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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B65G |
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管理番号 | 1237228 |
審判番号 | 不服2010-7067 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-04-05 |
確定日 | 2011-05-18 |
事件の表示 | 特願2004-233606「コンベヤベルトのモニタリングシステム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月23日出願公開、特開2006- 52039〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成16年8月10日の出願であって、平成21年9月11日付けで拒絶理由が通知され、平成21年11月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成21年12月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年4月5日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に、同日付けで提出された手続補正書によって明細書及び特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において平成22年11月8日付けで書面による審尋がなされ、平成23年1月6日付けで回答書が提出されたものである。 第2.平成22年4月5日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成22年4月5日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正の内容 平成22年4月5日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲に関して、以下、AをBと補正するものである。 A 「【請求項1】 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、この識別情報を発信するトランスポンダと、 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、コンベヤベルトの温度および圧力の少なくとも一方を計測し、計測値を前記自己の識別情報と併せて電波に載せて発信する計測手段と、 コンベアベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記トランスポンダおよび計測手段に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、これらトランスポンダおよび計測手段から、自己の識別情報および計測値を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記送受信装置と接続され、この送受信装置から、トランスポンダおよび計測手段より送られた識別情報および計測値の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化ならびに温度および/または圧力の異常を判断するとともに、前記識別情報が受信できなくなったとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備えるコンベアベルトのモニタリングシステム。 【請求項2】 コンベヤベルトの幅方向におけるトランスポンダの長さを、100mm以上としたことを特徴とする請求項1記載のコンベアベルトのモニタリングシステム。 【請求項3】 送受信装置の出力を4?10Wとすることを特徴とする請求項1または2記載のコンベアベルトのモニタリングシステム。 【請求項4】 コンベヤベルトの外部に設置され、コンベアベルトの形状変化を非接触的に検知しうるレーザセンサと、 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、コンベヤベルトの温度および圧力の少なくとも一方を計測し、計測値を前記自己の識別情報と併せて電波に載せて発信する計測手段と、 コンベアベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記計測手段に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、この計測手段から、自己の識別情報および計測値を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記レーザセンサおよび送受信装置と接続され、これらレーザセンサおよび送受信装置から、それぞれレーザセンサの得たデータ、および計測手段より送られた識別情報および計測値の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化ならびに温度および/または圧力の異常を判断するとともに、反射レーザ光の不認識等があったとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備えるコンベアベルトのモニタリングシステム。 