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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16G 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16G |
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管理番号 | 1237277 |
審判番号 | 不服2009-13515 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2009-07-28 |
確定日 | 2011-05-19 |
事件の表示 | 平成11年特許願第10890号「伝動ベルト及びその凹凸量測定方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年7月25日出願公開、特開2000-205340〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成11年1月19日の出願であって、平成21年4月22日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成21年7月28日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 II.平成21年7月28日付けの手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成21年7月28日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。 [理由] 本件補正により、補正前の特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 ベルト底面の少なくとも一部がプーリに摩擦接触することで該プーリとの間での動力伝達を行うようにした伝動ベルトであって、 上記ベルト底面において、ベルト厚さ方向のベルト本体側に陥没した状態の凹部と、該凹部にベルト長さ方向に隣接し、ベルト厚さ方向のベルト本体とは反対の側に隆起した状態の凸部との間のベルト厚さ方向の寸法である各凹凸量が、それぞれ40μm以下とされている ことを特徴とする伝動ベルト。」から、 補正後の特許請求の範囲の請求項1の、 「【請求項1】 ベルト底面の少なくとも一部がプーリに摩擦接触することで該プーリとの間での動力伝達を行うようにした伝動ベルトであって、 上記ベルトの底面は、ベルト本体の加硫成形後に研削加工により形成されてなり、該研削加工によりベルト底面において生じた、ベルト厚さ方向のベルト本体側に陥没した状態の凹部と、該凹部にベルト長さ方向に隣接し、ベルト厚さ方向のベルト本体とは反対の側に隆起した状態の凸部との間のベルト厚さ方向の寸法である各凹凸量が、それぞれ40μm以下とされている ことを特徴とする伝動ベルト。」と補正された。なお、下線は対比の便のため当審において付したものである。 上記補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項であるベルトの底面に関し、「ベルトの底面は、ベルト本体の加硫成形後に研削加工により形成されてなり」と、また、同じく、ベルトの底面の凹凸部に関し、「該研削加工によりベルト底面において生じた」(下線部のみ)とその構成を限定的に減縮するものである。 これに関して、本願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)には、「ベルト底面は、ベルト本体1の加硫成形後に例えば研削加工により形成されてなっている。 そして、本実施形態では、上記VリブドベルトTは、図5に誇張して示すように、ベルト底面(同図の上面)において、ベルト厚さ方向(同図の上下方向)のベルト本体1側(同図の下側)に陥没した状態の凹部2a,2a,…と、これら各凹部2aにベルト長さ方向に隣接していて、ベルト厚さ方向のベルト本体1とは反対の側(同図の上側)に隆起した状態の凸部2bとの間のベルト厚さ方向の寸法である各凹凸量Δxが、それぞれ40μm以下(Δx≦40μm)とされている。」(段落【0017】及び【0018】参照)と記載されている。 結局、この補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当し、特許法第17条の2第3項に規定された新規事項追加禁止に該当するものではない。 そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 1.原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項 (1)刊行物1:特開平2-57745号公報 (刊行物1) 刊行物1には、「ベルト」に関して、図面(特に、第1及び2図を参照)とともに、下記の技術的事項が記載されている。 (a)「本発明は、駆動ベルトに係り、とりわけ、エラストマー材料またはこれに類似する材料からなる駆動ベルトに関係している。」(第2頁右上欄第18?20行) (b)「周知のベルトの騒音は、様々な要素による影響を受けている。これら要素には、例えばプーリの回転数、ベルトおよびプーリの各々の材質、プーリの付属する機械部品、プーリの間を占めるベルト部分、ベルトの引張力等がある。 