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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08G
管理番号 1237193
審判番号 不服2007-18367  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-07-02 
確定日 2011-05-18 
事件の表示 特願2002-554776「ポリイミドLCD配向膜」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 7月11日国際公開、WO2002/54140、平成16年 8月12日国内公表、特表2004-524393〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成14年1月2日(優先権主張、平成13年1月2日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年7月14日付けで拒絶理由が通知され、平成19年1月25日に意見書とともに手続補正書が提出されたが、同年3月27日付けで拒絶査定がなされ、同年7月2日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年8月1日に手続補正書が提出され、同年9月12日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年10月31日付けで前置報告がなされ、当審において平成21年6月2日付けで審尋がなされ、同年12月9日に回答書が提出され、平成22年5月20日に拒絶理由が通知され、同年11月25日に意見書とともに手続補正書が提出されたものである。

第2.本願発明について
本願の請求項1?21に係る発明は、平成22年11月25日提出の手続補正書により補正された明細書(以下、「本願明細書」という。)及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?21に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
少なくとも1個のジアンヒドリッドと、少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンとの反応生成物でなるコポリイミドであって、
前記少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンの内の少なくとも1個は、少なくとも2個のペンダントメソゲニック基を含有するものであり(ここで、前記ペンダントメソゲニック基の内の少なくとも2個は、前記少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンの内の少なくとも1個の2及び2' 位又は6及び6' 位のいずれかに位置している)、及び
前記コポリイミドは、一般式
【化2】

(式中、Aは、前記少なくとも1個のジアンヒドリッド化合物からの1個以上の残基であり、Bは、前記少なくとも2個のジアミン化合物の内の少なくとも1個からの1個以上のビフェニル残基であり、nは、正の数である)で表されるものであり、メソゲニック基の組成は、コポリイミドから形成される配向膜のプレチルト角に影響を及ぼし、前記少なくとも2個のジアミンの内の少なくとも1個は、主鎖部分、少なくとも2個のメチレンスペーサー、少なくとも2個の結合基、及び少なくとも2個のペンダントメソゲニック基を含むものであり、及び各ペンダントメソゲニック基は、前記少なくとも2個のメチレンスペーサーの内の1個に取付けられ、各メチレンスペーサーは結合基に取付けられ、及び結合基は主鎖部分に取付けられており、前記結合基はエステル又はエーテルから選ばれるものであり、及び
前記反応生成物は、シングル膜として、少なくとも10°のプレチルト角を有する液晶装置用の配向膜を形成するために使用されるコポリイミドである、
ことを特徴とする、コポリイミド。」

第3.当審において通知した拒絶の理由の概要
当審において通知した、平成22年5月20日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

「1.本件出願は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

刊行物1:特表平8-511812号公報

2.本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。」

なお、本願発明1に係る規定による特許法第36条第6項第1号違反について、以下の点が記載されている。
「本願発明1において上記一般式【化2】を有するコポリイミドを特定することと、上記課題を解決することとの関連性が、本願明細書の記載から見出すことはできないことから、本願発明1において、上記規定により、課題を解決するための手段が反映されたということはできず、よって、請求項1で特定する範囲は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えていることは明らかである。
よって、本願発明1は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。」

第4.当審において通知した拒絶の理由のうち、特許法第29条第1項第3号違反についての理由の妥当性についての判断
1.刊行物1の記載事項
本願の優先日前に頒布されたことが明らかな特表平8-511812号公報には、以下の事項が記載されている。

ア.「19.液晶素子、少なくとも2つの光透過性複屈折膜、正の複屈折性をもった少なくとも1つの膜、負の複屈折性をもった少なくとも1つの別の膜、および該両膜が液晶素子と偏光板間に保持されるように配置された偏光板を有するタイプであって、負の複屈折性を有し下記の群(a)および(b)から選択される少なくとも1つの負のポリイミド薄膜から成ることを特徴とする液晶デイスプイ:
(a)式(i)および(ii)から成る群から選択する有機溶媒に可溶性のホモポリイミド膜:

(b)式(i)、(ii)および(iii)から成る群から選択される有機溶媒に可溶性のコポリイミド膜:

〔上式中の各Rは、H、フエニル、置換フエニル、アルキルおよび血換アルキル(炭素原子数1?20を有するもの;
FおよびGは共有結合、CH_(2) 基、C(CH_(3) )_(2) 基、C(CX_(3) )_(2) 基(Xはハロゲンである)。CO基、O原子、S原子、SO_(2) 基、Si(R)_(2) 基(RはH、炭素原子数1?20を有するフエニル、置換フエニル、アルキルおよび置換アルキルから成る群から別々に選ぶ)、およびN(R)基(R基は前記定義のもの)から成る群から別々に選んだ置換基である;
Aは、水素、ハロゲン、アルキル、置換アルキル、ニトロ、シアノ、チオアルキル、アルコキシ、置換アルコキシ、アリ-ル、置換アリ-ル、脂肪族および芳香族エステルおよびそれらの混合物(炭素原子数1?20)から成る群から選ぶ;
Bは、ハロゲン、C_(1-3) アルキル、C_(1-3) ハロゲン化アルキル、フエニル又は置換フエニル(フエニル環上の置換基はハロゲン、C_(1-3) アルキル、C_(1-3) ハロゲン化アルキルおよびそれらの混合物から成る群から選ぶ;
zは、0?3の整数である;
nは、0?4の整数である;および
pおよびqは、それぞれ0?3および1?3の整数であり、pおよびqが1より大きいとき、ベンジル又は置換ベンジル基間の結合基はFである〕;そして
xは100から0へと変わるが、yはそれに対応して0から100へと変わる〕。
・・・
21.ジアミンは ・・・(略)・・・ 2,2′-ジカルボアルコキシ-4,4′-ジアミノビフエニルおよび2,2′-ジカルボアルコキシ-6,6′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフエニルから成る群から選ぶ請求の範囲第19項記載の膜。」(請求の範囲19及び21)

イ.「本発明のホモポリイミドおよびコポリイミドは、一般式(I)のピロメルト酸二無水物および置換ピロメルト酸二無水物のようなベンゼン二無水物:

および/または式(II)のテトラカルボン酸二無水物およびそれらのそれぞれの置換誘導体と:

式(III)のモノ芳香族およびポリ芳香族ジアミンとの混合体から成る:

(式中の各Rは典型的な基であるH、ハロゲン、フエニル、置換フエニル、アルキルおよび置換アルキル、特にハロゲン化アルキルを別々に選んで置換基である;GおよびFはそれぞれ共有結合又は結合ボンド、CH_(2) 基、C(CH_(3) )_(2) 基;C(CF_(3) )_(2) 基、C(CX_(3) )_(2) 基(但しXはハロゲンである)、CO基、O原子、S原子、SO_(2) 基、Si(CH_(2)CH_(3))_(2) 基又はN(CH_(3))基から成る代表的かつ説明のための群から選ぶ;Bはハロゲン、例えばフッ化物、塩化物、ヨウ化物および臭化物、C_(1-3) アルキル、C_(1-3) ハロゲン化アルキル、フエニル又は置換フエニル(但しフエニル環上の置換基はハロゲン、C_(1-3) アルキル、C_(1-3) ハロゲン化アルキルおよびそれらの混合体を含む);Zは、0?3の整数;

各Aは、水素、ハロゲン、例えばフッ化物、塩化物、ヨウ化物および臭化物;アルキル、置換アルキル、例えばハロゲン化アルキル、ニトロ、シアノ、チオアルキル、アルコキシ、アリール又は置換アリール、例えばハロゲン化アリール、アルキルエステル、置換アルキルエステルおよびそれらの混合体から成る群からそれぞれ選ぶ;nは、0?4の整数;およびpおよびqはそれぞれ0?3および1?3の整数(但しpおよびqは1より大きい、ベンジル又は置換ベンジル基間の結合基はFである)である。」(公表公報第40頁下から1行?第42頁第4行)

ウ.「さらに、本明細書で用いている用語『コポリイミド』は2つの異なる反復単位のみを含有するポリイミド限定されないで、2つ又は2つ以上の反復単位を有する全てのポリイミドを含むことを意図している。従って、本発明のコポリイミドは(1)(a)式(I)の酸二無水物および式(III)の少なくとも2つの異なるジアミンで作り、又は(b)式(I)の少なくとも2つの異なる酸二無水物および式(III)のジアミンで作り、一般式(VI)で示すことができる:

;又は(2)(a)式(II)の酸二無水物と式(III)の少なくとも2つのジアミンで作り、又は(b)式(II)の少なくとも2つの酸二無水物で作り、一般式(VII)で示される:

;又は式(III)のジアミンと式(I)および(II)の2つ又は2つ以上の有機二無水物、又はそれらの混合体で作り、一般式(VIII)で示される:

」(公表公報第43頁式(XII)の下の行?第44頁の式(VIII))

エ.「一般式(IX)のジアミンが特に有用である:

(式中のpおよびqは1であり、AはCH_(3) 、CF_(3) 、ハロゲン、CNおよびエステル(カルボアルキル基は前に定義したもの)から成る群から選ぶのが望ましい、nは少なくとも1である)。非限定例のリストとして、例えば、2,2′-ビス(トリフルオロメチル)-4,4′-ジアミノビフエニル、2,2′-ジブロモ-4,4′-ジアミノビフエニル、2,2′-ジシアノ-4,4′-ジアミノビフエニル、2,2′-ジクロロ-6,6′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフエニル、2,2′-ジメチル-4,4′-ジアミノフエニル、3,3′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフニル、2,2′-ジカルボアルコキシ-4,4′-ジアミノビフエニルおよび2,2′-ジカルボアルコキシ-6,6′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフエニルを含む。」(公表公報第47頁第6行?下から9行)

オ.「 実施例12
本例は3,3′-4,4′-ベンゾフエノンテトラカルボン酸無水物(BPDA)および4,4′ジアミノ-2,2′-ジカルボブトキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABMB)のホモポリイミドの製造法を説明する。
・・・
実施例13
本例は4,4′-オキシジフタル酸無水物(ODPA)および4,4′-ジアミノ-2,2′-ジカルボブトキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABMB)のホモポリイミドの製造法を説明する。
・・・
実施例14
本例は2,2′-ビス(3,4-ジカルボキシフエニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および4,4′-ジアミノ-2,2′-ジカルボドデカオキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABDB)のホモポリイミドの製造法を説明する。
・・・
実施例15
本例は2,2′-ビス(3,4-ジカルボキシフエニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および4,4′-ジアミノ-2,2′-ジカルボペンタデカオキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABPB)のホモポリイミドの製造法を説明する。
・・・
実施例16
本例は2,2′-ビス(3,4-ジカルボキシフエニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン二無水物(6FDA)および4,4′-ジアミノ-2,2′-ジカルボオクタデカオキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABOB)のホモポリイミドの製造法を説明する。
・・・
その重合体の性質:30.1℃におけるm-クレゾール中の固有粘度〔η〕=0.43dl/g;Tg=95℃;そしてアセトン、シクロヘキサノン、THF、クロロホルム、DMF、NMP、DMAcおよびm-クレゾールに可溶性。」(公表公報第54頁第13行?第57頁第9行)

カ.「特に、表1は、複屈折に必要な配向を達成するために1軸又は2軸伸張に頼る必要がなく負の複屈折性をもった広範囲のポリイミドおよびコポリイミド膜を製造できることを示す。マーカッシュ・グループG,F,E,Bm、Bz、An、P、qおよびRによって示したように、適当なジアミンおよび二無水物を慎重に選択することによって、0.2?20.0μmと所定の厚さの膜に必要な負の複屈折をもって目的の用途に提供することができる。」(公表公報第73頁第6?11行)

キ.「

」(公表公報第76頁の表I(続き))

ク.「

」(公表公報第78頁の表I(続き))

ケ.「

」(公表公報第79頁の表I(続き))

コ.「

」(公表公報第80頁の表I(続き))

2.刊行物1に記載された発明
摘示記載ア.?エ.及びカ.から、刊行物1には、「一般式(I)(構造式省略)のピロメルト酸二無水物および置換ピロメルト酸二無水物のようなベンゼン二無水物および式(III)(構造式省略)の少なくとも2つの異なるモノ芳香族およびポリ芳香族ジアミンで作り、一般式(VI)で示すコポリイミド:

;又は式(II)(構造式省略)のテトラカルボン酸二無水物およびそれらのそれぞれの置換誘導体と式(III)(構造式省略)の少なくとも2つの異なるモノ芳香族およびポリ芳香族ジアミンで作り、一般式(VII)で示すコポリイミド:

;又は式(III)のジアミンと式(I)および(II)の2つ又は2つ以上の有機二無水物、又はそれらの混合体で作り、一般式(VIII)で示されるコポリイミド

であって、モノ芳香族およびポリ芳香族ジアミンが一般式(IX)のジアミン

であり、液晶素子、少なくとも2つの光透過性複屈折膜、正の複屈折性をもった少なくとも1つの膜、負の複屈折性をもった少なくとも1つの別の膜、および該両膜が液晶素子と偏光板間に保持されるように配置された偏光板を有するタイプである液晶ディスプレイにおける、負の複屈折性をもった少なくとも1つの別の膜として用いるコポリイミド。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているといえる。

