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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1236861
審判番号 不服2008-15298  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-06-17 
確定日 2011-05-09 
事件の表示 特願2001-531141「層間金属接続のための自己整合金属キャップ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月26日国際公開、WO01/29892、平成15年 9月16日国内公表、特表2003-527743〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯

本願は、2000年10月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1999年10月18日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年11月20日付けで手続補正がなされ、平成20年3月13日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年6月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年7月16日付けで手続補正がなされ、その後、平成22年6月11日付けで審尋がなされ、同年10月18日に回答書が提出されたものである。

第2.平成20年7月16日付けの手続補正についての却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成20年7月16日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.手続補正の内容
平成20年7月16日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲の請求項6の補正を含むものであるところ、請求項6の本件補正前後の記載は、次のとおりである。

(補正前)
「 【請求項6】 自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法において、
第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は実質的に平坦な表面(210)を有する、
前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)上に耐火金属(208)を堆積させる、
合金(212)が前記金属構造(206)上の前記の実質的に平坦な表面(210)上だけに形成されるように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、
前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する、
前記金属構造(206)の上に残った合金(212)により金属キャップが形成される、
その際、このキャップ金属が300Å?500Åの厚さを有する、
前記合金(212)上に第2の誘電体層(220)を形成する、
前記の第2の誘電体層(220)を開口して、前記合金(212)内に終わるビア(222)を形成する、及び
前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させて、前記合金(212)を通る前記金属構造(206)に対するコンタクトを設ける
ステップからなることを特徴とする、自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法。」

(補正後) (下線部は補正箇所)
「 【請求項6】 自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法において、
第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は平坦な研磨された表面(210)を有する、
前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)上に耐火金属(208)を堆積させる、
合金(212)が前記金属構造(206)との合金だけを形成するように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、
この平坦な研磨された表面の下の高さに配置されている前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する、
前記金属構造(206)の上に残った合金(212)により金属キャップが形成される、
その際、このキャップ金属が300Å?500Åの厚さを有する、
前記合金(212)上に第2の誘電体層(220)を形成する、
前記の第2の誘電体層(220)を開口して、前記合金(212)内に終わるビア(222)を形成する、及び
前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させて、前記合金(212)を通る前記金属構造(206)に対するコンタクトを設ける
ステップからなることを特徴とする、自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法。」

2.補正目的の適否
(1)本件補正のうち、請求項6についての補正事項を整理すると以下のとおりである。

(補正事項1)
補正前の請求項6の「第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は実質的に平坦な表面(210)を有する、」を、補正後の請求項6の「第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は平坦な研磨された表面(210)を有する、」と補正すること。

(補正事項2)
補正前の請求項6の「合金(212)が前記金属構造(206)上の前記の実質的に平坦な表面(210)上だけに形成されるように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、」を、補正後の請求項6の「合金(212)が前記金属構造(206)との合金だけを形成するように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、」と補正すること。

(補正事項3)
補正前の請求項6の「前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する、」を、補正後の請求項6の「この平坦な研磨された表面の下の高さに配置されている前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する、」と補正すること。

(2)これら補正事項1?3の補正目的について、以下のとおり検討する。

(補正事項1)
補正事項1は、「第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける」際の「前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)」の「表面(210)」について、補正前の請求項6に係る発明では「実質的に平坦な表面(210)」としていたものを、補正後の請求項6に係る発明では「平坦な研磨された表面(210)」として、これを研磨により平坦性を持たせたものに限定するものであるから、補正事項1は、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

(補正事項2)
補正事項2は、特許法第17条の2第4項第3号に掲げる誤記の訂正を目的とするものに該当する。

(補正事項3)
補正事項3は、補正前の請求項6に係る発明で「一部が前記金属構造(206)の上に残る」とされた「前記合金(212)」について、補正後の請求項6に係る発明では「この平坦な研磨された表面の下の高さに配置されている前記合金(212)」と限定するものであるから、補正事項3は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

以上によれば、請求項6についての本件補正は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の限定的減縮に該当するものを含む。

(3)そこで、次に、請求項6についての補正内容が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定(独立特許要件)を満たすかどうかについて検討する。

3.独立特許要件(容易想到性)についての検討
(1)本件補正による補正後の発明
本件補正による補正後の請求項6に係る発明(以下「本願補正発明」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項6に記載されている事項により特定されるとおりのものである。

(2)引用例の記載と引用発明
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である、特開平10-144685号公報(以下「引用例」という。)には、図1-図6とともに、次の記載がある。(下線は当審で付加したもの。以下同じ。)

