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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1237397
審判番号 不服2009-23773  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-03 
確定日 2011-05-25 
事件の表示 特願2003-305823「遊技島設備の管理システム」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 3月24日出願公開、特開2005- 73810〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願の手続の経緯概要は以下のとおりである。
平成15年 8月29日 出願
平成21年 5月20日 拒絶理由通知
平成21年 7月 8日 手続補正
平成21年 8月27日 拒絶査定
平成21年12月 3日 拒絶査定不服審判請求、手続補正
平成22年 5月 7日 審尋
平成22年 7月 6日 回答
平成22年12月 2日 拒絶理由通知、補正の却下の決定
平成23年 1月31日 手続補正

2.補正後の本願発明
平成23年1月31日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1(以下「本願発明」という。)は以下のように補正された。
「遊技台を一面に複数台並べるとともに遊技台間に遊技媒体貸出機を設置し、
横方向に配列された遊技台の上方近傍に延在する取付板に遊技媒体貸出機に投入された紙幣を遊技台配列方向に搬送を行う紙幣搬送ユニットを連結した紙幣搬送装置を、遊技台に向かって右方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置と遊技台に向かって左方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置の紙幣搬送方向を異にする紙幣搬送装置を設置し、
該紙幣搬送装置の終端に連結して搬送回収されてきた紙幣を整列収納する紙幣スタッカを設置し、
該紙幣スタッカの駆動と回収された紙幣の計数機能を備えたコントローラを設置した遊技島設備において、
遊技島の両面に紙幣搬送方向を異にする紙幣搬送装置をそれぞれ設け、
当該紙幣搬送装置の紙幣搬送ユニットの連結台数と同数の遊技台とによって、遊技島内の遊技台の配置区画が4面構成され、
4面構成された遊技台の配置区画のそれぞれにコントローラが配備され、
配備されたコントローラのうち1つをメインコントローラに仕立て、
当該メインコントローラは、
残余のコントローラを接続し、各遊技台の配置区画に配備された機器の個々にID番号を設定する機能に加え、各遊技台の配置区画に配された紙幣スタッカIDごとの紙幣計数情報と、各遊技台の配置区画に配された遊技媒体貸出機IDごとの売上情報の集中集計管理を行うことを特徴とする遊技島設備の管理システム。」

なお、請求項1の「該紙幣スタッカの駆動と回収された貨幣の計数機能」の記載について、請求項1には、「貨幣」の投入、搬送、及び回収に関する当該記載以外の構成の記載がないので、「貨幣」は「紙幣」の明らか誤記と認められるから、本願発明では、「該紙幣スタッカの駆動と回収された紙幣の計数機能」と読み替えて認定する。

2.引用文献
査定時において引用された特開2002-224391号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。
【0048】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明の各種実施の形態について説明する。図1?図17は、本発明の一実施の形態を示している。本実施の形態にかかる遊技店営業管理システムとしては、パチンコ機などを多数配置した遊技店に設置されるものである。遊技店は一般的には、図7に示すように、大きく分けて遊技場11と、景品交換場12と管理事務所13とから構成されている。図8は、遊技店10に配置される遊技機島2の構成を示している。遊技機島2は、複数台の遊技機1を互いに背中を向けた状態で2列に配置して構成される。また、1列に並ぶ各遊技機1の間に玉貸機3が1台ずつ隣接する遊技機1に挾まれるようにして、複数台配置される。
【0049】遊技機島2は、図7に示すように、適当な間隔、例えば、その間に、それぞれの遊技機島の遊技者が椅子に座って遊技ができ、かつ、椅子に座っている遊技者間を人が通り抜けることができる間隔で遊技店のフロアに配置される。
