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審決分類 審判 査定不服 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1237254
審判番号 不服2008-12603  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-05-16 
確定日 2011-05-20 
事件の表示 特願2002-326020「電解コンデンサ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月10日出願公開,特開2004-165210〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年11月8日の出願であって,平成19年7月9日に手続補正書が提出され,同年9月28日付けで拒絶理由が通知され,平成20年4月11日付けで拒絶査定がなされ,これに対し,同年5月16日に審判請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成19年7月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される,以下のとおりのものである。
「陽極電極箔と陰極電極箔とセパレータを巻回し,かつ電解液を含浸させてなるコンデンサ素子と,このコンデンサ素子を収納する外装ケースと,この外装ケースの開口部を封口する封口体を備え,前記電解液として四弗化アルミニウム塩を含む電解液を用い,かつ前記封口体として酸化マグネシウムを添加したブチルゴムを用いた電解コンデンサ。」

第3 先願明細書に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された本願の出願日前の他の出願であって,その出願日後に出願公開された特願2002-135387号(特開2003-142346号公報参照)の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下「先願明細書」という。)には,「電解コンデンサ用電解液及びそれを用いた電解コンデンサ」(発明の名称)に関して,図1,2とともに,以下の事項が記載されている。(なお,下線は,引用箇所のうち特に強調する部分に付加した。以下,同様。)
「【請求項1】 テトラフルオロアルミン酸イオンを含有する電解コンデンサ用電解液。
【請求項2】 テトラフルオロアルミン酸イオンを,テトラフルオロアルミン酸の第四級オニウム塩,アミン塩,アンモニウム塩及びアルカリ金属塩からなる群より選択される1種以上の塩の形態で含有する,請求項1記載の電解コンデンサ用電解液。」
「【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は,電解コンデンサ用電解液及びそれを用いた電解コンデンサに関する。」
「【0026】本発明の電解液は,第四級オニウム塩以外にもアミン塩,アンモニウム塩(NH_(4)^(+)AlF_(4)^(-)),アルカリ金属塩としてテトラフルオロアルミン酸イオンを含有することができる。」
「【0037】特に好ましい電解液として,熱安定性の点から,溶媒がスルホランであり,テトラフルオロアルミン酸1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウム又はテトラフルオロアルミン酸1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムを,電解液の総重量に対して,5?40重量%で添加した電解コンデンサ用電解液が挙げられ,低インピーダンスの電解コンデンサを得ることができる点から,溶媒がγ-ブチロラクトンであり,テトラフルオロアルミン酸1-エチル-2,3-ジメチルイミダゾリニウム又はテトラフルオロアルミン酸1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウムを,電解液の総重量に対して,5?40重量%で添加した電解コンデンサ用電解液が挙げられる。ただし,スルホランとγ-ブチロラクトンを併用した溶媒も好ましい。」
「【0044】本発明のアルミニウム電解コンデンサには,例えば陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回して形成した素子を用いる。陽極箔には,純度99.9%のアルミニウム箔を酸性溶液中で化学的あるいは電気化学的なエッチングにより拡面処理した後,アジピン酸アンモニウムやホウ酸,リン酸等の水溶液中で化成処理を行い,その表面に酸化アルミニウム皮膜層を形成したものを用いてもよい。陰極箔には,純度99.9%のアルミニウム箔をエッチングして拡面処理した箔を用いてもよい。更に,陰極箔にはエッチングしたアルミニウム箔の表面に窒化チタンの薄膜を形成したもの(例えば特開平9-186054号公報に記載)を用いてもよい。このように構成したコンデンサ素子のセパレータに本発明による電解液を含浸する。この電解液をセパレータに含浸した素子を有底筒状のアルミニウムよりなる外装ケースに収納し,外装ケースの開口端部にブチルゴム製の封口体を挿入し,更に外装ケースの端部を絞り加工して電解コンデンサの封口を行うことによりアルミニウム電解コンデンサを得ることができる。封口体の表面をテフロン(登録商標)等の樹脂でコーティングしたり,ベークライト等の板を貼り付けると溶媒蒸気の透過性が低減するので更に好ましい。
【0045】セパレータには,通常マニラ紙やクラフト紙等の紙が用いられるが,ガラス繊維,ポリプロピレン,ポリエチレン等の不織布を用いることもできる。封口体に用いるブチルゴムには,イソブチレンとイソプレンとの共重合体からなる生ゴムに補強剤(カーボンブラック等),増量剤(クレイ,タルク,炭酸カルシウム等),加工助剤(ステアリン酸,酸化亜鉛等),加硫剤等を添加して混練した後,圧延,成型したゴム弾性体を用いることができる。加硫剤には,アルキルフェノールホルマリン樹脂;過酸化物(ジクミルペルオキシド,1,1-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン,2,5-ジメチル-2,5-ジ-(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン等);キノイド(p-キノンジオキシム,p,p′-ジベンゾイルキノンジオキシム等);イオウ等を用いることができる。」
「【0080】
【発明の効果】本発明によれば,電気伝導率が高く,熱安定性に優れ,耐電圧性の高い電解コンデンサ用電解液が得られる。またこの電解コンデンサ用電解液を使用することにより,インピーダンスが低く,熱安定性に優れ,耐電圧性の高い電気化学素子が得られる。」