「【0021】(実施の形態1)実施の形態1においては、溝部11内に埋め込まれた配線14を構成する材料として、アルミニウム合金(Al-Cu)を用い、チタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16を配線14の表面に形成する。尚、全面に金属膜15を成膜した後、金属膜15と配線14とを反応させ、次いで、未反応の金属膜15を除去することによって被覆層16を形成した。更には、実施の形態1における配線構造を、被覆層16の上方の層間絶縁層20に形成された接続孔24、及び層間絶縁層20に形成された上層配線25を有する構造とした。尚、接続孔24及び上層配線25の形成は、所謂高圧リフロー法にて行った。以下、絶縁層10等の模式的な一部断面図である図1?図6を参照して、実施の形態1の半導体装置における配線形成方法を説明する。
【0022】[工程-100]先ず、図示しない半導体基板上に、例えばBPSGから成る絶縁層10をCVD法にて成膜し、かかる絶縁層10にRIE法で溝部11を形成する。溝部11の深さを0.5μm、幅を0.5μmとした。尚、溝部11は、図1?図8の紙面垂直方向に延びている。
【0023】[工程-110]次に、溝部11内に配線材料層13を埋め込み、配線14を形成する。具体的には、先ず、予備加熱処理を行い、絶縁層10から水分を放出させることが好ましい。予備加熱処理の条件を、以下の表1に例示する。予備加熱の方式として、例えば、基板裏面からのガス加熱方式、即ち、半導体基板の裏面に配置したヒーターブロックを所定の温度(加熱温度)に加熱し、ヒーターブロックと半導体基板の裏面の間にガスを導入することによって半導体基板を加熱する方式を挙げることができるが、これに限定されず、ランプ加熱方式等を用いることもできる。
【0024】
【表1】
基板加熱温度:500゜C
加熱時間 :1分間
使用加熱ガス:アルゴンガス
ガス圧力 :10^(3)Pa
【0025】その後、かかる溝部11内を含む絶縁層10上に、TiN層(厚さ50nm)/Ti層(厚さ20nm)の積層構造から構成された第1の下地層12を、以下の表2に例示する条件のDCマグネトロンスパッタ法にて形成する。第1の下地層12は、配線材料層が流動するための濡れ性改善層としての機能を有する。尚、図において、第1の下地層12を1層で表した。
【0026】
【表2】Ti層の成膜条件
ターゲット :Ti
プロセスガス:アルゴンガス=100sccm
圧力 :0.4Pa
成膜温度 :200゜C
DCパワー :6kW
TiN層の成膜条件
ターゲット :Ti
プロセスガス:窒素ガス/アルゴンガス=70/20sccm
圧力 :0.4Pa
成膜温度 :200゜C
DCパワー :12kW
【0027】その後、高温スパッタ法、リフロー法あるいは高圧リフロー法によって、アルミニウム合金から成り、厚さ1.5μmの配線材料層13を全面に成膜し、溝部11内を配線材料層13で埋め込む。リフロー法あるいは高圧リフロー法におけるDCマグネトロンスパッタ条件を、以下の表3に例示する。その後、以下の表4又は表5に例示する条件にて、配線材料層13が流動化する温度に絶縁層10を加熱する。これによって、溝部11の上方の配線材料層13が溝部11内に流入し、あるいは押し込まれ、配線14が形成される(図1の(B)参照)。尚、以上の[工程-110]の一連の操作は、半導体基板の搬送を含め高真空雰囲気中で行うことが、第1の下地層12の表面に酸化膜が形成されることを防止する上で好ましい。
【0028】
【表3】
ターゲット :Al-Cu(0.5%)
プロセスガス:アルゴンガス=100sccm
圧力 :0.4Pa
成膜温度 :200゜C
DCパワー :15kW
【0029】
【表4】(リフロー法)
プロセスガス:アルゴンガス
圧力 :10^(3)Pa
リフロー時間:1分
基板加熱温度:500゜C
【0030】
【表5】(高圧リフロー法)
プロセスガス:アルゴンガス
圧力 :70MPa
リフロー時間:1分
基板加熱温度:450゜C
【0031】[工程-120]次いで、絶縁層10上の配線材料層13及び第1の下地層12をエッチバック法や化学的・機械的研磨法(CMP法)にて除去する。こうして、半導体基板の上に設けられた絶縁層10に形成された溝部11内に埋め込まれたアルミニウム合金から成る配線(下層配線)14が形成される(図1の(C)参照)。CMP法の条件を、以下の表6に例示する。
【0032】
【表6】
研磨圧力 :100gf/cm^(2)回転数 :定盤/研磨ヘッド=30/30rpm