【請求項5】 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置される永久磁石と、コンベアベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記永久磁石から発せられる磁束の量の変化を検知しうる磁気センサと、 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、コンベヤベルトの温度および圧力の少なくとも一方を計測し、計測値を前記自己の識別情報と併せて電波に載せて発信する計測手段と、 コンベアベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記計測手段に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、これら磁気センサおよび計測手段から、自己の識別情報および計測値を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記磁気センサおよび送受信装置と接続され、これらの磁気センサおよび送受信装置から、それぞれ磁気センサの得たデータ、および計測手段より送られた識別情報および計測値の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化ならびに温度および/または圧力の異常を判断するとともに、前記永久磁石の欠損を判定したとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備えるコンベアベルトのモニタリングシステム。」 B 「【請求項1】 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、この識別情報を発信するトランスポンダと、 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、コンベヤベルトの温度および圧力の少なくとも一方を計測し、計測値を前記自己の識別情報と併せて電波に載せて発信する計測手段と、 コンベヤベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記トランスポンダおよび計測手段に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、これらトランスポンダおよび計測手段から、自己の識別情報および計測値を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記送受信装置と接続され、この送受信装置から、トランスポンダおよび計測手段より送られた識別情報および計測値の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化ならびに温度および/または圧力の異常を判断するとともに、前記識別情報が受信できなくなったとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備え、 前記コンベヤベルトに、前記トランスポンダと、それよりコンベヤベルトの進行方向の前寄りとした前記計測手段とを1グループとする複数グループを、一定の間隔を開けて、コンベヤベルトの長さ方向に連続的に配置したことを特徴とするコンベヤベルトのモニタリングシステム。 【請求項2】 計測手段を、コンベヤベルトの温度を計測する温度センサと、コンベヤベルトの圧力を計測する圧力センサとを備えるものし、前記温度センサと圧力センサとトランスポンダとを、その順序でコンベヤベルトの進行方向に並べたものを1グループとしたことを特徴とする請求項1記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。 【請求項3】 送受信装置の出力を4?10Wとすることを特徴とする請求項1または2記載のコンベヤベルトのモニタリングシステム。 【請求項4】 コンベヤベルトの外部に設置され、コンベヤベルトの形状変化を非接触的に検知しうるレーザセンサと、 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、コンベヤベルトの温度および圧力の少なくとも一方を計測し、計測値を前記自己の識別情報と併せて電波に載せて発信する計測手段と、 コンベヤベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記計測手段に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、この計測手段から、自己の識別情報および計測値を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記レーザセンサおよび送受信装置と接続され、これらレーザセンサおよび送受信装置から、それぞれレーザセンサの得たデータ、および計測手段より送られた識別情報および計測値の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化ならびに温度および/または圧力の異常を判断するとともに、反射レーザ光の不認識等があったとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備え、 前記送受信装置を、前記レーザセンサよりコンベヤベルトの進行方向の前寄りに配設したことを特徴とするコンベヤベルトのモニタリングシステム。 