3.本願発明について
3-1.本願発明と引用発明1との対比・判断
そこで、本願発明と引用発明1とを対比する。

引用発明1における「一般式(I)(構造式省略)のピロメルト酸二無水物および置換ピロメルト酸二無水物のようなベンゼン二無水物」及び「式(II)(構造式省略)のテトラカルボン酸二無水物およびそれらのそれぞれの置換誘導体」は、本願発明における「少なくとも1のジアンヒドリッド」に相当し、引用発明1における「一般式(IX)のジアミン」はビフェニル基を有していることは明らかであるから、本願発明における「ビフェニル基含有ジアミン」に相当し、引用発明1における「混合体」は、本願発明における「反応生成物」に相当する。
また、引用発明1における「式(III)(構造式省略)の少なくとも2つの異なるモノ芳香族およびポリ芳香族ジアミン」及び「式(III)のジアミンと式(I)および(II)の2つ又は2つ以上の有機二無水物・・・の混合体」における「式(III)のジアミン」としての「一般式(IX)のジアミン」は、刊行物1には、2個のビフェニル基含有ジアミンを用いたポリイミド(摘示記載ク.?コ.)が記載されていることから、本願発明における「少なくとも2個のビフェニル含有ジアミン」に相当するといえる。

そして、コポリイミドの構造についてみれば、一般式(VI)?(VIII)の構造が、本願発明に係る一般式【化2】の構造に相当することは明らかであることから、引用発明1における「コポリイミド」は、一般式【化2】の構造を有していることは明らかであるといえる。

さらに、引用発明1における「液晶素子、少なくとも2つの光透過性複屈折膜、正の複屈折性をもった少なくとも1つの膜、負の複屈折性をもった少なくとも1つの別の膜、および該両膜が液晶素子と偏光板間に保持されるように配置された偏光板を有するタイプである液晶ディスプレイにおける、負の複屈折性をもった少なくとも1つの別の膜として用いる」ことは、液晶素子と偏光板間に保持されている負の複屈折性をもった少なくとも1つの別の膜が配向膜であることは明らかであることから、本願発明における「液晶装置用の配向膜を形成するために使用される」ことに相当するといえる。

そうすると、本願発明と引用発明1とは、「少なくとも1個のジアンヒドリッドと、少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンとの反応生成物でなるコポリイミドであって、前記コポリイミドは、一般式
【化2】

(式中、Aは、前記少なくとも1個のジアンヒドリッド化合物からの1個以上の残基であり、Bは、前記少なくとも2個のジアミン化合物の内の少なくとも1個からの1個以上のビフェニル残基であり、nは、正の数である)で表されるものであり、前記反応生成物は、液晶装置用の配向膜を形成するために使用されるコポリイミドである、ことを特徴とする、コポリイミド。」である点で一致しているが、以下の点で相違している。

○相違点1:本願発明は、少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンの内の少なくとも1個は、少なくとも2個のペンダントメソゲニック基を含有するものであり(ここで、前記ペンダントメソゲニック基の内の少なくとも2個は、前記少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンの内の少なくとも1個の2及び2' 位又は6及び6' 位のいずれかに位置している)、メソゲニック基の組成は、コポリイミドから形成される配向膜のプレチルト角に影響を及ぼし、前記少なくとも2個のジアミンの内の少なくとも1個は、主鎖部分、少なくとも2個のメチレンスペーサー、少なくとも2個の結合基、及び少なくとも2個のペンダントメソゲニック基を含むものであり、及び各ペンダントメソゲニック基は、前記少なくとも2個のメチレンスペーサーの内の1個に取付けられ、各メチレンスペーサーは結合基に取付けられ、及び結合基は主鎖部分に取付けられており、前記結合基はエステル又はエーテルから選ばれるものであるのに対し、後者はペンタンドメソゲニック基に関する規定がない点。

○相違点2:本願発明は、メソゲニック基の組成は、コポリイミドから形成される配向膜のプレチルト角に影響を及ぼし、シングル膜として、少なくとも10°のプレチルト角を有するものであるのに対し、後者はプレチルト角に関する規定がない点。

