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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1237074
審判番号 不服2010-5077  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-08 
確定日 2011-05-13 
事件の表示 特願2000- 97228「ガス配管用ライザー管」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月10日出願公開、特開2001-280564〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年3月31日の特許出願であって、平成21年11月27日付けで拒絶査定がなされ、平成22年3月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされると共に、同日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成22年3月8日付けの手続補正書による補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理 由]
(1)補正後の本願の発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「地上の屋外ガス機器に接続される金属管の下端部と、地中埋設樹脂管に接続されるライザー樹脂管の上端部とを金属製のライザー管継手で接続しており、前記ライザー樹脂管は地中から地上に立ち上げられ、この地上に立ち上げられたライザー樹脂管の外面は保護管で覆われているガス配管用ライザー管において、
前記保護管は、上端部が前記ライザー管継手に一体的に接合されるか若しくは一体に形成され、下端部が前記ライザー管継手から下方に延長して形成されている上部保護管と,この上部保護管の下端部の内周と前記ライザー樹脂管の外周との間に上下方向に摺動自在に挿入された下部保護管とからなって伸縮自在に構成されているガス配管用ライザー管であって、
前記下部保護管は、前記ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が前記上部保護管の下端部より下方に突出して前記地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されていることを特徴とするガス配管用ライザー管。」と補正された。

本件補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「ガス配管用ライザー管」に関し、「ガス配管用ライザー管であって、下部保護管は、ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が上部保護管の下端部より下方に突出して地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されている」と限定するものであって、平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下、単に「改正前の特許法」という。)第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか否か)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-238687号公報(以下、「引用例」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

