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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16C
管理番号 1237293
審判番号 不服2010-8847  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-26 
確定日 2011-05-19 
事件の表示 特願2001- 43646「転がり軸受」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月 6日出願公開、特開2002-250351〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年2月20日の出願であって、平成22年1月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成22年4月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明5」という。)は、平成20年2月7日付け手続補正、及び平成21年11月25日付け手続補正により補正された明細書、及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるとおりのものであり、そのうち、本願発明1は次のとおりである。
「【請求項1】 内輪と外輪との間に保持器を介して複数の転動体を等間隔で回動自在に保持し、かつフッ素化ポリマー油を基油とし、ポリテトラフルオロエチレンを増ちょう剤とするグリース組成物に、カーボンブラックを該グリース組成物全量の0.1?1.0質量%の割合で配合してなるグリース組成物を封入していることを特徴とする転がり軸受。」

3.本願発明1について
(1)本願発明1
本願発明1は、上記2.に記載したとおりである。
(2)引用例
(2-1)引用例1
特開2000-273478号公報(以下、「引用例1」という。)には、下記の事項が図面ともに記載されている。なお、全角半角等の文字の大きさ、書体、促音、拗音、句読点は記載内容を損なわない限りで適宜表記した。以下、同様。
(あ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は転がり軸受に関し、特に潤滑剤組成物を用い、自動車の電装部品,エンジン補機であるオルタネータや中間プーリー,カーエアコン用電磁クラッチなど高温高速高荷重条件下において好適に使用される転がり軸受に関する。」
(い)「【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記のように、従来のウレア-合成油グリースでは、200℃以上の使用が困難であるため、さらなる向上には応え得るものではない。
【0007】本発明は上記事情を考慮してなされたもので、潤滑性組成物が液体フッ素化ポリマー油からなる基油と増ちょう剤との混合物であるグリース組成物であり、前記液体フッ素化ポリマー油の40℃における粘度が10?400mm^(2) /secであることにより、200℃前後の高温下で優れた耐焼付き性を備えた転がり軸受を提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、潤滑性組成物が液体フッ素化ポリマー油からなる基油と増ちょう剤との混合物であるグリース組成物であり、前記液体フッ素化ポリマー油の40℃における粘度が10?400mm^(2) /secであることを特徴とする転がり軸受である。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の転がり軸受について更に詳しく説明する。
<基油>本発明において、使用される使用される基油は、フッ素化ポリマー油であれば特に限定されないが、好ましくは、下記化1に挙げられる一般式(1)あるいは一般式(2)に挙げられる側鎖構造を持つものが好ましい。」
(う)「【0013】<増ちょう剤>本発明において、増ちょう剤はポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であればすべて良く、球形、多面体(立方体や直方体)や極端には針状でも構わない。これらのPTFE樹脂は単独または混合物として用いることができる。増ちょう剤の量は、本発明に適するような流動性を持たせるため、グリースの混和ちょう度がNLGIに規定された等級でNo.1?3となるような量が好ましい。」
以上の記載事項及び図面からみて、引用例1には、下記の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「潤滑性組成物が液体フッ素化ポリマー油からなる基油とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)である増ちょう剤との混合物であるグリース組成物であり、液体フッ素化ポリマー油の40℃における粘度が10?400mm^(2) /secである転がり軸受。」
(2-2)引用例2
特開昭57-3897号公報(以下、「引用例2」という。)には、下記の事項が図面とともに記載されている。
(か)「(1) 粒子径50?500ÅでDBP吸油数150ml/100g以上の中空粒子構造を備えかつ凝集状態を呈するカーボンブラックを2?40重量%として微量の添加剤と共にベースオイル中に配合して成ることを特徴とする電導性グリース。」(第1ページ左下欄第5?9行)
(き)「最近、各種事務機器などの自動化に伴ない動力伝達系の回転部分に樹脂材料の使用などに起因して静電気が発生し、これが事務機器などの動作に悪影響を及ぼしている。…
そこで回転部分に設けられるベアリングに、前述したカーボンブラツク配合の導電性グリースを潤滑剤として注入し、この導電性グリースを介して効果的に静電気をアースに導びいて除電しようと意図しているのが現状である。」(第1ページ右下欄第19行?第2ページ左上欄第10行)
(く)「また、ベースオイルとしては鉱油、エステル、フツソ油、ポリグリコールなどのグリース原料が好適であるが、…」(第2ページ右下欄第17?19行)
(け)「つぎに、中空構造のカーボンブラツク含有量について考察するとこの発明にあつては2重量%未満の場合では実用性ある導電性は得られず、また40重量%を超えるとグリースは著るしく硬化し、コロガリ軸受への使用ができなくなる。」(第4ページ左下欄第16?20行)
(3)対比
本願発明1と引用例1発明とを比較すると、後者の「潤滑油組成物」が「グリース組成物」であることと前者の「グリース組成物を封入していること」とは、「グリース組成物を有している」限りにおいて一致する。したがって、両者は、
「フッ素化ポリマー油を基油とし、ポリテトラフルオロエチレンを増ちょう剤とするグリース組成物を有する転がり軸受。」である点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点1]
本願発明1の「転がり軸受」は、「内輪と外輪との間に保持器を介して複数の転動体を等間隔で回動自在に保持し」ており、「グリース組成物を封入している」のに対し、引用例1発明の「転がり軸受」は、そのような事項を具備していない点。
[相違点2]
本願発明1の「転がり軸受」は、「グリース組成物に、カーボンブラックを該グリース組成物全量の0.1?1.0質量%の割合で配合してなる」のに対し、引用例1発明の「転がり軸受」は、そのような事項を具備していない点。
(4)判断
(4-1)相違点1について
実質的に「内輪と外輪との間に保持器を介して複数の転動体を等間隔で回動自在に保持し」ており、「グリース組成物を封入している」「転がり軸受」は周知である。引用例1発明に、このような周知事項を適用することは当業者が容易に想到し得たものと認められる。
(4-2)相違点2について
引用例2には、上記(き)に摘記したように、各種事務機器についてではあるが、静電気の発生にかんがみて、ベアリングの潤滑剤としてカーボンブラツク配合の導電性グリースを用いることが示されている。また、自動車のエンジン補機や電装品の転がり軸受においても、静電気に起因する剥離現象が生じ得ることは、例えば、特開平11-117758号公報(特に【0009】、【0010】)、特開平4-244624号公報(特に【0005】)に示されているように周知である。
このように、転がり軸受において、その用途・使用状況等に応じて静電気の発生や影響を抑制することが望ましいことは明らかであり、引用例1発明に引用例2の上記事項を適用することは当業者が容易になし得たものと認められる。引用例2には「カーボンブラックを2?40重量%」と記載されているが、カーボンブラックの含有量は、転がり軸受の各部材質、基油の種類、用途・使用環境、所要の各種性能等を考慮して理論的推論ないし実験に基づいて適宜設計する事項にすぎない。そして、本願の図3等をみても、その上下限値、特に上限値に、格別顕著な技術的意義があるとは認められず、カーボンブラックの含有量を本願発明1の上記数値範囲を充足する値とすることは、上記のように所要の性能等を考慮して適宜設計する事項にすぎないと認められる。
この点について補足すると、上記に摘記したように、引用例2には「カーボンブラツク含有量」が「2重量%未満の場合では実用性ある導電性は得られず、」と記載されている。しかし、(a)「実用性ある導電性が得られず、」との説明は定性的であって相当に漠然としているとともに、該記載の前提として「中空構造のカーボンブラツク含有量について考察すると」と記載されているように、それは所定の中空構造のものについての説明であって、それ以外のカーボンブラックにおける下限値についての客観的普遍的に明確な説明ではないこと、(b)上記の記載は、引用例2の請求項1に「2?40重量%」と数値限定した関係で、その数値範囲の上下限値の技術的意義について述べた一応の説明にすぎないとみられること、(c)上記の記載は、いわばその当時の当該発明者の見解であって、カーボンブラックの含有量は、軸受各部の材質・物性、所要の導電特性等に応じて適宜変更し得ることは明らかであること、以上を考え合わせると、2重量%以上であることが技術的に必須というものではない。
そして、本願発明1の奏する作用効果も、引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて当業者が予測できる程度のものである。

