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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A47K
管理番号 1237018
審判番号 不服2009-23012  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-25 
確定日 2011-05-11 
事件の表示 特願2005- 47527「手すり型シャワ装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 9月 7日出願公開、特開2006-230607〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件出願は、平成17年2月23日に特許出願がなされたものであって、平成21年9月29日に拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月25日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。
その後、当審において、平成22年12月14日付けで拒絶理由を通知したところ、平成23年2月2日に意見書及び手続補正書が提出された。

2 本願発明
本件出願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成23年2月2日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
水配管および湯配管にそれぞれ連通する水導入口および湯導入口を有し、水導入口が湯導入口よりも上方に位置するよう上下方向に配置される中空の手すり体と、
水配管からの水および湯配管からの湯を混合するよう前記手すり体の下部に設けられた混合手段と、
この混合手段よりも下流側に設けられたシャワホースおよびシャワヘッドよりなるハンドシャワならびに前記手すり体の下流端部に接続される上シャワと、
前記混合手段によって混合された湯水を、前記ハンドシャワに供給する状態または前記上シャワに供給する状態に切替える切替手段とを備えた手すり型シャワ装置であって、
前記切替手段を、前記手すり体の下流端部と前記手すり体の前記水導入口との間で、かつ前記手すり体の下流端部寄りに設け、
前記混合手段は、前記ハンドシャワまたは上シャワから吐出させる湯水の温度を設定するための温度設定手段と、この温度設定手段により設定した温度に対応した湯水の混合を行わせるための自動温度調節機能を有する温度調整ユニットとを備えており、
前記温度調整ユニットは、前記手すり体の上流端部に形成された開口から前記手すり体の下部内に嵌込可能であり、かつ、前記水配管からの水および前記湯配管からの湯を混合するための混合室が形成されている弁体/サーモエレメント収納用ケースを有する一方、
前記手すり体は、
前記切替手段を介して前記ハンドシャワに連通するよう、または、前記切替手段を介して前記上シャワに連通するよう、前記混合室から前記水導入口を横切り前記切替手段に向かう湯水供給流路を内部に有するとともに、
前記湯水供給流路から手すり体表面に熱が伝わるのを防止するため前記湯水供給流路の一部を覆う横断面が環状の水導入路を内部に有し、
また、前記上シャワは、シャワ散水口を有するシャワ板と、前記手すり体の外径よりも小さい外径を有し、前記シャワ散水口と前記湯水供給流路を連通させる中空のバーとよりなり、
さらに、
手すり型シャワ装置を壁面に設置するため前記中空のバーに設けた上下一対の手すり型シャワ装置取り付け部材を有することを特徴とする手すり型シャワ装置。」(以下、請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

3 引用刊行物
当審における拒絶の理由で引用され、本願出願前に頒布された刊行物は、次のとおりである。
刊行物1:特開2003-56021号公報
刊行物2:特開2003-230495号公報
刊行物3:特開2003-70670号公報
刊行物4:実願平1-22886号(実開平2-112758号)のマイクロフィルム

