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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B29C
管理番号 1237200
審判番号 不服2008-12293  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-15 
確定日 2011-05-18 
事件の表示 特願2005-302710「成形品の良否判定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 69219〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成12年5月29日を特許出願日とする特願2000-158168号の一部を平成17年10月18日に新たな特許出願したものであって、平成20年1月15日付けで拒絶理由が通知され、同年3月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同年4月9日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月15日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年6月16日に手続補正書及び審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、前置審査において同年7月11日付けで拒絶理由が通知され、同年9月22日に意見書が提出され、同年11月17日付けで前置報告がなされ、当審において平成22年9月6日付けで審尋がなされ、同年11月11日に回答書が提出されたものである。

第2.本願発明について
本願の請求項1?5に係る発明は、平成20年6月16日提出の手続補正書により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面(以下、「本願明細書」という。)の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「(a)計量工程にてスクリューを回転させ、周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を連通させた状態で溶融樹脂をメータリング部からスクリューヘッドの前方へ送り、
(b)計量工程が完了するとスクリューを逆方向へ回転させて、前記周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を遮断することでメータリング部とスクリューヘッドとを遮断し、
(c)加熱シリンダ内の溶融樹脂の密度を一定にするように一定の力で射出部材を前進させ、そのときの射出部材の位置を検出し、
(d)該検出された位置と基準位置との差を算出し、
(e)該差が予め定められた範囲内に納まるかどうかを判断し、
(f)前記差が納まる場合には良品と判断し、納まらない場合には不良品であると判断することを特徴とする成形品の良否判定方法。」

第3.前置審査による拒絶の理由の概要
前置審査による拒絶の理由とされた平成20年7月11日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由は以下の理由を含むものである。

「理由1
この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

理由1、2
・請求項 1、3
・引用文献等 2
・備考
本願請求項1、3に係る発明について
引用例2には、「(a)計量工程が完了した後に、スクリューヘッドの前方とメータリング部とを遮断し、(b)スクリューを一定の力で押したときのスクリューの前進量を検出し、(c)該前進量に基づいて溶融樹脂の密度を検出することを特徴とする溶融樹脂の密度の検出方法」(請求項1を参照)、「溶融樹脂の密度にばらつきがあると、一定の負荷ΔPをスクリュー12に加えたときに前進量ΔSにばらつきが生じる。そこで、通常の射出成形のシーケンスの中に検出動作を入れ、各ショットごとに前記前進量ΔSを検出するようにしている。したがって、該前進量ΔSに基づいて溶融樹脂の密度を検出することができるだけでなく、該溶融樹脂の密度のばらつきを数値化することができる。その結果、成形条件出しが容易になり、成形品の品質を向上させることができる」こと(【0023】を参照)、「また、前進量ΔSのばらつきに基づいて成形品の良否の判別を行うこともできる」こと(【0024】を参照)が記載されており、引用例2には、「一定の負荷ΔPをスクリュー12に加えたときの前進量Δ」に基づいて「成形品の良否の判別」を行う態様が記載されていると認められる。また、引用例2の【0019】?【0021】、図2?3からみて「周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を連通させた状態で溶融樹脂をメータリング部からスクリューヘッドの前方へ送り、(b)計量工程が完了するとスクリューを逆方向へ回転させて、前記周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を遮断することでメータリング部とスクリューヘッドとを遮断」することも記載されていると認められる。さらに、引用例2に記載された発明において、「前進量ΔS」を検出するために、「スクリュー12」の前進位置も検出していると認められる。

引 用 文 献 等 一 覧
・・・
2.特開平11-034133号公報」

第4.前置審査における拒絶の理由の妥当性についての検討
1.特開平11-034133号公報の記載事項
本願の原出願日前に頒布されたことが明らかな特開平11-034133号公報(前置審査における拒絶理由の引用文献2、以下、「刊行物」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア.「【請求項1】 (a)計量工程が完了した後に、スクリューヘッドの前方とメータリング部とを遮断し、(b)スクリューを一定の力で押したときのスクリューの前進量を検出し、(c)該前進量に基づいて溶融樹脂の密度を検出することを特徴とする溶融樹脂の密度の検出方法。」(特許請求の範囲の請求項1)

イ.「本発明は、前記従来の射出装置の問題点を解決して、溶融樹脂の密度のばらつきを数値化することができ、成形条件出しが容易になり、成形品の品質を向上させることができる溶融樹脂の密度の検出方法を提供することを目的とする。」(段落0005)

