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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1237279
審判番号 不服2009-14374  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-08-10 
確定日 2011-05-19 
事件の表示 特願2007- 63951「ディスクドライブ装置及び電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成20年 9月25日出願公開、特開2008-226360〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯

本願は、平成19年3月13日の出願であって、平成21年2月6日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月8日付けで手続補正がなされたが、同年5月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月10日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。
その後、平成22年11月30日付けで前置報告に基づく審尋がなされ、平成23年1月31日付けで回答書が提出されたものである。


第2 平成21年8月10日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成21年8月10日付けの手続補正を却下する。

「理由」

1.本件補正

平成21年8月10日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲と明細書についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前に、

「【請求項1】
ディスク挿入口から挿入されてローディングされたディスク状記録媒体が装着されるディスクテーブルと、
シャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるイジェクトレバーと、
シャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるサポートレバーとを備え、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前はサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルのセンターリング突部よりディスク挿入口側でかつディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置に位置させるようにした
ディスクドライブ装置。
【請求項2】
ディスク状記録媒体に対してレーザー光を照射する光ピックアップをディスク状記録媒体の半径方向へ移動自在に支持するピックアップベースと、
駆動モーターによって所定の方向へ移動されてピックアップベースを昇降させるスライダーと、
スライダーに連結され該スライダーの移動に伴って動作されると共に所定の形状に形成された作用孔を有する駆動レバーとを設け、
イジェクトレバーに駆動レバーの作用孔に挿入された規制ピンを設け、
イジェクトレバーを回動方向における待受位置側へ付勢する付勢バネを設け、
ディスク状記録媒体のローディング動作中に駆動モーターによってスライダー及び駆動レバーが移動された状態においてイジェクトレバーが付勢バネの付勢力によって待受位置側へ回動されたときに、イジェクトレバーの規制ピンが駆動レバーの作用孔の開口縁における所定の部分に係合されてスライダーの移動が規制されるようにした
請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項3】
駆動レバーの作用孔の開口縁に補強リブを設けた
請求項2に記載のディスクドライブ装置。
【請求項4】
サポートレバーを回動方向における待受位置側へ付勢する引張コイルバネを設け、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーとサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前にイジェクトレバーによるディスク状記録媒体に対する押圧を解除し、
イジェクト時にサポートレバーを引張コイルバネの付勢力によって引込位置から待受位置へ向けて回動させるようにした
請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項5】
ディスク状記録媒体に対して情報信号の記録若しくは再生又はこれらの双方を行うディスクドライブ装置を備えた電子機器であって、
ディスク挿入口から挿入されてローディングされたディスク状記録媒体が装着されるディスクテーブルと、
シャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるイジェクトレバーと、
シャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるサポートレバーとを備え、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前はサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルよりディスク挿入口側でかつディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置に位置させるようにした
電子機器。」

とあったところを、本件補正後、

「【請求項1】
ディスク挿入口から挿入されてローディングされたディスク状記録媒体が装着されるディスクテーブルと、
ディスク挿入方向におけるディスク挿入口と反対側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるイジェクトレバーと、
シャーシの側部側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるサポートレバーとを備え、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前はサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルのセンターリング突部よりディスク挿入口側でかつディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置に位置させるようにした
ディスクドライブ装置。
【請求項2】
サポートレバーを回動方向における待受位置側へ付勢する引張コイルバネを設け、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーとサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前にイジェクトレバーによるディスク状記録媒体に対する押圧を解除し、
イジェクト時にサポートレバーを引張コイルバネの付勢力によって引込位置から待受位置へ向けて回動させるようにした
請求項1に記載のディスクドライブ装置。
【請求項3】
ディスク状記録媒体に対して情報信号の記録若しくは再生又はこれらの双方を行うディスクドライブ装置を備えた電子機器であって、
ディスク挿入口から挿入されてローディングされたディスク状記録媒体が装着されるディスクテーブルと、
ディスク挿入方向におけるディスク挿入口と反対側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるイジェクトレバーと、
シャーシの側部側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるサポートレバーとを備え、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前はサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルのセンターリング突部よりディスク挿入口側でかつディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置に位置させるようにした
電子機器。」