(1)上記刊行物1には、以下の記載が認められる(下線は当審付与)。
(1a)「【請求項1】 水栓本体を筒状に形成して手すりに兼用させてあることを特徴とする手すり型水栓。
【請求項2】 筒状の水栓本体内に温度調整手段が組み込まれて給湯温度の調整が行われるとともに、前記水栓本体をストレートに横方向に長くして手すりとして機能するよう構成してあることを特徴とする手すり型水栓。
【請求項3】 前記水栓本体は、湯配管および水配管に連通する湯接続口および水接続口をそれぞれ有するとともに、水、湯、または混合水の吐水管接続口および/またはシャワーホース接続口を有し、浴室、シャワルーム等の壁に設置されている請求項1または請求項2に記載の手すり型水栓。」
(1b)「【0008】図1、図2は、浴室の洗い場に位置する壁に横置き状態で設置して手すりに兼用できるように構成したこの発明の第1の実施形態を示す。
【0009】・・・
【0010】前記水栓2の水栓本体3は、筒状で、この実施形態では大径部4と小径部5よりなる。水栓本体3は、金属製で、小径部5の背面側に、湯配管6に連通する湯接続口7を有するとともに、大径部4の背面側に、水配管8に連通する水接続口9を有する。湯接続口7と水接続口9は間隔Bを有して位置する。また、水栓本体3は、大径部4の下側に、水、湯、または混合水の吐水管接続口10を有するとともに、大径部4の背面側に、シャワーホース接続口11を有する。この実施形態では、大径部4に後述する切替ユニット14が位置するとともに、小径部5に後述する接続管16および温調ユニット15が位置する構成を採用している。・・・
【0011】また、前記水栓本体3には、一端に、水、湯、または混合水の吐出状態と止水状態を切り替えるための切替ハンドル12が設けられる一方、他端に、混合水の自動温度調節を行うための温調ハンドル13が設けられている。
【0012】前記切替ハンドル12は、その操作により、流量調節可能に、かつ水、湯、または混合水を、吐水管(図示せず)またはシャワーホース(図示せず)に切り替えて供給するように構成されている。
【0013】更に、前記水栓本体3内には、切替ハンドル12と接続可能な切替ユニット14と、温調ハンドル13と接続可能な温調ユニット15とが装入されている。」
(1c)「【0015】また、前記温調ユニット15は、サーモワックスを内蔵したサーモエレメント25とピストン26を具備し、そのサーモエレメント25が混合水の温度を感温するとサーモワックスが膨張してピストン26を押し出し、サーモバルブ本体32の位置を変化させることにより、給水側通路27と給湯側通路28のすき間が調整されるようになっており、温調ハンドル13によって混合水の温度を任意に設定することができる。」
(1d)「【0018】以下、この発明の特徴的構成について説明する。16は、筒状の水栓本体3の内部に設けた接続管で、切替ユニット14の端部14aと温調ユニット15の端部15aとを接続する。すなわち、水栓2は、水栓本体3(外管)と接続管16(内管)の二重管構造を有し、両者3,16間に、切替ユニット14側から温調ユニット15側に水を導入する環状の水導入路jが構成される。外管としての前記水栓本体3はこの水導入路jによって、混合水、水、または、湯を供給する供給流路i(後述する)と断熱され、熱くなることはない。
【0019】そして、内管としての前記接続管16は、前記湯水混合室Sの一部を構成するとともに、接続管16によって温調ユニット15側から切替ユニット14側の前記弁機構23,24に混合水、水、または、湯を供給する供給流路iが形成される。」
(1e)「【0030】図3、図4は、中央部に設けた手すりTを含む筒状の水栓本体3をの外径を34mmに設定してあるこの発明の第2の実施形態を示す。なお、図3、図4において、図1、図2に示す符号と同一のものは同一または相当物である。
【0031】この実施形態では水栓本体3を、正面向かって左側に位置する温調ユニット部45と、正面向かって右側に位置する切替ユニット部46と、両部45,46の中間に位置する手すりTとより構成するとともに、温調ユニット部45のみならず切替ユニット部46の外径を手すりTと略同一の34mmになるよう構成してある。・・・」
(1f)「【0032】図5、図6は、水栓本体51を縦部分52と横部分53よりなるL字型に形成し、縦部分52と横部分53をそれぞれ手すりとして機能するよう構成してあるこの発明の第3の実施形態を示す。なお、図5、図6において、図1?図4に示す符号と同一のものは同一または相当物である。」
(1g)「【0046】図9?図13は、上記第2の実施形態の詳細を示す。すなわち、浴室、シャワルームで使用する水栓本体3の中央部を規格に合った34mmの握り径(外径)rを有する手すりTに兼用させるとともに、切替ユニット14が位置する水栓本体3の部分と手すりTを面一にするために、上記第1の実施形態で用いた前記弁機構23,24(図1参照)に替えて、水栓本体3の軸方向のまわりに回動して吐水管接続口10またはシャワーホース接続口11に切替え可能に連通する筒状の回動部材を備えた弁機構を用いたこの発明の第6の実施形態を示す。なお、図9?図13において、図1?図8に示す符号と同一のものは同一または相当物である。
【0047】図9?図13において、接続管16は、筒状の水栓本体3の内部に設けられており、切替ユニット14と温調ユニット15とを接続する。水栓本体3は、接続管16を内蔵した水栓本体部分3Cと、切替ユニット14を内蔵した水栓本体部分3Aと、温調ユニット15を内蔵した水栓本体部分3Bとよりなる。・・・」
(1h)「【0050】一方、温調ユニット15のサーモエレメント25は、水栓本体部分3Bに内蔵されている外ケース91内に固定設置されている。・・・」
(1i)図11には、温調ユニット15のサーモエレメント25の周囲には、通水側通路27からの水と給湯側通路28からの湯とを混合するための混合室が形成されることが示され、図9には、ピストン26、サーモエレメント25及びサーモバルブ本体32は、水栓本体3に内蔵されている外ケース91内に設置されることが示されている。
(1j)図13には、外ケース91は、水栓本体部分3Bの上流側端部に形成された開口から、水栓本体内部に嵌合されることが示されている。

