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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1237016
審判番号 不服2009-20956  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-29 
確定日 2011-05-11 
事件の表示 特願2006-300589「トップラインインサートを備えるゴルフクラブヘッド」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 5月24日出願公開、特開2007-125399〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成18年11月6日の出願(パリ優先権主張:2005年11月4日 米国)であって、平成20年11月21日付け拒絶理由通知に対して、平成21年6月1日付けで手続補正がなされたが、同年6月24日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月29日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
その後、当審において、平成22年2月15日付けで審査官により作成された前置報告書について、平成22年7月27日付けで審尋を行ったところ、同年10月27日付けで回答書が提出されたものである。

第2 平成21年10月29日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成21年10月29日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理 由]
1 補正内容
(1)本件補正は、特許請求の範囲についてするものであり、
本件補正前(平成21年6月1日付け手続補正後のもの)に、
「【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、フロントフェースと、ソールと、バックと、ヒールと、トウと、トップとを備える本体と、
前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、
前記凸部に連結された、第2の材料で形成されたインサートとを有し、
前記第2の材料が、前記フロントフェースの一部を形成し、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記凸部が、前記クラブヘッドのトップラインに位置する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1の密度が前記第2の密度より少なくとも3g/cm^(3)だけ大きい、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第2の密度が0.5g/cm^(3)から5g/cm^(3)までである、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記第2の材料が制振材料である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記制振材料が、熱可塑性材料又は熱硬化性材料である、請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記制振材料が、ゴム、ウレタン、ポリウレタン、ブタジエン、ポリブタジエン、及びシリコンのうちの1つ又は2つ以上を含む、請求項6に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記第1の材料が、前記トップラインにおいて前記フェースの最も上の部分に延びる、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記クラブヘッドが重心を有し、
前記クラブヘッドは、前記第2の材料を前記第1の材料に置き換えた、ほぼ同様のゴルフクラブヘッドと比較して、前記重心を通る垂直軸を中心に測定された慣性モーメントが少なくとも20gm・インチ2増大する、
請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
前記本体が第1の体積を有し、
前記インサートが第2の体積を有し、
前記第2の体積が前記第1の体積の0.5%から10%である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、フロントフェースと、ソールと、バックと、ヒールと、トウと、トップとを備える本体を有し、前記トップに設けられ前記本体から遠ざかるように延びる凸部をさらに有し、
ナイロンを有する第2の材料で形成され、前記凸部で前記本体に連結されたインサートを有し、
前記第2の材料が、前記フロントフェースの一部を形成し、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記クラブヘッドが、前記インサート及び前記本体の一部によって形成されたトップラインを備える、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記インサートが、強化ナイロンで形成され、15kpsiから20kpsiの引張強度、650kpsiから750kpsiの曲げ率、3ft・lb/インチから4ft・lb/インチのノッチ衝撃強さ、及び、相対湿度50%で73°Fのとき1.25から2の比重を有する、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記引張強度が17.5kpsiであり、前記曲げ率が600kpsiであり、前記ノッチ衝撃強さが3.5ft・lb/インチであり、前記比重が1.4である、請求項13に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記ソールが、前記ヒールと前記トゥとの間で凹部を構成する上面を備え、前記凹部内に位置決めされた第2のインサートをさらに備え、前記第2のインサートは粘弾性材料で形成され、
前記第2のインサートは第2の凹部を構成する表面を有し、前記第2の凹部内の前記第2のインサートに連結されたウエイト部材をさらに備える、
請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記フロントフェースとは反対側の前記バックに連結された第3のインサートを備え、該第3のインサートが粘弾性材料で形成された、請求項15に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
前記フロントフェースとは反対側の前記バックに連結された第2のインサートを備え、該第2のインサートが粘弾性材料で形成された、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
自由層制振システムと制約層制振システムとの両方を備える、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
前記自由層制振システムが、前記フロントフェースと反対側の前記バックに連結された第2のインサートを備え、
前記制約層制振システムが、前記ソールの上面に連結された第3のインサートと、該第3のインサートの上面に連結されたウエイト部材とを備える、
請求項18に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
前記第1の密度が前記第2の密度より少なくとも3g/cm^(3)大きい、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項21】
前記第2の密度が0.5g/cm^(3)から5g/cm^(3)である、請求項20に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項22】
前記第2の材料が、25%から50%のガラス強化材を有する、請求項11に記載のゴルフクラブヘッド。」とあったものを、