なお、請求人は、審判請求の理由において、「また、本願発明ではフッ素化ポリマー油を基油として用いているのに対し、引用文献2の実施例ではジエステル油またはエーテル油を用いており、基油の種類でも異なります。」(ここでの「本願発明」、「引用文献2」は本審決の「本願発明1」、「引用例2」である。)と主張する。確かにそのような実施例が記載されているが、引用例2にはそれ以外に、上記(く)に摘記したように、「ベースオイル」としては「フツソ油、…などのグリース原料が好適である…」と記載されている。
同じく、「そして、基油の密度を基に、本願発明及び引用文献2におけるカーボンブックの含有量を「体積%」に換算すると、本願発明のカーボンブラック含有量0.1?1質量%は0.05?0.54体積%に相当し、引用文献2のカーボンブラック含有量2?40質量%は、DOSの場合は2.17?43.48体積%、ポリオキシプロピレングコールモノアルキルエーテルの場合は2.08?41.67体積%に相当します。カーボンブラックの吸着性は表面の微細な空孔によるものですが、グリース中でカーボンブラックの占める体積が増すほど、表面の空孔が多くなり、基油を吸着してグリースが硬くなります。上記のように、引用文献2では、カーボンブラックの含有量は、体積比率でも本願発明に比べて過大であり、そのため本願発明に比べてグリースが硬くなりやすく、潤滑性に与える影響は大きくなります。本願発明では、比重の大きなフッ素化ポリマー油を基油に用い、更にカーボンブラックの含有量を導電性を付与できる程度に極力少なくし、それによりカーボンブラックの体積比率も小さくしてグリースの硬化を抑制します。このように、引用文献2からも、耐熱性及び耐剥離性を同時に向上させるために、基油をフッ素化ポリマー油とし、カーボンブラックを0.1?1.0質量%含有させればよいことを知見できません。」と主張する。
しかし、カーボンブラックの含有量は、軸受各部の材質・物性、所要の導電特性等に応じて適宜変更し得ることは上述したとおりである。カーボンブラックの体積比率ないしその効果について本願明細書に特に説明が見当たらないことはひとまず措くとして、そのような効果があるとしても、その程度のことは当業者の予測を超えるものではない。本願発明1の含有割合(体積%)と引用例2に記載されたものの含有割合(体積%)が所論のように異なるとしても、問題は、引用例1発明に引用例2の事項を適用して相違点に係る事項に想到することが容易になし得るかどうかであり、カーボンブラックの含有量(質量%)が適宜設計する事項にすぎないこと、及び、2重量%以上であることが技術的に必須のものでないことは上述のとおりである。

(5)むすび
したがって、本願発明1は、引用例1、2に記載された発明、及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

4.結語
以上のとおり、本願発明1が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである以上、本願発明2?5について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-16 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-04-05 
出願番号 特願2001-43646(P2001-43646)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 瀬川 裕  
特許庁審判長 山岸 利治
特許庁審判官 大山 健
川上 溢喜
発明の名称 転がり軸受  
代理人 市川 利光  
代理人 小栗 昌平  
代理人 本多 弘徳  
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