刊行物1記載の手すり型水栓において、湯水混合水は,温調ユニット15側から切替ユニット14側へ流れるものであり、温調ユニット15は,水栓本体3の上流側端部、切替ユニット14は下流側端部に設置されているといえる。

したがって、上記の記載事項及び図面の記載によれば、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「水配管8および湯配管6にそれぞれ連通する水接続口9および湯接続口7を有し、湯接続口7が一端側に、水接続口9が他端側に位置するよう横方向に長く配置される筒状の手すり兼用の水栓本体3と、
水配管8からの水および湯配管6からの湯を混合するよう前記水栓本体3の上流側端部に設けられた温調ハンドル13及び温調ユニット15と、
この温調ハンドル13及び温調ユニット15よりも下流側に接続された、吐水管と、シャワーホースおよびシャワヘッドよりなるハンドシャワーと、
前記温調ハンドル13及び温調ユニット15によって混合された混合水を、吐水管に供給する状態または、シャワーホースに供給する状態に切替える切替ハンドル12とを備えた手すり型水栓であって、
切替ハンドル12を、前記手すり兼用の水栓本体3の下流側端部に設け、該切替ハンドル12と接続可能な切替ユニット14が水栓本体3内に装入されており、
前記温調ハンドル13は、前記ハンドシャワーまたは吐水管から吐出させる湯水の温度を設定するためのものであり、
温調ユニット15は、この温調ハンドル13により設定した温度に対応した湯水の混合を行わせるためのもので、サーモワックス内蔵のサーモエレメント25とピストン26を具備するとともに、ピストン26により位置が変化させられて、湯水の混合割合を調整するサーモバルブ本体32を有し、
さらに、温調ユニット15は、サーモエレメント25の周囲に、前記水配管8および前記湯配管6からの湯を混合するための混合室が形成され、ピストン26、サーモエレメント25及びサーモバルブ本体32は、外ケース91内に固定設置されて、水栓本体の部分3Bの上流端部に形成された開口から前記水栓本体部分3Bの上流部内に嵌込され、
前記切替ユニット14の端部14aと温調ユニット15の端部15aとが、水栓本体3内部において、接続管16により接続されて、外管である水栓本体3と内管である接続管16との二重管構造を有しており、
前記接続管16は、温調ユニット15側から切替ユニット14側に混合水を供給する供給流路iを内部に有し、
湯接続口7は、温調ユニット15の近傍に設けられ、水接続口9は、湯接続口7から離れた切替ユニット14の近傍に設けられ、水栓本体3と接続管16間には、切替ユニット14側から温調ユニット15側に水を導入する環状の水導入路jが構成され、この水導入路jによって、水栓本体3は供給流路iと断熱されている、
浴室、シャワルーム等の壁に設置される手すり型水栓。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