【請求項5】 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置される永久磁石と、 コンベヤベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記永久磁石から発せられる磁束の量の変化を検知しうる磁気センサと、 コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、コンベヤベルトの温度および圧力の少なくとも一方を計測し、計測値を前記自己の識別情報と併せて電波に載せて発信する計測手段と、 コンベヤベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記計測手段に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、これら磁気センサおよび計測手段から、自己の識別情報および計測値を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記磁気センサおよび送受信装置と接続され、これらの磁気センサおよび送受信装置から、それぞれ磁気センサの得たデータ、および計測手段より送られた識別情報および計測値の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化ならびに温度および/または圧力の異常を判断するとともに、前記永久磁石の欠損を判定したとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備え、 前記コンベヤベルトに、前記永久磁石と、それよりコンベヤベルトの進行方向の前寄りとした前記計測手段とを1グループとする複数グループを、一定の間隔を開けて、コンベヤベルトの長さ方向に連続的に配置し、かつ前記磁気センサを、前記送受信装置よりコンベヤベルトの進行方向の後寄りに配設したことを特徴とするコンベヤベルトのモニタリングシステム。」(なお、下線は、請求人が補正箇所を明示するために付した。) 2.本件補正の適否についての判断 [理由1] 2.-1 目的要件違反 本件補正における特許請求の範囲に関する補正は、本件補正前の請求項2についての補正に関して、本件補正前の請求項2を削除し、「計測手段を、コンベヤベルトの温度を計測する温度センサと、コンベヤベルトの圧力を計測する圧力センサとを備えるものし、前記温度センサと圧力センサとトランスポンダとを、その順序でコンベヤベルトの進行方向に並べたものを1グループとしたこと」を、本件補正後の請求項1に従属する請求項2として特定事項を新たに追加する補正を含むものであって、当該補正は特許請求の範囲の減縮に該当するとは認められず、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)を目的としたものとも採れない。 したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号ないし第4号のいずれにも該当しない。 以上のように、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 [理由2] 2.-2 独立特許要件違反 仮に、上記[理由1]で指摘した本件補正のうち特許請求の範囲についての補正が、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当するとして、本件補正後の発明が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下に検討する。 (1)本願補正発明 本願の請求項1ないし5に係る発明は、上記[理由]1.Bに記載された事項によって特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、[理由]1.Bの【請求項1】のとおりである。 (2)引用文献記載の発明 (2)-1 引用文献 原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平9-175628号公報(以下、「引用文献」という。)には、例えば、次の記載がある。 ア.「【0001】 【発明が属する技術分野】本発明は、使用中のコンベアベルトに生じた縦裂を検出するコンベアベルトの縦裂検出装置に関するものである。」(段落【0001】) イ.「【0041】また、請求項14では、請求項12又は13記載のコンベアベルトの縦裂検出装置において、前記コンベアベルトの厚さ方向の複数層のそれぞれに前記トランスポンダが埋設されると共に、前記トランスポンダは、応答信号として前記コンベアベルトの表面から何層目に埋設されているかの情報を送信する埋設層情報送信手段を有し、前記検出部は、前記埋設層情報に基づいて、応答信号が返されないトランスポンダの埋設層まで表面から縦裂が生じていると判定する縦裂状態判定手段を有しているコンベアベルトの縦裂検出装置を提案する。 【0042】該コンベアベルトの縦裂検出装置によれば、コンベアベルト内に埋設されたトランスポンダに対して、検出部の質問信号送信手段によって質問信号が送信され、アンテナを介して前記質問信号を受信したトランスポンダは、これに対する応答信号として前記コンベアベルトの表面から何層目に埋設されているかの情報を前記検出部に送信する。該応答信号は前記検出部の応答信号受信手段によって受信され、該応答信号の有無に基づいて判定手段により、トランスポンダのアンテナの切断有無が判定される。これにより、前記応答信号が返されない場合、前記アンテナが切断されている、即ちトランスポンダの埋設位置に縦裂が生じていることが検出される。さらに、縦裂状態判定手段によって、応答信号が返されないトランスポンダの埋設位置まで表面から縦裂が生じていると判定される。」(段落【0041】及び【0042】) ウ.