・「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、地中埋設プラスチック管から地上のガスメータに接続するためのガスメータ接続用ライザー配管及びそのライザー管に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、地中埋設プラスチック管と地上のガスメータとの接続は、地中の埋設プラスチック管に金属管を接続して、この金属管を地上に立ち上げて地上のガスメータに接続していた。又プラスチック管と金属管を接続する継手として、本出願人が考案の実開平6ー20987号公報で開示されたプラスチック管と金属製蛇腹管を接続した管継手がある。このものは継手の両端部内面から金属製蛇腹管とプラスチック管を装着し、この装着した両管の内面にわたって金属製ステイフナーを内挿し、この金属製ステイフナーを内周側から拡径して金属製蛇腹管とプラスチック管とを同時に継手内周面に圧縮して接続固定するものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】地中から地上のガスメータに接続する場合、金属管には土壌とコンクリート間に生じるマクロセル腐蝕等、地中に埋設することによる腐蝕の問題がある。このために金属管の埋設部分を覆う樹脂皮膜を設けたり、あるいは地上部分で絶縁継手を設けたりするなど各種の防食対策を施さなければならず、又この問題のために定期的に保安検査が義務づけられている。
【0004】上記の管継手では、プラスチック管と金属製蛇腹管とを一緒に一つのスティフナーで継手内周面に圧縮して密封固定するもので、蛇腹管本来の可撓性によって配管施工を容易にするものであるが、反面これをガスメータ接続用ライザー管に使用した場合、ガスメータを配管とは別個に建築物等に固定しなければならず、ガスメータ単体の固定手段が別途必要になる問題がある。本発明は上記の問題点を解消して、絶縁継手を設けなくとも電気的腐蝕の問題がなく、従来と同様に地中の埋設プラスチック管から地上のガスメータに容易に接続できるガスメータ接続用ライザー配管及びそのライザー管を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、継手の一端側に接続した鋼管と、前記継手の他端側に接続したプラスチック管とからなり、前記鋼管の端部は地上の供給ガスメータに接続し、プラスチック管の端部は地中埋設プラスチック管に接続し、前記プラスチック管は地中から地上に立ち上げられ、該地上に立ち上げられたプラスチック管部分の外面は土壌との間で電気的導通しない保護管で覆われて配管されることを特徴とするガスメータ接続用ライザー配管である。
【0006】また、一端側は鋼管と密封接続する接続部を有し、他端側は内面に環状凹凸溝を有してプラスチック管を内挿し該プラスチック管の内面に金属製スティフナーを内挿し該金属製スティフナーを拡径してプラスチック管と接続し、端部に保護管と接続する接続部を備えた金属製継手と、前記継手の一端側に接続しガスメータに配管される鋼管と、地中から地上に立ち上げられ前記継手の他端側に接続するプラスチック管と、前記継手の他端側に接続して前記プラスチック管の外面を覆い、土壌との間で電気的導通しない保護管と、からなることを特徴とするガスメータ接続用ライザー管である。
【0007】上記において、プラスチック管の外面を覆う保護管は電気的不良導体の難燃性樹脂材料が好適である。またプラスチック管の外面を覆う保護管は外面樹脂被覆鋼管を用いることができる。この場合鋼管の外面が樹脂皮膜で覆われており、埋設した端部の鋼管部分が土壌に接しないように、埋設部分の端部にプラスチック管との間で密封する樹脂キャップを設けるとよい。
【0008】
【作用】本発明は上記の構成であって、プラスチック管部分は地中の埋設プラスチック管と接続して地中から地上に立ち上げられて配管される。従ってガスメータと接続する鋼管や金属製の継手部分は地中の土壌に接することなく配管されるので、金属管が土壌に接することによって生じる電位差腐蝕等の問題が生じない。又地上に立ち上げ配管されたプラスチック管部分は土壌との間で電気的不良導体の保護管で覆われて導通せず、外部環境からも保護遮断されるのでプラスチック管の紫外線劣化等の問題もない。更にプラスチック管部分の接続はステイフナーをプラスチック管部分のみ拡径して継手内面に固定するので、プラスチック管の径や肉厚に応じた確実な接続固定が行なえる。またプラスチック管の外面は保護管で保護されており、耐火災性能を有している。従って、従来の地上配管部分に絶縁継手を設けたり、金属製管や継手部分を樹脂被覆して土壌と接しないように防食処理を行なう等の必要がなく、容易にガスメータとの配管施行が行なえる。
【0009】
【発明の実施形態】以下本発明の実施例について図面に基づいて説明する。図1は本実施例のガスメータ接続用ライザー管10をガスメータ8の1次側に配管した状態を示し、ライザー管10は、継手20の下部にプラスチック管30を、継手20の上部に外面樹脂被覆鋼管40を接続したもので、下部のプラスチック管30は地中の埋設プラスチック管5とプラスチック管接続用継手6で接続されて地上に立ち上げられる。地上に立ち上がるプラスチック管30部分は別の保護管50で外面が露出しないように覆われる。上部の外面樹脂被覆鋼管40はコック1エルボ2等を介してガスメータ8の入り管接続口に接続される。ガスメータ8の出口側はエルボ3等を介して従来と同様に外面樹脂被覆鋼管4に接続され地中で外面樹脂被覆継手9を介して建物内に配管され、建物内の各供給ガス器具等に供給される。
【0010】図2は本発明の一実施例を示すガスメータ接続用ライザー管10の半断面図である。図において、継手20の上部側に接続した外面樹脂被覆鋼管40は外面に塩化ビニル製の樹脂皮膜41を被せてあり、管用テーパねじ42により継手20と接続してある。継手20の上部側端部内面には環状凹溝23を設けてあり水密パッキン43を装着して外面樹脂被覆鋼管40の樹脂皮膜41と密封シールしている。尚、継手20と接続する外面樹脂被覆鋼管40は裸鋼管でもよく、また継手20と鋼管40との接続は上記の管用テーパねじ接続の他、ねじを設けずに接続する従来公知のメカニカル接続構造で接続してもよい。外面樹脂被覆鋼管40の継手20部分からの長さは約1Mあり、上端部は前記図1で示すごとくコック1、エルボ2等を介してガスメータ8に接続される。
【0011】継手20の下部側内面にはプラスチック管30の端部が圧縮される環状凹凸溝24、シールパッキン25を装着したシール部26、めねじ27および水密パッキン28を装着してある。この部分に金属製ステイフナー31を装着したプラスチック管30を挿入し、プラスチック管30の下部端部側からゴムバルジ拡径具(図示せず)を挿入してスティフナー31を拡径し、プラスチック管30を継手内面の環状凹凸溝24に圧縮して固定してある。スティフナー31を拡径する際シールパッキン25も同時に圧縮され、継手20とプラスチック管30とのシールが行なわれる。プラスチック管30の継手20からの長さは約400mmで、下端はプラスチック管接続用継手6を介して地中埋設プラスチック管5に接続され、地上に立ち上げられている。
【0012】50は継手20のめねじ27に接続した保護管で、本実施例では外面樹脂被覆鋼管を用いており、プラスチック管30の地上に立ち上げられる部分の外面を覆って紫外線による劣化や、万一の外部力による損傷、及び火災時の熱がプラスチック管30に伝わって漏れ出すことがないように保護している。これは鋼管に代えて塩化ビニル管、セメント管、または石綿管等を用いてもよい。保護管50の一端部は継手の水密パッキン28とシールし、他端部は樹脂製の袋ナット51を螺合してパッキン52、53を圧縮し、プラスチック管30の外面とシールしている。この袋ナット51によるシール部は地中に埋設される。
【0013】従って本実施例によれば、プラスチック管30の継手20との接続部や管30の地上立ち上げ部で何等かの影響によりプラスチック管30内のガスが漏れたとしても保護管50の外へは漏れ出さない。また地中埋設部と継手20及び外面樹脂被覆鋼管40との電気的絶縁は、保護管50が外面樹脂被覆鋼管であっても端部に樹脂製の袋ナット51パッキン52で外部環境とシールされているので絶縁が果たされる。尚、保護管50を塩化ビニル樹脂等難燃性の電気的不良導体で形成することができ、この場合は、上記袋ナット51を省略しても土壌と金属製の継手20間との電気的導通は生じない。」