本願出願前に頒布された上記刊行物2には、図面とともに、以下の記載がある。
(2a)「【0014】
【発明の実施の形態】・・・図1に本発明のシャワー装置1の外観図を示す。このシャワー装置1は、上下方向に伸び延設する1本のパイプ6に対して、湯水混合部7と複数の吐水部を備えている。そして、このパイプ6は、全長に亘り、ほぼ同一径の外観形状としており、かつ、内径は湯水混合部7の外径と略同一径としている。図1のシャワー装置1においては、吐水部は、カラン2とハンドシャワーノズル3とヘッドシャワーノズル4から構成されている。そして、湯水混合部7を挟んで、下方にカラン2を設置し、上方にハンドシャワーノズル3とヘッドシャワーノズル4とを設置している。湯水混合部7の下方に温度調整ハンドル8を設け、さらにその下にカラン2が設置している。そして、湯水混合部7の上方には、シャワー用流量調整ハンドル10が設けられている。・・・」
(2b)「【0015】図3のシャワー装置1においては、吐水部は、ボディシャワーノズル5とハンドシャワーノズル3とヘッドシャワーノズル4から構成されている。そして、湯水混合部7の上方に吐水部は位置するように構成されている。・・・
【0016】次に、図4は、給水管と給湯管の接続部17、18から流れてきた湯水が湯水混合部7で適温に混合されて、この湯水混合部7から各吐水部までの通水経路を示している。図4では、壁から給水管と給湯管を室内に取込んだ場合を示しているが、床から給水管と給湯管を立ち上げた場合も同様である。まず、給水管と給湯管の接続部17、18から供給された湯水は、湯水混合部7で混合される。また、この湯水混合部7の下方に隣接して配置した温度調整ハンドル8を周方向に回転させて湯温を調整する。」
(2c)「【0021】次に、ハンドシャワーノズル3とヘッドシャワーノズル4からの吐水について説明する。図1乃至3に示すように、ハンドシャワーノズル3とヘッドシャワーノズル4は、切替えハンドル11にて切り替える可能としている。・・・」
(2d)「【0023】一方、ヘッドシャワーノズル4は、シャワー装置1本体のパイプ6の上端に設けられいる。なお、このヘッドシャワーノズル4は、パイプ6に対して、回転自在に配置してもよい。また、ヘッドシャワーノズル4は、内部に大きく3つの吐水群15を配置しており、この吐水群15は、すべて同じ吐水形態としても、また、すべて異なる吐水形態としてもよい。」
(2e)「【0026】次に、このシャワー装置1の固定構造について説明する。シャワー装置1本体のパイプ6は、上方と湯水混合部7で固定部16により固定している。上方の固定部16は、分岐金具12よりも上方として、壁に固定している。湯水混合部7での固定部16は、壁給水の場合は、接続部17、18を給水管および給湯管に接続することで行なう。また、床給水の場合は、上方の固定と同様の固定16で壁に固定する。」

本願出願前に頒布された上記刊行物3には、図面とともに、以下の記載がある。
(3a)「【請求項1】 既設の湯水混合栓に設けたハンドシャワーノズル用ホースの接続部に、配管部を室内側に露出させて上方に延設して接続し、かつ、この配管部の他端部にシャワー散水部を取付けてなることを特徴とする後付けシャワー装置。
【請求項2】 前記シャワー散水部は、固定シャワーノズルであり、かつ、前記配管部の途中に切替えハンドルを有するシャワー分岐部を設け、このシャワー分岐部にハンドシャワーノズル用ホースを接続して、切替ハンドルの操作にて、固定シャワーノズルからの散水とハンドシャワーノズルからの散水を選択できるようにしたことを特徴とする後付けシャワー装置。
【請求項3】 前記配管部を手すりとした請求項1または2に記載の後付けシャワー装置。」
(3b)「【0017】・・・図1は本発明の後付けシャワー装置1である。既設の湯水混合栓4のハンドシャワーノズル用ホース接続部20に固定シャワーノズル2へ湯水を配送する配管部3を室内側に露出して配置している。そして、この配管部3の途中にシャワー分岐部5を設けこのシャワー分岐部5にハンドシャワーノズル用のホース7を接続している。このシャワー分岐部5には、切替ハンドル13が設けられており、固定シャワーノズル2への通水とハンドシャワーノズル8への通水の切替ができるようになっている。なお、湯水混合栓4にはカランへの通水と固定シャワーノズル2もしくはハンドシャワーノズル8への通水の切替えを行うとともにその流量を調整する切替ハンドル21が設けられている。また、この配管部3は、シャワー分岐部5よりも上側で壁つなぎ部材6を用いて、固定されている。・・・」
(3c)「【0018】また、配管部3を、手すりとして利用することも可能である。この場合、湯水混合栓4の裏に接続した配管部3をそのまままっすぐに立ち上げずに、室内側に湾曲、屈折させて、湯水混合水栓を使用するため風呂いすに座った状態から楽な姿勢で掴まれるようにするとよい。特に、配管部3の外周を樹脂製被覆材で覆うことで、断熱効果が得られる。このようにすることで、配管部3内の湯温の低下を抑えることができ、また、手すりとして握ったときに熱いと感じることがない。さらに、配管部3の裏面に連続した凹凸部11を形成しておくことで、滑り止め効果も得ることができる。なお、図2は、図1の後付けシャワー装置1の側面図を示す。」