研磨用スラリー :NH_(4)OHベース(フュームドシリカ含有)
研磨用スラリー流量:100cm^(3)/分
温度 :25?30゜C
【0033】[工程-130]次に、配線14の表面に、導電材料から成る被覆層16を形成する。実施の形態1においては、全面に金属膜15を成膜した後、金属膜15と配線14とを反応させ、次いで、未反応の金属膜15を除去することによって被覆層16を形成する。具体的には、表2に例示した条件のDCマグネトロンスパッタ法にて、厚さ0.1μmのTiから成る金属膜15を全面に成膜する(図2の(A)参照)。次に、以下の表7に例示する加熱条件にて、金属膜15と配線14とを反応させ、被覆層16を配線14の表面に形成する(図2の(B)参照)。被覆層16はチタン-アルミニウム系合金から成る。
【0034】
【表7】
加熱雰囲気 :窒素ガス雰囲気
加熱時間 :2分
基板加熱温度:450゜C
【0035】次に、アンモニア過水を用いた表8に例示するウエットエッチングにより、未反応の金属膜15を除去する。これによって、図2の(C)に示す構造を得ることができる。尚、表6に示した条件のCMP法によって、未反応の金属膜15を除去してもよい。
【0036】
【表8】
アンモニア過水:NH_(4)OH/H_(2)O_(2)/H_(2)O=1/2/1
エッチング温度:50゜C
エッチング時間:10分
【0037】[工程-140]次に、絶縁層10及び被覆層16の上に、例えばSiO_(2)から成り、厚さ1.1μmの層間絶縁層20をCVD法にて形成する。そして、被覆層16の上方の層間絶縁層20に開口部21AをRIE法にて形成する。尚、実施の形態1においては、次いで、開口部21Aの上方部分を通る溝部21BをRIE法にて層間絶縁層20に形成する。尚、溝部21Bは、図の紙面垂直方向に延びている。開口部21Aの径を0.3μm、深さを0.6μm、溝部21Bの幅を0.5μm、深さを0.5μmとした。こうして、図3に示す構造を得ることができる。
【0038】[工程-150]その後、層間絶縁層20や絶縁層10中の水分を放出するために、例えばファーネス・アニール法にて半導体基板を加熱する。加熱条件を、以下の表9に例示する。
【0039】
【表9】
加熱雰囲気 :窒素ガス雰囲気
加熱時間 :30分
基板加熱温度:450゜C
【0040】被覆層16が設けられているので、層間絶縁層20に開口部21Aを形成した後のこの熱処理時、開口部21Aの底部の配線14の部分が隆起することを確実に防止することができる結果、配線14にボイドが発生することを確実に抑制することができる。従って、配線14の信頼性が低下することはない。
【0041】[工程-160]次に、層間絶縁層20上に配線材料層23を形成し、開口部21A内及び溝部21B内を配線材料層23で埋め込む。この工程は、配線材料層23が流動化しない温度に層間絶縁層20を保持した状態で配線材料層23をスパッタ法にて成膜した後、高圧下、配線材料層23が流動化する温度に層間絶縁層20を加熱する工程から成る。具体的には、表2に示した[工程-110]と同様の方法で、開口部21A内及び溝部21B内を含む層間絶縁層20上にTiN層/Ti層から構成された第2の下地層22を成膜する。尚、図においては、第2の下地層22を1層で表した。その後、表3に示した条件でSi-Cu(0.5%)から成る配線材料層23を層間絶縁層20上に成膜する(図4参照)。層間絶縁層20の上に堆積した配線材料層23は、層間絶縁層20が十分に加熱されていないため、流動状態とならず、通常、開口部21内には流れ込まないため、開口部21の上方の配線材料層23はブリッジ状となる。その後、表5に示した条件の高圧リフロー処理を行う。これによって、開口部21A内及び溝部21B内は配線材料層23で埋め込まれ、開口部21A内に接続孔24が形成され、溝部21B内に上層配線25が形成される(図5参照)。
【0042】[工程-170]その後、層間絶縁層20上の配線材料層23及び第2の下地層22を、エッチバック法、あるいは又、例えば表6に示したCMP法によって除去する(図6参照)。こうして、図示しない半導体基板の上に設けられた絶縁層10に形成された溝部11内に埋め込まれた配線14の表面に、導電材料から成る被覆層15が形成され、更には、絶縁層10及び被覆層16の上に形成された層間絶縁層20と、被覆層16の上方の層間絶縁層20に形成された開口部21A内が配線材料層23で埋め込まれて成る、配線14と接続された接続孔24と、配線材料層23から成り、層間絶縁層20に形成されそして接続孔24と接続された上層配線25を有する配線構造が形成される。」

