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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1236987 |
審判番号 | 不服2008-15152 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-06-16 |
確定日 | 2011-05-11 |
事件の表示 | 特願2004- 63113「薄膜トランジスター」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 9月30日出願公開、特開2004-274059〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年3月5日(パリ条約による優先権主張平成15年3月7日、台湾)の出願であって、平成19年12月25日付けで手続補正がなされ、平成20年3月11日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年6月16日に拒絶査定に対する審判請求がなされ、同年7月14日付けで手続補正がなされ、その後当審において平成22年6月11日付けで審尋がなされ、同年9月15日付けで回答書が提出されたものである。 2.平成20年7月14日付けの手続補正について 【補正の却下の決定の結論】 平成20年7月14日付けの手続補正を却下する。 【理由】 (1)補正の内容 平成20年7月14日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及明細書を補正するものであり、特許請求の範囲についての補正は、以下のとおりである。 (補正事項a)補正前の請求項1を、補正後の請求項1の 「絶縁体と、 ポリシリコンレイヤと、 絶縁レイヤと、 ゲート電極とを有し、 前記ポリシリコンレイヤは、チャンネル領域と、ソース領域と、ドレイン領域とを有し、 前記ソース領域とドレイン領域が第一不純物(IMPURITY)でドープされてチャンネル領域に接続され、 前記チャンネル領域が、ボディコンタクト領域を有し、 前記ボディコンタクト領域は、前記絶縁体と前記絶縁レイヤとに接続され、 前記ボディコンタクト領域の表面に、絶縁レイヤに侵入するコンタクトレイヤを有し、 前記コンタクトレイヤが、ゲート電極との接触を回避する位置に配置され、 ボディコンタクト領域が、ソース領域とドレイン領域中でドープされたのとは異なった第二不純物でドープされることを特徴とする、 ボディコンタクトを有した、薄膜トランジスター。」 と補正すること。 (補正事項b)補正前の請求項3を削除すること。 (補正事項c)補正前の請求項4を、補正後の請求項3の 「【請求項3】 絶縁体と、 ポリシリコンレイヤと、 絶縁レイヤと、 ゲート電極とを有し、 前記ポリシリコンレイヤは、チャンネル領域と、ソース領域と、ドレイン領域とを有し、 前記ソース領域とドレイン領域が第一不純物でドープされてチャンネル領域に接続され、 前記チャンネル領域が、ボディコンタクト領域を有し、 前記ボディコンタクト領域は、前記絶縁体と前記絶縁レイヤとに接続され、 前記ボディコンタクト領域の表面に、絶縁レイヤに侵入するコンタクトレイヤを有し、 前記ボディコンタクト領域とコンタクトレイヤが、ゲート電極に囲まれる領域内に形成され、 コンタクト領域が、ゲート電極と接触するのを回避する位置に配置し、 ボディコンタクト領域が、絶縁体上にボディトリガバイアスを提供するために、ソース領域とドレイン領域中でドープされたのとは異なった第二不純物でドープされることを特徴とする、 ボディコンタクトを有した、薄膜トランジスター。」 と補正すること。 (補正事項d)補正前の請求項6を削除すること。 (2)補正の目的の適否についての検討 (2-1)補正事項aについて 補正前の請求項1における「前記チャンネル領域が、絶縁体と絶縁レイヤとを接続するボディコンタクト領域を有し、」を、補正後の請求項1における「前記チャンネル領域が、ボディコンタクト領域を有し、前記ボディコンタクト領域は、前記絶縁体と前記絶縁レイヤとに接続され、」とする補正については、実質的な内容を変更したものとはいえず、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項(以下「特許法第17条の2第4項」という。)第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当せず、さらに、同法同条同項第1号、第2号、第3号に掲げる請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正のいずれの事項をも目的とするものではないので、補正事項aは、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。 (2-2)補正事項bについて 補正前の請求項3を削除するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。 (2-3)補正事項cについて 補正前の請求項4における「前記チャンネル領域が、絶縁体と絶縁レイヤとを接続するボディコンタクト領域を有し、」を、補正後の請求項3における「前記チャンネル領域が、ボディコンタクト領域を有し、前記ボディコンタクト領域は、前記絶縁体と前記絶縁レイヤとに接続され、」とする補正については、実質的な内容を変更したものとはいえず、特許法第17条の2第4項第4号に掲げる明りょうでない記載の釈明に該当せず、さらに、同法同条同項第1号、第2号、第3号に掲げる請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正のいずれの事項をも目的とするものではないので、補正事項aは、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。 (2-4)補正事項dについて 補正前の請求項6を削除するものであるから、特許法第17条の2第4項第1号に掲げる第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とするものに該当する。 (2-5)補正目的の適否 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない補正事項a及びcを含むから、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。 (3)本件補正が適法なものとした場合について (3-1)検討の前提 上記(2)において検討したとおり、本件補正は特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないが、仮に本件補正が当該要件を満たすものであるとした場合、すなわち、補正事項a及び補正事項cが明りょうでない記載の釈明に該当するとした場合、本件補正による補正後の請求項に係る発明が、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについて、一応検討する。 (3-2)補正後の請求項1に係る発明 本件補正による補正後の請求項1に係る発明(以下「補正後の発明」という。)は、平成20年7月14日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 絶縁体と、 ポリシリコンレイヤと、 絶縁レイヤと、 ゲート電極とを有し、 前記ポリシリコンレイヤは、チャンネル領域と、ソース領域と、ドレイン領域とを有し、 前記ソース領域とドレイン領域が第一不純物(IMPURITY)でドープされてチャンネル領域に接続され、 前記チャンネル領域が、ボディコンタクト領域を有し、 前記ボディコンタクト領域は、前記絶縁体と前記絶縁レイヤとに接続され、 前記ボディコンタクト領域の表面に、絶縁レイヤに侵入するコンタクトレイヤを有し、 前記コンタクトレイヤが、ゲート電極との接触を回避する位置に配置され、 ボディコンタクト領域が、ソース領域とドレイン領域中でドープされたのとは異なった第二不純物でドープされることを特徴とする、 ボディコンタクトを有した、薄膜トランジスター。」 (3-3)引用刊行物に記載された発明 (3-3-1)原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前である平成14年12月20日に頒布された刊行物である特開2002-368223号公報(以下「引用刊行物」という。)には、図1ないし3とともに、以下の事項が記載されている。(なお、下線「 」は、当審において、特に強調する点に付与したものである。以下同様。) 「【0002】 【従来の技術】近年,高速化・低消費電力化に向けてSOI(Silicon on Insulator)デバイスの開発が進んでいる。SOIデバイスにおいては,埋め込み酸化膜(BOX膜:Buried OXide膜)の上に薄いシリコン層(SOI層)があり,BOX膜とフィールド膜(Field膜)により素子が完全に分離されている。この完全素子分離により寄生容量が低減し,また薄いSOI層によりボディ領域(Body領域:NMOSトランジスタの場合P‐,PMOSトランジスタの場合N‐)が完全または部分的に空乏化し,急峻なサブスレッショルド(Subthreshold)特性を得られることで,高速,低消費電力を実現している。