「【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、フロントフェースと、ソールと、バックと、ヒールと、トウと、トップとを備える本体と、
前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、を有し、
前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており、
前記凸部に連結された、第2の材料で形成されたインサートとを有し、
前記第2の材料が、前記フロントフェースの一部を形成し、前記第2の材料が制振材料であり、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
前記凸部が、前記クラブヘッドのトップラインに位置する、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
前記第1の密度が前記第2の密度より少なくとも3g/cm^(3)だけ大きい、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
前記第2の密度が0.5g/cm^(3)から5g/cm^(3)までである、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
前記制振材料が、熱可塑性材料又は熱硬化性材料である、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項6】
前記制振材料が、ゴム、ウレタン、ポリウレタン、ブタジエン、ポリブタジエン、及びシリコンのうちの1つ又は2つ以上を含む、
請求項5に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項7】
前記第1の材料が、前記トップラインにおいて前記フェースの最も上の部分に延びる、請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項8】
前記クラブヘッドが重心を有し、
前記クラブヘッドは、前記第2の材料を前記第1の材料に置き換えた、ほぼ同様のゴルフクラブヘッドと比較して、前記重心を通る垂直軸を中心に測定された慣性モーメントが少なくとも20gm・インチ2増大する、
請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項9】
前記本体が第1の体積を有し、
前記インサートが第2の体積を有し、
前記第2の体積が前記第1の体積の0.5%から10%である、
請求項1に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項10】
ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、フロントフェースと、ソールと、バックと、ヒールと、トウと、トップとを備える本体を有し、前記トップに設けられ前記本体から遠ざかるように延びる凸部をさらに有し、前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており、
ナイロンを有する第2の材料で形成され、前記凸部で前記本体に連結されたインサートを有し、
前記第2の材料が、前記フロントフェースの一部を形成し、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい、
ゴルフクラブヘッド。
【請求項11】
前記クラブヘッドが、前記インサート及び前記本体の一部である凸部によって形成されたトップラインを備える、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項12】
前記インサートが、強化ナイロンで形成され、15kpsiから20kpsiの引張強度、650kpsiから750kpsiの曲げ率、3ft・lb/インチから4ft・lb/インチのノッチ衝撃強さ、及び、相対湿度50%で73°Fのとき1.25から2の比重を有する、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項13】
前記引張強度が17.5kpsiであり、前記曲げ率が600kpsiであり、前記ノッチ衝撃強さが3.5ft・lb/インチであり、前記比重が1.4である、請求項12に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項14】
前記ソールが、前記ヒールと前記トゥとの間で凹部を構成する上面を備え、
前記凹部内に位置決めされた第2のインサートをさらに備え、前記第2のインサートは粘弾性材料で形成され、
前記第2のインサートは第2の凹部を構成する表面を有し、前記第2の凹部内の前記第2のインサートに連結されたウエイト部材をさらに備える、
請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項15】
前記フロントフェースとは反対側の前記バックに連結された第3のインサートを備え、該第3のインサートが粘弾性材料で形成された、請求項14に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項16】
前記フロントフェースとは反対側の前記バックに連結された第2のインサートを備え、該第2のインサートが粘弾性材料で形成された、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項17】
自由層制振システムと制約層制振システムとの両方を備える、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項18】
前記自由層制振システムが、前記フロントフェースと反対側の前記バックに連結された第2のインサートを備え、
前記制約層制振システムが、前記ソールの上面に連結された第3のインサートと、該第3のインサートの上面に連結されたウエイト部材とを備える、
請求項17に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項19】
前記第1の密度が前記第2の密度より少なくとも3g/cm^(3)大きい、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項20】
前記第2の密度が0.5g/cm^(3)から5g/cm^(3)である、請求項19に記載のゴルフクラブヘッド。
【請求項21】
前記第2の材料が、25%から50%のガラス強化材を有する、請求項10に記載のゴルフクラブヘッド。」と補正するものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る発明の上記(1)の補正内容は、次の内容からなる。