【0050】玉貸機3は、紙幣等を投入して料金を支払うと、それに見合った個数の遊技媒体、すなわち、遊技機に投入して遊技を行うための媒体、を貸し出す機械である。パチンコ遊技機の場合には、遊技媒体としてパチンコ玉が貸し出される。遊技機島2のほぼ中央部には、図9に示すように、遊技者が獲得したパチンコ玉の計数を行うと共に、パチンコ玉を回収するための玉計数機9が配置される。一方、遊技機島2の一端側には、図示していないが、玉貸機3に投入された紙幣を収容する金庫が設置されている。なお、この金庫の入り口には、収容される紙幣の枚数をカウントする紙幣カウンタ(図示せず)が設けてある。
【0051】また、遊技機1の背面側には、いずれも図示されていないが、各遊技機1および玉貸機3にパチンコ玉を補給する補給機構と、玉貸機3に投入された紙幣を上記金庫に搬送する紙幣搬送装置が設けられる。遊技機島2の長手方向の中央には、各遊技機1に投入されたパチンコ玉を回収して、それを研磨して再び、各遊技機1に補給するためのリフト機構(図示せず)が設けてある。
【0054】遊技客が遊技店に入店し、現金を玉貸機3に投入し、真偽の識別結果が真であれば、玉貸機3の玉計数機によって現金に見合った数のパチンコ玉が計数され、遊技客へ払い出される。投入された現金は紙幣搬送装置によって金庫に入金されかつ計数される。
【0055】このとき、遊技客が投入した現金の金種と金額と紙幣搬送装置によって金庫に搬送された現金の合計金額を表すデータが、管理事務所の情報処理装置100に送信される。
【0056】遊技機島2に設置されている各種遊技設備の管理を行うためのコントローラ(図示せず)が、各遊技機島2に設置されている。このコントローラは、各遊技機1、各玉貸機3、玉計数機9および金庫からそれらの稼働状態を示す情報を取得するようになっている。例えば、各遊技機1からは、当該遊技機が稼働しているか否かを示すステータス情報、入玉数および出玉数の各情報を取得する。また各玉貸機3からは、当該玉貸機が稼働しているか否かを示すステータス情報、投入金額および払出個数の各情報を取得する。玉計数機9からは、計数した玉数の情報を取得する。また金庫からは、収納した紙幣の累計金額を示す情報を取得する。
【0057】また、コントローラは、遊技機島2における稼働状態、すなわち、補給機構、搬送機構の稼働状態の情報をも取得する。特に、補給機構については、補給等の補給状態、異常補給か否かを示す情報を取得する。コントローラは、取得した情報に、その情報の出所源である機器の識別番号、例えば、パチンコ遊技機の台番号、およびその機器が属する遊技機島2の識別子を付したデータを、管理事務所の情報処理装置100に送信する。
【0058】本実施の形態にかかる遊技店営業管理システムは、図1に示すように、情報処理装置100を主要部とするものである。情報処理装置100は、データ収集装置30を介して遊技店内に配置されている遊技設備群40から、それらの稼働状態を示す情報を収集し、営業管理を支援のための処理を行うようになっている。なおデータ収集装置30は、前述したコントローラ等であり、遊技設備群40は、遊技機1、玉貸機3、玉計数機9等である。
【0059】情報処理装置100は、遊技設備群40からそれらの稼働状態を示す情報を取り込んで、蓄積し、管理するためのデータベース部200と、遊技店管理のための支援処理を搭載し、それらのうちから選択された支援処理を、データベース部200に蓄積されている情報を用いて行う管理支援処理部300と、情報の入出力を行うためのユーザインタフェース部400とから構成されている。

摘記した上記の記載から、引用文献1には、
「複数台の遊技機1を互いに背中を向けた状態で2列に配置して構成される遊技機島2を有し、
1列に並ぶ各前記遊技機1の間に1台ずつ、隣接する前記遊技機1に挾まれるようにして、玉貸機3が複数台配置され、
前記遊技機島2の一端側には、前記玉貸機3に投入された紙幣を収容する金庫が設置され、
前記遊技機1の背面側には、前記玉貸機3に投入された紙幣を前記金庫に搬送する紙幣搬送装置が設けられ、
前記金庫の入り口には、収容される紙幣の枚数をカウントする紙幣カウンタが設けられている、遊技店営業管理システムにおいて、
前記遊技機島2に設置されている各種遊技設備の管理を行うためのコントローラが、各遊技機島2に設置されており、
前記コントローラは、各前記遊技機1、各前記玉貸機3、玉計数機9および前記金庫からそれらの稼働状態を示す情報を取得するようになっており、
