒートシンクとして機能し,内部を貫通する「冷却経路28」に冷却媒体が循環するのであるから,引用発明の「冷却経路28」と「冷却部材26」が,伝導及び対流熱伝達によって不可分に連通していることは明らかである。したがって,引用発明は,補正発明の「前記熱シンク及び前記熱リザーバは,伝導及び対流熱伝達によって不可分に連通して」いることに相当する構成を具備している。
(7)引用発明の「第1の内側加熱ゾーン部分」と「第2の環状の外側加熱ゾーン部分」は,加熱プレート20における2つの独立した加熱ゾーンであり,それぞれのゾーン部分の熱出力を独立して調整するようになっているから,引用発明の「加熱プレート20」は,2つの独立制御可能な「第1の内側加熱ゾーン部分」と「第2の環状の外側加熱ゾーン部分」を含み,「第1の内側加熱ゾーン部分」と「第2の環状の外側加熱ゾーン部分」に異なる熱量を与えるようになっていることは,明らかである。したがって,引用発明の「第1の内側加熱ゾーン部分」及び「第2の環状の外側加熱ゾーン部分」は,補正発明の「区域」に対応する。
そうすると,引用発明の「加熱プレート20が,ウエハ12の内側部分の下に位置する第1の内側加熱ゾーン部分と,少なくとも環状部材40の部分の下に位置する第2の環状の外側加熱ゾーン部分とを含む,2つの独立した加熱ゾーンを組み込み,第1及び第2の加熱ゾーン部分を独立して制御し,それぞれのゾーン部分の熱出力を独立して調整するようになって」いることは,補正発明の「前記熱源が複数の独立制御可能な区域を含み,前記区域が異なる熱量を与えるようになって」いることに対応し,補正発明と引用発明とは,補正発明の区域が複数であることは別にして,「前記熱源が2つの独立制御可能な区域を含み,前記区域が異なる熱量を与えるようになって」いる点で共通する。
(8)引用発明の「コントローラ304」は,補正発明の「制御装置(260)」に相当し,また,引用発明の「温度センサ306」は,補正発明の「温度センサ(325)」に対応する。したがって,引用発明の「制御システム300」では,コントローラ304が,環状部材40に取りつけられた温度センサ306によって生じた温度信号に応答して,高周波のパルス幅変調した制御信号を発生させ,PWM制御信号のデューティサイクルに比例したレジスタ302の電圧の二乗に比例したヒータの電力を出力し,各加熱ゾーン部分のそれぞれの熱出力を制御するのであるから,制御可能な制御システム300は,コントローラ304を含み,コントローラ304が加熱プレート20に接続された制御システム300を制御し,少なくとも一つの温度センサ306からの温度測定が,制御システム300を制御するためにコントローラ304へとフィードバックループを提供し,制御システム300は,加熱プレート20に亘る温度プロフィールを制御するために,加熱プレート20の各加熱ゾーン部分への電力を制御していることは,明らかである。
そうすると,引用発明の「制御システム300では,コントローラ304が,環状部材40に取りつけられた温度センサ306によって生じた温度信号に応答して,高周波のパルス幅変調した制御信号を発生させ,PWM制御信号のデューティサイクルに比例したレジスタ302の電圧の二乗に比例したヒータの電力を出力し,各加熱ゾーン部分のそれぞれの熱出力を制御すること」は,補正発明の「前記制御可能な電源は制御装置(260)を含み,前記制御装置が前記熱源(240)に接続された前記電源(250)を制御し,前記熱源(340)内に埋め込まれた少なくとも一つの温度センサ(325)からの温度測定が,前記電源(350)を制御するために前記制御装置(360)へとフィードバックループを提供し,前記電源(350)は,前記熱源(340)に亘る温度プロフィールを制御するために,前記熱源(340)の前記区域(320)への電力を制御すること」に対応し,補正発明と引用発明とは,補正発明の温度センサ(325)が,熱源(340)内に埋め込まれていること,及び,補正発明の電源(350)が,熱源(340)の区域(320)への電力を制御することは別にして,「前記制御可能な電源は制御装置(260)を含み,前記制御装置が前記熱源(240)に接続された前記電源(250)を制御し,少なくとも一つの温度センサ(325)からの温度測定が,前記電源(350)を制御するために前記制御装置(360)へとフィードバックループを提供し,前記電源(350)は,前記熱源(340)に亘る温度プロフィールを制御するために,前記熱源(340)への電力を制御する」点で共通する。
(9)以上のことを踏まえると,補正発明と引用発明とは,
「前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,熱源熱質量Msと温度場Tsとを有する熱源と,
リザーバ熱質量Mrを有し,熱搬送能力を備えた媒体を内部に包含する熱リザーバと,
制御可能な温度Tskを有する熱搬送媒体を含み,かつシンク熱質量Mskを有する熱シンクと,
前記熱源に接続された少なくとも1つの制御可能な電源と,
を含むウェーハ熱管理装置であって,
前記熱シンク及び前記熱リザーバは,伝導及び対流熱伝達によって不可分に連通しており,
前記熱源が2つの独立制御可能な区域を含み,前記区域が異なる熱量を与えるようになっており,
前記制御可能な電源は制御装置(260)を含み,前記制御装置が前記熱源(240)に接続された前記電源(250)を制御し,少なくとも一つの温度センサ(325)からの温度測定が,前記電源(350)を制御するために前記制御装置(360)へとフィードバックループを提供し,前記電源(350)は,前記熱源(340)に亘る温度プロフィールを制御するために,前記熱源(340)への電力を制御する
ことを特徴とするウェーハ熱管理装置。」
である点で一致し,以下の相違点1?7で相違する。
相違点1:補正発明は,ウェーハ表面に対して静止して置かれ,拡散器熱質量Mdとウェーハ表面を加熱する加熱表面上に温度場Tdとを有する熱拡散器を含むのに対し,引用発明では,そのような構成がない点。
相違点2:熱源が,補正発明では,約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msと前記熱拡散器に隣接する表面上にTdと異なる温度場Tsとを有するのに対し,引用例1では,熱拡散器を含まないため,そのような構成がない点。
相違点3:熱リザーバと熱シンクが,補正発明では,ウェーハ表面に対して静止して置かれるのに対し,引用発明では,そのような構成ではない点。
相違点4:補正発明は,熱シンク,熱源,熱リザーバ,熱拡散器,及びウェーハ表面は一体化され,熱シンク及びウェーハ表面に結合する表面領域に広がる固体材料に亘る又は液体材料及び固体材料に亘る熱伝導によって不可分に連通しているのに対し,引用例1では,熱拡散器を含まない上,そのような構成が不明な点。
相違点5:区域が,補正発明では,複数であるのに対し,引用例1では,「第1の内側加熱ゾーン部分」及び「第2の環状の外側加熱ゾーン部分」という2つの加熱ゾーンである点。
相違点6:温度センサ(325)が,補正発明では,熱源(340)内に埋め込まれているのに対し,引用例1では,環状部材40に取りつけられている点。
相違点7:電源(350)が,補正発明では,熱源(340)の区域(320)への電力を制御するのに対し,引用例1では,各加熱ゾーン部分のそれぞれの熱出力を制御している点。

