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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B26F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B26F
管理番号 1237294
審判番号 不服2010-8932  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-26 
確定日 2011-05-19 
事件の表示 特願2004-103964「シート状ワークに対する打抜き加工方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月20日出願公開、特開2005-288570〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
出願 平成16年 3月31日
拒絶理由の通知 同 19年 5月 8日
意見書 同 19年 7月11日
手続補正 同 19年 7月11日
拒絶理由の通知 同 20年 1月30日
意見書 同 20年 4月 2日
手続補正 同 20年 4月 2日
拒絶理由の通知 同 21年 2月23日
意見書 同 21年 5月 1日
手続補正 同 21年 5月 1日
拒絶査定 同 22年 1月26日
本件審判請求 同 22年 4月26日
手続補正 同 22年 4月26日

第2 平成22年4月26日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年4月26日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
平成22年4月26日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について補正をすると共にそれに関連して明細書の一部について補正をするものであって、特許請求の範囲の請求項2について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前
「回転駆動される、一の共通の剛性支持ロールの周りで、それの円周方向に間隔をおいて、支持フレームに、支持ロールの半径方向に摺動可能に嵌め込まれて、スプリングで半径方向外方へ付勢される一方、雄ねじ部材で半径方向内方へ押込まれる、複数本の作業ロールのそれぞれを配設して複数段の作業ステーションを構成し、前段側の作業ロールの間欠的な回動作動によって加工を施されたワーク部分が後段側の作業ロールを通過するまでは、後段側の作業ロールの作動を待機させる一方で、前段側の作業ロールによって加工が行われなかったピッチ部分が後段側の作業ロールに到達したときに、その後段側の作業ロールを間欠的に作動させるようにし、相互に隣接するそれぞれの作業ロールの周面に、ともに同一の打抜刃を設け、剛性支持ロールに巻き掛けたシート状ワークをその支持ロールの周面に弾性的に押圧するニップロールを設けてなるシート状ワークに対する打抜き加工装置。」
(2)補正後
「回転駆動される、平滑な一本の共通の剛性支持ロールの周りで、それの円周方向に間隔をおいて、支持フレームに、支持ロールの半径方向に摺動可能に嵌め込んで、スプリングで半径方向外方へ付勢する一方、雄ねじ部材で半径方向内方へ押込むことによって軸受けブロックを取付けた、複数本の作業ロールのそれぞれを配設して複数段の作業ステーションを構成し、前段側の作業ロールの間欠的な回動作動によって加工を施されたワーク部分が後段側の作業ロールを通過するまでは、後段側の作業ロールの作動を待機させる一方で、前段側の作業ロールによって加工が行われなかったピッチ部分が後段側の作業ロールに到達したときに、その後段側の作業ロールを、前段側の作業ロールから独立させて間欠的に作動させるようにし、相互に隣接するそれぞれの作業ロールの周面に、ともに同一の打抜刃を設け、剛性支持ロールに巻き掛けた長尺のシート状ワークをその支持ロールの周面に弾性的に押圧するニップロールを設けてなるシート状ワークに対する打抜き加工装置。」
2 補正の適否
本件補正のうち特許請求の範囲の請求項2についてする補正は、剛性支持ロールについて、実質上、「平滑な」という限定を、また、シート状ワークについて「長尺の」という限定をそれぞれ付加すると共に、作業ロールについて、実質上、スプリングで半径方向外方へ付勢され、雄ねじ部材で半径方向内方へ押込まれる軸受けブロックを取付けたという事項を付加し、さらに、間欠的に作動させるようにした後段側の作業ロールについて「前段側の作業ロールから独立させて」という事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項2に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。
(1)補正発明
補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に添付した図面の記載からみて、上記1(2)に示す特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定されるとおりの「シート状ワークに対する打抜き加工装置」であると認める。