上記相違点1について検討すると、本願明細書の段落【0014】?【0015】には、「しかしながら、高度のプレチルト配向膜を調製するために、メソゲニック置換基を含有するポリイミドを使用することは、これまで知られていない。本発明では、メソゲニック基は、ジアミン成分によってポリイミドの構造に関与する。・・・上記のように、ポリイミド高分子は、ペンダントメソゲニック基を含有するジアミンから調製される。」と記載されていることから、本願発明に係る「ペンダントメソゲニック基」と本願明細書に記載の「メソゲニック基」は同義語であると解することができる。
そして、本願明細書の段落【0016】には、「メソゲニック基は、ロッド様の分子構造をもつ基である。すなわち、メソゲニック基、又は単にメソゲンは、長さ:幅の比が少なくとも5:1である基である。」と記載されており、さらに同段落【0030】の【表4-1】?【表4-3】には、ペンダントメソゲニック基として、-COO(CH_(2))_(16)H及び-COO(CH_(2))_(18)Hであるジアミノビフェニルを、ジアミンとして用いることが記載されているところ、刊行物1には、一般式(IX)のジアミンとして、2,2′-ジカルボアルコキシ-4,4′-ジアミノビフエニル又は2,2′-ジカルボアルコキシ-6,6′-ジメチル-4,4′-ジアミノビフエニルが記載されているとととに(摘示記載ア.及びエ.)、さらに、実施例において、当該ジアミノビフェニルとして、4,4′-ジアミノ-2,2′-ジカルボドデカオキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABDB)、4,4′-ジアミノ-2,2′-ジカルボペンタデカオキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABPB)、4,4′-ジアミノ-2,2′-ジカルボオクタデカオキシ-6,6′-ジメチルビフエニル(DABOB)、及び2,2′位に-CO_(2)CH_(2)(CF_(2))_(6)CF_(3)基を有し4,4′位にメチル基を有するジアミノビフェニル(C8F)を用いること(摘示記載オ.?キ.)が記載されており、当該ジアミノビフェニルの2,2′位の置換基であるカルボドデカオキシ基、カルボオクタデカオキシ基及び-CO_(2)CH_(2)(CF_(2))_(6)CF_(3)基は、いずれも炭素数が8以上のアルキル基が結合したエステルであることから上記-COO(CH_(2))_(16)H基及び-COO(CH_(2))_(18)H基と構造が類似しており、さらに当該アルキル基の長さ:幅の比が少なくとも5:1であることが明らかであることにかんがみれば、本願発明に係るペンダントメソゲニック基に相当することは明らかである。
さらに、上記カルボドデカオキシ基及びカルボオクタデカオキシ基については、カルボオキシ基が本願発明に係る「結合基」に、ドデカン部分及びオクタデカン部分が本願発明に係る「メソゲニック基」及び「メチレンスペーサー」に、ジアミノビフェニル部分が本願発明に係る「主鎖部分」にそれぞれ相当し、また上記-CO_(2)CH_(2)(CF_(2))_(6)CF_(3)基については、-CO_(2)が本願発明に係る「結合基」に、CH_(2)が本願発明に係る「メチレンスペーサー」に、(CF_(2))_(6)CF_(3)が本願発明に係る「メソゲニック基」に、ジアミノビフェニル部分が本願発明に係る「主鎖部分」にそれぞれ相当することから、引用発明1に係る「一般式(IX)のジアミン」が、上記相違点1に係る態様を包含することは明らかである。
そうすると、引用発明1に係るポリイミドにおいて、少なくとも2個の一般式(IX)のジアミンのうち、少なくとも1個を上記相違点1に係る態様としたものについても、刊行物1に記載されているに等しいといえることから、上記相違点1は実質的な相違点ではない。

上記相違点2について検討すると、上記相違点1で検討したとおり、本願発明と引用発明1とは液相装置用の配向膜物質であるコポリイミドにおいて差異がないことから、引用発明1に係るコポリイミドが、「メソゲニック基の組成は、コポリイミドから形成される配向膜のプレチルト角に影響を及ぼし」、「シングル膜として、少なくとも10°のプレチルト角を有するものである」という特性を有している蓋然性が高く、よって相違点2は実質的な相違点ではない。