4-4 当審の判断
(1)相違点1及び2について
ア まず,ウェーハの熱処理装置において,ウェーハ表面に対して静止して置かれる熱拡散器を,熱源に隣接して設けることは,例えば下記の周知例1?2,周知例3のア,又は周知例4のアに記載されているように,従来周知の技術である。また,このような熱拡散器が,熱拡散器として機能するために,何某かの拡散器熱質量と,ウェーハ表面を加熱する加熱表面上に何某かの温度場とを有していることは明らかである。
イ そして,熱源の熱質量は,当業者がウェーハの大きさ等を勘案して適宜選択できる技術的な設計事項にすぎないから,拡散器熱質量Mdを有する熱拡散器に隣接して熱源を設けた場合に,約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msを有する熱源とすることに,格別の困難性を認めることはできない。また,ウェーハ表面を加熱する加熱表面上に温度場Tdを有する熱拡散器に隣接して熱源を設けた場合に,熱拡散器が熱拡散器として機能するのであれば当然に,熱拡散器に隣接する表面上に有する熱源の温度場Tsは,Tdと異なるものとなることは明らかである。
ウ そうすると,下記の周知例4のアに記載されているように,熱拡散器を熱源に隣接して設けるか否かは,必要により適宜選択すればよい技術的事項であるから,ウェーハの熱処理装置における従来周知の技術を引用発明に適用し,補正発明のように,「ウェーハ表面に対して静止して置かれ,拡散器熱質量Mdと前記ウェーハ表面を加熱する加熱表面上に温度場Tdとを有する熱拡散器」と,「約0.1(Md)に等しいか又はそれ以下の熱源熱質量Msと前記熱拡散器に隣接する表面上にTdと異なる温度場Tsとを有する」熱源とを含む構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。

