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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B |
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管理番号 | 1237025 |
審判番号 | 不服2010-17859 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-08-06 |
確定日 | 2011-05-11 |
事件の表示 | 特願2001-294081「ラケットフレーム」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月 2日出願公開、特開2003- 93548〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯・本願発明 1 本願は、平成13年9月26日の出願であって、平成22年3月8日付けで手続補正がなされ、同年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月6日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。 さらに、審査官により作成された前置報告書について審尋がなされたところ、審判請求人から平成23年2月2日付けで回答書が提出されたものである。 2 本願の請求項1に係る発明は、平成22年8月6日付け手続補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「繊維強化樹脂または熱可塑性樹脂からなるパイプ状のフレームで、打球面を囲むヘッド部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を構成し、さらにヨークを取り付けて、ヘッド部とヨークとでガット張架部を形成しているラケットフレームにおいて、 上記ヘッド部および/またはスロート部を構成するフレームの断面形状を、面内方向の幅をH、面外方向の最大厚みをTとすると、該最大厚みTの最大厚み位置は、打球面側と反対の外面より0.1H?0.3Hの範囲とし、その最大厚み位置から打球面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を曲率半径200mm以上の大きな曲率で外方に湾曲させながら厚みを減少させた略三角形とし、かつ、上記ヘッド部ではフレームの外面中央にガット溝を設け、該ガット溝の中心から上記略三角形の頂点部となる打球面側の内面中心に貫通するガット孔を設け、該ガット孔を打球面と同一面上に位置させていることを特徴とするラケットフレーム。」(以下「本願発明」という。) 第2 引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2001-252376号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている(下線は審決で付した。以下同じ。)。 1 「【0012】 【発明の実施の形態】本発明のラケットにおける最良の実施の形態は、図1に示すように、正面視が略楕円形(楕円形を少し方形に近づけた形状)のフェース部2と、当該フェース部2の下側でフェース部と共に略三角形を形成するシャフト部3と、当該シャフト部3の根元側にあるグリップ部4からなるテニスラケット1である。ここで、フェース部2、シャフト部3及びグリップ部4は、カーボン繊維強化樹脂により一体的に成形されている。尚、ラケットの材質はカーボン繊維強化樹脂に限られず、木材、チタニウム合金やジュラルミン等の比較的比重の小さい金属、有機繊維、ガラス繊維等のシートに樹脂を含浸させた繊維強化樹脂等を使用することができる。 【0013】一体的に成形されたフェース部2、シャフト部3及びグリップ部4はそれぞれ内部が中空(図2はフェース部2の中空断面を示すものである)とされ、軽量化が図られている。即ち、図1に示すテニスラケット1はガットを張る前のラケット重量が260gのものである。尚、フェース部等の内部は中空のままとせず、発泡材料を充填することにより強度を向上させることもできる。又、テニスラケットにおける好ましいラケット重量の範囲は220?320gであり、より好ましくは230?270gである。220gより軽いと必要な強度の確保が困難となり、320gより重いと重さが際立って感じられ、オフセンターでボールを打ち返した際の衝撃の増加や、フェース面の安定性の低下という次元の問題と離れてしまうからである。 