3-2.審判請求人の主張について
請求人は、平成22年11月25日提出の意見書において、
「(4)引用文献1は、負複屈折のポリイミド膜(このような膜はLC(液晶)ディスプレイにおいて有用である)の調製に有用なポリイミド及びその製法を開示しております。しかし、引用文献1は、本願の請求項1に記載のコポリイミド化合物を開示するものではなく、教示又は示唆するものでもありません。
本願発明と引用文献1に開示された事項とを対比検討しても、引用文献1は、訂正した特許請求の範囲に記載の発明を開示しておらず、また教示又は示唆しておりません。これは、少なくとも本願の出願当初の明細書に記載の表1及び2に含まれる実施例から理解されるように、本願の特許請求の範囲における限定事項を満足する場合には、予測されない結果が達成されるためであります。
すなわち、コポリイミドが本願の請求項のいずれかに記載の反応生成物である場合、このようなコポリイミド、請求項1において規定する要件を備えたコポリイミドは、シングル配向膜の形成に使用されると、意外にも、約10°より大のプレチルト角を提供します。これに対して、本願明細書の表1に示す各種の例(例えば、[表1‐3]に示す第2の例及び[表1‐5]に示す例参照)から理解されるように、コポリアミドではあっても、上述の要件を満足しない場合には、少なくとも約10°のプレチルト角は達成されません。
このように、少なくとも上記の理由から、本願の特許請求の範囲に記載の発明は、引用文献1の存在にもかかわらず、充分に新規性を有するものであり、特許されるべきものと確信します。」と主張している。
しかしながら、上記3-1.で述べたとおり、引用発明1に係るポリイミドにおいて、少なくとも2個の一般式(IX)のジアミンのうち、少なくとも1個を上記相違点1に係る態様としたものについても、刊行物1に記載されているに等しいものであるから、刊行物1には、本願発明に係るコポリイミドが実質的に記載されているといえる。
そして、本願明細書の段落【0030】には、【表1-5】の上から2段目のコポリイミド(6FDA/C6BP/PFMB(1:3))、【表3-1】の最下段のコポリイミド(BPDA/BrC6CN/PFMB(1:2))、【表3-3】の最下段のコポリイミド(6FDA-C6CN/PFMB(1:3))が、本願発明に係るコポリイミドと構造が一致しているにも関わらず、プレチルト角が10°未満であることが記載されていることから、請求項1において規定する要件を備えたコポリイミドであれば、必ず「シングル膜として、少なくとも10°のプレチルト角を有する」ということはできないことから、本願発明は、選択発明として新規性を有するものであるとは認められず、請求人の当該主張は採用できないものである。

3-3.まとめ
よって、本願発明は、刊行物1に記載された発明である。

第5.当審において通知した拒絶の理由のうち、特許法第36条第6項第1号違反についての理由の妥当性についての判断
1.本願明細書の記載事項
本願明細書には、以下の事項が記載されている。

a.「O-プレート補償膜、又はO-プレート補償装置は、光学補償装置の1つのタイプである。O-プレート補償装置は、一般に、グレイレベルの逆転を最少にし、全体的なグレイスケールの安定性を改善する。O-プレート補償装置は、既に、液晶膜の表面に対して傾斜する角度で配向された主光学軸を有するプラスの複屈折物質でなるものとして開示されている。傾斜角度は、0-90°のいずれかの角度である。従来のO-プレート補償装置において、この角度は各種の方法で設けられている。例えば、米国特許第5,619,352号は、配向膜、液晶プレチルト膜、及び液晶補償膜を包含するO-プレート補償装置を開示している。開示されたO-プレート補償装置は、配向膜が、配向膜/液晶プレチルト膜界面において、わずかに1-10°の液晶プレチルト角を生ずるため、液晶補償膜のための適正なプレチルト角を提供することに関して、液晶プレチルト膜に左右される。従って、開示されたO-プレート補償装置は、液晶物質の配向の適正な角度を提供することに関して、複数の液晶物質膜に左右される。同様のO-プレート補償装置が、米国特許第5,986,734号及びPCT国際公開WO 96/10770号にも開示されている。高度のプレチルト配向膜の使用は、piセルとしてLCDの分野において公知である。」(段落【0009】)

b.「用語『プレチルト角』は、従来技術では、配向膜と液晶膜との組合せによって提供される最終の角度を表示するものとして、しばしば使用されていたことが理解されなければならない。これまでのところ、約15°以上のプレチルト角を提供できる液晶膜用のシングルポリイミド配向膜は全く存在しなかった。・・・
このため、大きく均一なプレチルト角を提供できるポリイミド配向膜物質が求められていた。」(段落【0010】?【0011】)

c.「ポリイミドは、概略的に、構造
【化2】(構造式省略)
(式中、Aは酸ジアンヒドリッドからの1以上の残基であり、Bはジアミン化合物からの残基であり、nはプラスの数である)によって表される。ポリイミドの特性が、上記要素『A』及び『B』を変えることによって変更されることは公知である。しかしながら、高度のプレチルト配向膜を調製するために、メソゲニック置換基を含有するポリイミドを使用することは、これまで知られていない。本発明では、メソゲニック基は、ジアミン成分によってポリイミドの構造に関与する。」(段落【0014】)

d.「【表1-5】

」(段落【0030】の【表1-5】)

e.「【表3-1】

」(段落【0030】の【表3-1】)

f.「【表3-3】

」(段落【0030】の【表3-3】)