・図1には、地上のガスメータ8に接続される外面樹脂被覆鋼管40の下端部と、埋設プラスチック管5に接続されるプラスチック管30の上端部とを金属製の継手20で接続する点が示されており、また、図2には、保護管50がプラスチック管30の外周面に沿って延びる点が示されている。

これらの記載事項及び図示内容を総合すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「地上のガスメータ8に接続される外面樹脂被覆鋼管40の下端部と、埋設プラスチック管5に接続されるプラスチック管30の上端部とを金属製の継手20で接続しており、前記プラスチック管30は地中から地上に立ち上げられ、この地上に立ち上げられたプラスチック管30の外面は保護管50で覆われているガスメータ接続用ライザー管10において、
前記保護管50は、上端部が前記継手20のめねじ27に接続され、下端部が前記継手20から下方に延長して形成されていることにより外部環境からプラスチック管を保護遮断するように構成されているガスメータ接続用ライザー管10であって、
前記保護管50は、前記プラスチック管30の外周面に沿って延びるものであり、下端部が前記埋設プラスチック管5より上方の地中に形成されているガスメータ接続用ライザー管10。」

(3)対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

(ア)後者の「ガスメータ8」が前者の「屋外ガス機器」に相当し、以下同様に、
「外面樹脂被覆鋼管40」が「金属管」に、
「埋設プラスチック管5」が「地中埋設樹脂管」に、
「プラスチック管30」が「ライザー樹脂管」に、
「継手20」が「ライザー管継手」に、それぞれ相当する。

(イ)後者の「プラスチック管30は地中から地上に立ち上げられ」た態様が、
前者の「ライザー樹脂管は地中から地上に立ち上げられ」た態様に相当する。

(ウ)後者の「保護管50」が前者の「保護管」に相当し、同様に、
「ガスメータ接続用ライザー管10」が「ガス配管用ライザー管」に相当する。

(エ)後者の「保護管50は、上端部が継手20のめねじ27に接続され」た態様と
前者の「保護管は、上端部がライザー管継手に一体的に接合されるか若しくは一体に形成され」た態様とは、
「保護管は、上端部がライザー管継手に一体的に接合され」たとの概念で共通する。

(オ)後者の「下端部が継手20から下方に延長して形成されていることにより外部環境からプラスチック管を保護遮断するように構成されているガスメータ接続用ライザー管10」と
前者の「下端部がライザー管継手から下方に延長して形成されている上部保護管と,この上部保護管の下端部の内周とライザー樹脂管の外周との間に上下方向に摺動自在に挿入された下部保護管とからなって伸縮自在に構成されているガス配管用ライザー管」とは、
「下端部がライザー管継手から下方に延長して形成されていることにより外部環境からライザー樹脂管を保護するように構成されているガス配管用ライザー管」なる概念で共通する。

(カ)後者の「保護管50は、プラスチック管30の外周面に沿って延びるものであり、下端部が埋設プラスチック管5より上方の地中に形成されているガスメータ接続用ライザー管10」と
前者の「下部保護管は、ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が上部保護管の下端部より下方に突出して地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されているガス配管用ライザー管」とは、
「保護管は、ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されているガス配管用ライザー管」なる概念で共通する。

したがって、両者は、
「地上の屋外ガス機器に接続される金属管の下端部と、地中埋設樹脂管に接続されるライザー樹脂管の上端部とを金属製のライザー管継手で接続しており、前記ライザー樹脂管は地中から地上に立ち上げられ、この地上に立ち上げられたライザー樹脂管の外面は保護管で覆われているガス配管用ライザー管において、
前記保護管は、上端部が前記ライザー管継手に一体的に接合され、下端部が前記ライザー管継手から下方に延長して形成されていることにより外部環境からライザー樹脂管を保護するように構成されているガス配管用ライザー管であって、
前記保護管は、前記ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が前記地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されているガス配管用ライザー管。」
の点で一致し、以下の各点で相違している。