とするものである。

本件補正は、本件補正前の請求項2及び3を削除するものであり、本件補正後の請求項1、2、及び3は、それぞれ本件補正前の請求項1、4、及び5に対応する。

そこで本件補正後の請求項1、2、及び3について検討すると、本件補正は、本件補正前の請求項1及び5における「シャーシに回動自在に支持」されるイジェクトレバー、並びに「シャーシに回動自在に支持」されるサポートレバーについて、それぞれ「ディスク挿入方向におけるディスク挿入口と反対側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持」されるイジェクトレバー、並びに「シャーシの側部側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持」されるサポートレバーと限定し、本件補正前の請求項5における「イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルよりディスク挿入口側でかつディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置に位置させる」について、「イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルのセンターリング突部よりディスク挿入口側でかつディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置に位置させる」と限定するものである。

そして、本件補正後の請求項1、2、及び3に記載された発明は、本件補正前の請求項1、4、及び5に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定する要件を満たすか)否かについて検討する。

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された特開2005-85450号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに、次の記載がある。なお、下線は当審で付した。

ア)
「【0019】
(1-1)筐体の構成
このディスクドライブ装置1は、図2及び図3に示すように、装置本体1aの外筐となる筐体3を備え、この筐体3は、装置本体1aが組み付けられたボトムケース4と、この装置本体1aの上面部を覆うトップカバー5とを有している。」

「【0023】
ボトムケース4は、図3,図5及び図6に示すように、下部筐体として全体が略扁平箱状に形成された板金からなり、その底面部は、略矩形状であり、一方の側面部には、この底面部よりも底上げされて外側へと張り出したデッキ部4aが設けられている。
【0024】
ボトムケース4の底面部には、装置本体1aの各部の駆動制御を行う駆動制御回路が構成された回路基板9が配置されている。この回路基板9は、ボトムケース4の背面側の底面部にネジ止めにより取り付けられている。回路基板9上には、上記駆動制御回路を構成するICチップ等の電子部品10や、各部の電気的な接続を図るためのコネクタ11、各部の動作を検出するための検出スイッチSW1,SW2,SW3等が配置されている。このうち、上記パーソナルコンピュータ1000の装置本体1001との電気的な接続を図る外部コネクタ12は、図7に示すように、ボトムケース4の背面に形成された開口部13から外部に臨むように回路基板9上に取り付けられている。
【0025】
また、ボトムケース4の底面部には、シャーシ14がネジ止めにより取り付けられている。このシャーシ14は、回路基板9の上方において、ボトムケース4の内部を上記デッキ部4aと略同等の高さで上下に仕切るように配置されている。また、シャーシ14は、上記外部コネクタ12の周囲を囲む囲み部15を有しており、この囲み部15は、シャーシ14をコネクタ12の外形に沿って折り曲げることにより形成されている。これにより、囲み部15は、外部コネクタ12が外部に臨むボトムケース4の開口部13から塵埃等が筐体3の内部に侵入するのを防ぐと共に、この囲み部15が外部コネクタ12を保持することによって、回路基板9に対する外部コネクタ12の取付強度が高められている。」

イ)
「【0040】
ディスク装着部27は、ディスク回転駆動機構28により回転駆動されるターンテーブル27aを有し、このターンテーブル27aの中心部には、光ディスク2を装着するためのチャッキング機構34が設けられている。このチャッキング機構34は、光ディスク2の中心孔2aに係合される係合突部34aと、この係合突部34aに係合された光ディスク2の中心孔2aの周囲を係止する複数の係止爪34bとを有し、光ディスク2をターンテーブル27a上に保持する。」