本件補正前の請求項1を引用する請求項5の「前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、前記凸部に連結された、第2の材料で形成されたインサートとを有し、」を「前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、を有し、前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており、前記凸部に連結された、第2の材料で形成されたインサートとを有し、」とし、本件補正後の独立請求項1とする補正。

2 補正目的
(1)上記1(2)の補正内容は、凸部の位置を特定するものであることから「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであると認められる。
(2)よって、本件補正後の請求項1に係る発明についての補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」目的とするものであると認め得るものであることから、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本件補正発明」という。)について、これが特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)否かを、以下に検討する。

3 独立特許要件
(1)本件補正発明
本件補正発明を再掲すると、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、フロントフェースと、ソールと、バックと、ヒールと、トウと、トップとを備える本体と、
前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、を有し、
前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており、
前記凸部に連結された、第2の材料で形成されたインサートとを有し、
前記第2の材料が、前記フロントフェースの一部を形成し、前記第2の材料が制振材料であり、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい、
ゴルフクラブヘッド。」

(2)引用文献に記載の事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用され本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平7-213656号公報(以下「引用文献」という。)には、図とともに以下の事項が記載されている。

(ア)「【請求項1】 アドレスしたときに地面とほぼ平行な面内でヒールからトウ間に伸びるソールと、このソールのヒールとトウ間にわたる前縁から上方向に伸びるインパクト面と、このソールのヒールとトウ間にわたる後縁から上方向に伸びるバックフェースと、このバックフェースの中央部に設けられるくぼみと、このくぼみの周囲に設けられるリブとを備えたアイアン系のゴルフクラブヘッドにおいて、
ヘッドの周縁部の少なくとも一部分に比重の軽い衝撃吸収材を装着ないし埋設したことを特徴とするアイアン系ゴルフクラブヘッド。
【請求項2】 前記周縁部の上部に衝撃吸収材を装着ないし埋設したことを特徴とする請求項1に記載のアイアン系ゴルフクラブヘッド。」

(イ)「【0003】今までのキャビティバックタイプのヘッドは、同一素材、例えば軟鉄を鍛造して作られたもの、ステンレスをロストワックス製法で鋳造して作られたものなどであったが、数年前のルール改正によりカーボン,樹脂,金属あるいは異種金属などを複合させたコンポジットクラブが作られるようになった。例えば、ヘッドの周縁部を比重の重いベリリウムカッパーで作り、中央開口部に比重の軽いチタニウムで作られたフェース材を嵌合させたキャビティバックタイプのヘッドが開発された。このようなヘッドでは、周辺に重い金属が使われて中央部が軽い金属なので、鉄やステンレスなどの単一素材で作られたヘッドでは実現不可能であったスィートエリアのワイド化が可能となった。また、チタニウムは軽くて丈夫であるため、フェース材自体の厚みを鉄やステンレスよりも薄くすることが可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来のキャビティバックタイプのヘッドではインパクト面の中央部の厚みが薄く、特にチタニウムのフェース材ではさらに肉厚が薄くなり、インパクト時のフィーリングが悪くなるものであった。図5に示すヘッドの各位置(各測定点1?27)におけるインパクト時の振幅(mm/N)をモーダル解析した結果は、図4に示すように符号Aで示すキャビティバックタイプのものが符号Bで示すマッスルバックタイプのものより測定点5?9,14?17において著しく振幅が大きかった。
【0005】そこで、この発明は、インパクト面の肉厚が薄いキャビティバックタイプのヘッドにおけるインパクト時のフィーリングを向上させたアイアン系ゴルフクラブヘッドを提供することを目的とするものである。」

(ウ)「【0007】
【作用】従来のキャビティバックタイプのヘッドは、図4のグラフ中符号Aで示すように、ヘッドのインパクト面の中心(測定点4)よりも周縁部においてインパクト時の振幅が大きい。そのため、インパクト面中心の裏側に衝撃吸収材を装着したものもある(商品名クリーブランド< 792VAS>アイアン)が、図4のグラフからは振幅を抑えるべき位置はインパクト面中心(スィートエリア)ではなく、その周縁部であることが判明した。特に周縁部の上部(図5において9,14,15,16,17,22の位置)がインパクト時に最も振動するので、この部分に衝撃吸収材を装着又は埋設すれば、インパクト時のフィーリングが向上する。」