また完全素子分離構造で寄生バイボーラが形成されないため,ラッチアップを誘発しないメリットもある。」 「【0009】本発明は,従来の半導体装置が有する上記問題点に鑑みてなされたものであり,本発明の目的は,DTMOSを使用した出力トランジスタの静電気サージに対する応答性を同一トランジスタ内で均一にし,静電破壊耐性を向上させることの可能な,新規かつ改良された半導体装置を提供することである。」 「【0017】(第1の実施の形態)図1は本発明の第1の実施の形態にかかる半導体装置10の平面図である。図2は図1のA-A’断面図であり,図3は図1のB-B’断面図である。 【0018】まず,半導体装置10の構造を説明する。図1,図2に示したように,シリコン基板10S上にBOX膜10Bを介して,フィールド膜10Fにより分離された領域にN型拡散層(第1導電型の活性化領域)10Nが形成されている。N型拡散層10N内には,図3に示したように,ソース領域11Nおよびドレイン領域12Nが形成されている。図3に示した符号11Mはソース電位供給メタルであり,接続孔11Cを介してソース領域11Nと電気的に接続されている。また,符号12Mはドレインメタルであり,接続孔12Cを介してドレイン領域12Nと電気的に接続されている。 【0019】ソース領域11Nとドレイン領域12N間には,図3に示したように,高濃度のP型拡散層(第2導電型の第1の不純物領域)11Pが形成されている。このP型拡散層11Pを囲むように,ソース領域11Nとドレイン領域12N間に低濃度のP型拡散層(第2導電型の第2の不純物領域)12Pが形成されている。さらに,図2に示したように,このP型拡散層12Pに隣接して高濃度のP型拡散層(第2導電型の第3の不純物領域)13Pが形成されている。 【0020】P型拡散層12P上には,図1,図2に示したように,P型拡散層11Pを露出するようにゲート電極10Gが形成されている。さらに,ゲート電極10G,P型拡散層11PおよびP型拡散層13Pを覆うようにゲート電極10Gと同一方向に延在するゲート電位供給メタル(導電層)10Mが形成されている。ゲート電位供給メタル10Mと,ゲート電極10Gとは,図2に示したように,フィールド膜10F上において接続孔13Cを介して電気的に接続されている。また,ゲート電位供給メタル10Mと,P型拡散層11PおよびP型拡散層13Pとは,接続孔14Cを介して電気的に接続されている。」 (3-3-2)したがって、引用刊行物には、以下の発明(以下「刊行物発明」という。)が記載されているものと認められる。 「シリコン基板10S上にBOX膜10Bを介してフィールド膜10Fにより分離された領域にN型拡散層10Nが形成され、前記N型拡散層10N内にソース領域11Nおよびドレイン領域12Nが形成され、前記ソース領域11Nと前記ドレイン領域12N間に高濃度のP型拡散層11Pが形成され、前記P型拡散層11Pを囲むように前記ソース領域11Nと前記ドレイン領域12N間に低濃度のP型拡散層12Pが形成され、前記P型拡散層12Pに隣接して高濃度のP型拡散層13Pが形成され、前記P型拡散層12P上に前記P型拡散層11Pを露出するようにゲート電極10Gが形成され、前記ゲート電極10G、前記P型拡散層11Pおよび前記P型拡散層13Pを覆うように前記ゲート電極10Gと同一方向に延在するゲート電位供給メタル(導電層)10Mが形成され、前記ゲート電位供給メタル10Mと前記ゲート電極10Gとは前記フィールド膜10F上において接続孔13Cを介して電気的に接続され、前記ゲート電位供給メタル10Mと前記P型拡散層11Pおよび前記P型拡散層13Pとが接続孔14Cを介して電気的に接続されているトランジスタ。」 (3-4)対比 (3-4-1)刊行物発明の「BOX膜10B」、「ゲート電極10G」及び「低濃度のP型拡散層12P」は、各々補正後の発明の「絶縁体」、「ゲート電極」及び「チャンネル領域」に相当する。 (3-4-2)刊行物発明の「N型拡散層10N」と補正後の発明の「ポリシリコンレイヤ」とは、「層」という点で共通する。 (3-4-3)刊行物発明において、「ゲート電極10G」と「P型拡散層12P」と間には、「ゲート絶縁膜」が形成されていることは明らかである。また、刊行物発明において、「接続孔13C」及び「接続孔14C」が形成されるためには、「N型拡散層10N」、「P型拡散層11P」及び「ゲート電極10G」を覆う全面に「層間絶縁膜」が形成されている必要があり、前記「ゲート絶縁膜」及び前記「層間絶縁膜」は、補正後の発明の「絶縁レイヤ」に相当する。 (3-4-4)刊行物発明の「N型拡散層10N内に」「形成」された「ソース領域11Nおよびドレイン領域12N」は、各々補正後の発明の「第一不純物(IMPURITY)でドープされ」た「ソース領域」及び「ドレイン領域」に相当し、刊行物発明の「P型拡散層12P」に接続されていることは明らかである。 (3-4-5)刊行物発明の「P型拡散層11P」は、補正後の発明の「ボディコンタクト領域」に相当する。そして、刊行物発明の「P型拡散層11P」は、「ソース領域11Nおよびドレイン領域12N」でドープされたのとは異なった不純物でドープされていることは明らかである。また、刊行物発明の「P型拡散層11P」は、前記「BOX膜10B」、上記(3-4-3)で述べた前記「ゲート電極」及び前記「層間絶縁膜」と接続されていることは明らかである。 (3-4-6)刊行物発明において、「ゲート電位供給メタル10Mと」「P型拡散層11Pおよび」「P型拡散層13Pとが接続孔14Cを介して電気的に接続されている」ことから、上記 (3-4-3)で述べた前記「層間絶縁膜」に形成された「接続孔14C」内には、「導電層」が形成されていることが明らかであり、前記「導電層」は、補正後の発明の「絶縁レイヤに侵入するコンタクトレイヤ」に相当する。 (3-4-7)刊行物発明において、「ゲート電極10G」は、「P型拡散層12P上に」「P型拡散層11Pを露出するように」「形成され」ており、「接続孔14C」は、「P型拡散層11P」内に開口されていることは明らかであるから、刊行物発明において、「接続孔14C」内に形成された前記「導電層」が、「ゲート電極10G」との接触を回避する位置に配置されていることは、明らかである。 (3-4-8)刊行物発明の「トランジスタ」と補正後の発明の「薄膜トランジスター」とは、「トランジスタ」という点で共通する。 (3-4-9)すると、補正後の発明と刊行物発明とは、 「絶縁体と、 層と、 絶縁レイヤと、 ゲート電極とを有し、 前記層は、チャンネル領域と、ソース領域と、ドレイン領域とを有し、 前記ソース領域とドレイン領域が第一不純物(IMPURITY)でドープされてチャンネル領域に接続され、 前記チャンネル領域が、ボディコンタクト領域を有し、 前記ボディコンタクト領域は、前記絶縁体と前記絶縁レイヤとに接続され、 前記ボディコンタクト領域の表面に、絶縁レイヤに侵入するコンタクトレイヤを有し、 前記コンタクトレイヤが、ゲート電極との接触を回避する位置に配置され、 ボディコンタクト領域が、ソース領域とドレイン領域中でドープされたのとは異なった第二不純物でドープされることを特徴とする、 ボディコンタクトを有した、トランジスタ。」である点で一致し、次の2点で相違する。 (相違点1)前記「層」が、補正後の発明では、「ポリシリコンレイヤ」であるのに対して、刊行物発明では、「シリコン基板10S上にBOX膜10Bを介して」「形成された」「N型拡散層10N」である点。 (相違点2)前記「トランジスタ」が、補正後の発明では、「薄膜トランジスター」であるのに対して、刊行物発明では、「シリコン基板10S上にBOX膜10Bを介して」「形成された」「N型拡散層10N」に形成される、いわゆる「SOI基板」を用いた「トランジスタ」である点。 (3-5)判断 以下、相違点1、2について検討する。 絶縁層上に形成された多結晶シリコン膜を用いて、薄膜トランジスタを形成することは、以下の周知例1及び2に記載されるように、従来周知の技術である。 (周知例1):特開2002-368111号公報 「【0002】 【従来の技術】近年、ガラス基板上に形成された多結晶シリコン膜を活性層に用いた、薄膜トランジスタ(TFT)の研究開発が活発に行われている。多結晶シリコン膜を用いたTFTは、非晶質シリコン膜を用いたTFTと比べて移動度が2桁以上高いため、TFTのゲート幅を小さく微細化しても回路の動作に必要な電流値を十分確保できる。よって、マトリクス型のフラットパネルディスプレイの画素部とその駆動回路を同一基板上に一体形成した、システム・オン・パネルの実現が可能である。」 (周知例2):特開2003-37061号公報 「【0002】 【従来の技術】非晶質基板上あるいは非晶質絶縁膜上に、高性能ポリシリコン薄膜を形成し、薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor:TFT)を作製する技術は、液晶ディスプレイヘの応用や、SRAM(スタティック・ランダム・アクセス・メモリ)の負荷デバイス、IC(集積回路)の配線遅延を防ぐためのリピーター、3次元ICへの応用等利用範囲が極めて広く、活発に研究されている。近年技術の進歩と共に、単結晶基板あるいは、SOI(Silicon On Insulator)基板に匹敵する高い移動度をねらえる結晶化技術が熱心に研究されている。その結果、いわゆるSOI技術と、高性能多結晶シリコン形成技術との境界がやや曖昧になってきている。」 