ウ)
「【0047】
(1-3)ディスク搬送機構の構成
装置本体1aは、図3,図5及び図6に示すように、ディスク挿脱口21から光ディスク2が挿脱されるディスク挿脱位置と、ディスク装着部27のターンテーブル27aに光ディスク2が装着されるディスク装着位置との間で光ディスク2の搬送を行うディスク搬送機構40を備えている。
【0048】
このディスク搬送機構40は、ディスク挿脱口21から筐体3の内部に挿入される光ディスク2よりも下方に位置して、当該光ディスク2と平行な面内で揺動可能とされた第1の回動アーム41、第2の回動アーム42及び第3の回動アーム43とを有している。
【0049】
第1の回動アーム41は、長尺状の平板部材からなり、ディスク装着部27のターンテーブル27aを挟んだ左右の一方側(例えば右側)に位置して、基端部がデッキ部4a上に設けられた支軸44を介して、矢印a1方向及び矢印a2方向に回動可能に支持されている。また、第1の回動アーム41の先端部には、ディスク挿脱口21から挿入された光ディスク2の外周部に背面側から当接される第1の当接ピン41aが上方に突出して設けられている。また、この第1の回動アーム41の中間部には、光ディスク2をディスク装着位置に位置決めする際に、第1の当接ピン41aと共に光ディスク2の外周部に背面側から当接される第1の位置決めピン41bが上方に突出して設けられている。
【0050】
また、第1の回動アーム41の基端側には、支軸45を介して中間アーム46が回動可能に取り付けられている。この中間アーム46は、略J字状の平板部材からなり、この中間アーム46の中間部には、第1の引張りコイルバネ47の一端47aが掛止されている。また、第1の引張りコイルバネ47の他端47aは、図6及び図8に示すように、デッキ部4aの側面に掛止されている。したがって、第1の回動アーム41は、第1の引張りコイルバネ47によって前面側に向かって回動する方向、すなわち矢印a2方向に中間アーム46を介して付勢されている。
【0051】
第2の回動アーム42は、図3,図5及び図6に示すように、長尺状の平板部材からなり、ディスク装着部27のターンテーブル27aを挟んだ左右の他方側(例えば左側)に位置して、基端部がシャーシ14上に設けられた支軸(ネジ)48を介して、矢印b1方向及び矢印b2方向に回動可能に支持されている。また、第2の回動アーム42の先端部には、ディスク挿脱口21から挿入された光ディスク2の外周部に背面側から当接される第2の当接ピン42aが上方に突出して設けられている。また、この第2の回動アーム42の中間部には、光ディスク2をディスク装着位置に位置決めする際に、第2の当接ピン42aと共に光ディスク2の外周部に背面側から当接される第2の位置決めピン42bが上方に突出して設けられている。」

エ)
「【0061】
ディスク搬送機構40では、これら第1の回動アーム41、第2の回動アーム42及び第3の回動アーム43が互いに協働しながら、筐体3のディスク挿脱口21から挿入された光ディスク2をディスク装着部27に装着されるディスク装着位置まで引き込むローディング動作と、光ディスク2をディスク装着位置に位置決めするセンタリング動作と、光ディスク2をディスク挿脱口21から筐体3の外部へと排出するイジェクト動作とを行う。」

オ)
「【0143】
以上のようにして、第1の回動アーム41と第2の回動アーム42と第3の回動アーム43とは、互いに協働しながら、図20に示すディスク挿脱位置まで光ディスク2を搬送し、ディスク挿脱口21から筐体3の外部へと光ディスク2を排出する。
【0144】
ここで、図31に示すように、第2の検出スイッチSW2は、駆動レバー69の側面部による押圧が解除されることによって、オフ状態となり、第1の検出スイッチSW1は、第2の連結アーム53の押圧片125による押圧が解除されることによって、オフ状態となる。また、第3の検出スイッチSW3は、第2のカム部126の第1の水平面部126a上をスライドする検出子が第1の水平面部126aの背面側の傾斜面に沿って下降することによって、オン状態からオフ状態へと切り替わる。
【0145】
このとき、図20に示すように、駆動レバー69が前面側の端部までスライドすることによって、可動板71の押圧片90aが中間アーム46の被押圧片89を背面側から押圧する。これにより、第1の回動アーム41が最前部まで回動し、光ディスク2を確実にディスク挿脱口21から中心孔2aが筐体3の外部に臨む位置まで排出することになる。」

カ)
図6には、光ディスクが挿入されていない待ち受け状態における装置本体の構成を示す平面図が図示されており、特に、第1の回動アーム41の当接ピン41aと第2の回動アーム42bの当接ピン42aが、ターンテーブル27aの中心部の係合突部34aより光ディスクが挿入される側に位置していることが図示されている。

キ)
図16ないし図20には、ディスク挿脱機構の動作を説明するための図が示されており、特に、光ディスクがディスク挿脱位置まで排出された状態を示す図20には、第2の回動アームは光ディスクを押圧しておらず、第1の回動アームが光ディスクを押圧することにより光ディスクを排出することが図示されている。