(エ)「【0009】図1に示す第1実施例では、シャフト30の下端部に連接されたホーゼル31を有し、このホーゼル31の下端部には、アドレスしたときに地面Gとほぼ平行な面内でヒール32からトウ33間に伸びるソール34と、このソール34のヒール32とトウ33間にわたる前縁34Aから上方向に伸びるインパクト面35と、このソール34のヒール32とトウ33間にわたる後縁34Bから上方向に伸びるバックフェース36と、このバックフェース36の中央部に設けられるくぼみ37と、このくぼみ37の周囲に設けられるリブ38とからヘッドを構成してある。インパクト面35とバックフェース36、ソール34の前縁34Aと後縁34Bは図2に示す。インパクト面35のスィートエリアの周りの周縁部の上部には比重の軽い衝撃吸収材40を埋設してある。この実施例では上部のリブ38に凹所39を形成し、この凹所39に衝撃吸収材40を埋設した。なお、ソール34の前縁34Aはリーディングエッジと呼ばれ、後縁34Bはトレーリングエッジと呼ばれる。さらにインパクト面35の上部トップラインの縁はトップエッジ41と呼ばれる。
【0010】図1および図2に示す第1実施例では、トップエッジ41側のリブ38に衝撃吸収材40を埋設したが、ヒール32側のリブ38やトウ33側のリブ38やソール34側のリブ38にも衝撃吸収材40を装着ないし埋設することも可能である。さらに、インパクト面35のスィートエリアの周り、すなわち図1においてはリブ38に隣接するインパクト面35のバックフェース36の周縁部の少なくとも一部分に衝撃吸収材40を装着ないし埋設してもよい。リブ38の個所とともにリブ38に隣接するインパクト面35の裏側に装着ないし埋設することもできる。ここでいう周縁部は図5における符号4で示すエリアを除く部分にほぼ相当する。なお、図1においては衝撃吸収材40が外部に露出しているが、この衝撃吸収材40を隠すようにバックフェース36を処理することが好ましい。」

(オ)「【0011】ここで使用される比重の軽い衝撃吸収材40としては、高粘弾性ウレタンエラストマーが好適に使用できる。この高粘弾性ウレタンエラストマーとしては「ソルボセイン」という商標名の商品が市販されている。これは、分子構造の設計段階で特別の工夫が施されたポリオールとMDIから成るエーテル系ポリウレタンであり、硬度は通常のJIS(A)では、0?25の範囲の軟質ゴムであり、ショア(00)硬度計では30?70となっている。また、衝撃吸収材40としてはゲル状物質を用いることもできる。例えば、ジメチルシロキサンポリマーを化学縮合によって相互架橋させてシリコンゴムとシリコンオイルの中間的な性質を持たせたシリコンゲルも好適に使用できる。衝撃緩衝用のシリコンゲルは基材のゲルにアクリロニトリル・塩化ビニリデン共重合物の中空有弾性フィラーを添加したものも使用できる。このような中空フィラーを添加したものでは比重は0.61程度である。・・・(略)・・・衝撃吸収材40としては、特開昭61-273940号公報に記載の如きものの使用も可能である。これは、20℃の反発弾性が25%以下、好ましくは15%以下、密度が0.05?0.9g/cm^(3) 、好ましくは0.1?0.7g/cm^(3)である発泡材料および/又はSRISによる硬度が50°以下で反発弾性が25%以下であるゲル状物質である。発泡材料としては、発泡ゴム又はウレタンスポンジ等が挙げられ、例えば、スチレン含有量が40?75重量%であるスチレン-ブタジエン共重合体もしくはスチレン-ブタジエン共重合体と全体の0?40重量%の他のゴム成分とから成るポリマー100重量部、30?300重量部の充填剤、5?100重量部の可塑剤、0.5?60重量部の発泡剤、以上の成分から成る混合物に加硫剤、加硫促進剤を加え、加熱発泡硬化して得られる低レジリエンスゴム発泡体が好ましく使用できる。このような発泡材料の20℃での反発弾性が25%を越えると衝撃吸収材40に十分な衝撃吸収性能が得られず、また密度が0.9g/cm^(3) を越えると衝撃吸収材40の重量が重くなり、密度0.05g/cm^(3) 未満では衝撃吸収性能および強度が不十分となる。」