「【0048】このトランスポンダ20は、コンベアベルト4の長手方向に所定の等間隔をあけてコンベアベルト4内に複数埋設され、コンベアベルト4にはその基準点から長手方向への距離が等間隔に表示されている。」(段落【0048】) エ.「【0053】ここで、記憶部23内の記憶情報としては、コンベアベルトの基準点からトランスポンダ20が埋設されている位置までの距離情報が記録されている。 【0054】また、トランスポンダ本体20Aの電気系回路は、例えば5mm×5mmの矩形フィルム上に印刷形成されている。 【0055】一方、検出ユニット30は、例えばコンベアベルト4の始端部上に設けられたホッパ13の直後にコンベアベルト4の下部に配設されている。 【0056】また、検出ユニット30は、幅20cm、長さ25cm、厚さ10cmの絶縁物筐体を有し、この筐体中に電気回路が収納されている。 【0057】検出ユニット30の電気系回路は図9に示すように、受信用アンテナ31、受信部32、中央処理部33、キーボード34、表示部35、発信部36、送信用アンテナ37、報知部38及びこれらへ電源を供給する電源部39から構成されている。 【0058】ここで、本発明における検出ユニット30とは、後述するようにトランスポンダ20に対して第1の周波数の電磁波を輻射しながら、これに伴ってトランスポンダ20から輻射される第2の周波数の電磁波を受信することにより、トランスポンダ20からの応答信号の有無に基づいて、コンベアベルト4の縦裂検出を行うものを言う。」(段落【0053】ないし【0058】) オ.「【0065】この電磁波は検出ユニット30の上部を通過するコンベアベルト4内に埋設されているトランスポンダ20の受信用アンテナ20Bに入力され、受信用アンテナ線20Bに高周波電流が誘起する。受信用アンテナ線20Bに誘起した高周波電流は、整流回路21によって整流されてトランスポンダ20内部の中央処理部22、記憶部23及び発信部24に電源を供給する。 【0066】これにより、検出ユニット30から送出された電磁波を受信している間、電源を供給された中央処理部22は、予めプログラムされている情報の読み出し処理を行う。即ち、中央処理部22は、記憶部23内に記憶されている距離情報を読み出し、この情報を発信部24に出力する。発信部24では読み出された距離情報に基づいて搬送波を変調し、変調された搬送波、即ち高周波信号を送信用アンテナ線20Cに供給する。これにより、送信用アンテナ線20Cからは300MHzの周波数の電磁波が輻射される。 【0067】検出ユニット30では、トランスポンダ20から輻射された300MHzの電磁波を受信用アンテナ31を介して受信部32によって受信し、受信部32は受信した情報をディジタルデータに変換して中央処理部33に送出する。 【0068】中央処理部33は、入力したディジタルデータに基づく距離情報と、予めメモり332 に記憶されている距離情報とを比較し、各トランスポンダ20からの応答信号の有無を調べ、応答信号を送出しないトランスポンダ20を検出したときは、このトランスポンダ20のアンテナ線20B,20Cが切断されている、即ちコンベアベルト4に縦裂が生じていると判定し、応答のないトランスポンダ20の埋設位置(距離情報)並びに縦裂が発生したことを表すメッセージを表示部35に表示すると共に、報知命令を報知部38に出力して報知部38によって縦裂発生を報知する。この際、報知部38は、電動機5の駆動制御部(図示せず)に対して警報信号Kを出力し、これにより電動機5の駆動を停止させ、コンベアベルト4の縦裂の進行並びに縦裂に伴う事故の発生を防止する。 【0069】前述したように第1の実施例によれば、トランスポンダ20内には電源を設ける必要がないので、半永久的に使用できると共に、個々の埋設位置の情報をトランスポンダ20自体に持たせておくことができるので、従来のように電動プーリに連結したエンコーダを用いる必要が無く、正確な縦裂発生位置の検出を行うことができる。」(段落【0065】ないし【0069】) (2)-2 引用文献の記載事項 以上、上記(2)-1 ア.ないしオ.の記載及び図面を参酌すると、以下の事項がわかる。 カ.コンベアベルト4の表層部または内部に設けられ、コンベアベルト4の長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるトランスポンダ20があることがわかる。 キ.トランスポンダ20は、自己の距離情報を保持し、かつ外部から非接触的に電磁波を得て、この距離情報を発信していることがわかる。 ク.コンベアベルト4から所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、トランスポンダ20に対して所定の大きさの電磁波を発するとともに、これらトランスポンダ20から、自己の距離情報を載せた電磁波を受信する検出ユニット30があることがわかる。 ケ.検出ユニット30と接続され、この検出ユニット30から、トランスポンダ20より送られた距離情報の提供を受けて、コンベアベルト4の縦裂を判断するとともに、前記距離情報が受信できなくなったとき、駆動制御部を介して、コンベアベルト4の稼働を停止させる中央処理部33を備えていることがわかる。 コ.コンベアベルト4に、トランスポンダ20を、一定の間隔を開けて、コンベアベルト4の長さ方向に連続的に配置したコンベアベルト4の縦裂検出装置であることがわかる。 (2)-3 引用文献記載の発明 上記(2)-1のア.ないしオ.、(2)-2のカ.ないしコ.及び図面の記載を参酌すると、 引用文献には以下の発明が記載されているといえる。 