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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1236993
審判番号 不服2008-21117  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-08-18 
確定日 2011-05-11 
事件の表示 特願2000- 39864「半導体素子のゲート酸化膜の形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 9月 8日出願公開、特開2000-243961〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年2月17日の出願(パリ条約に基づく優先権主張1999年2月22日 大韓民国)であって、平成19年11月8日付けの拒絶理由通知に対して、平成20年2月13日に手続補正書及び意見書が提出されたが、同年5月15日付けで拒絶査定がなされ、それに対して、同年8月18日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月17日に手続補正書が提出され、その後、平成22年6月11日付けで審尋がなされ、同年8月30日に回答書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年9月17日に提出された手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載されている事項により特定されるとおりのものであり、そのうちの請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、請求項1に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項1】 半導体基板を準備する工程と、
半導体基板上に、NO/O_(2)ガス雰囲気でO_(2)ガスに対するNOガスの割合を20%未満にして遂行される熱処理を進行して第1次酸化窒化膜を形成する工程(第1熱酸化工程)と、
窒素含有量が5%以上の酸素窒素混成ガスの雰囲気下で熱処理を進行して第2次酸化窒化膜を形成する工程(第2熱酸化工程)と
を備えることを特徴とする半導体素子のゲート酸化膜の形成方法。」

3.引用刊行物に記載された発明
(1)本願の優先日前に日本国内において頒布され、原査定の根拠となった拒絶の理由において引用された刊行物である特開平5-166799号公報(以下「引用例」という。)には、図1と共に以下の記載がある(なお、下線は当合議体にて付加したものである。)。

「【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、絶縁膜形成方法、特に膜厚が薄くかつ特性の優れた絶縁膜の形成方法に関するものである。」

「【0006】ところが、このような低温による酸化では、Si基板とSiO_(2 )膜との界面における平坦性が損なわれる。また、希釈法による酸化を行なうと、高温長時間の酸化過程により基板中の不純物が酸化膜中に取り込まれ、これが核となって絶縁破壊が生じる、などの問題があった。そのため、これらの方法では、膜質の劣化を招くことなく薄膜化を達成することは困難である。
【0007】また、上述の低温酸化法や希釈酸化法によって形成される酸化膜とSiとの界面近傍には、多数のSi原子の不対結合や、歪んだSi-O結合が存在する。高エネルギー電子に対し、これらの結合は、電子トラップとして働く。そのため、このような従来方法で形成された絶縁膜を、例えばMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)のゲート絶縁膜として用いた場合、しきい値電圧の変動や伝達コンダクタンスの低下、さらには高電界ストレスやホットキャリヤ耐性の低下が、問題となる。
【0008】この発明はこのような点に鑑みなされたものであり、従って、この発明の目的は、従来に比して薄くしかも膜厚の制御性に優れ、かつ絶縁耐性が高く膜質の優れた絶縁膜の形成方法を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】この目的の達成を図るため、この発明によれば、反応炉内で、シリコンの下地上にいくつかの酸窒化膜層からなる絶縁膜を形成する方法において、反応炉内を、窒素非含有の酸化性ガスと窒素含有の酸化性ガスとからなる混合ガスの雰囲気とし、かつ下地を加熱処理しながら、前記下地に第1の絶縁膜である酸窒化膜層を形成する工程と、前記反応炉内の前記混合ガスの混合比を窒素含有の酸化性ガスの比率が高くなるようにして順次変え、かつ下地を加熱処理しながら、前記第1絶縁膜上に第2以降の絶縁膜である酸窒化膜層を順次形成していく工程とを含むことを特徴とする。
【0010】この発明の実施に当たり、好ましくは、前述の窒素含有の酸化性ガスを、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N_(2 )O)および二酸化窒素(NO_(2 ))よりなるガス群から選択される1種のガスまたは複数の混合ガスとするのがよい。
【0011】なお、ここでいうシリコンの下地とは、シリコン基板はもとより、そのほか、この基板にエピタキシャル層を形成したもの、またこれらに限らず基板やエピタキシャル層に素子が作り込まれている中間体など、絶縁膜が形成されるべき広く下地を意味している。
【0012】またここでいう混合比とは、この明細書では分圧比と同義であり、従って、分圧比によって規定されるものである。
【0013】
【作用】この発明の構成によれば、まず、反応炉内を、窒素非含有の酸化性ガスと窒素含有の酸化性ガス(例えばN_(2 )Oガス)とからなる混合ガスの雰囲気とし、かつ加熱処理することにより、下地上に第1の絶縁膜である酸窒化膜層(SiO_(X )N_(Y )膜、X、Y>0を満たす値である。)を形成する。次に、同一反応炉内を、混合ガスにおける窒素非含有の酸化性ガスと窒素含有の酸化性ガスとの混合比を変えた混合ガスの雰囲気とし、かつ加熱処理することにより、前記第1の絶縁膜層上に第2の絶縁膜である酸窒化膜層を形成する。更に、反応炉内のガスの混合比を順次変え、かつ下地を加熱処理しながら、第2酸窒化膜層上に第3以降の絶縁膜である酸窒化膜層を順次形成する。このようにして行なわれる成膜工程は、必要な工程数だけ行なわれる。
【0014】このように、この発明の成膜工程では、最初の絶縁膜形成時の窒素含有の酸化性ガスの混合比を低くし、以降、順次高くしていくので、膜厚の細かな制御と、膜中への窒素の効果的な導入、及びそれによる誘電率の向上の図れる高品質の絶縁膜となる。」