また、引用例の図3からみて、0037段落における「被覆層16の上方の層間絶縁層20に開口部21AをRIE法にて形成する」工程において、「開口部21A」は「チタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16」に達するものである。

(2-2)そうすると、引用例1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「配線形成方法において、
a)絶縁層10に溝部11を形成し、かかる溝部11内を含む絶縁層10上に、TiN層/Ti層の積層構造から構成された第1の下地層12を形成し、その後、アルミニウム合金から成る配線材料層13を全面に成膜し、溝部11内を配線材料層13で埋め込んで配線14を形成し、次いで、絶縁層10上の配線材料層13及び第1の下地層12を化学的・機械的研磨法(CMP法)にて除去する工程と、
b)全面にTiから成る金属膜15を成膜する工程と、
c)金属膜15と配線14とを反応させる工程と、
d)未反応の金属膜15をCMP法で除去することによってチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16を形成する工程と、
e)次に、絶縁層10及び被覆層16の上に、SiO_(2)から成る層間絶縁層20を形成する工程と、
f)被覆層16の上方の層間絶縁層20にチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16に達する開口部21AをRIE法にて形成する工程と、
g)層間絶縁層20上に配線材料層23を形成し、開口部21A内を配線材料層23で埋め込む工程とを
順に行うことを特徴とする配線形成方法。」

(3)本願補正発明と引用発明との対比
(3-1)引用発明の「絶縁層10」、「配線14」、「Tiから成る金属膜15」、「チタン-アルミニウム系合金」、「被覆層16」、「SiO_(2)から成る層間絶縁層20」、「開口部21A」、「配線材料層23」は、それぞれ、本願補正発明の「第1の誘電体層(202)」、「金属構造(206)」、「耐火金属(208)」、「合金(212)」、「金属キャップ」、「第2の誘電体層(220)」、「ビア(222)」、「導電性材料(226)」に相当する。そして、このような用語の対応関係を踏まえ、本願補正発明と引用発明の各工程とを対比検討して行くと、以下のとおりのものとなる。
引用発明の工程a)において、「絶縁層10」に形成された「溝部11内を配線材料層13で埋め込んで配線14を形成」していることは、本願補正発明の「第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける」ことに相当する。また、引用発明の同工程では「絶縁層10上の配線材料層13及び第1の下地層12を化学的・機械的研磨法(CMP法)にて除去する」ことが行われており、そうすることで、「配線14」及び「絶縁層10」の表面が「実質的に平坦な研磨された表面」として露出された状態(引用例の図面としては図1(C)が対応)となることは、「化学的・機械的研磨法(CMP法)」との一種の「研磨」が行われる結果として明らかなことであり、本願補正発明のように「前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は平坦な研磨された表面(210)を有する」との状態は、引用発明でも当然実現されるものと認められる。そうすると、引用発明の工程a)は、本願補正発明の「第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は平坦な研磨された表面(210)を有する」ことに相当する。
引用発明の工程b)において「全面にTiから成る金属膜15を成膜する」ことは、工程a)で露出される「配線14」及び「絶縁層10」の「実質的に平坦な研磨された表面」の全面にTiから成る金属膜15を成膜することを意味しており、また、当該工程の「全面に」「成膜する」とは、本願補正発明の「上に」「堆積させる」ことに相当する。そうすると、引用発明の工程b)は、本願補正発明の「前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)上に耐火金属(208)を堆積させる」ことに相当する。
引用発明の工程c)は、Tiから成る「金属膜15」とアルミニウム合金から成る「配線14」とを「反応させる」ものであり、その結果として出来る「チタン-アルミニウム系合金」(後の工程d)を参照)以外、かかる「配線14」と「金属膜15」との間に他の合金が形成される余地がないことは明らかである。そうすると、引用発明の工程c)は、本願補正発明の「合金(212)が前記金属構造(206)との合金だけを形成するように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する」ことに相当する。
引用発明の工程d)では、「未反応の金属膜15をCMP法で除去することによってチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16を形成する」ことが行われており、そうすることで、「被覆層16」及び「絶縁層10」の表面が「実質的に平坦な研磨された表面」として露出された状態となることは、「CMP法」との一種の「研磨」が行われる結果として明らかなことである。すなわち、前の工程との関係からみて、引用発明の工程d)では、「絶縁層10」の「実質的に平坦な研磨された表面」の下の高さに配置されている「チタン-アルミニウム系合金」の一部が「被覆層16」として「配線14」の上に残るように、「絶縁層10」から「未反応の金属膜15」を除去しているものと認められる。そうすると、引用発明の工程d)は、「平坦な研磨された表面の下の高さに配置されている前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する」こと、及び「前記金属構造(206)の上に残った合金(212)により金属キャップが形成される」ことについて、本願補正発明と共通する。
引用発明の工程e)は、「絶縁層10及び被覆層16の上に、SiO_(2)から成る層間絶縁層20を形成する」ものであって、このうちの「被覆層16」は「チタン-アルミニウム系合金から成る」ものである。そうすると、引用発明の工程e)は、本願補正発明の「前記合金(212)上に第2の誘電体層(220)を形成する」ことに相当する。
引用発明の工程f)は、「被覆層16の上方の層間絶縁層20にチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16に達する開口部21AをRIE法にて形成する」ものであって、「前記の第2の誘電体層(220)を開口して、前記合金(212)」に達する「ビア(222)を形成する」ことについて、本願補正発明と共通する
引用発明の工程g)において、「開口部21A内を配線材料層23で埋め込む」ことは、「開口部21A」が「チタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16に達する」ものであること、また、「被覆層16」は「配線14」の上に残るものであることにも鑑みると、「前記合金(212)」に達する「前記金属構造(206)に対するコンタクトを設ける」点で、本願補正発明と共通しており、また、当該工程の「埋め込む」とは、本願補正発明の「堆積させ」ることに相当する。そうすると、引用発明の工程g)は、「前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させて、前記合金(212)」に達する「前記金属構造(206)に対するコンタクトを設ける」点で、本願補正発明と共通する。
さらに、工程a)?g)を順に行う(このように順に行われる各工程を指し手本願補正発明のように「ステップ」とも表現できる)引用発明の「配線形成方法」では、「被覆層16」が、いわゆる「配線14」の上だけに残ることが明らかであり、よって、引用発明の「被覆層16」は、本願補正発明の「自己整合金属キャップ」に相当すると認められる。そうすると、そのような「被覆層16」を介在して「配線14」と「配線材料層23」との接続を図る引用発明の「配線形成方法」は、本願補正発明の「自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法」に相当する。

