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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1236870
審判番号 不服2009-16529  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-09-08 
確定日 2011-05-09 
事件の表示 特願2004-556018「オプトエレクトロニクス素子」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日国際公開、WO2004/051757、平成18年 3月 9日国内公表、特表2006-508537〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は、2003年(平成15年)11月27日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2002年11月29日、ドイツ)を国際出願日とする出願であって、平成20年8月4日及び平成21年3月16日に手続補正がなされたが、同年5月13日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年9月8日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、これと同時に手続補正がなされたものである。

2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成21年9月8日になされた手続補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される、次のとおりのものと認められる。

「 オプトエレクトロニクス素子において、
オプトエレクトロニクス式のチップ(1)を備えており、
中央領域(3)と接続部(41,42,43,44)とを有するチップ支持体(2)を備えており、中央領域(3)にチップ(1)が取り付けられており、接続部(41,42,43,44)が、チップ支持体(2)の中央領域(3)から出発して外向きに延びており、
チップ(1)と、チップ支持体(2)の一部とが、ボディ(5)によって包囲されており、
ボディ(5)が、ケーシング(11)を備えており、該ケーシング(11)が、底部を有する凹所(12)を備えており、
凹所(12)に、放射透過性のカバー(13)が配置されており、該カバー(13)にチップ(1)が埋め込まれており、
チップ(1)とチップ支持体(2)との間のコンタクト平面に対するカバー(13)の投影が、チップ(1)の中心点(8)に対して点対称になっており、
チップ(1)とチップ支持体(2)との間のコンタクト面に対する、ボディ(5)と、接続部(41,42,43,44)の長手中央軸線(61,62,63,64)との投影が、それぞれチップ(1)の中心点(8)の投影に対して点対称になっており、
ボディ(5)にチップ支持体(2)を固定するための複数の手段が設けられており、これらの固定手段が、非対称的に配置されていることを特徴とする、オプトエレクトロニクス素子。」

3 刊行物の記載
(1)原査定の拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2001-518692号公報(以下「引用刊行物1」という。)には、次の記載がある。

「 【0001】
本発明は、光電チップが良好な熱伝導性を有する接続手段を介して導体フレーム(リードフレーム)のチップ支持部材上に固定されており、導体フレームはチップ支持部材に対して間隔を置いて配置された端子部を有しており、この端子部はチップの電気コンタクトに導電接続されており、チップとチップ支持部材と端子部の少なくともそれぞれ1つの部分領域はカバーによって包囲されており、配線板の実装のために定められ導体フレームに設けられたチップ支持部材の外部端子および端子部の外部端子はカバーから突出しているか、または完全にカバーの外部に存在している、光電素子に関する。本発明は特に、オプトエレクトロニクス用の半導体チップ、特に高電力で駆動される発光ダイオード(LED)チップを備えた光電素子に関する。
【0002】
このような素子は例えばヨーロッパ特許出願第400176号明細書から公知である。この明細書中にいわゆるTOPLEDが記載されており、発光する半導体チップ(LEDチップ)が導体フレームの平坦なチップ支持部材上に固定されている。導体フレームはチップ支持部材と、これに間隔を置いて配置された端子部、すなわちチップ支持部材から電気的に分離されている端子部とから成り、この端子部はそれぞれ1つずつ外部端子を有する。チップ支持部材は半導体チップ、端子部、および外部端子の部分領域を有し、カバーによって包囲されている。このカバーはビームを透過しない基体から成り、この基体は切欠部とこの切欠部を充填するビーム透過性のウィンドウ部材とを有する。チップ支持部材および端子部は基体によって包囲されているかまたは基体内に組み込まれており、チップ支持部材および端子部の上側の部分領域は切欠部の残りの底面に面が適合するように閉じられている。半導体チップはチップ支持部材に載置された下側まで完全にビーム透過性のウィンドウ部材によって包囲されている。切欠部およびその内面は、これらが半導体チップから放射されるビームに対してほぼ切頭円錐形状のリフレクタを形成するように成形および配置されている。」(6頁)

