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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16G
管理番号 1237226
審判番号 不服2010-431  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-01-08 
確定日 2011-05-18 
事件の表示 平成11年特許願第143806号「金属ベルトおよびその製作方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年4月11日出願公開、特開2000-104794号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年4月14日(パリ条約に基づく優先権主張1998年4月14日(EP)欧州特許庁)の出願であって、平成21年9月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年1月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1ないし6に係る発明は、平成21年3月2日付け及び平成21年8月19日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「連続的に可変の伝動装置のための駆動ベルト(1)であって、1組の組み重ねた無端金属バンド(2)に設けられる少なくとも1つの無端金属バンド(2)を有し、この無端金属バンドが伝動装置の1組のプーリー(4,5)のシーブの間にて駆動ベルト(1)を少なくとも締め付けるための横要素(3)によって少なくとも部分的に包囲され、無端金属バンド(2)が無端の内側接触面(8;9)と、無端の外側接触面(6;7)と、これら内側接触面(8;9)と外側接触面(6;7)の間で各側端にそれぞれ設けた2つの無端の側面(L,F)とを備え、無端金属バンド(2)が該無端金属バンドの内側接触面(8;9)と外側接触面(6;7)の間の中央に位置する想像面に関して対称に成形される駆動ベルトにおいて、
前記無端金属バンドの内側接触面(8;9)と外側接触面(6;7)の双方が、該無端金属バンド(2)の断面で見て、1mよりも大きい円の半径(R1,R2)を描いて、凸状に滑らかに湾曲し、前記無端金属バンド(2)は、該無端金属バンド(2)の内側接触面(8;9)と外側接触面(6;7)の間の断面で測定した厚さTA,TB,TCであって、厚さTA,TBを前記無端金属バンド(2)の各側面(L,F)の直ぐ近くでそれぞれ測定し、厚さTCをこれら側面(L,F)の間の中央で測定した厚さTA,TB,TCの間の、式(1-(TA+TB)/2TC)によって与えられる数学的関係が0.001よりも大きく0.100よりも小さい値を示すように成形されることを特徴とする駆動ベルト。」

3.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された刊行物である実願昭56-95449号(実開昭58-1846号)のマイクロフィルム(以下、「引用例」という。)には、「無段変速機の駆動ベルト」に関して、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「2.実用新案登録請求の範囲
複数の無端状の金属帯を多層状に重ねて形成されたキャリアと、キャリア溝を有しこのキャリア溝を介して前記キャリアの周方向に移動可能にキャリアに対し連続して取りつけられた多数のベルトブロックとからなり、一対のV型ベルト車に巻き掛けられて両V型ベルト車間のトルク伝達を行なう無段変速機の駆動ベルトであって、前記キャリアの各金属帯は中央部において厚く両端部において薄い横断面を有することを特徴とする駆動ベルト。」(1ページ4?14行)
イ.「この考案はベルト駆動式無段変速機の駆動ベルトに関する。」(1ページ16行?17行)
ウ.「第7図は無端金属帯の第2実施例を示す。この無端金属帯18はその横断面が上面だけでなく、下面も湾曲面になっている。この無端金属帯18は第1実施例の無端金属帯16と同様にその幅W0が8.6mmであり、又厚さt1が0.18mmである時、中央の平行部(板厚t1の部分)の長さをW1とし、又中央部から側部までの板厚減少を上面及び下面においてそれぞれl2とすると、W1は4mm以下に又l2は0.5μm<l2<25μmになっている。
そして、この形の無端金属帯18,18A・・・18Nを積層状に重ねると、上,下の無端金属帯18,18A・・・18Nの間には、上,下両面が対称形のくさび形の隙間19,19が形成されている。この実施例の無端金属帯18,18A・・・18Nにおいても、それぞれの隙間19,19内に油膜が容易かつ確実に形成される。従って、第1実施例の場合と同様に無端金属帯相互間の滑りが容易になる。」(7ページ19?8ページ16行)
エ.「この考案は上記のように、無段変速機用駆動ベルトのキャリアの各無端金属帯の板厚を、中央部付近から端部に向けて順次減少させることとしたことにより、次のような効果がある。
(1) 複数の無端金属帯を積層状にして形成したキャリアは、各無端金属帯間にくさび形の隙間ができるので、油膜の形成が極めて容易になり、無端金属帯相互のこすれをなくして無端金属帯の切断等を防止することができる。
(2) ・・・(中略)・・・又鋭い切込溝ができる可能性はなくなり、靱性疲労強度面で高い信頼性をうることができる。」(8ページ17行?9ページ10行)
オ.第2図には、複数の無端金属帯を多層状に重ねて形成された一対のキャリア9,9が図示されている。また、第1図及び第2図より、キャリア9,9が無段変速機の1組のV型ベルト車1,6間にて駆動ベルト8を少なくとも締め付けるためのベルトブロック10によって少なくとも部分的に包囲されている点が看取できる。
カ.第7図及び第8図には、無端金属帯18の断面図が示されており、これらの断面図から、無端金属帯18の下面と上面の双方が、凸状に湾曲した湾曲面となっていて中央部に平坦面を有する点が看取できる。また、第7図及び第8図には、無端金属帯18の上面と下面の間で各側端にそれぞれ1つの無端の側面が設けられている点が図示されている。