本願出願前に頒布された上記刊行物4には、図面とともに、以下の記載がある。
(4a)「第1図に示すように、浴室内壁面の下部には混合水栓7が設けられており、混合水栓7は背面のソケット8,9を介して浴室外に配管された給湯元管及び水道管(いずれも図示せず)に接続されている。混合水栓7は、側部に設けられた温度調整つまみ11を回すことによって給湯温度を調整でき、さらに内部には湯温制御用のサーモエレメントが内蔵されていて一定温度の湯を供給できるようになっている。この混合水栓7からは、蛇管6とトップシャワーヘッド5とハンドシャワーヘッド4に給湯するようになっている。・・・
混合水栓7の上方では、・・・浴室内壁面に切り替えボックス13が固定されており、混合水栓7と切り替えボックス13との間は給湯管12によって接続されている。・・・切り替えボックス13は、トップシャワーヘッド5とハンドシャワーヘッド4との間で給湯方向を切り替えるものであり、混合水栓7の上方に配設されたトップシャワーヘッド5の湾曲パイプ21と切り替えボックス13の間は給湯管1によって接続されており、」(明細書6頁17行?8頁3行)
(4b)「また、第2図及び第3図に示すように、混合水栓7とトップシャワーヘッド5との間で給湯管1の外周にはスライドハンガー保持パイプ2が外挿されていて給湯管1とスライドハンガー保持パイプ2とは2重構造となっており、スライドハンガー保持パイプ2の上端部はパイプ固定金具20によって浴室内壁面に固定されている。また、給湯管1は前記給湯管12と同じ太さの管であるが、スライドハンガー保持パイプ2は給湯管12よりも太いパイプが用いられており、給湯管1とスライドハンガー保持パイプ2のそれぞれの上下端部にスペーサ22,23を挟み込むことによって中間に空隙αを形成されている。・・・」(同8頁16行?9頁8行)
(4c)「・・・スライドハンガー保持パイプ2はちょうど立った姿勢で手の届き易いところにあり、握りバーとして使用するのに好適である。特に、スライドハンガー保持パイプ2は、給湯管1よりも太く、しかも給湯管1と二重構造となっているので、強度と安定感があり、安心して握りバーとしても使用できる。しかも、スライドハンガー保持パイプ2と給湯管1との間には空隙αが介在しているので、給湯管1の熱がスライドハンガー保持パイプ2に伝わりにくく、握りバーとしてスライドハンガー保持パイプ2をつかんでも、やけどしたり、過度の熱さを感じたりすることもない。」(同10頁10行?11頁2行)
(4d)第1図には、トップシャワーヘッド5の湾曲パイプ21は、握りバーとして使用するスライドハンガー保持パイプ2より小径であること、が記載されている。

4 対比
本願発明と上記刊行物1記載の発明とを対比する。
刊行物1記載の発明の「水接続口9」は、本願発明の「水導入口」に相当し、以下、同様に「湯接続口7」は、「湯導入口」に、
「筒状」は、「中空」に、
「水栓本体3」は、「手すり体」に、
「混合水」は、「(混合された)湯水」に、
「供給流路i」は、「湯水供給流路」に、
「手すり型水栓」は、「手すり型シャワ装置」に相当する。
刊行物1記載の発明の「切替ハンドル12及び切替ユニット14」は、合わせて、本願発明の「切替手段」に相当する。
刊行物1記載の発明の「温調ハンドル13及び温調ユニット15」は、合わせて、本願発明の「混合手段」に相当し、さらに、「温調ハンドル13」は「温度設定手段」に、「温調ユニット15」は「温度調整ユニット」に、「サーモバルブ本体32」は「弁体」に相当し、刊行物1記載の「温調ユニット15」は、サーモエレメント25が混合水の温度を感温するとサーモバルブ本体32の位置を変化させて給水側通路27と給湯側通路28のすき間を調整するものであるから、自動温度調節機能を有しているといえる。
また、刊行物1記載の発明において、「水栓本体3は供給流路iと断熱されている」から、「湯水供給流路から手すり体表面に熱が伝わるのを防止」しているということができ、また、「環状の水導入路」は、湯水供給流路を覆うものといえる。
さらに、刊行物1記載の発明と、本願発明の「水導入口(水接続口9)」及び「湯導入口(湯接続口7)」の配置は、いずれも「水導入口が湯導入口から、手すりの長手方向に離れた位置に配置」された点で共通し、
刊行物1記載の発明と本願発明の「混合手段(温調ハンドル13及び温調ユニット15)」の配置は、いずれも「手すり体の上流側端部」である点で共通し、
刊行物1記載の発明の「吐水管」と、本願発明「上シャワ」とは、「ハンドシャワ以外の吐水部」である点で共通する。