・周知例1:原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-25882号公報(平成3年2月4日出願公開)
ア 従来の技術として,「一般に半導体集積回路の製造において,半導体ウェハ上にレジストを塗布する塗布工程やレジスト塗布後露光して後の現像工程では,半導体ウェハ表面上の水分及びレジスト溶剤の除去あるいは露光後のフォトレジストパターンの変形を軽減するためにウェハを加熱処理するベーキングが行われている。このベーキング工程で使用される加熱装置として,抵抗線材を方形平板状に形成し,絶縁物内に配設,封入した発熱板を用い,さらに発熱板の抵抗線材の分布に応じて生じる温度分布不均一性を緩衝するための熱拡散板を積層したものが使用されていた。」(1頁左下欄18行?右下欄9行)
イ 上記アによれば,周知例1の「半導体ウェハ」,「熱拡散板」,「発熱板」は,補正発明の「ウェーハ」,「熱拡散器」,「熱源」にそれぞれ相当する。

・周知例2:原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-121149号公報(平成11年4月30日出願公開)
ア 図1及び図2を参照して,「【0013】
【発明の実施の形態】以下,本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は,本発明の面状加熱装置の斜視図であり,図2は図1におけるX-X方向の断面図である。本発明の面状加熱装置は,一方の表面に発熱抵抗体2が焼成されたセラミック製の伝熱基材1と,セラミック製の基体3と,伝熱基材1の発熱抵抗体2が形成されていない他方の表面に配置される銅系の金属よりなる熱拡散基材4と,この熱拡散基材4の伝熱基材1が配置されていない表面に配置される加熱基材5,よりなる4部材を重ね合わせて固定した構造である。そして,加熱板である加熱基材5の表面に,ウエハあるいは液晶基盤等の非加熱物を載置して,加熱するものである。」
イ 上記アによれば,周知例2の「ウエハ」,「熱拡散基材4」,「伝熱基材1」は,補正発明の「ウェーハ」,「熱拡散器」,「熱源」にそれぞれ相当する。

・周知例3:特開昭62-98610号公報(昭和62年5月8日出願公開)
ア 発明の背景として第1図を参照し,「従来の基板加熱用 ータ(審決注:「 ータ」は「ヒータ」の誤記である。)の構造は,第1図に示す様に,Ta,Wなどを発熱体11として用いる。該発熱体は通常1本のワイヤまたは,リボンで作られており,ヒータ構成としては1ゾーンとなっている。この様な1ゾーン構成のヒータをInレス基板の加熱に用いる場合,該発熱体と基板13の間に熱拡散板12を挿入し,基板13の面内温度分布が均一なる様にしているが実際には,その値は±3?5℃ともある。」(1頁左下欄18行?右下欄6行)
イ 第2図を参照して,「実施例1
第2図は,本発明の成長基板加熱機構に,被加熱GaAsウエハを取付た状態を示す側断面図である。図中21は,PBNの円板で出来た発熱体サセプター,22,23はTa製発熱体であり,22は内側に,23は外側に各々独立して巻いてあり,各々独立に温度コントロール出来る構造となっている。24は,内側の発熱体の電流導入線,25は外側の発熱体の電流導入線あり,26,27は,各々の発熱体の測温のための熱電対である。28は,熱拡散板であり,カーボン板29の半分を例えばPBN30でコーティングしたものであり,発熱体22,23の固定用押え板を兼ねている。31は効率的な加熱を実現するためのTa製熱遮ヘイ板,32は被加熱用基板ウエハーであり,0.2mm厚さのMoで作ったサセプタ33に取り付け加熱される。該サセプターはMo製のサセプタ取付ロッド34に,スプリング35,押えリング36で固定して取つけられている。なお該基板32は,Moサセプタ33と共に例えば37の矢印の方向に回転できる様になっており,均熱性と成長時の膜厚,組成の分布を均一性を確保している。」(2頁左上欄13行?右上欄15行)
ウ 第2図を参照して,「本加熱機構の最も大きな特徴は加熱ヒータが2つのゾーンに分れて各々別々に温度制御出来る点にあり,任意の温度分布を面内で実現出来ることである。第2図の実施例では2ゾ一ン例を示したが,ゾーン数は面積の制約等がなければさらに多く出来ること言うまでもない。」(2頁右上欄16行?左下欄1行)
エ 上記アによれば,周知例3の「基板13」,「熱拡散板12」,「発熱体11」は,補正発明の「ウェーハ」,「熱拡散器」,「熱源」にそれぞれ相当する。