(3-2)以上によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「 自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法において、
第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は平坦な研磨された表面(210)を有する、
前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)上に耐火金属(208)を堆積させる、
合金(212)が前記金属構造(206)との合金だけを形成するように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、
平坦な研磨された表面の下の高さに配置されている前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する、
前記金属構造(206)の上に残った合金(212)により金属キャップが形成される、
前記合金(212)上に第2の誘電体層(220)を形成する、
前記の第2の誘電体層(220)を開口して、前記合金(212)に達するビア(222)を形成する、及び
前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させて、前記合金(212)に達する前記金属構造(206)に対するコンタクトを設ける
ステップからなることを特徴とする、自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法。」である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
「平坦な研磨された表面の下の高さに配置されている前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する」ことについて、本願補正発明では、その「平坦な研磨された表面」が「この平坦な研磨された表面」とされている、すなわち、その前に「第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は平坦な研磨された表面(210)を有する」とされるところの「平坦な研磨された表面(210)」と同じであるのに対し、引用発明では、そのようなことまで直接示されているとはいえない点。

(相違点2)
「キャップ金属」について、本願補正発明では「300Å?500Åの厚さを有する」との厚さ範囲の限定がなされているのに対し、引用発明では、そのような厚さ範囲の限定がなされていない点。

(相違点3)
「ビア(222)」について、本願補正発明では「前記合金(212)内に終わる」、つまり、「合金(212)」の内に入り込んで終わるよう形成されると解されるのに対し、引用発明では、そのようなことまで直接示されているとはいえない点。

(相違点4)
「金属構造(206)に対するコンタクト」について、本願補正発明では「前記合金(212)内に終わるビア(222)を形成」した後に「前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させて、」、「前記合金(212)を通る」ものを実現しているのに対し、既に上記相違点3でも触れたように、引用発明では、「合金(212)内に終わるビア(222)」が形成されていることまで直接示されているとはいえず、その後に「前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させ」た際、「前記合金(212)を通る」ものが実現するかどうかも、直接示されているとはいえない点。