ウ.「ところで、射出工程時に、前記スクリューヘッド14の前方に蓄えられた溶融樹脂が逆流しないように、逆流防止装置が配設される。すなわち、前記スクリューヘッド14は、前部に円錐(すい)形のヘッド本体部21を、後部に小径部19を有し、該小径部19の後端が前記メータリング部18にねじ止めされる。そして、前記小径部の外周に、環状の逆止リング31が配設される。
該逆止リング31は、スクリューヘッド14の前方とメータリング部18とを選択的に遮断し、計量工程時にメータリング部18の溶融樹脂をスクリューヘッド14の前方に送り、射出工程時にスクリューヘッド14の前方の溶融樹脂がメータリング部18に逆流するのを防止する。そのために、前記小径部19の円周方向における複数箇所、例えば、4箇所に、軸方向に延びる溝35が形成される。そして、該各溝35は、小径部19の前方部にだけ形成され、各溝35より後方においては、溝35の深さ分だけ小径部19の外周の全体が削られ、逆止リング31と小径部19との間に環状の樹脂流路35aが形成される。」(段落0013?0014)

エ.「次に、前記構成の逆流防止装置の動作について説明する。まず、計量工程時に、スクリュー12を図3の矢印M方向に回転させると、逆止リング31は慣性及び溶融樹脂の抵抗によって停止しようとするので、図2に示すように、スクリューヘッド14のヘッド本体部21が弧状突片36に当たり、その後はスクリューヘッド14と逆止リング31とが一体的に回転させられる。このとき、逆止リング31は開放位置に置かれ、スクリューヘッド14の前方とメータリング部18とを連通する。
この状態で、スクリュー12を矢印M方向に回転させながら所定量だけ後退させると、ホッパ17内のペレット状の樹脂が、加熱シリンダ11内に供給され、溝16内を前進させられるとともに、前記ヒータによって溶融させられる。そして、メータリング部18を通過した溶融樹脂は、樹脂流路40、35a及び溝35を通り、弧状突片36と弧状突片37との間の樹脂流路38を通ってスクリューヘッド14の前方に到達する。このようにして、1ショット分の溶融樹脂がスクリューヘッド14の前方に蓄えられる。」(段落0018?0019)

オ.「続いて、射出工程を行う前に、スクリュー12を逆方向、すなわち、図5の矢印N方向に回転させると、逆止リング31は慣性及び溶融樹脂の抵抗によって停止しようとするので、図4に示すように、スクリューヘッド14のヘッド本体部21が弧状突片36に当たり、その後はスクリューヘッド14と逆止リング31とが一体的に回転させられる。このとき、逆止リング31は閉鎖位置に置かれ、スクリューヘッド14の前方とメータリング部18とを遮断する。」(段落0020)

カ.「そして、射出工程時に、スクリュー12を回転させることなく前進限位置まで前進させると、スクリューヘッド14の前方に蓄えられた溶融樹脂が、前記射出ノズル13から射出され、前記金型51のキャビティ空間に充填される。このとき、スクリューヘッド14の前方とメータリング部18とが遮断されているので、スクリューヘッド14の前方の溶融樹脂が逆流することはない。また、スクリュー12の前進に伴って、逆止リング31がスクリューヘッド14に対して相対的に後方に移動し、逆止リング31の後端がシールリング18aに当接したときに、シールが終了する。
このように、計量工程が完了したときにスクリュー12を矢印N方向に回転させるだけで、スクリューヘッド14の前方とメータリング部18とを遮断することができるので、シールが開始されるタイミングが変動するのを防止することができる。ところで、計量工程が完了した後に、スクリュー12が逆方向に回転させられ、樹脂流路35aが遮断されるが、この時点で前記駆動手段52が駆動され、スクリュー12に負荷ΔPが加えられて、このときのスクリュー12の前進量ΔSをスクリュー位置検出器53によって検出する。そのために、前記駆動手段52によって前記負荷ΔPに対応させて力Fが発生させられ、該力Fによってスクリュー12が押される。なお、前記スクリュー12と駆動手段52との間に荷重検出器54が配設され、該荷重検出器54によって検出された荷重に基づいてフィードバック制御が行われ、前記駆動手段52によって力Fが発生させられる。
この場合、溶融樹脂の密度にばらつきがあると、一定の負荷ΔPをスクリュー12に加えたときに前進量ΔSにばらつきが生じる。そこで、通常の射出成形のシーケンスの中に検出動作を入れ、各ショットごとに前記前進量ΔSを検出するようにしている。したがって、該前進量ΔSに基づいて溶融樹脂の密度を検出することができるだけでなく、該溶融樹脂の密度のばらつきを数値化することができる。その結果、成形条件出しが容易になり、成形品の品質を向上させることができる。」(段落0021?0023)

キ.「そして、前記スクリュー12の前進量ΔSのばらつきが最小になるように成形条件を設定すると、成形品の品質を安定化させることができる。また、前進量ΔSのばらつきに基づいて成形品の良否の判別を行うこともできる。」(段落0024)