g.「上記のように及び表1のデータによって表されるように、多数の異なったファクターが、本発明のポリイミドによって提供されるプレチルト角に影響を及ぼす。メソゲンとジアミンの芳香族部分との間の結合のタイプは、そのようなファクターの1つである。例えば、6FDA/C6CNは42°のプレチルト角を提供し、一方、6FDA/C6CN(エーテル)は20°のプレチルト角を提供する。これらのポリイミドは、メソゲンと芳香族基との間の結合のタイプにおいてのみ相違するものである。従って、6FDA/C6CNのエステル結合は、6FDA/C6CN(エーテル)のエーテル結合よりも大きいプレチルト角を提供する。」(段落【0031】)

h.「また表1に示されるように、シアノ置換メソゲンを使用することによって、非置換メソゲンよりもわずかに大きいプレチルト角を提供するポリイミドが生成される。例えば、6FDA/C6CNによって提供されるプレチルト角は、6FDA-C6Biphによって提供されるプレチルト角よりも大きい。これらの化合物は、各ポリイミドのメソゲンのビフェニル部分における置換の点でのみ相違するものである。」(段落【0032】)

i.「本発明のポリイミドにおいて使用されるジアンヒドリッドもプレチルト角に影響を及ぼす。例えば、BrC6CNに結合される場合、6FDAは、BPDAよりも大きいプレチルト角を提供する。6FDA-BrC6CNはプレチルト角20°を提供し、一方、BPDA-BrC6CNはプレチルト角1.5°を提供する。」(段落【0033】)

j.「ジアミン成分におけるメソゲニック基以外の置換基も、得られるポリイミドのプレチルト角に影響を及ぼす。メソゲニック基のみを含有するジアミン、例えば、6FDA/C6CNは、メソゲニック置換基と共に、臭素置換基を有するジアミンを含有する同様のポリイミド、例えば、6FDA-BrC6CNよりも大きいプレチルト角をもつポリイミドを提供する。6FDA/C6Cnのプレチルト角は42°であり、一方、6FDA-BrC6CNのプレチルト角は20°である。これらのポリイミドは、6FDA-BrC6CNのジアミン部分における臭素置換基の存在の点でのみ相違するものである。」(段落【0034】)

k.「表1-4におけるデータが示すように、加熱処理の温度は、ポリイミドによって提供されるプレチルト角に影響を及ぼす。150℃、175℃、200℃及び225℃での加熱処理後における6FDA/C6CN及び6FDA/C6CN(エーテル)のプレチルト角を、図2において、グラフによって比較する。同様の加熱処理後における6FDA/C6CN及び6FDA/C6BPのプレチルト角を図3において、及び6FDA/C11CNのプレチルト角を図4において比較する。6FDA/C6CN、6FDA/C6CN(エーテル)及び6FDA/C6BPによって提供されるプレチルト角は、表1及び2に示されるように、テストした加熱処理の温度のすべてにわたって相対的に類似している。しかしながら、6FDA/C11CNによって提供されるプレチルト角は、図2において見られるように、加熱処理温度が上昇するにつれて低下する。6FDA/C11CNによって提供されるプレチルト角は、加熱処理温度150℃において約90°である。加熱処理温度200℃では、プレチルト角は約40°に低下する。」(段落【0035】)

l.「配向膜として使用するためのポリイミドを合成するために、ジアミンの混合物も使用できる。ポリイミドの組成を変更することによって、プレチルト角を変更できる。図5は、メソゲニックペンダント基をもつジアミン(C6BP)、過フッ素化炭素ペンダント基をもつジアミン(PFMB)又はその混合物を含有するポリイミドのプレチルト角を示すグラフである。図5は、そのジアミン成分としてPFMBのみを使用して得られるポリイミドによって提供されるプレチルト角が1.5°であることを示している。そのジアミン成分としてPFMB及びC6BPの混合物を使用して得られるポリイミドのプレチルト角は、PFMBに対してC6BPの百分率が増大するにつれて増大する。ポリイミドがC6BPのみでなる場合には、プレチルト角は約40°に増大する。」(段落【0036】)