例えば、前記コントローラは、前記各玉貸機3からは当該玉貸機が稼働しているか否かを示すステータス情報、投入金額および払出個数の各情報を取得し、また、前記金庫からは収納した紙幣の累計金額を示す情報を取得するものであり、
前記コントローラは、取得した前記各情報に、その情報の出所源である機器の識別番号、例えば、パチンコ遊技機の台番号、およびその機器が属する遊技機島2の識別子を付したデータを、管理事務所の情報処理装置100に送信する、
遊技店営業管理システム。」の発明(以下「引用発明」という。)が開示されていると認めることができる。

3.対比
そこで、本願発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「遊技機1」は、本願発明の「遊技台」に相当し、以下同様に、
「玉貸機3」は「遊技媒体貸出機」に、
「1列に並ぶ各前記遊技機1の間に1台ずつ、隣接する前記遊技機1に挾まれるようにして、玉貸機3が複数台配置され」は「遊技台を一面に複数台並べるとともに遊技台間に遊技媒体貸出機を設置し」に、
「1列に並ぶ各前記遊技機1」は「横方向に配列された遊技台」に、
「紙幣搬送装置」は「紙幣搬送装置」に、
「金庫」は「紙幣スタッカ」に、
「コントローラ」は「コントローラ」に、
「遊技機島2」は「遊技島」に、
「識別番号」は「ID番号」に、
「投入金額」は「売上情報」に、
「遊技店営業管理システム」は「遊技島設備の管理システム」に、それぞれ相当する。

また、引用文献1全体の記載等からみて、以下のことが言える。
a.引用発明は、「1列に並ぶ各前記遊技機1の間に1台ずつ、隣接する前記遊技機1に挾まれるようにして、玉貸機3が複数台配置され」、「紙幣搬送装置」は「遊技機1の背面側」に設けられているのであるから、引用発明の「紙幣搬送装置」は少なくとも、一列に並ぶ各遊技機1の「近傍」に設けられていることが明らかである。
そして、「紙幣搬送装置」は、遊技機島2の一端側に設置された金庫に紙幣を搬送するものであるから、引用発明と本願発明とは、「横方向に配列された遊技台の近傍に遊技媒体貸出機に投入された紙幣を遊技台配列方向に搬送を行う紙幣搬送装置を設置している」点で一致する。
b.紙幣搬送装置から搬送された紙幣を金庫に収容する際に、金庫内に紙幣を整列して収納することは普通に行われており、一般的な技術であるから、引用発明の「金庫」についても同様に、紙幣搬送装置から搬送された紙幣においても整列して収容しているものと認められる。
また、引用発明は、遊技機島2の一端側に、金庫が設置されているとともに、紙幣搬送装置が、玉貸機3に投入された紙幣を金庫に搬送するのであるから、引用発明の「金庫」は、「紙幣搬送装置」の終端に連結してあるものといえる。
そうすると、引用発明と本願発明とは、「紙幣搬送装置の終端に連結して搬送回収されてきた紙幣を整列収納する紙幣スタッカ」を設置している点で一致する。
c.引用発明は、「前記遊技機島2に設置されている各種遊技設備の管理を行うためのコントローラが、各遊技機島2に設置され」たものであるから、「該紙幣スタッカの駆動と回収された紙幣の計数機能を備えた」点は別にして、引用発明と本願発明とは、「コントローラを設置した遊技島設備」を備えている点で一致する。
d.引用発明は、遊技機島2内の複数台の遊技機1を、互いに背を向けた状態で2列に配置して構成されており、その1列が本願発明の「遊技台の配列区画」の1面に相当するから、引用発明と本願発明とは、「遊技島内の遊技台の配置区画が複数面構成されている」点で一致する。
e.引用発明の「コントローラ」は、「取得した前記各情報に、その情報の出所源である機器の識別番号、例えば、パチンコ遊技機の台番号、およびその機器が属する遊技機島2の識別子を付したデータを、管理事務所の情報処理装置100に送信する」機能を有しているので、それぞれの機器の個々に、ID番号が設定されていることは明らかである。
そうすると、個々の機器に対してID番号を設定する点は別にして、引用発明と本願発明とは、「各遊技台の配置区画に配備された機器の個々にID番号が設定されている」点で一致する。
f.引用発明の、各遊技機島2に設置された「コントローラ」は、「金庫から収納した紙幣の累計金額を示す情報を取得」し、取得した情報に、その情報の出所源である機器の識別番号(本願発明の「紙幣スタッカID」に相当)を付したデータを管理事務所の情報処理装置100に送信するものといえる。
また、引用発明の「収納した紙幣の累計金額」と本願発明の「紙幣計数情報」は、いずれも「紙幣情報」ということができる。