(カ)「【0013】図3に示す第2実施例は、ホーゼル31とヘッド本体部42とを比重の重い材料から形成し、ヘッド本体部42に開口された開口部43にフェース材44を嵌合等の手段により取付けるアイアン系ゴルフクラブヘッドを示す。ヘッド本体42に開口される開口部43の周辺にはフェース材44が当接するためのフランジ部45が形成され、このフランジ部45に衝撃吸収材40を装着してある。フェース材44は比重の軽い素材、例えばチタニウム等の材料から形成してある。ホーゼル31およびヘッド本体42はベリリウムカッパーを使用した。この第2実施例では、開口部43を取囲むフランジ45の全周に衝撃吸収材40を装着したが、部分的に装着することもできる。また、トップエッジ41に隣接するリブ38に衝撃吸収材40を装着ないし埋設してもよいことは勿論である。」

(キ)「【0016】図4に示すグラフおよび上記表から明らかなように、ヘッドの中心部すなわちインパクト面35のスィートエリアを含む中央部の周りの周縁部に比重の軽い衝撃吸収材40を装着ないし埋設した場合は振動を抑えることができ、特に図5に示す9,14,15,16,17,22の位置に衝撃吸収材40を装着ないし埋設した場合に効果が大きいことがわかる。ヘッド上部に衝撃吸収材40を付加しても、ヘッド上部の肉厚を厚くするのに比較して重量の変化は殆どない。すなわち、衝撃吸収材40の比重が軽いため、重心位置,クラブのバランスに影響を与えることは極めて小さく、インパクト時のフィーリング向上に顕著な効果を奏する。
【0017】
【発明の効果】以上説明したように、この発明によれば、キャビティバックのアイアン系ゴルフクラブヘッドにおいて、ヘッドの周縁部の少なくとも一部分に比重の軽い衝撃吸収材を装着ないし埋設したので、インパクト面の裏面全体に衝撃吸収材を貼り付けるものに比べて材料が節減されるとともに振動を抑える効果は高い。また、比重の軽い衝撃吸収材であるために衝撃吸収材の装着ないし埋設によりヘッドの重心位置やクラブのバランスに悪影響を与えることもない。また、周縁部に衝撃吸収材を装着ないし埋設することによりインパクト時のフィーリングが向上し、キャビティアイアンの特性を損ねることもない。」

(ク)「【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の第1実施例を示すバックフェースから見た図。
【図2】図1のA-A線断面図。
【図3】この発明の第2実施例を示す一部断面の分解斜視図。
【図4】ヘッドの各測定点におけるインパクト時の振幅を比較するグラフ。
【図5】ヘッドのモーダル解析時の測定点を示す図。」

(ケ)上記(イ)の「【0003】今までのキャビティバックタイプのヘッドは、同一素材、例えば軟鉄を鍛造して作られたもの、ステンレスをロストワックス製法で鋳造して作られたものなどであったが、数年前のルール改正によりカーボン,樹脂,金属あるいは異種金属などを複合させたコンポジットクラブが作られるようになった。例えば、ヘッドの周縁部を比重の重いベリリウムカッパーで作り、中央開口部に比重の軽いチタニウムで作られたフェース材を嵌合させたキャビティバックタイプのヘッドが開発された。」との記載から、「キャビティバックタイプのヘッド」には、同一素材から作られたものと、異なる素材から作られたものとがあることになる。
そして、上記(エ)の「【0009】図1に示す第1実施例では、シャフト30の下端部に連接されたホーゼル31を有し、このホーゼル31の下端部には、アドレスしたときに地面Gとほぼ平行な面内でヒール32からトウ33間に伸びるソール34と、このソール34のヒール32とトウ33間にわたる前縁34Aから上方向に伸びるインパクト面35と、このソール34のヒール32とトウ33間にわたる後縁34Bから上方向に伸びるバックフェース36と、このバックフェース36の中央部に設けられるくぼみ37と、このくぼみ37の周囲に設けられるリブ38とからヘッドを構成してある。」との記載、上記(カ)の「【0013】図3に示す第2実施例は、ホーゼル31とヘッド本体部42とを比重の重い材料から形成し、ヘッド本体部42に開口された開口部43にフェース材44を嵌合等の手段により取付けるアイアン系ゴルフクラブヘッドを示す。」との記載、図2の断面図及び図3の分解斜視図からして、図1、2に示された「第1実施例のヘッド」が、衝撃吸収材40を除き、同一素材から作られたものであり、図3に示された「第2実施例のヘッド」が、異なる素材から作られたものであることになる。