[相違点1]
保護管をライザー管継手に設ける態様に関し、本願補正発明では上端部がライザー管継手に一体的に接合され「るか若しくは一体に形成され」のに対し、引用発明では上端部が継手20のめねじ27に接続されている点。

[相違点2]
保護管が外部環境からライザー樹脂管を保護するための態様に関し、本願補正発明では下端部がライザー管継手から下方に延長して形成されている「上部保護管と、この上部保護管の下端部の内周とライザー樹脂管の外周との間に上下方向に摺動自在に挿入された下部保護管とからなって伸縮自在に」構成されているガス配管用ライザー管であって、「下部」保護管は、前記ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が「前記上部保護管の下端部より下方に突出して」地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されているのに対し、引用発明ではそのような特定はなされていない点。

(4)判断
[相違点1]について
本願補正発明では、保護管は、「上端部がライザー管継手に一体的に接合されるか若しくは一体に形成され」との択一的な記載により特定されている。
一方、引用発明では「埋設プラスチック管5に接続されるプラスチック管30の上端部とを金属製の継手20で接続して」いるものであり、一致点にあるように「上端部が前記ライザー管継手に一体的に接合」されるものであるから、2種類の態様で特定される択一的な記載の一方の態様で一致するものであるといえる。
したがって、相違点1は、実質的な相違点であるとはいえない。

[相違点2]について
本願補正発明において、下端部がライザー管継手から下方に延長して形成されている上部保護管と、この上部保護管の下端部の内周とライザー樹脂管の外周との間に上下方向に摺動自在に挿入された下部保護管とからなって伸縮自在に構成されているガス配管用ライザー管であって、下部保護管は、ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が上部保護管の下端部より下方に突出して地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されていることによる技術的な意義は、出願当初の明細書の【0003】の「ここで問題にするのは、地盤が不等沈下した場合である。上記ライザー樹脂管は一定長さの保護管で覆われ、この保護管の下端側は地中に埋設されているが、その保護管の地中への埋設深さは少しであるため、万一の地盤沈下に遭遇して地面が保護管の最下端部よりも下方になるまで沈下すると、ライザー樹脂管が保護管の最下端部からその一部を露出し、該保護管による保護機能の低下ないし喪失を来し、ライザー樹脂管を外力や火災などから十分に防護できなくなるという懸念がある」なる記載からみて、地盤が不等沈下した場合にライザー樹脂管が保護管の最下端部からその一部を露出することを防止することであると解される。
例えば、原審の拒絶の理由に引用された特開昭51-66525号公報に「保温配管が埋設されている地域で地盤沈下が起こると(「地盤が不等沈下した場合」に相当)、該配管の建物への入り口附近で、管が破損する。これは、地盤沈下と共に埋没配管も同時に沈下するにもかかわらず、建物が沈下しないことに起因する。本発明は上述の場合に管の破損を防止する保温配管の地盤沈下対策装置を提供するものである。」(第1頁左下欄第14行から同欄第20行)と記載され、さらに、「該継手部(2c)は保護筒(7)によってその周囲が地盤(6)から保護されている。該保護筒(7)は上筒(7a)(「上部保護管」に相当)と下筒(7b)(「下部保護管」に相当)とから成り、両筒(7a)、(7b)は継手部(2c)の伸縮を許容するように摺動部(7c)を介して連結され(「上下方向に摺動自在」に相当)、該保護筒(7)において、前記継手部(2c)の周囲(「ライザー樹脂管の外周」に相当)にはその継手部(2c)の伸縮を許容するように互いに摺動自在に構成された断熱材(5b)(5c)が配設されている。」(第2頁右下欄第12行から同欄第19行)と記載されているように、配管において、地盤が不等沈下した場合に、上部保護管と、この上部保護管の下端部の内周とライザー樹脂管の外周との間に上下方向に摺動自在に挿入された下部保護管とからなって伸縮自在に構成されていることにより、地下に設けた部材の位置を一定に保つ点は周知の技術にすぎない。そして、地盤が不等沈下した場合においても外部環境からプラスチック管を保護遮断できるようにすることは一般的な課題であるといえることから、引用発明に上記の周知の技術を採用することは、任意であるといえる。
さらに、下端部が前記継手20から下方に延長して形成されている保護管50からなって外部環境からプラスチック管を保護遮断するように構成されている引用発明に、上記の周知の技術を採用すれば、下端部がライザー管継手から下方に延長して形成されている上部保護管と、この上部保護管の下端部の内周とライザー樹脂管の外周との間に上下方向に摺動自在に挿入された下部保護管とからなって伸縮自在に構成されているガス配管用ライザー管であって、下部保護管は、ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が上部保護管の下端部より下方に突出して地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されているものとなることは自明のことにすぎない。
そうすると、ガス配管用ライザー管において地盤が不等沈下した場合にライザー樹脂管が保護管の最下端部からその一部を露出することを防止するという一般的な課題を解決するために、引用発明に上記周知の技術を採用することにより相違点2に係る本願補正発明の構成とすることも任意であり、また、そのために格別の技術的困難性が伴うものとも認められない。