前掲ア)ないしキ)の記載事項及び図面からみて、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「ディスクドライブ装置がボトムケースを有しており、
ボトムケースの一方の側面部には、底面部よりも底上げされて外側へと張り出したデッキ部が設けられ、ボトムケースの底面部には、シャーシが、ボトムケースの内部をデッキ部と略同等の高さで上下に仕切るように配置されており、
ディスク装着部は、ディスク回転駆動機構により回転駆動されるターンテーブルを有し、このターンテーブルの中心部には、光ディスクの中心孔に係合される係合突部を有し、光ディスクをターンテーブル上に保持するものであり、
第1の回動アームは、基端部がデッキ部上に設けられた支軸を介して回動可能に支持され、第1の回動アームの先端部には、ディスク挿脱口から挿入された光ディスクの外周部に背面側から当接される第1の当接ピンが上方に突出して設けられており、
第2の回動アームは、基端部がシャーシ上に設けられた支軸(ネジ)を介して回動可能に支持され、第2の回動アームの先端部には、ディスク挿脱口から挿入された光ディスクの外周部に背面側から当接される第2の当接ピンが上方に突出して設けられており、
これら第1の回動アーム、第2の回動アームが互いに協働しながら、筐体のディスク挿脱口から挿入された光ディスクをディスク装着部に装着されるディスク装着位置まで引き込むローディング動作と、光ディスクをディスク挿脱口から筐体の外部へと排出するイジェクト動作とを行い、
ディスク挿脱口からボトムケース及びトップカバーからなる筐体の外部へと光ディスクを排出する際に、第1の回動アームが最前部まで回動し、光ディスクを確実にディスク挿脱口から中心孔が筐体の外部に臨む位置まで排出するものであり、
光ディスクが挿入されていない待ち受け状態において、第1の回動アームの当接ピンと第2の回動アームの当接ピンが、ターンテーブルの中心部の係合突部より光ディスクが挿入される側に位置し
光ディスクがディスク挿脱位置まで排出された状態において、第2の回動アームは光ディスクを押圧しておらず、第1の回動アームが光ディスクを押圧することにより光ディスクを排出する
ディスクドライブ装置。」

3.対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「ディスクドライブ装置」は、本願補正発明の「ディスクドライブ装置」に相当する。

(2)引用発明の「ディスク挿脱口」、「光ディスク」は、それぞれ本願補正発明の「ディスク挿入口」、「ディスク状記録媒体」に相当し、引用発明の「ターンテーブル」は、ディスク挿脱口から挿入された光ディスクがローディング動作によって装着されるものであるから、本願補正発明の「ディスク挿入口から挿入されてローディングされたディスク状記録媒体が装着されるディスクテーブル」に相当する。

(3)引用発明の「第2の回動アーム」は、ローディング動作とイジェクト動作を行うものであり、シャーシ上に設けられた支軸(ネジ)を介して回動可能に支持されていることから、前記支軸(ネジ)を支点としてシャーシに回動自在に支持されているといえ、また、図6を参酌すると、前記支軸(ネジ)は、ディスク挿入方向におけるディスク挿脱口と反対側の端部寄りの位置であって第2の回動アームの端部寄りの位置に設けられていることは明らかである。よって、引用発明の「第2の回動アーム」は、本願補正発明の「ディスク挿入方向におけるディスク挿入口と反対側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持され」る「イジェクトレバー」に相当する。
また、引用発明の「第2の回動アーム」に設けられた「第2の当接ピン」は、ディスク挿脱口から挿入された光ディスクの外周部に背面側から当接することにより当該光ディスクを保持しているといえるから、本願補正発明の「イジェクトレバー」が有する「ディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部」に相当する。
そして、引用発明の「第2の回動アーム」は、図16ないし図19を参酌すると、ローディング動作によりディスク挿脱口から挿入された光ディスクを第2の当接ピンが待ち受ける待受位置から第2の当接ピンに保持された光ディスクを引き込む引込位置に回動されるものであることは明らかであるから、本願補正発明の「イジェクトレバー」と引用発明の「第2の回動アーム」とは、「ディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動される」点で共通している。

(3)引用発明の「第1の回動アーム」は、第2の回動アームと協働してディスクのローディング動作とイジェクト動作を行うものであり、第2の回動アームの動作をサポートしているといえるから、本願補正発明の「サポートレバー」に相当する。
また、引用発明の「第1の回動アーム」に設けられた「第1の当接ピン」は、ディスク挿脱口から挿入された光ディスクの外周部に背面側から当接することにより当該光ディスクを保持しているといえるから、本願補正発明の「サポートレバー」が有する「ディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部」に相当する。
そして、引用発明の「第1の回動アーム」は、図16ないし図19を参酌すると、ローディング動作によりディスク挿脱口から挿入された光ディスクを第1の当接ピンが待ち受ける待受位置から第1の当接ピンに保持された光ディスクを引き込む引込位置に回動されるものであることは明らかであるから、本願補正発明の「サポートレバー」と引用発明の「第1の回動アーム」とは、「ディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動される」点で共通している。