以上によれば,先願明細書には,以下の発明(以下「先願発明」という。)が記載されているものと認められる。
「陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回して電解液をセパレータに含浸した素子を外装ケースに収納し,開口端部に封口体を挿入し,封口を行い,電解液としてテトラフルオロアルミン酸の第四級オニウム等との塩を含有する電解液を用い,封口体としてタルク等を添加したブチルゴムを用いた電解コンデンサ。」

第4 本願発明と先願発明の対比・判断
1 本願発明と先願発明との対比
(ア)先願発明の「陽極箔」,「陰極箔」,「セパレータ紙」,「素子」,「開口端部」は,それぞれ,本願発明の「陽極電極箔」,「陰極電極箔」,「セパレータ」,「コンデンサ素子」,「開口端」に相当する。
したがって,先願発明の「陽極箔と陰極箔とをセパレータ紙を介して巻回して」は,本願発明の「陽極電極箔と陰極電極箔とセパレータを巻回し,」に相当する。
(イ)先願発明の「電解液をセパレータに含浸した素子を外装ケースに収納し,」は,本願発明の「電解液を含浸させてなるコンデンサ素子と,このコンデンサ素子を収納する外装ケースと,」に相当する。
(ウ)先願発明の「開口端部に封口体を挿入し,封口を行い,」は,本願発明の「この外装ケースの開口部を封口する封口体を備え,」に相当する。
(エ)先願発明の「テトラフルオロアルミン酸の第四級オニウム等との塩」は,本願発明の「四弗化アルミニウム塩」に相当する。
(オ)先願発明の「タルク」は,珪酸マグネシウムを成分とするから,本願発明の「酸化マグネシウム」と,「マグネシウム化合物」という点で共通する。

そうすると,両者は,
「陽極電極箔と陰極電極箔とセパレータを巻回し,かつ電解液を含浸させてなるコンデンサ素子と,このコンデンサ素子を収納する外装ケースと,この外装ケースの開口部を封口する封口体を備え,前記電解液として四弗化アルミニウム塩を含む電解液を用い,かつ前記封口体としてマグネシウム化合物を添加したブチルゴムを用いた電解コンデンサ。」である点で一致し,以下の点で相違する。

[相違点]本願発明は,ブチルゴムからなる封口体に,添加物として,「酸化マグネシウム」を添加しているのに対し,先願発明では,タルクすなわち珪酸マグネシウムを添加している点。

2 相違点についての検討
[相違点について]
下記の周知例1ないし3に記載されるように,ブチルゴムからなる封口体に酸化マグネシウムを添加剤として添加した封口体が,シール性にすぐれ,気密性を改良することができ,ひいては漏液を防ぐことができることは,本願の出願前に,周知である。さらに,本願明細書の表1,表2をみても,四弗化アルミニウム塩を含む電解液を用いる効果と,ブチルゴムからなる封口体に酸化マグネシウムを添加する効果とは,独立のものであり,相乗効果を有するものとは認められない。
したがって,先願発明と本願発明の相違点は,課題解決のための具体化手段における微差にすぎず,実質的なものではない。