したがって、両者は、次の点で一致する。
「水配管および湯配管にそれぞれ連通する水導入口および湯導入口を有し、水導入口が湯導入口から、手すりの長手方向に離れた位置に配置される中空の手すり体と、
水配管からの水および湯配管からの湯を混合するよう前記手すり体の上流側端部に設けられた混合手段と、
この混合手段よりも下流側に設けられたシャワホースおよびシャワヘッドよりなるハンドシャワならびにハンドシャワ以外の吐水部と、
前記混合手段によって混合された湯水を、前記ハンドシャワに供給する状態または前記ハンドシャワ以外の吐水部に供給する状態に切替える切替手段とを備えた手すり型シャワ装置であって、
切替手段を、前記手すり体の下流端部側に設け、
前記混合手段は、前記ハンドシャワまたはハンドシャワ以外の吐水部から吐出させる湯水の温度を設定するための温度設定手段と、
前記温度設定手段により設定した温度に対応した湯水の混合を行わせるための自動温度調節機能を有する温度調整ユニットとを備えており、
前記温度調整ユニットは、前記手すり体の上流端部に形成された開口から前記手すり体の上流部内に嵌込可能であり、かつ、前記水配管からの水および前記湯配管からの湯を混合するための混合室が形成されている弁体/サーモエレメント収納用ケースを有する一方、
前記手すり体は、
前記切替手段を介して前記ハンドシャワに連通するよう、または、前記切替手段を介して前記ハンドシャワ以外の吐水部に連通するよう、前記混合室から前記切替手段に向かう湯水供給流路を内部に有するとともに、
前記湯水供給流路から手すり体表面に熱が伝わるのを防止するため前記湯水供給流路を覆う横断面が環状の水導入路を内部に有する手すり型シャワ装置。」

また、両者は、次の点で相違する。
[相違点1]
本願発明は、「手すり体」が「水導入口が湯導入口よりも上方に位置するよう上下方向に配置され」たものであり、「ハンドシャワ以外の吐水部」が「上シャワ」であって、「切替手段」を、「手すり体の下流端部と前記手すり体の水導入口との間で、かつ前記手すり体の下流端部寄り」に設けたものであり、「環状の水導入路」が「湯水供給流路の一部を覆う」ものであるのに対し、
刊行物1記載の発明は、「手すり体」が横方向に配置されたものであり、「ハンドシャワ以外の吐水部」は、「吐水管」であり、「切替手段」を、水栓本体3の下流端部に設けたものであって、「環状の水導入路」が湯水供給流路全体を覆っている点。
[相違点2]
相違点1に関連して、本願発明は、「上シャワ」が、「シャワ散水口を有するシャワ板と、手すり体の外径よりも小さい外径を有し、前記シャワ散水口と湯水供給流路を連通させる中空のバーよりなる」ものであり、「手すり型シャワ装置を壁面に設置するため前記中空のバーに設けた上下一対の手すり型シャワ装置取り付け部材を有する」ものであるのに対し、刊行物1記載の発明は、このような上シャワを有していない点。