(4)引用発明では、第1の回動アームと第2の回動アームが互いに協働しながら回動して光ディスクのイジェクト動作を行うものであり、第2の回動アームの光ディスクに対する押圧動作によりイジェクトしていることは明らかであるから、本願補正発明と引用発明とは、「ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし」ている点で共通している。

(5)引用発明では、イジェクト動作によりディスク挿脱口から筐体の外部へと光ディスクを排出する際に、第1の回動アームが最前部まで回動し、光ディスクを確実にディスク挿脱口から排出するものであり、光ディスクがディスク挿脱位置まで排出された状態を示す図20を参酌すると、第1の回動アームが最前部まで回動している時点はイジェクト動作の終了直前であるといえ、この時点において、第2の回動アームは光ディスクを押圧しておらず、第1の回動アームのみが光ディスクを押圧していることは同図より明らかであるから、本願補正発明も引用発明も「イジェクト動作の終了直前はサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし」ている点で共通している。

(6)引用発明の「光ディスクの中心孔に係合される係合突部」は、本願補正発明の「ディスクテーブルのセンターリング突部」に相当し、待ち受け状態における装置本体の構成を示す図6を参酌すると、第1の回動アームと第2の回動アームが待受位置にある状態において、両者の当接ピンがターンテーブルの中心部の係合突部よりディスク挿脱口側に位置していることは明らかであるから、本願補正発明と引用発明とは、「イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルのセンターリング突部よりディスク挿入口側に位置させるようにした」点で共通している。

以上のことからすると、本願補正発明と引用発明とは、次の点で一致する。

<一致点>
「ディスク挿入口から挿入されてローディングされたディスク状記録媒体が装着されるディスクテーブルと、
ディスク挿入方向におけるディスク挿入口と反対側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるイジェクトレバーと、
ディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるサポートレバーとを備え、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前はサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルのセンターリング突部よりディスク挿入口側に位置させるようにした
ディスクドライブ装置。」

そして、次の点で相違する。

<相違点1>
サポートレバーに関して、本願補正発明では、「シャーシの側部側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持され」ているのに対して、引用発明では、基端部がデッキ部上に設けられた支軸を介して回動自在に支持されている点。

<相違点2>
待受状態におけるイジェクトレバーとサポートレバーのディスク保持部の位置に関して、本願補正発明では、「両者のディスク保持部をディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置」に位置させているのに対して、引用発明では、そのような重ならない位置に位置させるとは特定していない点。

4.当審の判断

上記相違点について検討する。

<相違点1について>
引用発明の第1の回動アームは、基端部がデッキ部上に設けられた支軸を支点として回動自在に支持されているものであり、図6を参酌すると、第1の回動アームは、ディスクドライブ装置の側部側であって回動アームの端部寄りの位置である支軸を支点としており、支軸を支点として回動することによりシャーシに対しても回動自在となっていることは明らかである。
してみると、本願補正発明と引用発明とは、サポートアームがディスクドライブ装置内の側部付近であってサポートアームの側部側の端部を支点としてシャーシに対して回動自在に支持されている点で共通するものである。
このようなサポートディスクの配置において、上記相違点1は、サポートアームの支点が取り付けられるディスクドライブの側部付近が、底面が底上げされたデッキ部で構成されているか、底面に配置されたシャーシで構成されているかに起因する差異にすぎず、デッキ部がシャーシと略同等の高さとされていることからしても、両者の間に役割において特段相違があるとすべき根拠も見出せないから、かかる側部付近をデッキ部ではなくシャーシとすることは、単なるディスクドライブ装置における構成上の設計事項であると認められる。
したがって、サポートレバーの支点となる支軸をデッキ部ではなくシャーシに取り付け「シャーシの側部側の端部寄りの位置を支点としてシャーシに回動自在に支持され」るとすることは、当業者がディスクドライブ装置における構成上の設計事項として適宜為しうる事項にすぎない。

<相違点2について>
引用発明も、イジェクト動作の終了直前は、第2の回動アームではなく第1の回動アームのみの押圧動作によって光ディスクをイジェクトしている点で本願補正発明と共通するものであり、かかるイジェクト動作の終了直前を示す図20を参酌すると、第1の回動アームの当接ピンが第2の回動アームの当接ピンよりディスク挿脱口側にあり、両者の当接ピンが光ディスクの挿入方向において重ならない位置にあることは明らかである。
してみると、図6に示されるような、第1の回動アームと第2の回動アームが待受位置にある状態においても、イジェクト動作の終了直前と同じく、第1の回動アームの当接ピンを第2の回動アームの当接ピンよりディスク挿脱口側に位置させること、すなわち、「両者の保持部をディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置」に位置させることは、当業者であれば当然為しうる事項である。