(4)相違点についての当審の判断
(4-1)相違点1について
引用発明は、上記(2-2)で認定したとおり、
「a)絶縁層10に溝部11を形成し、かかる溝部11内を含む絶縁層10上に、TiN層/Ti層の積層構造から構成された第1の下地層12を形成し、その後、アルミニウム合金から成る配線材料層13を全面に成膜し、溝部11内を配線材料層13で埋め込んで配線14を形成し、次いで、絶縁層10上の配線材料層13及び第1の下地層12を化学的・機械的研磨法(CMP法)にて除去する工程と、
b)全面にTiから成る金属膜15を成膜する工程と、
c)金属膜15と配線14とを反応させる工程と、
d)未反応の金属膜15をCMP法で除去することによってチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16を形成する工程と、」
という一連の工程を有しており、また、上記(3-1)で検討したとおり、その工程a)及び工程d)においてそれぞれ「化学的・機械的研磨法(CMP法)」が実施された結果、両工程とも「被覆層16」及び「絶縁層10」の表面が「実質的に平坦な研磨された表面」として露出された状態になることは明らかである。
そして、工程d)は、「未反応の金属膜15をCMP法で除去する」ために行うものであって、その「未反応の金属膜15」の下にある「絶縁層10」まで除去することを想定していないことも明らかである。
そうすると、引用発明の工程d)において、「絶縁層10」を削ることなく、「化学的・機械的研磨法(CMP法)」が行われた結果として露出する「被覆層16」及び「絶縁層10」の「実質的に平坦な研磨された表面」が、工程a)において「化学的・機械的研磨法(CMP法)」が行われた結果として露出する「被覆層16」及び「絶縁層10」の「実質的に平坦な研磨された表面」と一致をした時点において、化学的・機械的研磨を止めること、すなわち、引用発明において、上記相違点1に係る構成とすることは、当業者に普通に期待される技術的な設計事項である。

(4-2)相違点2について
本願補正発明における「キャップ金属」の「300Å?500Åの厚さを有する」との条件は、図2及び図3についての0017段落における
「 【0017】
表面112が構造114上で再酸化されないことを保証するために、構造114と金属層110堆積のCMP間の時間を最短にすることができる。金属層110は、有利には、金属層110内への次のビアレベルのオーバーエッチングよりも大きい最小厚さを有する(下記参照)。金属層110の最大厚さは、図3に示されているように次の中間層誘電体120が制限された充填容量を有するブランケットとして優先的に堆積される(有利にはプラズマ強化CVD(PECVD)による)ように決定するのが有利である。また、次に続くリソグラフィーは、多すぎるトポグラフィーにより不利を受けるべきでない。従って、金属層110の有利な厚さは、約300Å?約500Åである。これは約2000Å?約5000Åの典型的なダマシン厚さに比較して比較的薄い。中間層誘電体120もシリコン酸化膜又は任意の他の適当な誘電体層を有することもできる。」
との記載、及び図8についての0024段落における
「 【0024】
図8に関して説明すれば、耐火金属208を、合金212の部分を残して除去する。耐火金属208は、有利にはフッ素ベースのエッチング(例えば、耐火金属208がTi及び構造206がAlである場合には、該フッ素ベースのエッチングはTiをTiAl3及び誘電体層202よりも速くエッチングする)により又はCMP(これはまさに良好な選択性を提供する)により除去する。(Cuを使用する場合には、塩素ベースのエッチングを使用する)。Ti膜が比較的薄い場合には、その除去は短い“タッチアップ(touch-up)”ステップを必要とするに過ぎない。Niは有利には選択的に例えばHNO3で除去する。その他の金属、例えばMg,Hf又はNbは、CMPにより除去するのが有利である。合金212の有利な厚さは約300Å?約500Åである。」
との記載に照らすと、その「300Å」との厚さ条件の最小値は、本願補正発明において「前記の第2の誘電体層(220)を開口して、前記合金(212)内に終わるビア(222)を形成する」際に「キャップ金属」内への「オーバーエッチングよりも大きい最小厚さ」となる目安として定められたものであり、また、その「500Å」との厚さ条件の最大値は、本願補正発明において「この平坦な研磨された表面の下の高さに配置されている前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する」際、「短い“タッチアップ(touch-up)”ステップを必要とするに過ぎない」程度で済む目安として定められたものと認められる。また、本願の明細書、特許請求の範囲及び図面の記載並びに本願出願時の技術常識に照らしても、これら厚さ条件の「300Å」との最小値及び「500Å」との最大値のそれぞれについて、臨界的意義を認めることはできない。
そして、引用発明の工程f)の「被覆層16の上方の層間絶縁層20にチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16に達する開口部21AをRIE法にて形成する工程」は、「開口部21A」を「被覆層16」を貫通するように形成するものでないことは明らかであり、また、引用発明の工程d)の「未反応の金属膜15をCMP法で除去することによってチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16を形成する工程」をできるだけ短いステップとして行えるに越したことがないことは、製造時間を短縮するとの当業者にとっては当然の技術課題に照らし、こちらも明らかである。
そうすると、引用発明において「被覆層16」を「300Å?500Åの厚さを有する」ものとすること、すなわち、上記相違点2に係る構成とすることは、当業者に普通に期待される技術的な設計事項である。