こうした要素による現象が複雑に組み合わさり、ベルトがプーリに巻き付く以前に既に横断方向凹所内を占めている空気がこれら横断方向凹所とプーリの包囲表面または案内表面との間に閉じ込められ、無視できない大きな騒音を生み出すことがある。こうしたことが原因となって、例えば、ベルトが接触していたプーリから離脱する際、空間内に閉じ込められていた空気が急激に放出されてしまい特有の音が生じることがある。 所定のピッチで配置された連続する横断方向凹所はそうした現象を連続して繰り返して起こし、ノイズのレベルを駆動装置のユーザーにとって許容できない程の大きさにしてしまっている。」(第3頁左下欄第3?20行) (c)「第1図において、参照番号1は溝を設けた形式のベルトを示している。このベルトは、エラストマー材料からなるほぼ平坦な胴体を備えている。胴体は、引張力に晒される上側部分2と圧縮力に晒される下側部分3に分かれ、これら上側部分と下側部分の間には駆動装置のロードに受ける部分4が設けられている。このため部分4内には、並列に配置されていてしかも大きな引張強さ特性を備えた複数の細長いエレメント5が設けられている。(中略) 下側部分3(第1図)は、長手方向凹所7(第2図)が交互に位置する複数の長手方向リブ6を備えている。また、下側部分3の長手方向リブには、横断方向凹所9が交互に位置する複数の横断方向突起8が設けられている。前記横断方向凹所9は、例えば長手方向凹所7よりも浅く、第1図の点線で示すような関係にある。」(第4頁左上欄第10行?右上欄第13行) (d)「ベルト1は、交互に連続して並ぶ横断方向突起8と横断方向凹所9は波形の輪郭によって形作られ、途切れないで続いている。この波形の輪郭は、円の円弧または円の円弧に近似した円弧からなる曲線部分からできていることを特徴としている。 従って本発明のベルトの長手方向リブは、平坦な表面とは異なる波形のヘッド表面を備えている。 箇々の突起8の円形輪郭の円弧は半径Rにより形作られ、また半径rで形作られた横断方向凹所9の円形輪郭の円弧とは逆の関係の曲率を備えている。 本発明の基本的な特徴によれば、連続する横断方向突起8と横断方向凹所9のピッチPと横断方向凹所9の最大深さhの比率が8から20(8および20を含む)の範囲内にあり、また横断方向凹所9の曲率半径rと横断方向凹所そのものの深さhの比率が3から6(3および6を含む)の範囲内にある。(中略) 好ましくは、比率P/hは多くとも14に等しく、特に好ましいのは8から10の範囲にある。比率r/hは3.8から4.5の範囲にあり、特に好ましいのは3.5から4.2の範囲である。 またコード5の軸線と長手方向リブのヘッドとの間の距離はHcで表わされている。比率h/Hcは0.15から0.6の範囲、好ましくは0.2から0.4の範囲に収めることが考えられてきている。 本発明の好ましい実施例に則った、第1図と第2図に示すベルトは以下の数値によって特定される。 ベルトの全高、H=3.6mm 長手方向リブ6の丈、H_(0)=1.6mm 長手方向リブ6同士のピッチ、P’=2.34mm 並列に設けた長手方向リブの表面10と11の間の角度、a=40°(度) 並列に設けた長手方向リブの表面10と11の間の部分の半径、r’=0.1mm 横断方向凹所9の深さ、h=0.53mm 横断方向凹所9のピッチ、P=4.4mm 横断方向凹所9の円の円弧の曲率半径、r=2.1mm 突起8の円の円弧の曲率半径、R=2.31mm 前述したベルトには横断方向凹所9が設置され、しかも第2図に示すように凹所から外向きに開口が設けてあるため、ベルトを充分に湾曲させてプーリに適切に巻き付けることができ、バックリングロードにより長手方向リブ6が折れてしまう現象を防ぐことができる。 本発明のベルトによれば、可撓性を高めることができると同時に、ノイズを大幅に減少させることができる。」(第4頁左下欄第8行?第5頁右上欄第12行) したがって、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 【引用発明】 ベルト1底面の少なくとも一部がプーリに摩擦接触することで該プーリとの間での動力伝達を行うようにしたベルト1であって、 上記ベルト1の底面は、ベルト1底面に形成された、ベルト1厚さ方向のベルト1本体側に陥没した状態の横断方向凹所9と、該横断方向凹所9にベルト1長さ方向に隣接し、ベルト1厚さ方向のベルト1本体とは反対の側に隆起した状態の横断方向突起8との間のベルト1厚さ方向の寸法である各凹凸量が、それぞれ所定の比率条件を満たす横断方向凹所9の深さhとされているベルト1。 2.対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能からみて、引用発明の「ベルト1」は本願補正発明の「ベルト」又は「伝動ベルト」に相当し、以下同様にして、「横断方向凹所9」は「凹部」に、「横断方向突起8」は「凸部」に、それぞれ相当する。また、引用発明の「所定の比率条件を満たす横断方向凹所9の深さh」は、「所定範囲の値」である限りにおいて、本願補正発明の「0.40μm以下」にひとまず相当するので、両者は、下記の一致点、並びに相違点1及び2を有する。 <一致点> ベルト底面の少なくとも一部がプーリに摩擦接触することで該プーリとの間での動力伝達を行うようにした伝動ベルトであって、 上記ベルトの底面は、ベルト厚さ方向のベルト本体側に陥没した状態の凹部と、該凹部にベルト長さ方向に隣接し、ベルト厚さ方向のベルト本体とは反対の側に隆起した状態の凸部との間のベルト厚さ方向の寸法である各凹凸量が、それぞれ所定範囲の値とされている伝動ベルト。 (相違点1) 本願補正発明は、上記ベルトの底面に関し、「ベルト本体の加硫成形後に研削加工により形成されてなり」、上記ベルトの底面の凹凸に関し、「該研削加工によりベルト底面において生じた」ものであるのに対し、引用発明は、そのような構成を具備していない点。 (相違点2) 上記ベルトの底面の所定範囲の値である凹凸量に関し、本願補正発明は、「それぞれ40μm以下とされている」のに対し、引用発明は、それぞれ所定の比率条件を満たす横断方向凹所9の深さhとされている点。 以下、上記相違点1及び2について検討する。 (相違点1について) 伝動ベルトにおいて、ベルトの底面をベルト本体の加硫成形後に研削加工により形成することは、従来周知の技術手段(例えば、特開平8-74936号公報には、「リブゴムシート14は、加硫後研削によって、最終形状に削り出され、短繊維をリブ表面より露出させる」[第5頁第8欄第46?48行、段落【0058】参照]、及び「取り出された成形物17の、Vリブが予備成形されているVリブ部17a,…のリブ表面17b,…(リブ側面及びリブ底面)を研削して、Vリブドベルトが所望のリブ形状を有するように所定のVリブを削り出す。」[第6頁第9欄第42?46行、段落【0065】参照]と記載されている。)にすぎない。 そして、ベルトの底面を研削加工すれば、不可避的な製造誤差(研削ホイールの芯ブレ等)により、ベルトの底面にベルト厚さむら(凹凸)が生じることは、技術的に自明の事項である。ちなみに、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「本願発明の出願当初の明細書の段落[0003]に記載されているように、ベルト底面の凹凸によるベルト厚さむらを零にすることは理想ではあっても、ベルト本体の加硫成形後にベルト底面が形成される場合には、その形成時に厚さむらが生じるのは不可避で必然であり、実際には厚さむらをなくすのは困難で、凹凸のない状態とすることは現実的ではなく」(【本願発明が特許されるべき理由】「(本願発明と引用文献との対比)」の項参照)と述べている。 してみれば、引用発明のベルト1の底面に、従来周知の技術手段を適用することにより、ベルト1の底面をベルト1本体の加硫成形後に研削加工により形成して、ベルトの底面に凹凸が生じたものとすることにより、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到できるものであって、それを妨げる格別の事情は見い出せない。 (相違点2について) 刊行物1には、「本発明の基本的な特徴によれば、連続する横断方向突起8と横断方向凹所9のピッチPと横断方向凹所9の最大深さhの比率が8から20(8および20を含む)の範囲内にあり、また横断方向凹所9の曲率半径rと横断方向凹所そのものの深さhの比率が3から6(3および6を含む)の範囲内にある。」、及び「本発明のベルトによれば、可撓性を高めることができると同時に、ノイズを大幅に減少させることができる。」(いずれも、上記摘記事項(d)参照)と記載されている。上記記載からみて、刊行物1には、横断方向凹所9の最大深さhを適切な数値範囲とすることが、ベルトに発生するノイズを大幅に減少させるための要因であることが記載又は示唆されている。 この刊行物1に記載又は示唆された技術的事項に鑑みれば、引用発明において、ベルト1に発生するノイズを大幅に減少させるために、ベルト1の諸元(例えば、ベルトの長さ・幅・厚さ等)や材質等を特定のものとした上で、横断方向凹所9の最大深さhを様々に変化させて、ベルト1の静粛性を適宜の実験方法で評価する実験を行い、その実験結果から好適な数値範囲を見出すことは、当業者が適宜なし得る設計変更の範囲内の事項にすぎないものである。 つまり、引用発明において、ベルトの騒音試験を行うことにより、ベルト1の底面の凹凸量を、それぞれ40μm以下とすることは、当業者が通常の創作能力を発揮して実験的に数値範囲を最適化したにすぎないものである。 なお、ベルトの静粛性の評価にあたり、実験者の聴感により段階評価することは常套手段(例えば、特開平7-35201号公報には、「前記Vリブドベルト1の走行時の発音を測定した。この評価の方法は、ベルトを駆動プーリ(直径170mm)と従動プーリ(直径72mm)に掛架し、従動プーリに60kgfの荷重を与え、駆動側の回転数を2000rpmにて20分間走行させた後、600rpmに回転をおとし、その時の発音を聴感により3段階で判定した。その結果を表2に示す。」[第4頁第6欄第39?45行、段落【0028】参照]と記載されるとともに、表2にはその結果が示されている。また、特開平3-265740号公報には、「成形されたVリブドベルトを、自動車用エンジン(1500cc直列4気筒)にて走行させ、800rpm、3000rpmの回転での騒音の発生状態を感応評価にて、5段階評価を行った。その試験結果を次の表に示すが、同1条件で最も騒音の高いものを5、最も低いものを1として表した。」[第3頁右上欄第18行?左下欄第4行)]と記載されるとともに、第3頁右下欄の表にはその結果が示されている。)にすぎない。 してみれば、引用発明において、刊行物1に記載又は示唆された技術的事項に鑑み、ベルトの底面の凹凸量を、それぞれ40μm以下することにより、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が技術的に格別の困難性を有することなく容易に想到できるものである。 