これら記載事項及び図示内容を総合し、本願発明の記載ぶりに倣って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「ベルト駆動式無段変速機の駆動ベルト8であって、複数の無端金属帯18を多層状に重ねて形成された一対のキャリア9,9を有し、このキャリア9,9が無段変速機の1組のV型ベルト車1,6間にて駆動ベルト8を少なくとも締め付けるためのベルトブロック10によって少なくとも部分的に包囲され、無端金属帯18が無端の下面と、無端の上面と、これら下面と上面の間で各側端にそれぞれ設けた1つの無端の側面とを備え、無端金属帯18が該無端金属帯18の下面と上面が対称形に成形される駆動ベルト8において、
前記無端金属帯18の下面と上面の双方が、該無端金属帯18の断面で見て、凸状に湾曲した湾曲面となっていて中央部に平坦面を有している駆動ベルト。」

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、その意味又は機能等からみて、後者の「ベルト駆動式無段変速機」は前者の「連続的に可変の伝動装置」に相当し、以下同様に、「駆動ベルト8」は「駆動ベルト(1)」に、「ベルト駆動式無段変速機の駆動ベルト8」は「連続的に可変の伝動装置のための駆動ベルト(1)」に、「無端金属帯18」は「無端金属バンド(2)」に、「複数の無端金属帯18を多層状に重ねて形成された一対のキャリア9,9」は「1組の組み重ねた無端金属バンド(2)」に、「無段変速機」は「伝動装置」に、「V型ベルト車1,6」は「プーリー(4,5)のシーブ」に、「ベルトブロック10」は「横要素(3)」に、「下面」は「内側接触面(8;9)」に、「上面」は「外側接触面(6;7)」に、「無端金属帯18が該無端金属帯18の下面と上面が対称形に形成される」ことは「無端金属バンド(2)が該無端金属バンドの内側接触面(8;9)と外側接触面(6;7)の間の中央に位置する想像面に関して対称に形成される」ことに、それぞれ相当するから、両者は、本願発明の用語を用いて表現すると、
「連続的に可変の伝動装置のための駆動ベルトであって、1組の組み重ねた無端金属バンドに設けられる少なくとも1つの無端金属バンドを有し、この無端金属バンドが伝動装置の1組のプーリーのシーブの間にて駆動ベルトを少なくとも締め付けるための横要素によって少なくとも部分的に包囲され、無端金属バンドが無端の内側接触面と、無端の外側接触面と、これら内側接触面と外側接触面の間で各側端にそれぞれ設けた無端の側面とを備え、無端金属バンドが該無端金属バンドの内側接触面と外側接触面の間の中央に位置する想像面に関して対称に成形される駆動ベルトにおいて、
前記無端金属バンドの内側接触面と外側接触面の双方が、該無端金属バンドの断面で見て、凸状に湾曲している駆動ベルト。」である点で一致し、次の点で相違する(かっこ内は対応する本願発明の用語を示す。)。