よって、刊行物発明における「BOX膜10Bを介して」「形成され」た「N型拡散層10N」に換えて、上記周知の技術である絶縁層上に形成された多結晶シリコン膜を採用し、前記多結晶シリコン膜に薄膜トランジスタを形成することにより、補正後の発明のように、「絶縁体と、ポリシリコンレイヤと、」「ゲート電極とを有し、前記ポリシリコンレイヤは、チャンネル領域と、ソース領域と、ドレイン領域とを有」する「薄膜トランジスター」とすることは、当業者が容易になし得たことである。 よって、相違点1及び2は、当業者が容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものである。 (3-6)まとめ 以上、検討したとおり、補正後の発明と刊行物発明との相違点は、当業者が、引用刊行物に記載された発明及び周知技術を勘案することにより容易に想到し得た範囲に含まれる程度のものにすぎず、補正後の発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際、独立して特許を受けることができない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項(以下「特許法第17条の2第5項」という。)において準用する同法第126条第5項の規定を満たしていない。 (4)むすび よって、本件補正は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしておらず、また、仮に、当該要件を満たすものであったとしても、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定を満たしていないから、いずれにしても、本件補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.本願発明 平成20年7月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成19年12月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであって、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。 「【請求項1】 絶縁体と、 ポリシリコンレイヤと、 絶縁レイヤと、 ゲート電極とを有し、 前記ポリシリコンレイヤは、チャンネル領域と、ソース領域と、ドレイン領域とを有し、 前記ソース領域とドレイン領域が第一不純物(IMPURITY)でドープされてチャンネル領域に接続され、 前記チャンネル領域が、絶縁体と絶縁レイヤとを接続するボディコンタクト領域を有し、 前記ボディコンタクト領域の表面に、絶縁レイヤに侵入するコンタクトレイヤを有し、 前記コンタクトレイヤが、ゲート電極との接触を回避する位置に配置され、 ボディコンタクト領域が、ソース領域とドレイン領域中でドープされたのとは異なった第二不純物でドープされることを特徴とする、 ボディコンタクトを有した、薄膜トランジスター。」 4.引用刊行物に記載された発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用刊行物には、上において検討したとおり、上記2.(3-3-1)に記載したとおりの事項及び上記2.(3-3-2)において認定したとおりの発明が記載されているものと認められる。 5.判断 上記2.(2)において検討したとおり、補正後の発明は、本願発明の実質な内容を変更したものでないところ、上記2.(3)において検討したように、補正後の発明が、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、当然に引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 6.むすび 以上のとおりであるから、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-12-03 |
結審通知日 | 2010-12-07 |
審決日 | 2010-12-27 |
出願番号 | 特願2004-63113(P2004-63113) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01L)
P 1 8・ 57- Z (H01L) P 1 8・ 575- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 河本 充雄 |
特許庁審判長 |
河口 雅英 |
特許庁審判官 |
松田 成正 小野田 誠 |
発明の名称 | 薄膜トランジスター |
代理人 | 山口 朔生 |