【0014】そしてフェース部2は、ガットを張った際にグリップ部の中心軸5A上に相当する位置におけるガットの縦糸よりも左右両側に離れた位置における縦糸の方が長くなるように形成されている。具体的には、図2(A)に示すグリップ部の中心軸5A上のフェース部断面に対し、その両側では図2(B)のように、フェース部2の内周面側であって、フェース面と垂直な厚み方向の中央部にフェース部の周方向に延びる最大深さ3.0mmの溝6を設けることにより、左右に離れた位置のガットの縦糸長さが長くなるようにしている。 【0015】従って、図3に示すようなフェース部の厚み方向中央部でフェース面と平行に切断した断面において、グリップ部の中心軸5A上に相当する位置におけるガットの縦糸長さL1よりも左右両側に離れた位置における縦糸長さL2の方が長くなり、たとえオフセンターでボールを打ったときでも反発力の減少が抑えられ、スイートスポットの位置でボールを捕らえたときと同様な反発力を得ることができるのである。尚、グリップ部の中心軸5A上に相当する位置におけるガットの縦糸とは、グリップ部の中心軸5Aと縦糸が重なる場合にはその縦糸を示し、グリップ部の中心軸5Aに縦糸が重ならない場合(図3に示す場合)にはその両側の2本の縦糸L1,L1を示す。 【0016】又、図3においてはフェース部2の周方向に延びる溝6を4ケ所に設け、縦糸のみL1<L2としたが、同時に横糸も同様の関係とするこができる。即ち、フェース部の上下方向の中心軸5B上に相当する位置における横糸長さL3よりも上下両側に離れた位置における横糸長さL4が長くなるようにフェース部2を形成するのである。具体的には、上記した縦糸の場合と同様に、フェース部2の周方向に延びる溝をフェース部の上下方向の中心軸5Bに対して上下対称に複数個設ければ良い。この様にすれば、たとえフェース面の上下方向にオフセンターヒットしても反発力の減少が抑えられ、スイートスポットの位置でボールを捕らえたときと同様な反発力を得ることができる。尚、フェース部2のトップの左右両側にのみ溝を設け、縦糸のみ両側で最も長くなる様にしても、フェース部2のサイドの中央上下にのみ溝を設け、横糸のみ上下で最も長くなる様にしても良いことは勿論である。 【0017】更に、ボールの反発力はグリップ部の中心軸5A上から左右20mm以上離れた位置でボールを捕らえたとき、顕著に減少することが実験的に確かめられている。従って、フェース面に張られたガットの縦糸の長さをグリップ部の中心軸5Aを基準として左右20mm以上離れた位置で最も長くすることが、反発力の減少を抑える効果をプレーヤーが最も実感できて一層効果的となる。そこで図3に示すテニスラケット1においては、グリップ部の中心軸5A上から左右25mm以内の範囲(位置A,A間の50mm)にはフェース部2の内周面側に溝を設けていない。一方、左右62.5mm離れた位置(位置B,B、間隔125mm)では、ガットの縦糸長さL2が最大となるように溝6を設けている。」 2 上記1、図1及び図3の記載からして、フェース部2はフェース面を囲み、フェース部2はガットを張架させる部分を形成していることが見て取れる。 3 上記1、図2(A)及び図2の図面の簡単な説明(図2は、図1のテニスラケットにおけるフェース部の溝無し部と溝有り部の断面形状を示す断面図である。)の記載からして、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状を、面外方向の最大厚みの位置を内周面側と反対の外面と内周面との中間と該外面との略中間に設け、その最大厚みの位置から内周面側の内側に向けて、両側幅方向枠部を外方に湾曲させながら厚みを減少させ内周面側に平坦部を有する略台形とし、かつ、上記フェース部2の外面中央に溝を設けていることが見て取れる。 4 上記1ないし3から、引用例には、 「フェース面を囲み略楕円形のフェース部2と、当該フェース部2の下側でフェース部と共に略三角形を形成するシャフト部3と、当該シャフト部3の根元側にあるグリップ部4からなり、フェース部2、シャフト部3及びグリップ部4は、カーボン繊維強化樹脂により成形され、それぞれ内部が中空とされており、フェース部2はガットを張架させる部分を形成しているテニスラケットであって、 グリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状を、面外方向の最大厚みの位置を内周面側と反対の外面と内周面との中間と該外面との略中間に設け、その最大厚みの位置から内周面側の内側に向けて、両側幅方向枠部を外方に湾曲させながら厚みを減少させ内周面側に平坦部を有する略台形とし、かつ、上記フェース部2の外面中央に溝を設け、グリップ部の中心軸5Aとガットの縦糸が重なっているテニスラケット」の発明(以下「引用発明」という。)