「コンベアベルト4の表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の距離情報を保持し、かつ外部から非接触的に電磁波を得て、この距離情報を発信するトランスポンダ20と、 コンベアベルト4から所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記トランスポンダ20に対して所定の大きさの電磁波を発するとともに、これらトランスポンダ20から、自己の距離情報を載せた電磁波を受信する検出ユニット30と、 前記検出ユニット30と接続され、この検出ユニット30から、トランスポンダ20より送られた距離情報の提供を受けて、コンベアベルト4の縦裂を判断するとともに、前記距離情報が受信できなくなったとき、駆動制御部を介して、コンベアベルト4の稼働を停止させる中央処理部33とを備え、 前記コンベアベルト4に、前記トランスポンダ20を、一定の間隔を開けて、コンベアベルト4の長さ方向に連続的に配置したコンベアベルト4の縦裂検出装置。」(以下、「引用文献記載の発明」という。) (3)対比 本願補正発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「コンベアベルト4」は、その作用機能からみて、本願補正発明における「コンベヤベルト」に相当し、同様に、「距離情報」は「識別情報」に、「電磁波」は「エネルギー」または「電磁エネルギー」に、「トランスポンダ20」は「トランスポンダ」に、「検出ユニット30」は「送受信装置」に、「駆動制御部」は「制御機構」に、「中央処理部33」は「データ処理装置」に、「コンベアベルトの縦裂検出装置」は「コンベヤベルトのモニタリングシステム」に各々相当し、引用文献記載の発明における「縦裂」は、本願補正発明における「形状変化」に包含されることは明らかであることから、本願補正発明と引用文献記載の発明とは 「コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、この識別情報を発信するトランスポンダと、 コンベヤベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記トランスポンダに対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、これらトランスポンダから、自己の識別情報を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記送受信装置と接続され、この送受信装置から、トランスポンダより送られた識別情報の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化を判断するとともに、前記識別情報が受信できなくなったとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備え、 前記コンベヤベルトに、前記トランスポンダを、一定の間隔を開けて、コンベヤベルトの長さ方向に連続的に配置したコンベヤベルトのモニタリングシステム。」の点で一致し、以下の各点で相違する。 〈相違点〉 (3)-1 相違点1 本願補正発明においては、「コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、コンベヤベルトの温度および圧力の少なくとも一方を計測し、計測値を前記自己の識別情報と併せて電波に載せて発信する計測手段」があり、 「トランスポンダ20および計測手段」に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、「トランスポンダおよび計測手段」から、「自己の識別情報および計測値」を載せた電波を受信する送受信装置と、トランスポンダおよび計測手段より送られた「識別情報および計測値」の提供を受けて、コンベヤベルトの「形状変化ならびに温度および/または圧力の異常」を判断するのに対して、引用文献記載の発明においては、そのような計測手段はなく、「トランスポンダ」に対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、「トランスポンダ」から、「自己の識別情報」を載せた電波を受信する送受信装置とともに、「トランスポンダ」より送られた「識別情報」の提供を受けて、コンベヤベルトの「形状変化」を判断する点(以下、「相違点1」という。)。 (3)-2 相違点2 本願補正発明においては、「コンベヤベルトに、トランスポンダと、それよりコンベヤベルトの進行方向の前寄りとした前記計測手段とを1グループとする複数グループを、一定の間隔を開けて、コンベヤベルトの長さ方向に連続的に配置し」たのに対して、引用文献記載の発明においては、「コンベヤベルトに、トランスポンダを、一定の間隔を開けて、コンベアベルト4の長さ方向に連続的に配置し」た点(以下、「相違点2」という。)。 (4)判断 相違点1及び相違点2について検討する。 (4)-1 相違点1について ベルトコンベヤにおいて、亀裂や縦裂を検知するために温度あるいは圧力の異常を計測する計測手段を設けることは周知(例えば、温度に関するものとしては特開昭59-207311号公報、特表2001-508743号公報、圧力に関するものとしては実願昭58-112634号(実開昭60-23123号)のマイクロフィルム、実願昭61-186942号(実開昭63-90616号)のマイクロフィルム参照、以下、「周知技術1」という。)であり、また、温度あるいは圧力の計測値を電波に載せて発信し、異常を計測する計測手段も周知(例えば、先に挙げた特表2001-508743号の他、特表2001-525284号公報、特開2003-159918号公報参照、以下、「周知技術2」という。)