なお、出願人は、平成22年11月30日付けの審尋に対する回答書において、引用発明には、本願補正発明の特徴である「それぞれのレバーの支点をディスク挿入方向において異なる位置に配置することで、一方のレバーによりディスクの排出開始時の駆動において有利なレバーと、排出完了直前において有利なレバーにより、付勢力が小さくてもディスクの搬送を行えるようにしたこと」までは示されていない点で相違する旨の主張をしている。

しかしながら、本願補正発明には、それぞれのレバーの支点の位置について、イジェクトレバーが「ディスク挿入方向におけるディスク挿入口と反対側の端部寄りの位置を支点」とし、サポートレバーが「シャーシの側部側の端部寄りの位置を支点」とすることは記載されているものの、かかる記載は、それぞれのレバーの支点の位置が異なることを示すものの「ディスク挿入方向において異なる位置に配置すること」を示すものではないので、出願人の前記主張は採用できない。
さらに、出願人が主張する「一方のレバーによりディスクの排出開始時の駆動において有利なレバーと、排出完了直前において有利なレバーにより、付勢力が小さくてもディスクの搬送を行える」との作用効果についても、かかる作用効果は、それぞれのレバーの支点の位置のみではなく、レバーの長さや形状、レバーを付勢するためのバネやレバーと協働して動作するその他の部材等との配置関係や形状に影響されて奏されるものであり、単に、それぞれのレバーの支点の位置を「ディスク挿入方向において異なる位置に配置すること」によって奏される作用効果ではないから、かかる作用効果についても、出願人の前記主張を採用することはできない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明の効果は、引用発明から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5.本件補正についてのむすび

以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

なお、出願人は、平成22年11月30日付けの審尋に対する回答書において、本願の請求項2に係る発明に限定するための補正の機会を求めているが、改めて補正の機会を付与する法的根拠は見出せない。
また仮に、本願の請求項2に係る発明に限定したとしても、引用例1の【0050】には「第1の回動アーム41は、第1の引張りコイルバネ47によって前面側に向かって回動する方向、すなわち矢印a2方向に中間アーム46を介して付勢されている」と記載されており、引用例1の前記「第1の引張りコイルバネ47」は、実質的に、本願の請求項2に記載の「サポートレバーを回動方向における待受位置側へ付勢する引張コイルバネ」に相当するものと認められ、請求項2に記載の技術事項が格別のものであるとは認められない。


第3 本願発明について

1.本願発明

平成21年8月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし5に係る発明のうち、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年4月8日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。

「【請求項1】
ディスク挿入口から挿入されてローディングされたディスク状記録媒体が装着されるディスクテーブルと、
シャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるイジェクトレバーと、
シャーシに回動自在に支持されディスク挿入口から挿入されたディスク状記録媒体を保持するディスク保持部を有すると共にディスク挿入口から挿入されるディスク状記録媒体をディスク保持部が待ち受ける待受位置とディスク保持部に保持されたディスク状記録媒体を引き込む引込位置との間で回動されるサポートレバーとを備え、
ディスク状記録媒体を回動されるイジェクトレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクト動作の終了直前はサポートレバーのディスク状記録媒体に対する押圧動作によってイジェクトし、
イジェクトレバーとサポートレバーが待受位置にある状態において、両者のディスク保持部をディスクテーブルのセンターリング突部よりディスク挿入口側でかつディスク状記録媒体の挿入方向において重ならない位置に位置させるようにした
ディスクドライブ装置。」

2.引用例

原査定の拒絶の理由に引用された引用例、及びその記載事項は、前掲「第2 [理由]2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断

本願発明は、前掲「第2 [理由]1.」で検討した本願補正発明において、イジェクトレバーの支持に関して「ディスク挿入方向におけるディスク挿入口と反対側の端部寄りの位置を支点として」との限定を削除し、サポートレバーの支持に関して「シャーシの側部側の端部寄りの位置を支点として」との限定を削除するものに相当する。

そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の限定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前掲「第2 「理由」3.4.」に記載したとおり、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-18 
結審通知日 2011-03-24 
審決日 2011-04-05 
出願番号 特願2007-63951(P2007-63951)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G11B)
P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 井上 和俊渡邊 聡  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 月野 洋一郎
井上 信一
発明の名称 ディスクドライブ装置及び電子機器  
代理人 岩田 雅信  

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