相違点1:本願発明は、無端金属バンドの各側端にそれぞれ2つの無端の側面を設けているのに対して、引用発明は、無端金属帯18(無端金属バンド)の各側端にそれぞれ1つの無端の側面を設けている点。
相違点2:本願発明は、無端金属バンドの内側接触面と外側接触面の双方が、該無端金属バンドの断面で見て、「1mよりも大きい円の半径(R1,R2)を描いて、凸状に滑らかに湾曲し、前記無端金属バンド(2)は、該無端金属バンド(2)の内側接触面(8;9)と外側接触面(6;7)の間の断面で測定した厚さTA,TB,TCであって、厚さTA,TBを前記無端金属バンド(2)の各側面(L,F)の直ぐ近くでそれぞれ測定し、厚さTCをこれら側面(L,F)の間の中央で測定した厚さTA,TB,TCの間の、式(1-(TA+TB)/2TC)によって与えられる数学的関係が0.001よりも大きく0.100よりも小さい値を示すように成形される」のに対し、引用発明は、無端金属帯18(無端金属バンド)の下面(内側接触面)と上面(外側接触面)の双方が、「湾曲面となっていて中央部に平坦面を有して」おり、その湾曲面の円の半径や無端金属帯18の下面と上面の間の断面で測定した厚さの寸法関係が明らかでない点。

5.判断
次に各相違点について検討する。
(1)相違点1について
本願発明における「2つの無端の側面(L,F)」に関して、本願明細書の記載を見てみると、その段落【0008】に「端縁領域は、当該技術で周知のように、直角端縁の通常の面丸めないしならしを含んでもよい。」と記載され、また段落【0011】に「バンド2の端縁は、当該技術において通常のように、概略的に示される面の丸めないしならしによって丸められる。バンド2の側面Lは、平坦に成形されて、TCから、横方向における厚さの減少量と、面の丸めFの高さとを引いた高さである。」と記載されている。これらの記載からみて、2つの無端の側面のうち、側面Fは、面取りであると解される。
ところで、引用発明は、無端金属帯18の各側端に1つの無端の側面を設けたものであるが、一般に角部に面取りを施すのは普通に行われることであり常套手段である。しかも、無端金属ベルトにおいて、各側端の角部における応力集中を避けるために面取加工を施すことは、例えば特開昭61-266844号公報(2ページ右上欄8行?11行参照)や実願昭60-21747号(実開昭61-139333号)のマイクロフィルム(5ページ9行?16行参照))などに見られるように従来周知の技術にすぎない。
そうすると、引用発明において、無端金属帯18の各側端に上記周知技術を適用し、各側端に面取加工を施すなどして2つの無端の側面を設け、相違点1に係る本願発明のように構成することは、当業者であれば容易に想到できたことであるといえる。