(4-3)相違点3及び4について
上記相違点3に係る本願補正発明の構成は、「ビア(222)」の形成にあたり、「合金(212)」により形成された「金属キャップ」がオーバーエッチングされることを示しており、また、上記相違点4に係る本願補正発明の構成は、そのように「金属キャップ」がオーバーエッチングされた「前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させ」た際、必然的に導かれる構成であると判断されるところ、本願補正発明のような多層配線構造を備える半導体装置の製造に関わる当業者にとって、誘電体層を開口してビアを形成する際、オーバーエッチングが生じうることは、周知の事項である。
例えば、本願の優先権主張日前に国内において頒布された特開平09-017862号公報(以下「周知例」という。)には、図9-図12とともに、
「【0002】
【従来の技術】半導体装置の製造においては、平坦化した層間絶縁膜に接続孔を開孔する工程が行われることがあるが、この場合、層間絶縁膜に段差があると、段差上部(層間膜の膜厚がその部分は小さい)に形成される接続孔と、段差下部(層間膜の膜厚がその部分は大きい)に形成される接続孔とでは、深さが異なることになる。このような接続孔を同時にエッチングで形成すると、浅い接続孔には過剰にエッチングがかかることになって、不都合が生ずることがある。
【0003】例えば、この問題は、多層配線構造を備える半導体装置について見られる。即ち、最近のLSI等では、デバイス特性の向上や微細化への対応のため多層配線特に多層ポリSi配線等の多層配線プロセスが使われている。特にメモリーではセル内と周辺回路内で多層ポリSi配線の使い方が異なるため、それらで配線の下部(例えばAl配線の下地)の高さが異なってくる。このため、例えば図9に示すように下地1の高さが異なって段差となっているところにAl配線2a,2bを形成し、平坦化層間膜3により層間平坦化を行うと、図示のように層間膜3の厚さが異なってしまう。即ち、下地1の段差底部1a上における配線2a上の層間膜3の膜厚3aは厚く、下地1の段差上部1b上における配線2b上の層間膜3の膜厚3bは薄い。つまり3a>3bとなる。このままフォトリソグラフィー技術を用いてコンタクトホールパターン4を形成し、コンタクトホール5a,5bを開孔すると、次の問題が生ずる。図9はコンタクト開孔のためのエッチングの途中を示し、浅いコンタクトホール5bが開孔された状態を示す。このとき深いコンタクトホール5aは形成途中にある。更にエッチングを進めて、図10のようにホール5a,5bを開孔すると、浅いコンタクトホール5bに過剰にオーバーエッチングがかかるようになる。この結果例えば配線2bとエッチングガスの反応により浅いコンタクトで反応生成物が生じる。例えば図示従来例の場合、Ti/AlCu/Ti配線2a,2b上にTiN膜6a,6bが形成されているが、浅いコンタクトホール5bにおいてTiN膜6b上にTiのフッ化物50が生じたりする。これによりコンタクト抵抗の増大が生じるという問題があった。なお、従来技術では、図10のホール開孔後、コンタクトホール5a,5bを埋め込み材7a,7bとして例えばWで埋め込み(図11)、更にその上に第2配線である上層配線8a,8b(ここではTi/AlCu/Ti配線)及びその上にTiN膜4a,4bを形成して、図12のような多層配線構造とする。図中符号10はポリSi配線である。」
との記載があり、「深さが異なる」「接続孔を同時にエッチングで形成する」際の「浅い接続孔」には「過剰にエッチングがかかる」こと、つまり、上記周知の事項である「オーバーエッチング」に相当するものが開示されている。
ここで、引用発明には、上記周知例のような「深さが異なる」「接続孔を同時にエッチングで形成する」との前提事項は開示されていないものの、当該前提事項自体、上記周知例において「従来の技術」の扱いで取り上げられているとおり、多層配線構造を形成するに当たり従来普通に行われていたことであり、かつ、引用発明に対して上記前提事項の適用を阻害するような事由も存在しない。そうすると、引用発明における工程f)の「被覆層16の上方の層間絶縁層20にチタン-アルミニウム系合金から成る被覆層16に達する開口部21AをRIE法にて形成する工程」を、上記周知例のような「深さが異なる」「接続孔を同時にエッチングで形成する」場合において適用し、少なくとも「浅い接続孔」に「過剰にエッチングがかかる」ようにすること、すなわち、引用発明の少なくとも一部の「開口部21A」において「被覆層16」が「オーバーエッチング」され、これにより、上記相違点3及び4に係る構成が得られるようにすることは、当業者に普通に期待される技術的な設計事項である。
また、引用発明における工程f)において、「開口部21A」底部に「層間絶縁層20」のエッチング残りが生じ、「被覆層16」に対する「配線材料層23」の接続が不十分とならないよう、「RIE法」による「開口部21A」形成時間を余分に取り、結果として「被覆層16」が多少なりとも「オーバーエッチング」された状態となすことも、当業者が普通に行いうる設計事項であって、別途そのような観点から、引用発明に基づき上記相違点3及び4に係る構成とすることも、当業者が容易になしえたことといえる。