よって、引用発明と本願発明とは、コントローラが、「紙幣スタッカIDごとの紙幣情報の管理を行う」点で一致する。
g.上記e.にて記載したとおり、各玉貸機3に対して識別番号(ID番号)が設定されていることは明らかである。
また、引用発明の「玉貸機3」は、「1列に並ぶ各前記遊技機1の間に1台ずつ隣接する前記遊技機1に挾まれるようにして」、配置されるのであるから、「玉貸機3」は、各遊技機1の配置区画に配されているものといえる。
さらに、引用発明の各遊技機島2に設置された「コントローラ」は、玉貸機3から「投入金額」の情報(売上情報)を取得し、取得した情報に、その情報の出所源である機器の識別番号(本願発明の「遊技機媒体貸出機ID」に相当)を付したデータを管理事務所の情報処理装置100に送信するものといえる。
そうすると、引用発明と本願発明とは、「コントローラは、各遊技台の配置区画に配された遊技媒体貸出機IDごとの売上情報の管理を行う」点で一致する。

よって、引用発明と本願発明は、
「遊技台を一面に複数台並べるとともに遊技台間に遊技媒体貸出機を設置し、
横方向に配列された遊技台の近傍に、遊技媒体貸出機に投入された紙幣を遊技台配列方向に搬送を行う紙幣搬送装置を設置し、
該紙幣搬送装置の終端に連結して搬送回収されてきた紙幣を整列収納する紙幣スタッカを設置し、
コントローラを設置した遊技島設備において、
遊技島内の遊技台の配置区画が複数面構成され、
各遊技台の配置区画に配備された機器の個々にID番号が設定されており、
コントローラは、
各遊技台の配置区画に配された紙幣スタッカIDごとの紙幣情報と、各遊技台の配置区画に配された遊技媒体貸出機IDごとの売上情報の管理を行う、
遊技島設備の管理システム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
「紙幣搬送装置」について、本願発明の「紙幣搬送装置」では、「横方向に配列された遊技台の上方近傍に延在する取付板に遊技媒体貸出機に投入された紙幣を遊技台配列方向に搬送を行う紙幣搬送ユニットを連結した」ものであるのに対し、引用発明の「紙幣搬送装置」では、本願発明の「遊技台の上方近傍に延在する取付板に、紙幣搬送ユニットを連結した」に相当する構成を有しない点。
[相違点2]
紙幣搬送装置の設置態様として、本願発明では、「遊技台に向かって右方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置と遊技台に向かって左方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置の紙幣搬送方向を異にする紙幣搬送装置を設置」しているのに対し、引用発明の「紙幣搬送装置」はこのような設置態様ではない点。
[相違点3]
本願発明の「コントローラ」は、「該紙幣スタッカの駆動と回収された紙幣の計数機能を備え」ているのに対し、引用発明の「コントローラ」は、このような機能を備えているのか不明な点。
[相違点4]
本願発明では、「遊技島の両面に紙幣搬送方向を異にする紙幣搬送装置をそれぞれ設け」ているのに対し、引用発明では、「紙幣搬送装置」が、遊技機島2の両面にそれぞれ設けられているか明らかでない点。
[相違点5]
遊技島の構成について、本願発明では、「当該紙幣搬送装置の紙幣搬送ユニットの連結台数と同数の遊技台とによって、遊技島内の遊技台の配置区画が4面構成され、4面構成された遊技台の配置区画のそれぞれにコントローラが配備され」ているのに対し、引用発明の「遊技機島2」は、遊技機1を2列に配置して構成され、コントローラは各列に配備されていない点。
[相違点6]
本願発明は、「配備されたコントローラのうち1つをメインコントローラに仕立て、当該メインコントローラは、残余のコントローラを接続し」ているのに対し、引用発明では、「配備されたコントローラのうち1つをメインコントローラに仕立て」ておらず、さらに、それぞれの「コントローラ」が接続されているのかが明らかでない点。
[相違点7]
本願発明は、「メインコントローラ」は、「各遊技台の配置区画に配備された機器の個々にID番号を設定する機能に加え、各遊技台の配置区画に配された紙幣スタッカIDごとの紙幣計数情報と、各遊技台の配置区画に配された遊技媒体貸出機IDごとの売上情報の集中集計管理を行う」のに対し、引用発明では、本願発明の「メインコントローラ」に相当する「コントローラ」を備えていない点。

4.判断
[相違点1について]
実願平2-403195号(実開平4-90389号)のマイクロフィルム(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。