「【0027】2-1.第1の絶縁膜の形成
まず、反応炉10内に、シリコンの下地としてp型(100)Si基板18を設置する。必要に応じ、基板表面の清浄化を行い、また反応炉内の清浄を行なう。その際、例えば反応炉10内を10^(-3)?10^(-5)Torrの高真空に排気する(図4にV1で示す期間)。
【0028】次に、バルブ44、46a、46bを開き、反応炉内に、窒素を含まない酸化性ガス例えばO_(2 )ガス、および窒素を含む酸化性ガス例えばN_(2 )Oガスを導入する。この際、各バルブの開閉量を適当に調節することにより、反応炉10内におけるN_(2 )Oガスの分圧比を、例えば10%以下とする。炉内に所望の混合比によるガスの雰囲気が形成されたところで、ガスの送給を停止する。そして、炉内の圧力を常圧(760Torr)とするが、成膜時の反応副生成物を反応炉外へ排気するため、炉内を例えば100?10^(-2)Torrの低真空の状態に維持してもよい。
【0029】次に、基板18を加熱部16により加熱処理を行ない(図4にH1で示す期間)、基板表面に第1の絶縁膜である酸窒化膜62を形成する。
【0030】基板18に対する加熱のピーク温度Tは、1000?1200℃とするのがよい。この基板の加熱は、好ましくは、赤外線ランプ、アークランプ、レーザビームあるいはヒータなどの加熱手段を用いて行なう。この実施例では、赤外線ランプ16aとしてタングステンハロゲンランプを用い、かつ基板18の表面温度を、温度測定手段例えばオプティカルパイロメータ26で測定しながら、約50℃/秒?200℃/秒の間の適当な割合、好ましくは、昇温速度約100℃/秒で、約1100℃まで上昇させ、この温度に一定の時間期間保持して、例えば、膜厚が数10オングストローム程度の第1絶縁膜を形成する(図1の(B))。
【0031】なお、この酸窒化膜の膜厚制御は、例えば、処理温度、加熱時間およびガスの反応炉内での圧力を調整することによって行なうことができ、数10オングストローム以上の任意の膜厚形成を達成できる。
【0032】2-2.第2の絶縁膜の形成
次に、反応炉10内を例えば10^(-3)?10^(-5)Torrの高真空にいったん排気する(図4にV2で示す期間)。それから、各バルブ44、46a、46bを開き、反応炉内に、各ガスを導入する。この際、各バルブの開閉量を適当に調節することにより、反応炉10内のN_(2 )Oガスの分圧比を第1絶縁膜形成時よりも高く、例えば50%とする。炉内に所望の混合比によるガスの雰囲気が形成されたところで、ガスの送給を停止する。そして、炉内の圧力を常圧とするが、場合によっては、100?10^(-2)Torrの低真空の状態としてもよい。
【0033】このように設定したガスの雰囲気中で、基板温度を例えば約50℃/秒?200℃/秒の範囲の適当な割合で、1000?1200℃の温度範囲の適当な温度Tまで上昇させ、この温度に一定の時間期間(図4のH_(2 )で示す期間)保持して第1絶縁膜62上に数オングストローム乃至数10オングストロームの第2の絶縁膜である酸窒化膜64を得る(図1の(C))。
【0034】この場合の加熱手段は、第1の絶縁膜形成時に用いたと同様な加熱手段を用いればよい。なお、このようにして得られる酸窒化膜の膜厚は、加熱時間、温度およびガスの圧力を調整することによって適当に制御できる。」