(コ)バックフェースから見た図1及び断面図である図2とから、インパクト面35と、ソール34と、バックフェース36と、ヒール32と、トウ33と、上部トップラインの縁であるトップエッジ41とを備え、衝撃吸収材40を除き、同一素材(以下「第1の材料」という。)により形成されたヘッドが看取される。

(サ)上記(イ)の「図5に示すヘッドの各位置(各測定点1?27)におけるインパクト時の振幅(mm/N)をモーダル解析した結果は・・・おいて著しく振幅が大きかった。」との記載、上記(ウ)の「特に周縁部の上部(図5において9,14,15,16,17,22の位置)がインパクト時に最も振動するので、この部分に衝撃吸収材を装着又は埋設すれば、インパクト時のフィーリングが向上する。」との記載、上記(キ)の「特に図5に示す9,14,15,16,17,22の位置に衝撃吸収材40を装着ないし埋設した場合に効果が大きいことがわかる。」との記載及び図5に示された測定点(9,14,15,16,17,22)の位置から、「衝撃吸収材40」を、図1に示されたヘッドにおいて、上部トップラインの縁であるトップエッジ41に装着すると効果が大きいことになる。

(シ)上記記載から、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「アイアン系ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、インパクト面と、ソールと、バックフェースと、ヒールと、トウと、上部トップラインの縁であるトップエッジとを備えるヘッドと、
密度が0.05?0.9g/cm^(3)である発泡ゴム又はウレタンスポンジ等の比重の軽い衝撃吸収材とを有し、
上部トップラインの縁であるトップエッジに衝撃吸収材を装着した、
アイアン系ゴルフクラブヘッド。」

(3)対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「アイアン系ゴルフクラブヘッド」は本件補正発明の「ゴルフクラブヘッド」に相当し、同様に、
「第1の材料」は「第1の材料」に
「発泡ゴム又はウレタンスポンジ」は「第2の材料」に、
「インパクト面」は「フロントフェース」に、
「ソール」は「ソール」に、
「バックフェース」は「バック」に、
「ヒール」は「ヒール」に、
「トウ」は「トウ」に、
「ヘッド」は「本体」に、
「上部トップラインの縁であるトップエッジ」は「トップライン」に、
「衝撃吸収材」は「インサート」及び「制振材料」に、
「装着」は「連結」に、それぞれ、相当する。

イ 上記アより、引用発明の「アイアン系ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、インパクト面と、ソールと、バックフェースと、ヒールと、トウと、上部トップラインの縁であるトップエッジとを備えるヘッド」は本件補正発明の「ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、フロントフェースと、ソールと、バックと、ヒールと、トウと、トップとを備える本体」に相当する。

ウ 引用発明の「発泡ゴム又はウレタンスポンジ」の比重が「第1の材料」の比重よりも小さいことは、当業者にとって明らかである。

エ 上記ウより、引用発明の「密度が0.05?0.9g/cm^(3)である発泡ゴム又はウレタンスポンジ等の比重の軽い衝撃吸収材とを有し、
上部トップラインの縁であるトップエッジに衝撃吸収材を装着した」と、
本件補正発明の「前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、を有し、
前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており、
前記凸部に連結された、第2の材料で形成されたインサートとを有し、
前記第2の材料が、前記フロントフェースの一部を形成し、前記第2の材料が制振材料であり、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい」とは、
「クラブヘッドのトップに取り付けられた、第2の材料で形成されたインサートとを有し、
前記第2の材料が制振材料であり、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい」という点で共通する。