2.本願発明に係る規定による特許法第36条第6項第1号違反について
本願発明は、コポリイミドの構造に関して「少なくとも1個のジアンヒドリッドと、少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンとの反応生成物でなるコポリイミドであって、前記少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンの内の少なくとも1個は、少なくとも2個のペンダントメソゲニック基を含有するものであり(ここで、前記ペンダントメソゲニック基の内の少なくとも2個は、前記少なくとも2個のビフェニル含有ジアミンの内の少なくとも1個の2及び2' 位又は6及び6' 位のいずれかに位置している)、及び前記コポリイミドは、一般式【化2】(構造式省略)
(式中、Aは、前記少なくとも1個のジアンヒドリッド化合物からの1個以上の残基であり、Bは、前記少なくとも2個のジアミン化合物の内の少なくとも1個からの1個以上のビフェニル残基であり、nは、正の数である)で表されるものであり、メソゲニック基の組成は、コポリイミドから形成される配向膜のプレチルト角に影響を及ぼし、前記少なくとも2個のジアミンの内の少なくとも1個は、主鎖部分、少なくとも2個のメチレンスペーサー、少なくとも2個の結合基、及び少なくとも2個のペンダントメソゲニック基を含むものであり、及び各ペンダントメソゲニック基は、前記少なくとも2個のメチレンスペーサーの内の1個に取付けられ、各メチレンスペーサーは結合基に取付けられ、及び結合基は主鎖部分に取付けられており、前記結合基はエステル又はエーテルから選ばれるもの」(以下、「本願発明に係る構造」という。)と規定している。
そして、本願明細書には、O-プレート補償装置は、配向膜が、配向膜/液晶プレチルト膜界面において、わずかに1-10°の液晶プレチルト角を生ずるため、液晶補償膜のための適正なプレチルト角を提供することに関して、液晶プレチルト膜に左右されること(摘示記載a.)を従来技術の問題点とし、約15°以上のプレチルト角を提供できる液晶膜用のシングルポリイミド配向膜は全く存在しなかったため、大きく均一なプレチルト角を提供できるポリイミド配向膜物質が求められていたこと(摘示記載b.)にかんがみ、本願発明1において、「少なくとも1のジアミンは、2個のペンダントメソゲニック基を含有するもの(ここで、前記2個のペンダントメソゲニック基は、2及び2'位又は6及び6'位のいずれかに位置している)」と規定することにより、大きく均一なプレチルト角を有するポリイミド配向膜物質を提供することを課題とするものであることが記載されていると認められる。
一方、本願明細書には、ポリイミドの特性が、上記【化2】中の要素「A」及び「B」を変えることによって変更されることは公知であること(摘示記載c.)、メソゲンとジアミンの芳香族部分との間の結合のタイプがポリイミドによって提供されるプレチルト角に影響を及ぼすこと(摘示記載g.)、シアノ置換メソゲンを使用することによって、非置換メソゲンよりもわずかに大きいプレチルト角を提供するポリイミドが生成されること(摘示記載h.)、使用されるジアンヒドリッドもプレチルト角に影響を及ぼすこと(摘示記載i.)、ジアミン成分におけるメソゲニック基以外の置換基も、得られるポリイミドのプレチルト角に影響を及ぼすこと(摘示記載j.)、加熱処理の温度がポリイミドによって提供されるプレチルト角に影響を及ぼすこと(摘示記載k.)、及びポリイミドの組成を変更することによってプレチルト角を変更できること(摘示記載l.)が記載されており、これらの記載からは、本願発明1において、上記一般式【化2】を有するコポリイミドを特定すること以外に、プレチルト角に影響を与えるファクターが複数存在することが示されているといえる。
そして、摘示記載d.?f.からは、本願発明に係る構造であっても、従来技術と同じ範囲のプレチルト角を有する配向膜物質を提供するものが存在することが示されているといえる。
以上のことから、本願発明に係る構造を特定することと、上記課題を解決することとの関連性が、本願明細書の記載から見出すことはできないことから、本願発明において、上記規定により、課題を解決するための手段が反映されたということはできず、よって、請求項1で特定する範囲は、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えていることは明らかである。
よって、本願発明は、本願明細書の発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえない。

2.審判請求人の主張について
請求人は上記意見書において、
「理由2.4『本願発明1に係る規定による』拒絶理由についても、本願の出願当初の明細書に記載の実施例は、各種のコポリイミド化合物を明確に詳述しており、特許請求の範囲の記載は、出願当初の明細書における記載から明白であります。」と主張しているが、本願明細書には、「シングル膜として、少なくとも10°のプレチルト角を有する」本願発明に係る構造が記載されているとともに、シングル膜として、プレチルト角が10°未満の本願発明に係る構造が記載されていることから、上記1.で述べたとおり、本願発明に係る構造を特定することと、上記課題を解決することとの関連性が、本願明細書の記載から見出すことはできないものであり、よって請求人の当該主張は採用できないものである。

第6.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての当審において通知した平成22年5月20日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由は妥当なものであり、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、この理由により拒絶すべきものである。
よって。上記結論の通り審決する。
 
審理終結日 2010-12-17 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-05 
出願番号 特願2002-554776(P2002-554776)
審決分類 P 1 8・ 113- WZ (C08G)
P 1 8・ 537- WZ (C08G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 淳子  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 ▲吉▼澤 英一
松浦 新司
発明の名称 ポリイミドLCD配向膜  
代理人 朝倉 勝三  

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