(2)同じく、特開2002-111067号公報(以下「引用刊行物2」という。)には、以下の記載がある。

ア 「【0019】図1は、第1の実施形態に係る発光ダイオード(LED)ランプの斜視図を示している。図1に示すように、第1の実施形態に係るLEDランプ10は、マウント用リード2にLEDチップ1が搭載され、このLEDチップ1の電極がボンディングワイヤ5を用いてボンディング用リード3に接続されている。前記LEDチップ1、ボンディングワイヤ5、マウント用リード2の一部、及びボンディング用リード3の一部は、封止用透明樹脂4により封止されている。ここで、封止材は透明樹脂に限定されず、例えば金属やガラスなどでもよい。また、マウント用リード2の封止用透明樹脂4から露出された面には、径φが例えば1.3mmの同心円状の穴6が設けられている。なお、穴6は、マウント用リード2だけでなくボンディング用リード3にも設けてられてもよく、マウント用リード2、ボンディング用リード3の少なくとも一方に設けられていればよい。」

イ 図1から、全体として直線形状であるマウント用リード2の略中央部上面にLEDチップ1が搭載されて、円形の封止用透明樹脂の略中心にLEDチップが位置することが見てとれる。
なお、図1は、次のものである。


4 引用発明
前記3(1)によれば、引用刊行物1には、次の発明が記載されているものと認められる。
「光電チップが良好な熱伝導性を有する接続手段を介して導体フレームのチップ支持部材上に固定されており、導体フレームはチップ支持部材に対して間隔を置いて配置された端子部を有しており、この端子部はチップの電気コンタクトに導電接続されており、チップとチップ支持部材と端子部の少なくともそれぞれ1つの部分領域はカバーによって包囲されており、配線板の実装のために定められ導体フレームに設けられたチップ支持部材の外部端子および端子部の外部端子はカバーから突出しているか、または完全にカバーの外部に存在している光電素子、特に、LEDチップを備えた光電素子であって、前記カバーはビームを透過しない基体から成り、この基体は切欠部とこの切欠部を充填するビーム透過性のウィンドウ部材とを有し、LEDチップはチップ支持部材に載置された下側まで完全にビーム透過性のウィンドウ部材によって包囲されている光電素子。」(以下「引用発明」という。)

5 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「LEDチップ」は、本願発明の「オプトエレクトロニクス式のチップ(1)」に相当し、引用発明の「LEDチップを備えた光電素子」は、本願発明の「オプトエレクトロニクス素子」に相当する。

(2)引用発明の「チップ支持部材」は、本願発明の「チップ支持体」に相当する。
そして、引用発明の「チップ支持部材」において「LEDチップ」が固定される部位は、本願発明において「チップ(1)が取り付けられて」いる「中央領域(3)」に相当し、引用発明の「チップ支持部材の外部端子」は、本願発明の「チップ支持体(2)の中央領域(3)から出発して外向きに延びて」いる「接続部(41,42,43,44)」に相当する。

(3)引用発明の「カバー」、「基体」及び「切欠部」は、それぞれ、本願発明の「ボディ(5)」、「ケーシング(11)」及び「底部を有する凹所(12)」に相当し、引用発明は、本願発明の「ボディ(5)が、ケーシング(11)を備えており、該ケーシング(11)が、底部を有する凹所(12)を備えており」との事項を備える。

(4)引用発明の「切欠部を充填するビーム透過性のウィンドウ部材」は、本願発明の「放射透過性のカバー(13)」に相当し、引用発明は、本願発明の「凹所(12)に、放射透過性のカバー(13)が配置されており」との事項を備える。
そして、引用発明の「LEDチップ」は、「チップ支持部材に載置された下側まで完全にビーム透過性のウィンドウ部材によって包囲されている」から、引用発明は、本願発明の「該カバー(13)にチップ(1)が埋め込まれており」との事項を備える。