本願補正発明が奏する効果についてみても、引用発明、及び刊行物1に記載又は示唆された技術的事項、並びに従来周知の技術手段が奏するそれぞれの効果の総和以上の格別顕著な作用効果を奏するものとは認められない。 以上のとおり、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお、審判請求人は、審判請求書の請求の理由において、「引用文献1(審決注:本審決の「刊行物1」に対応する。以下同様。)のものでは、(中略)ベルト底面の凹部は積極的ないし意図的に形成されているもので、その凹凸部間のベルト長さ方向の寸法である凹凸量も例えば0.53mmと比較的大きいものとすることが示されている。」、及び「本願発明(審決注:本審決の「本願補正発明」に対応する。以下同様。)では、(中略)凹凸部は、引用文献1のものの凹部のように積極的に形成されたものではなく、製造時にベルト底面の切削加工に伴い不可避的に製造誤差として生じたものである。また、その凹凸量も40μmというレベルであり、引用文献1のものとは1桁異なっている。この点において本願発明は引用文献1のものと大きく相違しているのは明らかであると思料する。」(【本願発明が特許されるべき理由】「(本願発明と引用文献との対比)」の項参照)と主張している。 しかしながら、上記(相違点1について)及び(相違点2について)において述べたように、引用発明において、ベルトの騒音試験を行うことにより、ベルト1の底面の凹凸量を、それぞれ40μm以下とすることは、当業者が通常の創作能力を発揮して実験的に数値範囲を最適化したにすぎないものであるから、本願補正発明は、引用発明に、刊行物1に記載又は示唆された技術的事項、及び従来周知の技術手段を適用することは当業者が容易に想到し得たものであるところ、本願補正発明の構成を備えることによって、本願補正発明が、従前知られていた構成が奏する効果を併せたものとは異なる、相乗的で、当業者が予測できる範囲を超えた効果を奏するものとは認められないので、審判請求人の主張は採用することができない。 3.むすび したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 III.本願発明について 平成21年7月28日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?4に係る発明は、平成20年11月4日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりのものである。 「ベルト底面の少なくとも一部がプーリに摩擦接触することで該プーリとの間での動力伝達を行うようにした伝動ベルトであって、 上記ベルト底面において、ベルト厚さ方向のベルト本体側に陥没した状態の凹部と、該凹部にベルト長さ方向に隣接し、ベルト厚さ方向のベルト本体とは反対の側に隆起した状態の凸部との間のベルト厚さ方向の寸法である各凹凸量が、それぞれ40μm以下とされている ことを特徴とする伝動ベルト。」 1.刊行物 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物及びその記載事項は、上記「II.1.」に記載したとおりである。 2.対比・判断 本願発明は、上記「II.」で検討した本願補正発明のベルトの底面に関する限定事項である「ベルト本体の加硫成形後に研削加工により形成されてなり」という構成を省くとともに、本願補正発明のベルトの底面の凹凸部に関する限定事項である「該研削加工によりベルト底面において生じた」(下線部のみ)という構成を省くことにより拡張するものである。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに構成を限定したものに相当する本願補正発明が、上記「II.2.」に記載したとおり、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 3.むすび 結局、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物1に記載された発明、及び従来周知の技術手段に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 そして、本願の請求項1に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項2?4に係る発明について検討をするまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2010-10-22 |
結審通知日 | 2010-10-26 |
審決日 | 2011-04-07 |
出願番号 | 特願平11-10890 |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(F16G)
P 1 8・ 121- Z (F16G) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山崎 勝司 |
特許庁審判長 |
川本 真裕 |
特許庁審判官 |
常盤 務 大山 健 |
発明の名称 | 伝動ベルト及びその凹凸量測定方法 |
代理人 | 嶋田 高久 |
代理人 | 竹内 宏 |
代理人 | 杉浦 靖也 |
代理人 | 前田 弘 |
代理人 | 井関 勝守 |
代理人 | 原田 智雄 |
代理人 | 今江 克実 |
代理人 | 竹内 祐二 |
代理人 | 二宮 克也 |
代理人 | 関 啓 |