・周知例4:原査定の拒絶の理由に引用された国際公開第99/18602号(1999年4月15日国際公開)
ア 「The thermal cycling module comprises a heating element 14,
a heat exchanger 16 and a power source (not shown). In addition,
although not preferred, the thermal cycling module may also comprisea thermally conductive plate. The thermally conductive plate
(not shown), if used, is positioned below the substrate 10, is
in thermal contact with the heating element 14 and the heat
exchanger 16, and in a preferred embodiment, sits directly above
the heating element 14. If no thermally conductive plate is used,
then the heating element 14 is in thermal contact with the substrate10 and, in a preferred embodiment, rests directly below the
substrate 10. Alternatively, the heating element 14 can be placed
below the heat exchanger 16 or in a surface of the heat exchanger
16. A heating element also can be added around the perimeter of
the heat exchanger 16, either in addition to the previously listed
heaters or on its own. The heating element 14 is electrically
connected to a power source and is in thermal contact with
the substrate 10.『熱サイクルのモジュールは,発熱体14,熱交換器16及び電源(図示せず)を含む。さらに,好ましくはないが,熱サイクルのモジュールは,熱伝導性のプレートも含む。熱伝導性のプレート(図示せず)は,使用された場合,基板10の下に置かれ,発熱体14及び熱交換器16と熱接触し,好ましい具体例としては,発熱体14の上に直接位置する。熱伝導性のプレートが使用されない場合,発熱体14は,基板10と熱接触し,好ましい具体例としては,基板10の下に直接位置している。あるいは,発熱体14は,熱交換器16の下に,又は熱交換器16の表面中に置かれる。また,発熱体は,熱交換器16の周囲に,又は,前述したヒーターに加えて若しくはそれ自体の上のいずれかに,追加することができる。発熱体14は,電源と電気的に接続され,基板10と熱接触している。』」(6頁21行?7頁3行)
イ 「Also in thermal contact with the substrate 10, and
in a preferred embodiment, below the heating element 14, is the heat
exchanger 16. The heat exchanger 16 has an upper surface 17, a lower
surface 18, and an outer perimeter surface 19. In a preferred
embodiment, the heating element 14 is fixedly attached to the heat
exchanger, as is generally known by those skilled in the art.『さらに基板10との熱接触するものとして,また好ましい具体例として,発熱体14の下には,熱交換器16が存在する。熱交換器16は,上部表面17,下部表面18及び外側周囲表面19を有している。好ましい具体例としては,当業者に一般に知られているように,発熱体14は,熱交換器に固定して付けられている。』」(7頁4?8行)
ウ 「The heat exchanger 16 of the present invention is designed
to disperse thermally conductive fluid through the heat exchanger 16in a generally radial manner. In a preferred embodiment, the heat
exchanger 16 has a circular horizontal cross-section. A fluid
introducing body introduces fluid either generally around
the perimeter of the heat exchanger 16 or generally at the center
of the heat exchanger 16, and an isotropic porous material causes
the fluid to generally evenly disperse in all directions thus
creating a generally radial flow toward either the center or
the perimeter of the heat exchanger 16, respectively. The generally
uniform radial fluid flow causes an axi-symmetric temperature
profile across the heat exchanger, the baking and chilling surface
(which is either the top of the thermally conductive plate or
the top of the heating element 14 depending on whether a thermally
conductive plate is used), and, accordingly, the substrate.『この発明の熱交換器16は,おおよそ放射状に熱交換器16内を通る熱伝導性の流体を分散させるように設計されている。好ましい具体例として,熱交換器16は環状の水平断面を有している。流体の導入体が,熱交換器16のおおよそ周囲で,又は熱交換器16のおおよそ中心のいずれかで,流体を導入し,等方的に穴のあいた材料が,流体をおおよそ均等になるように全方向に分散させる。こうして,熱交換器16の中心又は周囲のそれぞれいずれかに向けて,おおよそ放射状の流れが形成される。おおよそ一定の放射状の流体の流れは,熱交換器,(熱伝導性のプレートが使用されているかどうかによって,熱伝導性のプレートの上面,又は発熱体14の上面のいずれかである)加熱・冷却している表面,及びそれに応じて基板の全体にわたって線対称な温度プロフィールをもたらす。』」(7頁9?20行)
エ 上記ア?ウによれば,周知例4の「基板10」,「熱伝導性のプレート」,「発熱体14」,「熱交換器16」,「熱伝導性の流体」が通る「熱交換器16」の内部は,補正発明の「ウェーハ」,「熱拡散器」,「熱源」,「熱リザーバ」,「熱シンク」にそれぞれ相当する。