が、記載されているものと認められる。 第3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 1 引用発明における 「フェース面を囲み略楕円形のフェース部2」、 「シャフト部3」、 「グリップ部4」、 「カーボン繊維強化樹脂」、 「『内部が中空』の『フェース部2、シャフト部3及びグリップ部4』」、 「フェース部2はガットを張架させる部分を形成している」、 「『テニスラケット』の『フェース部2、シャフト部3及びグリップ部4』」、 「グリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状」及び 「『面外方向の』『最大厚みの位置から内周面側の内側に向けて、両側幅方向枠部を外方に湾曲させながら厚みを減少させ』」は、それぞれ、 本願発明における 「『打球面を囲むヘッド部』と『ヨーク』」、 「スロート部、シャフト部」、 「グリップ部」、 「繊維強化樹脂」、 「パイプ状のフレーム」、 「ヘッド部とヨークとでガット張架部を形成している」、 「ラケットフレーム」、 「『上記ヘッド部』『を構成するフレームの断面形状』」及び 「『面外方向の』『最大厚み位置から打球面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を』『外方に湾曲させながら厚みを減少させ』」に相当する。 2 ラケットフレームの外面中央の溝にガットを張ることは技術常識であるから、引用発明の「上記フェース部2の外面中央に溝を設け」と本願発明の「上記ヘッド部ではフレームの外面中央にガット溝を設け」とは、上記ヘッド部ではフレームの外面中央にガット溝を設けている点で一致する。 3 引用発明の 「『グリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状を、』『内周面側に平坦部を有する略台形とし』」と本願発明の「『上記ヘッド部』『を構成するフレームの断面形を、』『略三角形とし」とは、上記ヘッド部を構成するフレームの断面形状を、略多角形としている点で一致する。 4 上記1ないし3からみて、本願発明と引用発明とは、 「繊維強化樹脂からなるパイプ状のフレームで、打球面を囲むヘッド部、スロート部、シャフト部およびグリップ部を構成し、さらにヨークを取り付けて、ヘッド部とヨークとでガット張架部を形成しているラケットフレームにおいて、 上記ヘッド部を構成するフレームの断面形状を、面外方向の最大厚み位置から打球面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を外方に湾曲させながら厚みを減少させた略多角形とし、かつ、上記ヘッド部ではフレームの外面中央にガット溝を設けているラケットフレーム。」である点で一致し、次の相違点で相違する。 相違点: ヘッド部を構成するフレームの断面形状を、本願発明においては、面内方向の幅をH、面外方向の最大厚みをTとすると、該最大厚みTの最大厚み位置を、打球面側と反対の外面より0.1H?0.3Hの範囲とし、その最大厚み位置から打球面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を曲率半径200mm以上の大きな曲率で外方に湾曲させながら厚みを減少させた略三角形とし、かつ、ガット溝の中心から上記略三角形の頂点部となる打球面側の内面中心に貫通するガット孔を設け、該ガット孔を打球面と同一面上に位置させているのに対して、引用発明においては、面外方向の最大厚みの位置を内周面側と反対の外面と内周面との中間と該外面との略中間に設け、その最大厚み位置から内周面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を外方に湾曲させながら厚みを減少させ内周面側に平坦部を有する略台形としており、また、ガット孔をそのような配置で設けているか明らかではない点。 第4 判断 上記相違点について検討する。 1(1)本願明細書の発明の詳細な説明には「上記フレームの打球面側の内面の厚みをTiとすると、Tiは最大厚みTに対して0%?20%としており、TiのTに対する割合が小さければ小さいほど好ましい。よって、TiがTに対して0%として内面を略三角形の頂点とするのが最適であるが、この頂点にアールを設け、頂点に応力が集中しないようにして、フレームが破損しないようにしている。」(【0013】参照。)と記載されていることから、本願発明の略三角形の形状には、頂点に応力が集中しないようにして、ラケットフレームが破損しないようにするために、頂点にアールを設けるものも含まれていると解される。 (2)そして、ラケットフレームにおいて、断面を略三角形の形状とすることは、本願の出願前に周知である(特開平8-168540号公報(【0013】、【0018】及び第1図参照。)、特開平9-276449号公報(【0013】、【0027】及び図1(e)参照。図1(e)の記載から、外縁部に溝を施し、頂点にアールを設けた略三角形の形状のラケットフレームの断面が見て取れる。)、特開2000-42145号公報(【0014】及び図4参照。図4の記載から、外周部に凹溝6を設け、頂点にアールを設けた略三角形の形状のフレーム部1の断面が見て取れる。)。以下「周知技術1」という。)ところ、ラケットフレームにおいて、断面を三角形の形状にしたほうがラケットフレームの弾性的なねじれ変形とその戻りにより、良好な反発性及びスピン特性となることが明らかである(必要ならば、特開平8-168540号公報(【0018】参照。))。 (3)上記(1)及び(2)からして、ラケットフレームの断面形状として、三角形、台形等の打球面側を打球面側の反対側の外面より細くした形状のほうが、ねじれ変形とその戻りにより、良好な反発性及びスピン特性となることが明らかであるものの、該打球面側を細くしすぎるとラケットフレームが破損しやすいことも明らかである。 してみれば、引用発明では、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状を、面外方向の最大厚みの位置から内周面側の内側に向けて両側幅方向枠部を外方に湾曲させながら厚みを減少させていることから、ラケットフレームの破損、反発性及びスピン特性の全体的なバランスを考慮しつつより良好な反発性及びズピン特性を得るために両側幅方向枠部の厚みを頂点にアールを設けるように減少させて、引用発明のグリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状を、略三角形とすることは、当業者が周知技術1に基づいて容易に想到する事項にすぎない。 2(1)本願明細書の発明の詳細な説明には「上記フレームの面外方向の最大厚み位置は、打球面側と反対の外面より0.1H?0.3Hの範囲としているが、これは面内方向の幅は所要範囲内に規定されるため、0.1Hより小さいと、略三角形状の頂点となる内面が鋭角化しやすくなる。その結果、内面の頂点部に応力が集中しやすく、フレームが破損しやすくなることによる。また、0.3Hより大きいと、打球時のフレームのねじれが小さくなり、反発性能、コントロール性能、スピン性能の向上が図れなくなることによる。なお、フレームの面外方向の最大厚み位置は、外周面より0.2H?0.3Hであることが、より好ましい。」(【0012】参照。)と記載されているものの、本願明細書の【0035】ないし【0049】には、実施例[丸1](審決注:丸付数字は、便宜上[丸 ]中に数字を記入して表記した。以下同じ。)、実施例[丸3]、実施例[丸4]、参考実施例[丸2]が記載され、前記実施例及び前記参考実施例は全て、面内方向の幅をH、面外方向の最大厚みをTとすると、該最大厚みTの最大厚み位置を、打球面側と反対の外面より0.2としている。 してみれば、該最大厚みTの最大厚み位置を、打球面側と反対の外面より0.1H?0.3Hとする全範囲について、実験的に効果があるのか立証されておらず、臨界的な意義を有するものとは認められない。 (2)引用発明では、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2を構成するフレームの断面形状として面外方向の最大厚みの位置を内周面側と反対の外面と内周面との中間と該外面との略中間に設けており、更に、フレーム破損、反発性能、コントロール性能、スピン性能の向上を考慮し、当該位置を最適な値になるようにすることは、当業者が実験等に基づいて適宜なし得たことであり、上記(1)からして、引用発明において、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2を構成するフレームの断面形状として、面内方向の幅をH、面外方向の最大厚みをTとすると、該最大厚みTの最大厚み位置を、打球面側と反対の外面より0.1H?0.3Hの範囲のものを選択することは、当業者が容易になし得たことにすぎない。 3(1)本願明細書の発明の詳細な説明には「その最大厚み位置より内面に連続する両側幅部の曲率半径を200mm以上としていることが好ましく、200mmより小さいと打球時のフレームのねじれが小さくなり、反発性能、コントロール性能、スピン性能の向上が図れないことに因る。なお、最大厚み位置より内面に連続する両側幅部の全長を上記曲率で湾曲させる必要はなく、一部に略直線部が存在していてもよい。」(【0015】参照。)、「上記幅方向面10c、10dは曲率半径が200mm以上の大きく湾曲した曲線としている。」