「投入された1,000円紙幣を搬送する搬送装置を、スロットマシーンの上方部または上方より容易に見ることが可能な位置に設置せしめ、投入紙幣を金庫の方向に自動的に送り込み貯蔵して前記紙幣の回収作業をきわめて容易にすると共に、万一1,000円紙幣の搬送装置が故障しても、迅速に故障箇所をみつけ出し、スムーズに搬送装置を修復せしめることができる利点を有している。」(段落【0006】)
また、図1には、横方向に配列されたスロットマシーンaの上方近傍に設置された搬送装置cが図示されており、図2には、島部7の両面にあるスロットマシーンa群にそれぞれ設置された搬送装置cと、島部7の端部に設置され、搬送装置cの終端に連結した金庫8が図示されている。
よって、引用文献2には、「島部7の両面にある横方向に配列されたスロットマシーンaの上方近傍にそれぞれ設置された搬送装置c、及び、島部7の端部に設置され、搬送装置cの終端に連結した金庫8」(以下「引用文献2の技術」という。)が開示されているものと認められる。
そして、引用文献2の技術の「島部7」、「スロットマシーンa」、「搬送装置c」、及び「金庫8」は、本願発明の「遊技島」、「遊技台」、「紙幣搬送装置」、及び「紙幣スタッカ」に、それぞれ相当し、引用発明と引用文献2の技術は、共に、遊技台間に遊技媒体貸出機を設置し、遊技媒体貸出機に投入された紙幣を、紙幣搬送装置を介して紙幣スタッカに搬送回収する技術で共通する。
また、遊技媒体貸出機に投入された紙幣を遊技台配列方向に搬送を行う紙幣搬送ユニットを連結して紙幣搬送装置を構成する技術は、例えば、特開2003?154149号公報(以下「引用文献3」という。特に、【従来の技術】【0007】、【図7】;「合流搬送ユニット141、151」、「中継搬送ユニット142、152」、「紙幣搬送装置140、150」参照)、及び特開平5?17049号公報(以下「引用文献4」という。特に、段落【0008】、【図2】参照)に記載されているとおり、従来周知の技術(以下「周知技術1」という。)であるし、引用文献2には、スロットマシーンaの上方近傍に設置された紙幣搬送ユニットをどのように取り付けているのか詳細な説明がないものの、スロットマシーンa等の遊技台の上方近傍に延在する取付板に紙幣搬送ユニットを取り付けることは、遊技島設備の管理システムの技術の通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって単なる設計事項にすぎない。
よって、引用発明に引用文献2の技術を適用するとともに、周知技術1を考慮して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者にとって容易になし得ることである。

[相違点2、4及び5について]
相違点2、4及び5については、関連するので合わせて検討する。
ここで、相違点4の「遊技島の両面」について、通常、「両面」とは、異なる平面が平行で対となっているものを指すものであり、例えば、本願の図2では、「遊戯面20A」と「遊戯面20B」、若しくは「遊戯面20C」と「遊戯面20D」は、それぞれ同一平面上にあるから、「両面」とはいわず、「遊戯面20A」と「遊戯面20C」、若しくは「遊戯面20B」と「遊戯面20D」に対して「両面」というのが普通である。
そして、請求項1では「遊技島の両面に紙幣搬送方向を異にする紙幣搬送装置をそれぞれ設け」と記載しているから、紙幣搬送方向は対応する遊技台の遊戯面に向かって右方向か左方向かであると認定して、下記のとおり判断を行う。
当該相違点2、4及び5は、要するに、本願発明は、「当該紙幣搬送装置の紙幣搬送ユニットの連結台数と同数の遊技台とによって、遊技島内の遊技台の配置区画が4面構成され、4面のうちの2対の面(図2における「遊戯面A」と「遊戯面B」若しくは「遊戯面C」と「遊戯面D」)は、遊技台に向かって右方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置と遊技台に向かって左方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置の紙幣搬送方向を異にする紙幣搬送装置が設置され、4面構成された遊技台の配置区画のそれぞれにコントローラが配備された構成」であるのに対し、引用発明では、このような構成となっていない点で相違するものである。