(2)刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平6-182700号公報(以下「刊行物1」という。)及び特表平11-508830号公報(以下「刊行物2」という。)の記載内容はそれぞれ以下のとおりである。
ア 刊行物1
(ア)刊行物1記載の事項
刊行物1には以下の事項が記載されている。
(ア)-1 段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、印刷された帯状ラベルなどの帯状物の所望部分を打ち抜く帯状物の打ち抜き装置に関するものである。」
(ア)-2 段落【0002】
「【従来の技術】従来からあるラベル印刷機において、印刷された帯状ラベル11の所望部分Mを連続的に打ち抜いていくロータリーダイ12(ロータリーカッター)は、図1に図示したように定速で回動する軸部材13の外周に切断刃S_(1)が突設された構造で、連続的に搬送されてくる帯状ラベル11の所望部分Mを前記切断刃S_(1)により連続的に打ち抜いていくものである。」
(ア)-3 段落【0012】?【0016】
「【実施例】図3は、ラベル印刷機の印刷部に後続される打ち抜き部に採用した本発明の実施例で、以下に説明する。
この場合の打ち抜きローラ2は図2に図示したものと同構造にして同径の打ち抜きローラ2を採用している。
また、打ち抜きローラ2の回動速度、位相及び帯状ラベル(帯状物1)の搬送速度はコンピュータなど適宜な手段により制御されている。
尚、両打ち抜きローラ2の周速度は同一に制御され、また、打ち抜き時における両打ち抜きローラ2の回動速度は帯状ラベルの搬送速度と同一に制御される。打ち抜きローラ2に帯状物1を連続的に通過させる。まず、第2の打ち抜きローラBで図3中のB部分が打ち抜かれ、続いて、第1の打ち抜きローラAで図3中のA部分が打ち抜かれ、この連続で帯状ラベルに連続的に窓孔が形成される。打ち抜きローラA・Bは打ち抜き時には低定速で回動し、打ち抜き後に変速されて高速となり、所定位相で前記低定速に復帰し得るように制御されている(尚、前記低定速に復帰させず、高速回動後停止待機せしめても良い。)。
図3の場合、A部分とB部分の長さは夫々L_(A),L_(B)で、この場合L_(A),L_(B)は同一であり、A部分とB部分との間隔は夫々x,yで、この場合x,yは同一であり、また、第1の打ち抜きローラAと第2の打ち抜きローラBの非切断長さは夫々T_(A),T_(B)で、この場合T_(A),T_(B)は同一であり、第1の打ち抜きローラAの1サイクル長さC_(A)は、L_(A)+T_(A)であり、また、第2の打ち抜きローラBの1サイクル長さC_(B)は、L_(B)+T_(B)であり、この場合両者は同一となる。図3中符号S_(3),S_(4),S_(5),S_(6)は切断刃Sの端部である。」
(ア)-4 段落【0020】?【0021】
「ところで、前述のように、打ち抜きローラA・Bが共に一定速で回動していることを前提にすると、夫々の打ち抜きローラA・Bの1サイクル長さC_(A)・C_(B)を変えることはできない為、それだけ形成し得る窓孔のパターンが減る(尚、最大第1の打ち抜きローラA及び第2の打ち抜きローラBの切断刃間の長さの和以上の長さの窓孔を形成することはできない。)。
ところが、打ち抜きローラA・Bの回動速度を可変可能に構成し、本実施例のように打ち抜きローラA・Bの回動速度を前記したように打ち抜き時には低定速で回動し、打ち抜き後に変速されて高速となり、所定位相で前記低定速に復帰し得るように構成すると、夫々の打ち抜きローラA・Bの1サイクル長さC_(A)・C_(B)を可変せしめることが可能となる為上述の制約は解消され、任意の打ち抜き部分長さを実現できることはもちろん完全に任意の打ち抜き部分同志の間隔が実現されることになり、従来例のように打ち抜きローラをその都度交換することなく、あらゆるパターンの窓孔を形成することが可能なる。即ち、あらゆる大きさの窓孔を任意の間隔で連続的に形成することが可能となる。」
(ア)-5 段落【0027】?【0028】
「以上述べたことは、打ち抜きローラ2を3本,4本,・・・n本にしても全く同様である。
【発明の効果】本発明は上述のように構成したから、あらゆるパターンの打ち抜きを効率良く行うことのできる帯状物の打ち抜き装置を提供することになる。」
(ア)-6 図面
図面の図3を参照すると、相互に隣接するそれぞれの打ち抜きローラA・Bの周面に、ともに同一の切断刃Sを設け、打ち抜きローラAにより打ち抜かれるA部分間の非切断長さT_(A)の真ん中を打ち抜きローラBにより打ち抜かれるB部分とすることにより、帯状物に一定長さで一定ピッチの打ち抜き部分を形成することが見て取れる。
(イ)刊行物1記載の発明
刊行物1記載の事項の中、摘記事項(ア)-3において、括弧内記載されている事項、すなわち、打ち抜きローラが打ち抜き後に高速回動後停止待機する場合に着目すると共に、刊行物1の【図1】に示されているロータリダイ12が1本である従来例のものからみて、【図3】に示されている2本の打ち抜きローラA・Bは、打ち抜き加工される帯状物の水平な送り方向に所定の間隔をおいてそれぞれ支持ロールと対向して配設されているとみるのが相当である。