5 判断
(1)相違点1について
刊行物2には、上下方向に配置された湯水供給用のパイプの上方にハンドシャワ(ハンドシャワーノズル3)と上シャワ(ヘッドシャワーノズル4)とを設置し、パイプの下方に温度調節手段を設け、ハンドシャワと上シャワは、湯水供給管の上方に設けた切替えハンドル11にて切り替え可能としたシャワー装置が記載されている。
また、刊行物3、4には、上下方向に配置された湯水供給管の上方にハンドシャワと上シャワ(刊行物3の固定用シャワーノズル、刊行物4のトップシャワ)を配置したものにおいて、上下方向に配置された湯水供給管の部分を手すり体(刊行物3の手すり、刊行物4の握りバー)として使用することが記載され、刊行物3には、該手すり体の上部に切替手段(刊行物3の切替ハンドル13)を設けることが記載されている。
すなわち、上下方向に配置された湯水供給用のパイプの上方にハンドシャワと上シャワを設けるシャワ装置及び、このようなシャワ装置の湯水供給用のパイプを手すりとして利用することは、本願出願前公知であったと認められる。
そして、刊行物1には、手すり体をL字状として上下方向の手すりを設けることも記載されており(記載事項(1f)参照)、刊行物1記載の発明を、刊行物2に記載されているような、上下方向に配置されたパイプの上方にハンドシャワと上シャワを設けるシャワー装置に適用し、手すり体を、水導入口が湯導入口よりも上方に位置するよう上下方向に配置されたものとすることは、当業者が容易に想到しうることである。
さらに「切替手段」の位置について検討すると、上シャワは通常立って使用するから、刊行物2ないし4に記載されているように立って操作するのに適した位置、すなわち水導入口及び湯導入口よりも上方に設けることは普通のことである。
そして、手すり体の湯水供給流路と中空のバーからなる上シャワへの湯水供給用の通路のうちどの高さまでを手すり体部分とするかは、当業者が適宜決めうることであり、手すり体の下流端部を切替手段の上部に設け、「切替手段」が「手すり体の下流端部と前記手すり体の水導入口との間で、かつ手すり体の下流端部寄り」になるようにすることは、当業者が適宜設計しうることである。
また、このように設計すると、必然的に、環状の水導入路は、混合手段から手すり体の下流端部に至る湯水供給流路のうち、水導入口より上流側、すなわち湯水供給流路の一部を覆うものとなる。

(2)相違点2について
刊行物2ないし4に記載されている上シャワが、シャワ散水口を有するシャワ板と、シャワ散水口と湯水供給流路を連通させる中空のバーを有していることは明らかであり、刊行物1記載の発明に刊行物2に記載の発明を適用し、手すり体を上下方向に配置されたものとして上シャワを設ける際に、上シャワをこのような構造のものとすることは当業者が容易になしうることである。
ここで、中空のバーの径についてみると、手すりの外径を握りやすい太さにすることは当業者が当然に考慮すべきことであり、一方、上シャワを設けるに際し、中空バーは内径が湯水供給に必要な太さであればよく、例えば、刊行物4には、握りバー部分は、スライドハンガー保持パイプ2を設けて太くし、トップシャワの湾曲パイプ21(本願発明の中空バーに相当する)を、スライドハンガー保持パイプ2より小径とすることが記載されており(記載事項(4d)参照)、手すり体外径を大きくし、中空バーの外径を手すり体外径よりも小径のものとすることは当業者が適宜なしうることである。
また、シャワ装置取り付け部材について検討すると、刊行物2ないし4には、シャワ装置を壁面に固定するために、上シャワに湯水を供給する中空のパイプの切替手段より上方に、シャワ装置取り付け部材を設けることが記載されており、刊行物1記載の発明を、刊行物2に記載されているようなシャワー装置に適用するに際し、上シャワに湯水を供給する中空のバーにシャワ装置取り付け部材を設けることは、刊行物2ないし4記載の発明に基いて当業者が容易になしうることであり、シャワ装置取り付け部材を上下一対設けることも適宜なし得る程度のことである。
なお、請求人は、平成23年2月2日受付けの意見書において、刊行物2ないし4記載のシャワ装置取り付け部材は、手すり体に設けたものであって中空のバーに設けたものではない旨主張するが、上記(1)で述べたとおり、上シャワへの湯水供給用の通路のうちどの高さまでを手すり体部分とするかは、当業者が適宜決めうることであり、手すり体を上シャワ近傍までの長尺のものとして、シャワ装置取り付け部材を切替手段の上方の手すり体に設けるか、手すり体を切替手段の近傍までものとして、シャワ装置取り付け部材を手すり体に接続される中空バーに設けるかは、適宜選択しうる程度のことである。

(3)作用効果及び判断のむすび
そして、本願発明の作用効果は、刊行物1ないし4記載の発明から予測できる程度のことである。
なお、手すりは、水配管および湯配管によっても壁面に支持されているものであり、特に中空のバーの取り付け部材を上下一対としたことによる支持効果が格別顕著なものとはいえない。
したがって、本願発明は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1ないし4記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-02 
結審通知日 2011-03-08 
審決日 2011-03-22 
出願番号 特願2005-47527(P2005-47527)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A47K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 七字 ひろみ  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 伊波 猛
土屋 真理子
発明の名称 手すり型シャワ装置  
代理人 藤本 英夫  

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