(【0024】参照。)と記載されている。 しかしながら、本願明細書の【0035】ないし【0049】に記載された、実施例、参考実施例、比較例には、両側幅方向枠部の曲率について記載されたものはない。 してみれば、面外方向の最大厚み位置から打球面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を曲率半径200mm以上の大きな曲率で外方に湾曲させることは、実験的に効果があるのか立証されておらず、臨界的な意義を有するものとは認められない。 (2)引用発明においても、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2を構成するフレームの断面形状として面外方向の最大厚み位置から内周面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を外方に湾曲させており、反発性能、コントロール性能、スピン性能の向上を考慮し、当該両側幅方向枠部の外方に湾曲させている曲率を最適な値になるようにすることは、当業者が実験等に基づいて適宜なし得たことであり、上記(1)からして、引用発明において、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2を構成するフレームの断面形状として、面外方向の最大厚み位置から打球面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を曲率半径200mm以上の大きな曲率を選択し外方に湾曲させることは、当業者が容易になし得たことにすぎない。 4(1)ラケットフレームにおいて、ガット溝の中心から打球面側の内面中心に貫通するガット孔を設け、該ガット孔を打球面と同一面上に位置させていることは、本願の出願前に周知である(例.実公平4-29624号公報(第2頁左欄第42行?右欄第1行及び第1?4図参照。)、特開平6-269514号公報(【0024】、【0025】、図1、図2及び図3参照。)、上記特開平9-276449号公報(【0013】、【0027】及び図1(e)参照。)及び特開平7-148284号公報(【0027】、【0028】及び図2参照。)、以下「周知技術2」という。)。 (2)上記1で検討したように、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状を、略三角形とした場合に、引用発明において、溝の中心から略三角形の頂点部となる打球面側の内面中心に貫通するガット孔を設け、該ガット孔を打球面と同一面上に位置させていることは、当業者が周知技術2に基づいて容易に想到する事項にすぎない。 5 上記1ないし4からして、引用発明に周知技術1及び周知技術2を採用し、グリップ部の中心軸5A上のフェース部2の断面形状を、面内方向の幅をH、面外方向の最大厚みをTとすると、該最大厚みTの最大厚み位置を、内周面側と反対の外面より0.1H?0.3Hの範囲のものを選択し、その最大厚み位置から内周面側の内面に向けて、両側幅方向枠部を曲率半径200mm以上の大きな曲率を選択し外方に湾曲させて略三角形とし、かつ、溝の中心から上記略三角形の頂点部となる打球面側の内面中心に貫通するガット孔を設け、該ガット孔を打球面と同一面上に位置させることは、当業者が容易に想到し得たことである。 よって、引用発明において、上記相違点に係る本願発明の構成となすことは、当業者が周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に想到する事項にすぎない。 6 効果について 本願発明の奏する効果は、引用発明、周知技術1及び周知技術2から当業者が予測することができた程度のものである。 7 まとめ したがって、本願発明は、当業者が引用発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものである。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-01 |
結審通知日 | 2011-03-08 |
審決日 | 2011-03-22 |
出願番号 | 特願2001-294081(P2001-294081) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A63B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 太田 恒明 |
特許庁審判長 |
長島 和子 |
特許庁審判官 |
星野 浩一 野村 伸雄 |
発明の名称 | ラケットフレーム |
代理人 | 大和田 和美 |