以上の点を考慮に入れて、刊行物1記載の事項を補正発明に照らして整理すると刊行物1には以下の発明が記載されていると認める。
「打ち抜き加工される帯状物1の水平な送り方向に所定の間隔をおいてそれぞれ支持ロールと対向して2本の打ち抜きローラA・Bを配設し、各打ち抜きローラA・Bは打ち抜き後に停止待機することによって各打ち抜きローラA・Bの1サイクル長さC_(A)・C_(B)を調整すると共に、前段側の打ち抜きローラの1サイクル長さにおける非切断長さの真ん中を後段側の打ち抜きローラで打ち抜くようにし、相互に隣接するそれぞれの打ち抜きローラA・Bの周面に、ともに同一の切断刃Sを設けてなる帯状物の打ち抜き装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)
イ 刊行物2
(ア)刊行物2記載事項
刊行物2には以下の事項が記載されている。
(ア)-1 第7頁第4,5行
「本発明は、帯状のシート、特にプラスチックシートを穿孔するための装置に関する。」
(ア)-2 第16頁第5行?第17頁下から第6行
「第1図には、ローラ対を通過するシート1の側面図が示されている。このローラ対はニードル付ローラ2と対向ローラ3とから成っている。対向ローラ3の外周面4は硬弾性的な材料5、たとえば硬質ゴムから成る層から成っている。ニードル付ローラ2は複数の凹部6を有している。これらの凹部6にはそれぞれ1つのニードル7が収容されており、この場合、ニードル先端部8の規定の区分だけがニードル付ローラ2の外周面9を越えて突出している。シート1がニードル付ローラ2と対向ローラ3とから成るローラ対を通過すると、シート1はニードル7によって突き通される。このことは図面で見てシート1の右側の区分に示した突通し部10により明らかである。
第2図には、ニードル付ローラ2の細部が拡大されて示されている。第1図の実施例と同一の構成部分は同じ符号で示されている。
ニードル7は凹部6に挿入されている。この凹部6は盲孔として穿孔されている。この凹部6は有利には円筒状に形成されているので、円筒状の軸部を備えたニードルが使用可能である。凹部6の底部には、スペーサ部材11が設けられている。このスペーサ部材11の長さによって、ニードル付ローラ2の外周面9から突出したニードル先端部8の突出量が規定可能となる。ニードル7は基部範囲にスリットを備えている。このスリットには、スペーサ部材11の円錐状の心棒12を押し込むことができる。これにより、ニードル7の軸部が拡開され、ニードル7はニードル付ローラ2の凹部6内にしっかりと固定される。
第3図には、概略的に示した装置全体の側面図が示されている。この装置は機械フレーム13を有しており、この機械フレーム13には対向ローラ3が回転可能に支承されている(詳しくは図示しない)。この場合、シート1が矢印15の方向で対向ローラ3に巻き掛かって走行すると、対向ローラ3は軸線14を中心にして回転することができる。さらに変向ローラ16,16′が設けられており、この変向ローラ16,16′により、シート1がこの装置を通過する際にシート1が、図示したように対向ローラ3に確実に巻き掛かることが保証される。
機械フレーム13では、枢着支承部17,17′に支承ビーム18,18′が支承されている。機械フレーム13には作業シリンダ19,19′が支持されており、この作業シリンダ19,19′のピストンロッド20が支承ビーム18,18′に作用する。したがって作業シリンダ19,19′を用いて、それぞれ他方の支承ビームとは無関係に、対応する枢着支承部17;17′を中心にして各支承ビーム18;18′を互いに別個に旋回させることができる。この旋回運動は二重矢印21;21′で示されている。
各支承ビーム18;18′の自由端部には、ニードル付ローラ2;2′が支承されている。第3図から判るように、作業シリンダ19;19′を用いて、予め設定可能な押圧力で両ニードル付ローラ2,2′を対向ローラ3に当て付けることができる。ニードル付ローラ2,2′と対向ローラ3との間を通過するシート1はニードル付ローラ2,2′によって穿孔される。
第3図から判るように、両ニードル付ローラ2,2′は1つの共通の対向ローラ3に対応している。この場合、両ニードル付ローラ2,2′は互いに180°だけずらされて対向ローラ3に対して半径方向に位置決めされている。これにより、一方のニードル付ローラ2によって対向ローラ3に加えられる押圧力は、他方のニードル付ローラ2′によって加えられる逆向きの対向押圧力によって補償される。このことは、対向ローラの不都合な撓み、つまり特に複数のニードル付ローラが片側で相並んだ状態で、長尺の一体の対向ローラユニットを押圧する際に重大な影響を及ぼす撓みを回避するために特に有利である。」
(ア)-3 図面
図面の図3を参照すると、対向ローラ3は、平滑な一本の共通のものであることが見て取れる。
(イ)刊行物2記載の事項
刊行物2記載の事項を補正発明に照らして整理すると刊行物2には以下の事項が記載されていると認める。