(2)相違点3及び4について
ア 上記4-2(1)ウによれば,引用例1には,加熱プレート20は,冷却部材26と熱接触するように配置される第2の主表面24を含み,また,最も急速な冷却は,図1cに示すように,第2の主表面24が冷却部材26と物理的に直接接触しているときに生じることが記載されているから,加熱プレート20が,第2の主表面24で冷却部材26と物理的に直接接触することも開示されている。
そして,上記4-2(1)オによれば,引用例1には,加熱プレート20に対する望ましい温度プロフィールは,半導体装置12を,ある程度まで同時に加熱及び冷却している間に,加熱プレート20と冷却部材26との間の熱接触を維持することによって達成することができ,加熱と冷却を同時に行うことは,望ましい平衡温度に,加熱プレート20とウエハ12とを維持するのに特に有用であり,これにより加熱プレートの平衡温度が,±0.01℃以内に制御されることが記載されている。したがって,引用例1には,加熱プレート20と冷却部材26との間の熱接触を維持し,加熱と冷却を同時に行うことで,加熱プレート20とウエハ12とを望ましい平衡温度に維持し制御することが開示されている。
イ そうすると,熱シンクを内部に有する熱リザーバ,熱源,熱拡散器及びウェーハを静止して置き,一体化して,熱伝導によって不可分に連通すること自体は,例えば前示の周知例4のア?ウに記載されているように従来周知の技術であるから,この従来周知の技術を引用発明において採用し,補正発明における,熱リザーバと熱シンクが「前記ウェーハ表面に対して静止して置かれ,」また,「前記熱シンク,前記熱源,前記熱リザーバ,前記熱拡散器,及び前記ウェーハ表面は一体化され,前記熱シンク及びウェーハ表面に結合する表面領域に広がる固体材料に亘る又は液体材料及び固体材料に亘る熱伝導によって不可分に連通して」いる構成とすることは,当業者が容易になし得ることである。

(3)相違点5及び7について
ウェーハの熱処理装置において,熱源が複数の独立制御可能な区域を含み,区域が異なる熱量を与えるようになっており,制御可能な電源が制御装置を含み,制御装置が熱源に接続された電源を制御し,温度センサからの温度測定が,電源を制御するために制御装置へとフィードバックループを提供し,電源は,熱源に亘る温度プロフィールを制御するために,熱源の区域への電力を制御する技術は,下記の引用例2?4,又は前示の周知例3のイ及びウに記載されている。そうすると,引用例1及び引用例2?4,周知例3はすべて,ウェーハの熱処理に関するものであるから,引用発明に引用例2?4等に記載されている技術を適用し,第1の内側加熱ゾーン部分及び第2の環状の外側加熱ゾーン部分という2つの加熱ゾーンを複数とし,制御システム300が,加熱プレート20の複数の独立した加熱ゾーンへの電力を制御する構成,すなわち,補正発明の「前記熱源が複数の独立制御可能な区域を含み,前記区域が異なる熱量を与えるようになっており,」「前記電源(350)は,」「前記熱源(340)の前記区域(320)への電力を制御する」という相違点5及び7からなる構成とすることは,当業者が容易に想到し得るものである。
(なお,前示の周知例3に記載された「加熱ヒータ」,「各々独立に温度コントロール出来る」「発熱体22,23」,「熱電対26,27」は,実施例では2ゾ一ンからなる例ではあるが,ゾーン数はさらに多くできるのであるから,補正発明の「熱源」,「複数の独立制御可能な区域」,「温度センサ」にそれぞれ相当する。また,周知例3に記載された「成長基板加熱機構」は,加熱ヒータが2つのゾーンに分れて各々別々に温度制御できるから,補正発明の「電源」及び「制御装置」に相当する構成を有していることは明らかである。)