ク.「

」(第5頁の【図2】)

ケ.「

」(第5頁の【図3】)

コ.「

」(第5頁の【図4】)

サ.「

」(第6頁の【図5】)

2.刊行物に記載された発明
刊行物には、射出成形において溶融樹脂の密度のばらつきを数値化する方法が記載されており(摘示記載イ.)、さらに具体的には、計量工程時に、スクリューを回転させると、スクリューヘッドの前方とメータリング部とが連通し、この状態で、スクリューを回転させながら所定量だけ後退させると、メータリング部を通過した溶融樹脂は、樹脂流路を通ってスクリューヘッドの前方に到達すること(摘示記載エ.)、計量工程が完了した後に、スクリューを逆方向に回転させると、スクリューヘッドの前方とメータリング部とを遮断すること(摘示記載ア.及びオ.)、スクリューを一定の力で押したときのスクリューの前進量ΔSを検出すること(摘示記載ア.及びカ.)、前進量ΔSに基づいて溶融樹脂の密度のばらつきを数値化できること(摘示記載カ.)、及び前進量ΔSのばらつきに基づいて成形品の良否の判別を行うことができること(摘示記載キ.)が記載されている。

したがって、摘示記載ア.?サ.の記載を総合すると、刊行物には、「計量工程時に、スクリューを回転させると、スクリューヘッドの前方とメータリング部とが連通し、この状態で、スクリューを回転させながら所定量だけ後退させると、メータリング部を通過した溶融樹脂は、樹脂流路を通ってスクリューヘッドの前方に到達し、計量工程が完了した後に、スクリューを逆方向に回転させると、スクリューヘッドの前方とメータリング部とを遮断し、スクリューを一定の力で押したときのスクリューの前進量ΔSを検出し、前進量ΔSのばらつきに基づいて成形品の良否の判別を行う方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3.本願発明と引用発明との対比・判断
引用発明における「計量工程時に、スクリューを回転させると、スクリューヘッドの前方とメータリング部とが連通し、この状態で、スクリューを回転させながら所定量だけ後退させると、メータリング部を通過した溶融樹脂は、樹脂流路を通ってスクリューヘッドの前方に到達し」は、摘示記載エ.、ク.及びケ.から、樹脂流路が周方向の複数箇所に設けられていることは明らかであるから、本願発明における「計量工程にてスクリューを回転させ、周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を連通させた状態で溶融樹脂をメータリング部からスクリューヘッドの前方へ送り」に相当し、引用発明における「計量工程が完了した後に、スクリューを逆方向に回転させると、スクリューヘッドの前方とメータリング部とを遮断し」は、摘示記載エ.、オ.、コ.及びサ.から、周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を遮断することは明らかであるから、本願発明における「計量工程が完了するとスクリューを逆方向へ回転させて、前記周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を遮断することでメータリング部とスクリューヘッドとを遮断し」に相当する。

また、引用発明における「前進量ΔS」は、本願特許請求の範囲の請求項3には、「前記位置は、射出部材を前進させたときの射出部材の前進量である」と記載されており、本願発明における「射出部材の位置」が「射出部材の前進量」の上位概念にあたることから、本願発明における「射出部材の位置」に相当し、引用発明における「スクリューを一定の力で押したときのスクリューの前進量ΔSを検出し」は、本願発明における「一定の力で射出部材を前進させ、そのときの射出部材の位置を検出し」に相当し、引用発明における「成形品の良否の判別を行う方法」は、本願発明における「成形品の良否判定方法」に相当する。

そうすると、本願発明と引用発明とは、「(a)計量工程にてスクリューを回転させ、周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を連通させた状態で溶融樹脂をメータリング部からスクリューヘッドの前方へ送り、
(b)計量工程が完了するとスクリューを逆方向へ回転させて、前記周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を遮断することでメータリング部とスクリューヘッドとを遮断し、
(c)一定の力で射出部材を前進させ、そのときの射出部材の位置を検出し、
該検出された位置に基づいて判断することを特徴とする成形品の良否判定方法。」である点で一致しているが、以下の点で一応相違している。

○相違点1
一定の力で射出部材を前進させる際に、本願発明は、「加熱シリンダ内の溶融樹脂の密度を一定にするように」と規定しているのに対し、引用発明には、当該規定がない点。

○相違点2
検出された射出部材の位置に基づいて成形品の良否判定を行うに際し、本願発明は、「(d)該検出された位置と基準位置との差を算出し、(e)該差が予め定められた範囲内に納まるかどうかを判断し、(f)前記差が納まる場合には良品と判断し、納まらない場合には不良品であると判断する」と規定しているのに対し、引用発明は、単に「ばらつきに基づいて」と規定している点。