「帯状のシートを穿孔するための装置において、回転駆動される、平滑な一本の共通の外周面が硬弾性的な材料5から成る層から成っている対向ローラ3の周りで、それの円周方向に180°間隔をおいて、2本のニードル付ローラ2,2′のそれぞれを配設していると共に、対向ローラ3に巻き掛けた長尺のシート1をその対向ローラ3の周面に確実に巻き掛かることを保証する変向ローラ16,16′を設けていること。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。)
(3)対比
補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
刊行物1記載の発明の「打ち抜き加工される帯状物1」は、補正発明の「シート状ワーク」に相当することが明らかである。
また、刊行物1記載の発明の「打ち抜き加工される帯状物1の水平な送り方向に所定の間隔をおいてそれぞれ支持ロールと対向して2本の打ち抜きローラA・B」は、複数段の作業ステーションを構成していることが明らかであって、「シート状ワークの送り方向に間隔をおいて配設され、複数段の作業ステーションを構成」し、相互に隣接するそれぞれの周面に、ともに同一の切断刃S、すなわち、打抜刃を設けてなる「複数本の作業ロール」であるという限りで、補正発明の「回転駆動される、平滑な一本の共通の剛性支持ロールの周りで、それの円周方向に間隔をおいて、支持フレームに、支持ロールの半径方向に摺動可能に嵌め込んで、スプリングで半径方向外方へ付勢する一方、雄ねじ部材で半径方向内方へ押込むことによって軸受けブロックを取付けた、複数本の作業ロール」と共通している。
また、刊行物1記載の発明において、各打ち抜きローラA・B、すなわち、複数本の作業ロールが打ち抜き後に停止待機することは、前段側の作業ロール及び後段側の作業ロールを間欠的に回動作動させることにほかならない。
そして、刊行物1記載の発明において、前段側の打ち抜きローラの1サイクル長さにおける非切断長さの真ん中を後段側の打ち抜きローラで打ち抜くためには、前段側の作業ロールの間欠的な回動作動によって加工を施されたワーク部分が後段側の作業ロールを通過するまでは、後段側の作業ロールの作動を待機させる一方で、前段側の作業ロールによって加工が行われなかったピッチ部分が後段側の作業ロールに到達したときに、その後段側の作業ロールを、前段側の作業ロールから独立させて間欠的に作動させることが必須である。
さらに、刊行物1記載の発明は「帯状物の打ち抜き装置」として表現されているが、補正発明と同様に「シート状ワークに対する打抜き加工装置」としても表現できるものである。
そうしてみると、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の点で一致しているということができる。
「シート状ワークの送り方向に間隔をおいて、複数本の作業ロールのそれぞれを配設して複数段の作業ステーションを構成し、前段側の作業ロールの間欠的な回動作動によって加工を施されたワーク部分が後段側の作業ロールを通過するまでは、後段側の作業ロールの作動を待機させる一方で、前段側の作業ロールによって加工が行われなかったピッチ部分が後段側の作業ロールに到達したときに、その後段側の作業ロールを、前段側の作業ロールから独立させて間欠的に作動させるようにし、相互に隣接するそれぞれの作業ロールの周面に、ともに同一の打抜刃を設けてなるシート状ワークに対する打抜き加工装置。」
そして、補正発明と刊行物1記載の発明とは、以下の2点で相違している。
ア <相違点1>
補正発明では、「回転駆動される、平滑な一本の共通の剛性支持ロールの周りで、それの円周方向に間隔をおいて」、複数本の作業ロールのそれぞれを配設していると共に、「剛性支持ロールに巻き掛けた長尺のシート状ワークをその支持ロールの周面に弾性的に押圧するニップロールを設けて」いるのに対して、刊行物1記載の発明では、そのようになっていない点。
イ <相違点2>
補正発明では、支持フレームに、支持ロールの半径方向に摺動可能に嵌め込んで、スプリングで半径方向外方へ付勢する一方、雄ねじ部材で半径方向内方へ押込むことによって軸受けブロックを取付けて作業ロールを配設しているのに対して、刊行物1記載の発明では、そのようになっていない点。
(4)相違点の検討
ア <相違点1>について
上記(2)のイ末尾で認定したように刊行物2には「帯状のシートを穿孔するための装置において、回転駆動される、平滑な一本の共通の外周面が硬弾性的な材料5から成る層から成っている対向ローラ3の周りで、それの円周方向に180°間隔をおいて、2本のニードル付ローラ2,2′のそれぞれを配設していると共に、対向ローラ3に巻き掛けた長尺のシート1をその対向ローラ3の周面に確実に巻き掛かることを保証する変向ローラ16,16′を設けていること。」が記載されている。
刊行物2記載の事項における「対向ローラ3」及び「ニードル付ローラ2,2′」は、それぞれ「支持ロール」及び「作業ロール」ということができるものである。
そして、刊行物2記載の上記事項を同じく帯状のシートを加工する技術に関する刊行物1記載の発明に適用して、回転駆動される、平滑な一本の共通の支持ロールの周りで、それの円周方向に間隔をおいて、複数本の作業ロールのそれぞれを配設していると共に、支持ロールに巻き掛けた長尺のシート状ワークをその支持ロールの周面に確実に巻き掛かることを保証するロールを設けるように構成することに格別の困難性は見当たらない。