・引用例2:原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-204402号公報(平成11年7月30日出願公開)
ア 「【0007】本発明は,このような課題を解決するためになされたもので,少ない温度センサで正確な温度管理を行うことができ,ひいてはウエハWの全体にわたって均一な熱処理を施すことのできる熱処理装置を提供することを目的とする。
【0008】また本発明は,ウエハWを熱処理する際の温度制御を高精度に行うことのできる熱処理装置を提供することを目的とする。」
イ 図6?図8を参照して,「【0062】図6に示したように,この熱処理盤58はドーナツ形の5つの領域P1?P5から形成されている。これらの領域P1?P5は同心円状に形成され,P1?P5の内部にはそれぞれ独立したヒータH1?H5,例えばP1?P5の各領域と同じドーナツ形に形成されたニクロム線ヒータ(図示省略)等が配設されている。これらのヒータは互いに独立に配線されており,P1?P5の各領域に供給する熱量をそれぞれ独立して制御することができるようになっている。
【0063】この熱処理盤58の外側から2番目の領域P2と4番目の領域P4にはセンサを取り付けるための穴が垂直方向に開けられており,この穴の中にセンサS1とセンサS2とがそれぞれ垂直方向を向けて取り付けられている。これらのセンサS1,S2は熱処理盤58の水平方向の温度分布を検出するためのものである。また,熱処理盤58の図6中右側面方向からは水平方向の穴が上下2つ平行に開けられており,領域P1を貫通し領域P2の途中まで達している。
【0064】図6及び図7に示したように,これらの穴にもセンサS3,S4が取り付けられている。これらのセンサS3,S4は熱処理盤58の垂直方向の温度分布を検出するためのものである。
【0065】図8は本実施形態に係る熱処理ユニットの制御系を図示したブロック図である。この図8に示すように,熱処理盤58の各領域P1?P5の内部にはそれぞれヒータH1?H5が配設されている。これらのヒータH1?H5は制御装置90と接続されており,この制御装置90によりその出力が制御されている。またセンサS1?S4もこの制御装置90に接続されており,熱処理盤58の各部分の温度が制御装置90により認識されるようになっている。」
ウ 図6及び図7を参照して,「【0071】このようにして,センサS1,S2からの温度検出信号とヒータH1?H5への電力供給信号とから領域P1,P3,P5を含む熱処理盤58全体の温度分布を推定する。
【0072】次に,この推定した熱処理盤58全体の温度分布に基づいて,H1?H5の各ヒータに供給する電力を調節して熱処理盤58全体が均一な温度になるようにヒータH1?H5の出力を制御する。」
エ 図6及び図8を参照して,「【0077】そしてこれらセンサS3,S4で検出した領域P2の上下二か所の温度を指標として熱処理盤58表面の温度分布を推定する。即ち,センサS3,S4で検出した領域P2温度から上記したテーブルを利用して,他のP1及びP3?P5の領域の表面付近の温度を推定する。そしてこれら領域P1?P5の各表面温度が不均一な場合には,上記したテーブルを利用してヒータH1?H5の出力を制御し,熱処理盤58の表面が均一で適正な温度になるように調節する。」
オ 上記ア?エによれば,引用例2に記載された「ヒータH1?H5」,「ドーナツ形の5つの領域P1?P5」,「制御装置90」,「センサS1?S4」は,補正発明の「熱源」,「複数の独立制御可能な区域」,「制御装置」,「温度センサ」にそれぞれ相当する。また,上記ウによれば,引用例2に記載された「熱処理ユニット」は,H1?H5の各ヒータに供給する電力を調節して,熱処理盤58全体が均一な温度になるように,ヒータH1?H5の出力を制御しているのであるから,補正発明の「電源」に相当する構成を有していることは明らかである。