上記相違点1について検討すると、請求人は平成22年11月11日提出の回答書において、「そして、『計量工程が完了した後に、スクリューヘッド14の前方とメータリング部18とを逆流防止装置によって遮断し、スクリュー12を、一定の力で押すことによって前進させ』ると、熔融樹脂の粗密のばらつきが無くなるように作用し、熔融樹脂の密度が一定になることは、当業者にとって自明の技術的事項であると思料します。」と主張していることからみて、本願発明においては、射出部材であるスクリューを一定の力で押すことにより、加熱シリンダー内の溶融樹脂の密度が一定になるように作用しているものと解される。
そして、本願発明と引用発明とは、「計量工程が完了するとスクリューを逆方向へ回転させて、前記周方向の複数箇所に設けられた樹脂流路を遮断することでメータリング部とスクリューヘッドとを遮断し、一定の力で射出部材を前進させ」る点については差異がないことから、引用発明においても、一定の力で射出部材を前進させることにより、「加熱シリンダ内の溶融樹脂の密度を一定にする」ような作用が生じているといえる。
よって、上記相違点1は、実質的な相違点ではない。

上記相違点2について検討すると、摘示記載カ.には、スクリュー12の前進量ΔSのばらつきが最小になるように成形条件を設定すると、成形品の品質を安定化させることができることが記載されているが、このことは、すなわち前進量ΔSのばらつきが最小になるように成形条件を設定すると、良品の成形品を安定して得ることができることを意味しているといえる。そして、摘示記載カ.から、前進量ΔSのばらつきが溶融樹脂の密度のばらつきに対応している。そうすると、摘示記載カ.からは、前進量ΔSのばらつきが小さい一定の範囲内の成形品が良品で当該一定の範囲から外れた成形品が不良品に該当するのは明らかであるといえることから、引用発明にかかる「前進量ΔSのばらつきに基づいて成形品の良否の判別を行う」ことは、前進量ΔSのばらつきが小さい一定の範囲内である成形品を良品と判断し、当該一定の範囲から外れた成形品を不良品と判断することにより、成形品の良否の判別を行うことといえるのは、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)にとり自明の事項である。
そして、特定のパラメーターが一定の範囲内である成形品を良品と判断し、当該一定の範囲から外れた成形品を不良品と判断することによる成形品の良否判定方法において、検出されたパラメーターと基準パラメーターとの差を算出し、該差が予め定められた範囲内に納まるかどうかを判断し、前記差が納まる場合には良品と判断し、納まらない場合には不良品であると判断することについては、例えば特開平2-175221号公報(第2頁右下欄第16行?第3頁左上欄第12行)、特開平2-78516号公報(第5頁右下欄第16行?第7頁左上欄第19行)、特開平6-231327号公報(特許請求の範囲及び段落0019?0024)に記載されているように、当業者が通常行う方法にすぎないことから、本願の原出願時における技術常識を参酌すれば、上記相違点2に係る規定は、引用発明に記載されているに等しい事項であるといえる。
よって、上記相違点2は、実質的な相違点ではない。

4.審判請求人の主張について
請求人は平成22年11月11日提出の回答書において、以下のとおり主張する。
「引用例2には、『また、前進量ΔSにばらつきに基づいて成形品の良否の判別を行うこともできる』ことが記載されていますが、引用例2には、本願発明に記載の『(d)該検出された位置と基準位置との差を算出し、(e)該差が予め定められた範囲に納まるかどうかを判断し、』との記載は全くありません。
このため、引用例2に記載の技術では、『基準位置との偏差』で判断することにより、良品成形時に得られた一つの基準値を設定するだけで、容易に成形品の良否判定が可能になるという効果を奏することはできません。」

しかしながら、上記3.で検討したとおり、本願発明にかかる(d)及び(e)工程は、その明示がなくとも、本願の原出願時における技術常識を参酌すれば、当業者にとり自明の事項であるから、引用発明に記載されているに等しい事項であるといえる。よって、請求人の当該主張は採用することができない。

5.まとめ
よって、本願発明、すなわち本願の請求項1にかかる発明は、刊行物に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

第5.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明についての前置審査において通知した平成20年7月11日付け拒絶理由通知書に記載した拒絶の理由は妥当なものであり、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、この理由により拒絶すべきものである。

よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2011-03-08 
結審通知日 2011-03-15 
審決日 2011-03-29 
出願番号 特願2005-302710(P2005-302710)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B29C)
P 1 8・ 536- WZ (B29C)
P 1 8・ 113- WZ (B29C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大島 祥吾杉江 渉  
特許庁審判長 小林 均
特許庁審判官 ▲吉▼澤 英一
小野寺 務
発明の名称 成形品の良否判定方法  
代理人 小島 誠  

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