(1)周知例1:特開平10-199771号公報には,図1とともに以下のような記載がある。
「【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために本発明の電子部品は,駆動用電解液を含浸させた部品素子を収納する有底筒状の金属ケースと,この金属ケースの開口部を密封する弾性封口体とを備え,前記弾性封口体として不飽和化合物を配合して加硫することにより構成したもので,この構成によれば,弾性封口体のシール性がすぐれている高信頼性の電子部品を提供することができるものである。」
「【0026】(実施の形態1)イソブチレン,イソプレン,ジビニルベンゼンの3成分共重合体としてポリサーブチルXL-10000(商品名:バイエル社)100部に対してフィラーとしてクレー100部,カーボンブラック50部,加工助剤としてステアリン酸0.5部,加硫助剤として酸化マグネシウム0.5部,不飽和化合物としてシンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(日本合成ゴム株式会社)0.5部を2本ロールで混練し,その後加硫剤としてジクミルパーオキサイドを2部添加し加熱プレスで加硫成形を行って過酸化物加硫ブチルゴムを作製した。
【0027】(実施の形態2)イソブチレン,イソプレン,ジビニルベンゼンの3成分共重合体としてポリサーブチルXL-10000(商品名:バイエル社)100部に対してフィラーとしてクレー100部,カーボンブラック50部,加工助剤としてステアリン酸0.5部,加硫助剤として酸化マグネシウム0.5部,不飽和化合物としてシンジオタクチック1,2-ポリブタジエン(日本合成ゴム株式会社)5部を2本ロールで混練し,その後加硫剤としてジクミルパーオキサイドを2部添加し加熱プレスで加硫成形を行って過酸化物加硫ブチルゴムを作製した。」

(2)周知例2:特開平4-28215号公報には,第1図とともに以下のような記載がある。
「この架橋化11Rにマグネシア(MgO)を配合すると,加硫促進剤として作用し,架橋密度が上がるので気密性を改良することができる。また,マグネシアの量が多くなると充填剤的な働きをするので,ゴム硬度を上昇させることができる。
4級アンモニウム塩を使った電解液と接すると架橋化11Rであっても膨潤して気密性が低下し,長時間のコンデンサ寿命試験を行うとリード線貫通孔付近から電解液が漏出することがあった。この防止対策として発明者らは封口体をアルカリ性にすると良いことを発見した。マグネシアの配合は前述の作用の他に架橋化IIRをアルカリ性にする作用も奏するので,本発明によれば耐熱性,気密性および耐薬品性の良好な弾性封口体を提供することができる。実際に2gのゴムを粉末にし100gの純水に浸漬して30分沸騰水抽出した後のpHを測定すると,マグネシア未配合のものが6.78に対して,ポリマー100部に対してマグネシア10部間合したものは9.99であった。」(2頁右下欄1?20行)

(3)周知例3:特開平11-274011号公報には,図1とともに以下のような記載がある。
「【0015】(実施例1)イソブチレン,イソプレン,ジビニルベンゼンの3成分共重合体からなるポリマー100重量部に対して酸化マグネシウムを0.5重量部配合し,ジクミルパーオキサイドにより過酸化物加硫して作製したIIRゴムと,γ-ブチロラクトンを主溶媒とし,N,N,N‘-置換アミジン基を有する化合物の4級塩を溶質とする駆動用電解液を組み合わせてアルミ電解コンデンサを作製した。」
「【0034】
【発明の効果】以上のように本発明によるアルミ電解コンデンサは,高温,高湿中における駆動用電解液の封口部材のリード線貫通孔からの漏液を完全に抑えることが可能となり,長寿命で信頼性の高いアルミ電解コンデンサを提供することができるものである。」

第5 むすび
以上のとおり,先願発明と本願発明との相違点は実質的なものではないから,本願発明は,先願明細書に記載された発明と同一であり,しかも,本願発明の発明者が上記先願明細書に記載された発明の発明者と同一であるとも,また,本願出願の時においてその出願人が上記先願明細書の出願人と同一とも認められないので,特許法29条の2の規定により,特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-23 
結審通知日 2011-03-25 
審決日 2011-04-07 
出願番号 特願2002-326020(P2002-326020)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (H01G)
P 1 8・ 534- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 桑原 清佐久 聖子  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 大澤 孝次
酒井 英夫
発明の名称 電解コンデンサ  
代理人 浜田 治雄  
代理人 浜田 治雄  

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