支持ロールが、補正発明では、剛性支持ロールであるのに対して、上記適用によって構成されるものでは、外周面が硬弾性的な材料から成る層から成っている点では相違しているが、支持ロールとしてどのような性質のものを採用するかは、シート状ワークを、ハーフカットするか、或いは、フルカットするか等に応じて適宜選択すればよい単なる設計的選択事項にすぎない。
また、補正発明では、シート状ワークをその支持ロールの周面に確実に巻き掛かることを保証するためのロールが、シート状ワークをその支持ロールの周面に弾性的に押圧するニップロールであるのに対して、刊行物2記載のものでは、変向ローラが弾性的に押圧するタイプのものであるのかどうか明らかでないが、シート状ワークをその支持ロールの周面に確実に巻き掛かるために、弾性的に押圧するタイプのもの、すなわち、ニップロールとすることはごく自然な設計態様である。
イ <相違点2>について
シート状ワークを対となるロールにより加工する装置において、支持フレームに、支持ロールの半径方向に摺動可能に嵌め込んで、スプリングで半径方向外方へ付勢する一方、雄ねじ部材で半径方向内方へ押込むことによって軸受けブロックを取付けて作業ロールを配設することは、例えば、特開2003-11096号公報(段落【0055】、【0056】、図面の図2参照。)、特公昭38-25273号公報(第1頁左欄第26行?右欄第3行、図面の第1図参照。)等に示されているように従来周知であり、この従来周知の事項を刊行物1記載の発明に適用して補正発明のように構成することに格別の困難性はない。
ウ <補正発明の作用・効果>について
補正発明によってもたらされる効果も、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
エ したがって、補正発明は、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
よって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件出願の発明について
1 本件出願の発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成21年5月1日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲及び明細書並びに願書に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項2に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、上記第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項2に記載されたとおりの「シート状ワークに対する打抜き加工装置」である。
2 刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容は、上記第2の2(2)に示したとおりである。
3 対比・検討
本件出願の発明は、上記第2の2で検討した補正発明から、剛性支持ロールについて、実質上、「平滑な」という限定を、また、シート状ワークについて「長尺の」という限定をそれぞれ削除すると共に、作業ロールについて、実質上、スプリングで半径方向外方へ付勢され、雄ねじ部材で半径方向内方へ押込まれる軸受けブロックを取付けたという事項を削除し、さらに、間欠的に作動させるようにした後段側の作業ロールについて「前段側の作業ロールから独立させて」という事項を削除したものである。
そうすると、本件出願の発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の限定ないし事項を付加する補正発明が上記第2の2(4)エで示したとおり、刊行物1記載の発明、刊行物2記載の事項及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件出願の発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
したがって、本件出願の発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-17 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-04-04 
出願番号 特願2004-103964(P2004-103964)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B26F)
P 1 8・ 121- Z (B26F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 丹治 和幸  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 遠藤 秀明
長屋 陽二郎
発明の名称 シート状ワークに対する打抜き加工方法および装置  
代理人 澤田 達也  
代理人 杉村 憲司  

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