(5)以上によれば、両者は、
「 オプトエレクトロニクス素子において、
オプトエレクトロニクス式のチップを備えており、
中央領域と接続部とを有するチップ支持体を備えており、中央領域にチップが取り付けられており、接続部が、チップ支持体の中央領域から出発して外向きに延びており、
チップと、チップ支持体の一部とが、ボディによって包囲されており、
ボディが、ケーシングを備えており、該ケーシングが、底部を有する凹所を備えており、
凹所に、放射透過性のカバーが配置されており、該カバーにチップが埋め込まれているオプトエレクトロニクス素子。」
である点で一致し、以下のア及びイの点で相違するものと認められる。

ア 本願発明は、「チップ(1)とチップ支持体(2)との間のコンタクト平面に対するカバー(13)の投影が、チップ(1)の中心点(8)に対して点対称になっており、チップ(1)とチップ支持体(2)との間のコンタクト面に対する、ボディ(5)と、接続部(41,42,43,44)の長手中央軸線(61,62,63,64)との投影が、それぞれチップ(1)の中心点(8)の投影に対して点対称になって」いるのに対して、引用発明は、そのようになっているのかどうか不明である点(以下「相違点1」という。)。

イ 本願発明は、「ボディ(5)にチップ支持体(2)を固定するための複数の手段が設けられており、これらの固定手段が、非対称的に配置されている」のに対して、引用発明は、ボディにチップ支持体を固定するための格別の手段が設けられているものではない点(以下「相違点2」という。)。

6 判断
(1)相違点1について
前記3(2)によれば、引用刊行物2には、LEDランプ10において、全体として直線形状であるマウント用リード2の略中央部上面にLEDチップ1が搭載されて、円形の封止用透明樹脂の略中心にLEDチップが位置するようにした構造が記載されているものと認められる。
しかるところ、引用発明において、導体フレームのチップ支持部材の具体的な形状は、当業者が設計上当然定めなければならない事項であり、LEDチップを光電素子の中心点に配置することは、当業者が設計上当然考慮する事項である。
してみると、引用発明において、引用刊行物2記載の上記構造を採用することは、当業者が容易になし得ることであり、これにより、「チップとチップ支持体との間のコンタクト平面に対するカバーの投影が、チップの中心点に対して点対称になっており、チップとチップ支持体との間のコンタクト面に対する、ボディと、接続部の長手中央軸線との投影が、それぞれチップの中心点の投影に対して点対称になって」いるとする、相違点1に係る本願発明の構成に至るものと認められる。
したがって、引用発明において、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2について
本願明細書の【0026】の記載によれば、ボディ(5)にチップ支持体(2)を固定するための手段は、例えば、チップ支持体に成形された孔であってよいものと認められる。
しかるところ、リードフレームの一部を樹脂に埋め込む際の接合強度を高めるために、リードフレームに孔を形成しておくことは、本願の優先日当時において周知の技術(例えば、実願昭61-028668号(実開昭62-140758号)のマイクロフィルムの実用新案登録請求の範囲、特開平11-087780号公報の請求項6を参照。)であるから、引用発明において、チップ支持部材に孔を形成し、これによりボディにチップ支持体を固定するための手段を設けることは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度のことであり、その際、どの程度の数の孔をどのような位置に形成するかは、当業者が設計上適宜定め得る事項である。
そして、当該孔を複数とし、非対称的に配置することに格別の困難があるものとは認められない。
したがって、引用発明において、相違点2に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(3)小括
以上の検討によれば、本願発明は、引用発明及び引用刊行物2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。

7 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用刊行物2の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-02 
結審通知日 2010-12-03 
審決日 2010-12-14 
出願番号 特願2004-556018(P2004-556018)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松崎 義邦  
特許庁審判長 服部 秀男
特許庁審判官 杉山 輝和
稲積 義登
発明の名称 オプトエレクトロニクス素子  
代理人 久野 琢也  
代理人 杉本 博司  
代理人 星 公弘  
代理人 二宮 浩康  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 山崎 利臣  

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