であって、縦裂を検知するためにコンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、識別情報を電波に載せて発信するトランスポンダを引用文献記載の発明が有していることから、当該トランスポンダに併せて、相違点1に係る本願補正発明のように計測手段及び計測値を用いることは、上記周知技術1及び周知技術2を考慮すれば、当業者が容易に推考し得るものである。 (4)-2 相違点2について トランスポンダと計測手段とを1グループとすることは周知(例えば、周知技術2として挙げた特表2001-525284号公報、特開2003-159918号公報参照、以下、「周知技術3」という。)であり、引用文献記載の発明においては、コンベヤベルトに、トランスポンダを一定の間隔を開けて、コンベヤベルトの長さ方向に連続的に配置していることから、上記周知技術3を考慮して、トランスポンダに併せて計測手段を配置するにあたって、ベルトの進行方向を考慮して相違点2に係る本願補正発明のように特定することは、当業者が容易に推考し得るものである。 また、本願補正発明を全体として検討しても、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3から予測される以上の格別の効果を奏するとも認められない。 以上から、本願補正発明は、引用文献記載の発明及び周知技術1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際に独立して特許を受けることができないものである。 (5)[理由2]のむすび 以上のように、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる同法による改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 3.むすび [理由1]又は[理由2]によって、結論のとおり決定する。 第3.本願発明について 1.本願発明 前記のとおり、平成22年4月5日付けの手続補正は却下されたため、本願の請求項1に係る発明は、平成21年11月30日付けの手続補正書によって補正された明細書、特許請求の範囲及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定された上記(第2.[理由]1.A【請求項1】)のとおりのものである(以下、「本願発明」という。)。 2.引用文献の記載内容 原査定の拒絶の理由に引用された引用文献(特開平9-175628号公報)に記載された発明は、前記第2.の[理由2]2.-2 (2)に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明と引用文献記載の発明とを対比すると、引用文献記載の発明における「コンベアベルト4」は、その作用機能からみて、本願発明における「コンベヤベルト」または「コンベアベルト」に相当し、同様に、「距離情報」は「識別情報」に、「電磁波」は「エネルギー」または「電磁エネルギー」に、「トランスポンダ20」は「トランスポンダ」に、「検出ユニット30」は「送受信装置」に、「駆動制御部」は「制御機構」に、「中央処理部33」は「データ処理装置」に、「コンベアベルトの縦裂検出装置」は「コンベアベルトのモニタリングシステム」に各々相当し、引用文献記載の「縦裂」は、本願発明における「形状変化」に包含されることから、本願発明と引用文献記載の発明とは、 「コンベヤベルトの表層部または内部に、長さ方向において所定の間隔を開けて連続的に設置されるとともに、自己の識別情報を保持し、かつ外部から非接触的にエネルギーを得て、この識別情報を発信するトランスポンダと、 コンベヤベルトから所定の距離を離間して所定の固定位置に設置され、前記トランスポンダに対して所定の大きさの電磁エネルギーを発するとともに、これらトランスポンダから、自己の識別情報を載せた電波を受信する送受信装置と、 前記送受信装置と接続され、この送受信装置から、トランスポンダより送られた識別情報の提供を受けて、コンベヤベルトの形状変化を判断するとともに、前記識別情報が受信できなくなったとき、制御機構を介して、コンベヤベルトの稼働を停止させるデータ処理装置とを備えるコンベアベルトのモニタリングシステム。」の点で一致し、前記第2.の[理由2]2.-2 (3)-1で示した相違点1でのみ相違する。相違点1については、上記同(4)-1で検討したとおりであることから、本願発明は引用文献記載の発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、その出願前日本国内において頒布された引用文献記載の発明、周知技術1及び周知技術2に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-10 |
結審通知日 | 2011-03-15 |
審決日 | 2011-03-28 |
出願番号 | 特願2004-233606(P2004-233606) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(B65G)
P 1 8・ 575- Z (B65G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 嶋田 研司、近藤 裕之 |
特許庁審判長 |
小谷 一郎 |
特許庁審判官 |
中川 隆司 柳田 利夫 |
発明の名称 | コンベヤベルトのモニタリングシステム |
代理人 | 竹沢 荘一 |
代理人 | 中馬 典嗣 |