(4-4)判断についてのまとめ
以上のとおり、上記相違点1-4に係る構成は、当業者が容易に想到し得たものであるから、本願補正発明は、上記周知の事項または上記当業者が普通に行いうる設計事項を勘案することにより、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正は、補正後の請求項6に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項をいう。以下同じ。)の規定に適合しない。

4.補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成20年7月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?13に係る発明は、平成18年11月20日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?13に記載されている事項により特定されるとおりのものである。
そして、そのうちの請求項6に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2.2.の(1)及び(2)で検討したとおり、その特許請求の範囲の請求項6に記載されている「合金(212)が前記金属構造(206)上の前記の実質的に平坦な表面(210)上だけに形成されるように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、」を「合金(212)が前記金属構造(206)との合金だけを形成するように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、」の誤記として読み替えた、以下のとおりのものと認める。

「 【請求項6】 自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法において、
第1の誘電体層(202)内に金属構造(206)を設ける、その際前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)は実質的に平坦な表面(210)を有する、
前記金属構造(206)及び前記の第1の誘電体層(202)上に耐火金属(208)を堆積させる、
合金(212)が前記金属構造(206)との合金だけを形成するように、前記金属構造(206)と前記耐火金属(208)の間に合金(212)を形成する、前記合金(212)の一部が前記金属構造(206)の上に残るように、前記の第1の誘電体層(202)から前記耐火金属(208)を除去する、
前記金属構造(206)の上に残った合金(212)により金属キャップが形成される、
その際、このキャップ金属が300Å?500Åの厚さを有する、
前記合金(212)上に第2の誘電体層(220)を形成する、
前記の第2の誘電体層(220)を開口して、前記合金(212)内に終わるビア(222)を形成する、及び
前記ビア(222)内に導電性材料(226)を堆積させて、前記合金(212)を通る前記金属構造(206)に対するコンタクトを設ける
ステップからなることを特徴とする、自己整合金属キャップで金属構造を接続する方法。」

一方、原査定の拒絶の理由に引用され、かつ、本願の優先権主張日前に日本国内において頒布された刊行物である引用例(特開平10-144685号公報)には、上記第2.3.(2)で認定したとおりの事項及び発明(引用発明)が記載されている。
そして、本願発明に対して技術的限定を付加した発明である本願補正発明は、上記第2.3.において検討したとおり、上記周知の事項または当業者が普通に行いうる上記設計事項を勘案することにより、引用発明に基づいて当業者が容易に発明することができたものであるから、本願発明も、同様に当業者が容易に発明をすることができたものであることは明らかである。
したがって、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第4.むすび
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-07 
結審通知日 2010-12-10 
審決日 2010-12-22 
出願番号 特願2001-531141(P2001-531141)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 573- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 朋一河口 雅英  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 小野田 誠
市川 篤
発明の名称 層間金属接続のための自己整合金属キャップ  
代理人 久野 琢也  
復代理人 宮城 康史  
代理人 山崎 利臣  
復代理人 住吉 秀一  
復代理人 篠 良一  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  
復代理人 宮城 康史  
復代理人 住吉 秀一  
代理人 久野 琢也  
代理人 矢野 敏雄  
復代理人 篠 良一  

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