(2)相違点2について
一般に無端金属帯の寸法は、伝達トルクや負荷の大きさ、耐久性などを考慮し、当業者が適宜決定すべき事項であり設計的事項にすぎない。
ここで、引用発明における無端金属帯18は、上記ウ.に摘記したとおり、その幅W0が8.6mmであり、中央部の厚さt1が0.18mmであるのに対して、端部の厚さは中央部の厚さt1よりも1?50μm薄いだけであるから、これらの寸法関係からみて、無端金属帯18の湾曲面の曲率半径は相当大きいものであり、本願発明と同程度のものであると推認できる。また、引用発明における式(1-(TA+TB)/2TC)によって与えられる値も、上記寸法関係からみて、十分小さい値であり、本願発明と同程度の範囲のものであると推認できる。
しかも、本願明細書及び図面の記載を見ても、外側接触面と内側接触面の曲率半径を1m以上とした点に臨界的意義があるとは認められないし、また、式(1-(TA+TB)/2TC)によって与えられる値についても、本願明細書や図5の記載からみて臨界的意義があるとは認められない。
そうすると、引用発明において、湾曲面の曲率半径や無端金属帯18の各部の寸法関係を相違点2に係る本願発明の数値範囲とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎない。
また、引用発明は、無端金属帯18の下面と上面の双方が凸状に湾曲した湾曲面となっているものの、中央部に平坦面を有する形状となっている。しかし、引用例1には、上記ウ.に摘記したとおり、平坦面の幅W1は「4mm以下」と記載され、特定されているのは上限値のみであり、下限値は特定されていない上、実用新案登録請求の範囲には「キャリアの各金属帯は中央部において厚く両端部において薄い横断面を有する」と記載され、平坦面を設けることが必須要件であるとは記載されていないし、明細書の他の記載を見ても平坦面を小さくすることを妨げるような記載は見当たらない。さらに、上記ウ.及びエ.に摘記したとおり、引用発明は、無端金属帯18間にくさび形の隙間を形成し、その隙間内に油膜が容易かつ確実に形成されるようにしたものであるから、潤滑の観点からみれば、平坦面の幅ができるだけ小さいことが好ましいことは明らかである。してみると、引用例には、平坦面の幅W1を限りなくゼロに近づけることも示唆されているということができる。しかも、無端金属バンドにおいて、凸状の湾曲面に平坦面を設けないことは、例えば特開昭61-290257号公報(第5図参照)や実願昭60-46339号(実開昭61-162637号)のマイクロフィルム(第2図(a)参照)などに見られるように従来周知の技術である。
そうすると、引用発明において、上記周知技術に倣って平坦面の幅W1を限りなくゼロに近づけることにより、無端金属帯18の上面と下面の双方を凸状に滑らかに湾曲した湾曲面とすることは、当業者であれば容易に想到できたことである。以上のように構成したものは、実質的に相違点2に係る本願発明の発明特定事項を具備しているということができる。

そして、本願発明による効果も、引用発明及び上記周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

なお、審判請求人は、平成22年2月16日付けの手続補正により補正された審判請求書の請求の理由の中で、「これらのことから明らかなとおり、凸状の湾曲部に平坦面を設けないことが引用文献2及び3(審決注:それぞれ「特開昭61-290257号公報」及び「実願昭60-46339号(実開昭61-162637号)のマイクロフィルム」を指す。)に記載されているように周知技術であったとしても、その周知技術を引用文献1(審決注:本審決における「引用例」を指す。)に適用して、引用文献1における平坦部W1をなくすようなことは、引用文献1?3に何ら示唆されていない。上記周知技術を引用文献1に記載の構成に適用して平坦部W1をなくし、しかも湾曲部の半径や無端金属バンドの各部の寸法関係を本願発明のように定めてアンチクラスティック変形を補償していることは、引用文献1?3に何ら示唆されてなく、当業者が容易に想到し得ることとはいえないと考える次第である。」(「(c)本願発明と引用発明との対比」の項参照)と主張する。
しかしながら、上記「(2)相違点2について」で述べたとおり、平坦部W1をゼロに近づけることは、引用例に示唆されているということができる。また、アンチクラスティック変形を補償することは、確かに引用文献1?3には直接的な記載はされていないが、本願発明は引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは上述のとおりであり、そのように構成したものは、実質的に本願発明と同様の構成を備えたものとなるから、本願発明と同様の効果を奏するものと推測される。
よって、審判請求人の主張は採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
そうすると、本願発明(請求項1に係る発明)が特許を受けることができないものである以上、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-17 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-06 
出願番号 特願平11-143806
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 大山 健
山岸 利治
発明の名称 金属ベルトおよびその製作方法  
代理人 森 徹  
代理人 浅村 肇  
代理人 吉田 裕  
代理人 浅村 皓  

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