・引用例3:特開平11-67619号公報(平成11年3月9日出願公開)
ア 図1を参照して,「【0014】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は,本発明の基板加熱装置の一実施形態を模式的に示す分解斜視図であり,この基板加熱装置は,被加熱基板としての半導体ウェハWを上面に載置して加熱する円板状の加熱部1と,加熱部1に供給する電力を制御する制御装置21(電源を含む)とから構成されている。」
イ 図1及び図2を参照して,「【0016】上部板状部材2は,優れた熱伝導度を有するアルミニウム等で形成するのが好ましい。また,断熱板5および断熱材6としては,・・・等が好ましく用いられる。このような積層構造にした加熱部1では,ヒータープレート3から発生した熱が,上部板状部材2の上面に載置された半導体ウェハWに伝達され易く,その他の部位での放熱は妨げられるようになっているため,ヒータープレート3に供給する電力を制御することで,半導体ウェハWに伝達される熱量を容易に調節することができる。
【0017】ヒータプレート3は,上部板状体2下面の中央領域2aに対応させて配設された略円板状の中央ヒータ3aと,上部板状体2下面の外周側領域2bおよび2cに対応させて中央ヒータ3aの周囲に配設した略C字型の2つの外周ヒータ3bおよび3cとから構成されている。これら3つのヒータには,制御装置21からそれぞれ別々に電力の供給を受けるための電極8a?8cが設けてある。この電極8a?8cでは発熱が生じないため,中央領域2aに比べて放熱し易い外周側領域2bおよび2cでは,外周ヒータ3bの一端部に設けた電極8bが,外周ヒータ3cの他端部の下側に位置するように配設し,同様に,外周ヒータ3cの一端部に設けた電極8cが,外周ヒータ3bの他端部の下側に位置するように配設して,加熱できない部分をなくし,上部板状体2上面の全体を温度制御できるようにしてある。
【0018】また,上部板状部材2の下面には,3つのヒータ3a?3cのそれぞれが当接する位置に孔部9a?9cが穿設してあり,この孔部9a?9cには温度センサ10a?10cが挿合してある。各温度センサ10a?10cは,軸線方向の一端部に検知部11を有する略円筒形のものであり,検知部11の側から各孔部9a?9c挿合してある。そして,温度センサ10a?10cは制御装置21に接続されており,制御装置21は温度センサ10a?10cの出力に基づいて,上部板状体2上面の全体が均一な温度になるように,3つのヒータ3a?3cの各々に供給する電力を調節して,それぞれの発熱量を制御するようになっている。尚,各温度センサ10a?10cは,検知部を除く外面を断熱材12で覆ってあり,隣接領域からの熱的影響を可及的に防止するようにしてある。」
ウ 上記イによれば,引用例3に記載された「ヒータプレート3」,「3つのヒータ3a?3c」,「制御装置21」,「温度センサ10a?10c」は,補正発明の「熱源」,「複数の独立制御可能な区域」,「制御装置」,「温度センサ」にそれぞれ相当する。また,上記アによれば,引用例3に記載された「基板加熱装置」は,加熱部1に供給する電力を制御する制御装置21は電源を含み,温度センサ10a?10cの出力に基づいて,上部板状体2上面の全体が均一な温度になるように,3つのヒータ3a?3cの各々に供給する電力を調節して,それぞれの発熱量を制御するのであるから,補正発明の「電源」に相当する構成を有していることは明らかである。

・引用例4:特開平5-209278号公報(平成5年8月20日出願公開)
ア 「【0001】
【産業上の利用分野】本発明はプラズマ気相成長装置(以下プラズマCVD装置と称す)に関し,特に被処理基板(以下ウェハーと称す)の温度制御機構に関する。」
イ 図1を参照して,「【0006】
【実施例】次に本発明について図面を参照して説明する。図1(a)は本発明の実施例1のプラズマCVD装置の断面図,図1(b)はそのヒーター部の平面図である。本実施例のプラズマCVD装置は,チャンバー1,シャワー電極板2,ホルダー3,均熱板4,ヒーターA5,ヒーターB11,自動温調器A6,自動温調器B12で構成される。シャワー電極板2は中空で,一端から導入されたプロセスガスをもう一端の表面に明けられた小孔から噴出させる構造となっている。ホルダー3は円盤状で,ウェハー7をセットするための複数の穴が円周に沿って明けられている。また,ホルダー3にはホルダー回転軸8が取り付けられ,ホルダー3を任意の速度で回転することが可能である。また,図1(b)に示すように,実施例1のプラズマCVD装置では,ヒーターはヒーターA5とヒーターB11の2つにリング状に分割されており,それぞれに自動温調器A6と熱電対A9,自動温調器B12と熱電対B13を備えているので,ウェハー7の内側と外側をそれぞれ独立して加熱することが可能である。」
ウ 図2を参照して,「【0009】図2(a)は本発明の実施例2の断面図,図2(b)はヒーター部の平面図である。実施例2においては,ヒーターはヒーターA5,ヒーターB11,ヒーターC14の3つに分割されており,それぞれに自動温調器A6と熱電対A9,自動温調器B12と熱電対B13,自動温調器C15と熱電対C16を備えているので,ウェハー7の面内温度分布をより正確に調整することが可能となる。実施例2のプラズマCVD装置では,成長膜厚ウェハー面内ばらつきが3%に低減される。」
エ 「【0010】
【発明の効果】以上説明したように本発明は,複数のゾーンに分割されたヒータを備え,各ゾーンの温度を独立に制御することにより,均熱板のゆがみによって生ずるプラズマ酸化膜の成長膜厚のウェハー面内ばらつきを低減することができる。そのため,コンタクトホール等を形成する際のエッチング不良による半導体装置の製造歩留り低下を防止することができるという効果を有する。」
オ 上記ア?エによれば,引用例4に記載された「ヒーター」,3つに分割された「ヒーターA5,ヒーターB11,ヒーターC14」,「自動温調器A6,B12,C15」,「熱電対A9,B13,熱電対C16」は,補正発明の「熱源」,「複数の独立制御可能な区域」,「制御装置」,「温度センサ」にそれぞれ相当する。また,上記エによれば,引用例4に記載された「温度制御機構」は,複数のゾーンに分割されたヒータを備え,各ゾーンの温度を独立に制御しているのであるから,補正発明の「電源」に相当する構成を有していることは明らかである。