オ してみると、本件補正発明と引用発明とは以下の点で一致する。
<一致点>
「ゴルフクラブヘッドであって、
第1の材料で形成され、フロントフェースと、ソールと、バックと、ヒールと、トウと、トップとを備える本体と、
クラブヘッドのトップに取り付けられた、第2の材料で形成されたインサートとを有し、
前記第2の材料が制振材料であり、
前記第1の材料が第1の密度を有し、前記第2の材料が第2の密度を有し、前記第1の密度が前記第2の密度より大きい、
ゴルフクラブヘッド。」

カ 一方で、本件補正発明と引用発明とは、以下の点で相違する。
<相違点>
本体及びインサートに関し
本体に関し本件補正発明では「前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、を有し、前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており」と特定され、さらに、インサートに関し本件発明では「前記凸部に連結された」ものであり、かつ「前記フロントフェースの一部を形成し」と特定されるものであるのに対して、引用発明ではこれらの特定を有してない点。

(4)判断
上記<相違点>について検討する。
ア アイアン系ゴルフクラブヘッドのトップの位置にフロントフェースの一部を形成するようにヘッド本体と異なる部材を装着することは、本願の優先日前に周知である(例えば、特開2001-161870号公報の【0024】ないし【0025】及び図7、特開平11-226158号公報の図3(d)、特開平8-57088号公報の図6、特開平8-24379号公報の図11、特開平5-168732号公報の図1ないし4を参照。以下「周知技術1」という。)。

イ また、アイアン系ゴルフクラブヘッドにおいて、凸部又は凹部を利用して異なる部材を組み合わせることは、本願の優先日前に周知である(例えば、上記周知技術1であることを指摘するために例示した特開平11-226158号公報の図3(d)、特開平8-57088号公報の図6、特開平8-24379号公報の図11及び特開平5-168732号公報の図1ないし4に加えて、特開平9-173513号公報の図2、特開平8-257181号公報の図3、特開平8-206258号公報の図5を参照。以下「周知技術2」という。)。

ウ してみれば、引用発明において、ゴルフクラブヘッド(アイアン系ゴルフクラブヘッド)のトップ(上部トップラインの縁であるトップエッジ)の位置に凸部又は凹部を設け、インサート(衝撃吸収材)をフロントフェース(インパクト面)の一部を形成するように連結(装着)することは、当業者が上記周知技術1及び周知技術2に基づいて容易になし得たことであり、その際、凸部とするか又は凹部とするかは、当業者が適宜選択し得た設計的事項である。

エ 上記ウにおいて凸部を選択してインサートを連結させた引用発明は、本体に関し「前記トップに設けられた、前記本体から遠ざかるように延びる凸部と、を有し、前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており」との構成を備え、インサートに関し「前記凸部に連結された」及び「前記フロントフェースの一部を形成し」との構成を備えることになる。

オ 以上のことから、引用発明において、上記<相違点>に係る本件補正発明の構成を採用することは、当業者が周知技術1及び周知技術2に基づいて容易になし得たことである。

また、本件補正発明の奏する効果も、引用発明、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測し得る範囲内のものである。

(5)独立特許要件についてのまとめ
本件補正発明は、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 補正却下の決定のむすび
上記「3」のとおり、本件補正発明は特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反する。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたため、本願の請求項1を引用する請求項5に係る発明(以下「本願発明」という。)は、前記「第2 1(1)」にて本件補正前の請求項5として記載したとおりのものである。

2 引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献及びその記載事項は、前記「第2 3(2)」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、前記「第2 3(3)」で検討した本件補正発明から凸部に関して「前記凸部は前記クラブヘッドのトップラインの中央に配置されており」との限定を省いたものに実質的に相当する。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本件補正発明が、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が引用文献に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-06 
結審通知日 2010-12-07 
審決日 2010-12-20 
出願番号 特願2006-300589(P2006-300589)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 晴男郡山 順安久 司郎  
特許庁審判長 赤木 啓二
特許庁審判官 星野 浩一
藏田 敦之
発明の名称 トップラインインサートを備えるゴルフクラブヘッド  
代理人 鶴田 準一  
代理人 篠崎 正海  
代理人 大橋 康史  
代理人 青木 篤  
代理人 谷光 正晴  
代理人 島田 哲郎  
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