「【0041】上述の実施例では、窒素を含む酸化性ガスとしてN_(2 )Oガスの例を挙げて説明したが、一酸化窒素(NO)ガスまたは二酸化窒素(NO_(2 ))ガスの単体ガス、あるいは、NOガス、N_(2 )OガスおよびNO_(2 )ガスよりなる群から選択された2種類以上の混合ガスを用いてもよい。また、上述した実施例よりも、酸化膜/N_(2 )O酸窒化膜系の絶縁膜の膜厚が薄い領域で、実施例と同程度の改善効果が得られる。」

「【0043】
【発明の効果】通常の酸化膜は、膜中にSi原子やO原子の不対結合や弱い結合が多数存在するため、電子注入のストレスによって、これら結合が切断されること、また電子注入によるインパクトイオン化で生じた正孔がトラップされることなどにより絶縁破壊が発生する。しかし、この発明により、絶縁膜として酸窒化膜を用いると、これら結合部分に窒素原子が侵入したり、置換されて、Siと窒素の結合の安定性によって絶縁耐性が向上する。
【0044】また、酸窒化膜は、酸化膜と比べて緻密な構造を有して、不純物拡散に対する抑止効果を発揮するとともに、窒素の導入によって誘電率の向上も達成できる。
【0045】また、酸窒化に当たり、窒素は酸化種の拡散を抑制する働きをする、そのため、酸窒化の初期段階において雰囲気中に多量の窒素が存在すると、膜厚の成長が抑制され、Siとの界面の平坦性も損なわれる。それが膜厚制御の低下、絶縁耐性の劣化の原因となる。
【0046】従って、この発明の絶縁膜の形成方法によれば、第1の絶縁膜形成に際しては、N_(2 )Oガスの分圧比を低く、以降、これを順次高くしていくことにより、膜厚の細かな制御と、膜中への窒素の効果的な導入が可能となる、これにより、従来の酸化膜と比べて、薄くしかも膜厚の制御性に優れ、かつ絶縁耐性が高く膜質の優れた絶縁膜が達成できる。」

(2)ここにおいて、0011段落の記載から、「シリコンの下地」として「シリコン基板」を用いることができることは明らかである。

(3)0010段落、及び0041段落の記載から、「窒素を含む酸化性ガス」としてNOガスが用いられることは明らかである。また、0027?0034段落の記載及び技術常識からみて、「窒素を含まない酸化性ガス」としてO_(2 )ガスが用いられることも明らかである。

(4)0007?0008段落、及び0045?0046段落の記載によれば、引用例において形成される絶縁膜は、MOS型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜に用いられることは明らかである。

(5)したがって、引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「反応炉内を、O_(2)ガスとNOガスとからなる混合ガスの雰囲気とし、かつシリコン基板を加熱処理しながら、前記シリコン基板に第1の絶縁膜である酸窒化膜層を形成する工程と、
前記反応炉内の前記混合ガスの混合比をNOガスの比率が高くなるように変え、かつシリコン基板を加熱処理しながら、前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜である酸窒化膜層を形成していく工程と
を含むことを特徴とするMOS型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の形成方法。」