そして、本願補正発明の全体構成により奏される作用効果も引用発明、及び、上記周知の技術から当業者が予測し得る範囲内のものにすぎない。

なお、審判請求人は平成22年6月28日付けの回答書において、以下の主張を行っている。
「引用文献1に記載された発明において、地上に立ち上がるプラスチック管30の部分を保護する保護管50を、万一の地盤沈下に遭遇した場合も、プラスチック管30が沈下地面上に露出するのを防ぐように、上筒と下筒とで伸縮自在に構成する場合に、伸縮自在な保護管の下端をどこに形成するかについて、一体構造の保護管50のものをそのまま流用できるとは考えにくいものです。」(第2頁第23行から同頁第27行)
しかしながら、保護管の下端をどこに形成するかに関し、引用発明も「保護管50は、プラスチック管30の外周面に沿って延びるものであり、下端部が埋設プラスチック管5より上方の地中に形成されている」ものである。そして、引用発明の課題が「保護管50は、上端部が継手20のめねじ27に接続され、下端部が前記継手20から下方に延長して形成されていることにより外部環境からプラスチック管を保護遮断するように構成されている」ものであり、上記の「(4)判断」の「[相違点2]について」に示すように地盤が不等沈下した場合においても外部環境からプラスチック管を保護遮断できるようにすることは一般的な課題であるといえることを踏まえれば、引用発明の保護管の下端の位置が地盤が不等沈下した場合においても「下端部が埋設プラスチック管5より上方の地中に形成されている」態様から不変とすることは当業者にとって技術常識といえる程度といえる。
したがって、「伸縮自在な保護管の下端をどこに形成するか」について本願補正発明の構成とすることが困難であるとの審判請求人の主張を採用することができない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、及び、上記周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないことから、特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)むすび
以上のとおりであって、本件補正は、改正前の特許法第17条の2第5項の規定において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下を免れない。

3.本願発明について
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年7月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面によれば、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものと認められる。
「地上の屋外ガス機器に接続される金属管の下端部と、地中埋設樹脂管に接続されるライザー樹脂管の上端部とを金属製のライザー管継手で接続しており、前記ライザー樹脂管は地中から地上に立ち上げられ、この地上に立ち上げられたライザー樹脂管の外面は保護管で覆われているガス配管用ライザー管において、
前記保護管は、上端部が前記ライザー管継手に一体的に接合されるか若しくは一体に形成され、下端部が前記ライザー管継手から下方に延長して形成されている上部保護管と、この上部保護管の下端部の内周と前記ライザー樹脂管の外周との間に上下方向に摺動自在に挿入された下部保護管とからなって伸縮自在に構成されていることを特徴とするガス配管用ライザー管。」

(1)引用例
引用例、及び、その記載内容は、上記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・検討
本願発明は、「2.」で検討した本願補正発明から「ガス配管用ライザー管」に関し、「ガス配管用ライザー管であって、下部保護管は、ライザー樹脂管の外周面に沿って延びるものであり、下端部が上部保護管の下端部より下方に突出して地中埋設樹脂管より上方の地中に形成されている」という限定を省いたものに相当する。
したがって、本願発明を構成する事項の全てを含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が上記「2.(4)」に記載したとおり、引用発明、及び、上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により引用発明、及び、上記周知の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-02-24 
結審通知日 2011-03-01 
審決日 2011-03-24 
出願番号 特願2000-97228(P2000-97228)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐藤 正浩中里 翔平  
特許庁審判長 仁木 浩
特許庁審判官 神山 茂樹
田良島 潔
発明の名称 ガス配管用ライザー管  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 正二  
代理人 鈴江 正二  

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