(4)相違点6について
温度センサを熱源内に埋め込むことは,例えば前示の引用例2のイ又は下記の周知例5に記載されているように,ウェーハの熱処理装置において従来周知の技術である。そうすると,この従来周知の技術を引用発明に適用し,温度センサ306を,環状部材40に取りつけることに代えて,加熱プレート20に取りつける構成とすること,すなわち,補正発明のように,温度センサ(325)を熱源(340)内に埋め込まれるようにすることに,格別の困難性を認めることはできない。

・周知例5:特開平3-196206号公報(平成3年8月27日出願公開)
従来の技術として,「従来,この熱処理例えばベーキング処理は,例えば枚葉式の場合には,例えばSUSやアルミニウムからなり,ニクロム線などの発熱抵抗体を内蔵した加熱板上に被処理基板を載置すると共に,例えば加熱板に熱電対や測温抵抗体等の温度センサを埋設し,この温度センサにより温度をモニターすることにより,処理温度をコントロールするようにしている。」(1頁左下欄20行?右下欄7行)

(5)そして,相違点1?7を総合して判断したとしても,補正発明は,例えば前示の周知例1?5に記載されたようなウェーハの熱処理装置における従来周知の技術を勘案した上で,前示の引用例2?4に記載されている技術を引用発明に適用することにより,当業者が容易に想到し得るものである。

(6)以上のとおり,補正発明は,従来周知の技術を勘案することにより,引用発明及び引用例2?4等に記載されている技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4-5 独立特許要件についてのまとめ
以上のとおりであるから,本件補正は,本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであり,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しない。

5 本件補正についてのむすび
以上検討したとおり,本件補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので,特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は,上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?28に係る発明は,平成19年10月22日付けで補正された明細書及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1?28に記載された事項により特定されるとおりのものであり,その内の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,上記第2,1(1)に摘示したとおりのものである。

2 引用発明
引用発明は,上記第2,4-2(8)で認定したとおりのものである。

3 対比・判断
上記第2,3で検討したように,補正発明は,本件補正前の請求項1を限定したものである。逆に言えば,本件補正前の請求項1に係る発明(本願発明)は,補正発明から,このような限定をなくしたものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,これをより限定したものである補正発明が,前記第2,4において検討したとおり,従来周知の技術を勘案することにより,引用発明及び引用例2?4等に記載されている技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も,同様の理由により,当業者が容易に発明をすることができたものということができる。

4 まとめ
以上検討したとおり,本願発明は,従来周知の技術を勘案することにより,引用発明及び引用例2?4等に記載されている技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
以上のとおりであるから,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶すべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-15 
結審通知日 2010-12-16 
審決日 2010-12-28 
出願番号 特願2001-566181(P2001-566181)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 572- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北島 健次河口 雅英  
特許庁審判長 廣瀬 文雄
特許庁審判官 相田 義明
近藤 幸浩
発明の名称 基板熱管理システム  
代理人 大賀 眞司  
代理人 大貫 敏史  
代理人 稲葉 良幸  
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