4.本願発明と引用発明との対比
(1)引用発明における「シリコン基板」は、本願発明における「半導体基板」に相当する。そして、引用発明が「シリコン基板」を準備する工程を有していることは自明である。

(2)引用発明における「第1の絶縁膜である酸窒化膜層」及び「O_(2)ガスとNOガスとからなる混合ガスの雰囲気」は、それぞれ、本願発明における「第1次酸化窒化膜」及び「NO/O_(2)ガス雰囲気」に相当するから、「反応炉内を、O_(2)ガスとNOガスとからなる混合ガスの雰囲気とし、かつシリコン基板を加熱処理しながら、前記シリコン基板に第1の絶縁膜である酸窒化膜層を形成する工程」は、本願発明の「半導体基板上に、NO/O_(2)ガス雰囲気で」「熱処理を進行して第1次酸化窒化膜を形成する工程(第1熱酸化工程)」に相当する。

(3)引用発明における「第2の絶縁膜である酸窒化膜層」及び「前記混合ガス」は、それぞれ、本願発明における「第2次酸化窒化膜」及び「酸素窒素混成ガス」に相当するから、引用発明の「前記反応炉内の前記混合ガスの混合比をNOガスの比率が高くなるように変え、かつシリコン基板を加熱処理しながら、前記第1の絶縁膜上に第2の絶縁膜である酸窒化膜層を形成していく工程」は、本願発明の「酸素窒素混成ガスの雰囲気下で熱処理を進行して第2次酸化窒化膜を形成する工程(第2熱酸化工程)」に相当する。

(4)引用発明の「MOS型電界効果トランジスタのゲート絶縁膜の製造方法」は、本願発明の「半導体素子のゲート酸化膜の形成方法」に相当する。

(5)以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、
「半導体基板を準備する工程と、
半導体基板上に、NO/O_(2)ガス雰囲気で熱処理を進行して第1次酸化窒化膜を形成する工程(第1熱酸化工程)と、
酸素窒素混成ガスの雰囲気下で熱処理を進行して第2次酸化窒化膜を形成する工程(第2熱酸化工程)と
を備えることを特徴とする半導体素子のゲート酸化膜の形成方法。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

(相違点1)
本願発明では、「第1熱酸化工程」における「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」が「20%未満」であるのに対して、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

(相違点2)
本願発明では、「第2熱酸化工程」における「窒素含有量」が「5%以上」であるのに対し、引用発明ではそのような特定がなされていない点。

5.相違点についての当審の判断
(1)相違点1について
引用例の0045段落の「酸窒化の初期段階において雰囲気中に多量の窒素が存在すると、膜厚の成長が抑制され、Siとの界面の平坦性も損なわれる。それが膜厚制御の低下、絶縁耐性の劣化の原因となる。」という記載をみるに、引用発明における「第1の絶縁膜」形成に際しては、雰囲気中の窒素量を少なくすることが肝要であることが明らかであるから、当該工程において所定値以下のNOガスの割合での熱処理が行われるべきであることは、当業者であれば直ちに察知し得たことである。
そして、引用例の0027?0034段落に記載された実施例においては、「第1の絶縁膜」を形成する際の「窒素を含む酸化性ガス」としては、「N_(2)Oガス」が用いられているが、該「N_(2 )Oガス」の添加割合は「10%以下」とされており、該「N_(2 )Oガス」の添加割合をO_(2)ガスに対する割合に換算すると「約11%以下」となるから、引用発明における「NOガス」についても、当該実施例の「窒素を含む酸化性ガス」である「N_(2 )Oガス」のO_(2)ガスに対する割合を参考にして、同程度のO_(2)ガスに対する割合(11%以下程度)を設定しようとすることは、当業者が適宜になし得たことである。
そして、後記(3)に記載したとおり、本願発明において「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」の上限である「20%」という値に臨界的意義は認められない。
したがって、引用発明において、「第1の絶縁膜」の形成に際し、本願発明のように「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」を「20%未満」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
引用発明における「第2の絶縁膜」の形成は、「第1の絶縁膜」の形成時よりも「NOガスの比率が高くなる」雰囲気下で加熱処理することで行われるものである。
そして、引用例の0027?0034段落に記載された実施例においては、「第2の絶縁膜」を形成する際の「窒素を含む酸化性ガス」としては「N_(2 )Oガス」が用いられているが、該「N_(2 )Oガス」の添加割合は「50%」とされており、該「N_(2 )Oガス」の添加割合を「窒素含有量」に換算すると、「40%」となるから、引用発明における「NOガス」についても、当該実施例の「窒素を含む酸化性ガス」である「N_(2 )Oガス」の窒素含有量を参考にして、同程度の窒素含有量(40%程度)を設定しようとすることは、当業者が適宜になし得たことである。
そして、後記(3)に記載したとおり、本願発明において「窒素含有量」の下限である「5%」という値に臨界的意義は認められない。
したがって、引用発明において、「第2の絶縁膜」の形成に際し、本願発明のように「窒素含有量」を「5%以上」とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)本願発明における数値範囲の臨界的意義について
本願発明の第1熱酸化工程における「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」の「20%未満」という範囲、及び第2熱酸化工程における「窒素含有量」の「5%以上」という範囲が、それぞれ臨界的意義を有するか否かについてまとめて検討する。
本願の明細書及び図面(以下、これらをまとめて「明細書等」という。)において、「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」が「20%未満」であるという発明特定事項が直接的に記載されている箇所は、特許請求の範囲の記載をほぼそのまま転記した0013段落を除いては0023段落のみであり、当該0023段落の記載は、「ここで、O_(2)ガスに対するNOガスの比は20%未満とする。このように、第1次酸化/窒化工程時にO_(2)ガスに対するNOガスの比を10%にして工程を行う場合に最も優秀な特性のゲート酸化膜を形成することができる。」というものであり、上記「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」を「20%未満」とすることについて、実験結果等に裏付けられた具体的な根拠を何ら記載するものではない。また、「窒素含有量」が「5%以上」であるという発明特定事項に関連した事項に関する記載は、特許請求の範囲の記載をほぼそのまま転記した0013段落以外には存在しない。
0027?0037段落に記載された実施例は、第1熱酸化工程における「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」が「20%未満」であり、第2熱酸化工程における「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」が「20%以上」である旨が記載されている。しかし、上記実施例において「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」は具体的にどのような値であったのかは全く明らかにされていない。また、「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」が上記の範囲から外れた場合の比較例は何ら示されていない。したがって、上記実施例は、「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」と絶縁膜の各物性値との関連を明確にするものとはいえない。
そして、明細書等を精査しても、他に本願発明において、第1熱酸化工程における「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」を「20%未満」、及び第2熱酸化工程における「窒素含有量」を「5%以上」とすることの技術的意義について記載した箇所はなく、本願出願時点における技術常識を加味したとしても、第1熱酸化工程における「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」を「20%未満」、及び第2熱酸化工程における「窒素含有量」を「5%以上」としたことにより、予期しない程度の顕著な効果を奏するものとは認めることはできないから、本願発明において第1熱酸化工程における「O_(2)ガスに対するNOガスの割合」を「20%未満」とし、第2熱酸化工程における「窒素含有量」を「5%以上」とすることの臨界的意義は認められない。

(4)以上検討したとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、上記結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-07 
結審通知日 2010-12-14 
審決日 2010-12-28 
出願番号 特願2000-39864(P2000-39864)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 川村 裕二  
特許庁審判長 北島 健次
特許庁審判官 酒井 英夫
近藤 幸浩
発明の名称 半導体素子のゲート酸化膜の形成方法  
代理人 恩田 博宣  
代理人 本田 淳  
代理人 池上 美穂  
代理人 恩田 誠  

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