しかしながら、引用文献2には、「島部7の両面にある横方向に配列されたスロットマシーンaの上方近傍にそれぞれ設置された搬送装置c」が開示されており(上記[相違点1について]参照)、図2の記載によれば上側の搬送装置cの紙幣搬送方向は上側のスロットマシーンaに向かって右方向、下側の搬送装置cの紙幣搬送方向は下側のスロットマシーンaに向かって左方向であるから、両者は紙幣搬送方向を異にするものである。
さらに、引用文献3の段落【0007】及び図7、並びに特開平9?239140号公報の段落【0024】、【0027】及び図2に記載されるように、紙幣搬送装置を備えた遊技島において遊技台に向かって右方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置と遊技台に向かって左方向へ紙幣を搬送する紙幣搬送装置の紙幣搬送方向を異にする紙幣搬送装置を設置することは、従来周知の技術(以下「周知技術2」という。)である。
そして、引用発明、引用文献2の技術、及び周知技術2は、共に、遊技台間に遊技媒体貸出機を設置し、遊技媒体貸出機に投入された紙幣を、紙幣搬送装置を介して紙幣スタッカに搬送回収する技術で共通する。
よって、紙幣搬送装置の設置位置として、引用文献2の技術を引用発明に適用するとともに周知技術2を採用して遊技台に向かって左右方向に紙幣の搬送方向を異にする紙幣搬送装置を遊技島2の両面にそれぞれ設けて遊技機島2を4面構成とすることは当業者にとって容易になし得ることである。
また、その場合、少なくとも紙幣搬送装置は独立した4系統のものとなるので、それぞれにコントローラを設置することは、当業者が通常行う設計事項であるといえる。
[相違点3について]
貨幣搬送装置を備えた遊技機島において、貨幣回収装置の駆動や貨幣の計数機能を備えるコントローラを設けることは、従来例を挙げるまでもなく周知の技術(以下「周知技術3」という。)である。
よって、引用発明の「コントローラ」に金庫の駆動機能及び紙幣カウンタを用いた紙幣の計数機能を備えさせ、相違点4に係る本願発明の構成を設けることは、当業者にとって容易になし得ることである。

[相違点6及び7について]
相違点6及び7は、関連するので合わせて検討する。
特開2000?5429号公報(以下「引用文献4」という。)には、「また、ここでは各島コントローラSCが、それぞれ別個に管理センター4に対してパスワードを要求することとしたが、遊技店内の複数の島コントローラSCを代表する島コントローラSCが、まとめてパスワードを要求して、管理センター4から通知を受けたパスワードを配信することもできる。」(段落【0056】)との記載があり、この記載の後半部分から、「島コントローラのうちの1つを複数の島コントローラをとりまとめる代表として管理センター4との通信を行う技術」(以下「引用文献4の技術」という。)が記載されているものと認められ、また、引用文献4の請求項1、【課題を解決するための手段】、図1等の記載から、島コントローラは、遊技台を備えた遊技ユニット14を管理するものであることが分かる。
よって、引用文献4の「島コントローラ」は、引用発明の「コントローラ」と同様に、遊技機(遊技台)を管理する点で共通するものであるから、引用文献4の技術を引用発明の「コントローラ」に適用して、複数の「コントローラ」のうちの1つを「メインコントローラ」として、複数の「コントローラ」をとりとめる代表とし、複数のうち残余の「コントローラ」を「サブコントローラ」として、「メインコントローラ」に接続することは当業者にとって容易になし得ることである。
そして、引用発明の「コントローラ」は、遊技機島2に設置された金庫に収納された紙幣の累計金額、及び各玉貸機3の投入金額を取得する機能を有するので、「サブコントローラ」からの情報をとりまとめる「メインコントローラ」に、複数の「サブコントローラ」から得られた各玉貸機3の「投入金額」を集中集計管理させることは、当業者が通常行い得ることである。
また、引用発明の各コントローラから得られた金庫ごとの紙幣計数情報を「メインコントローラ」にて集中管理することについても当業者にとって格別な困難性はない。
さらに、相違点7の「各遊技台の配置区画に配備された機器の個々にID番号を設定する機能」については、引用発明の「コントローラ」が、「取得した情報に、その情報の出所源である機器の識別番号、例えば、パチンコ遊技機の台番号、およびその機器が属する遊技機島2の識別子を付したデータを、管理事務所の情報処理装置100に送信する」機能を有し、かつ、上記e.で認定したとおり、遊技機島2に設置されたそれぞれの機器(遊技機1、玉貸機3、玉計数機9、及び金庫)に、ID番号が設定されていることは明らかであるから、引用発明におけるそれぞれの機器にID番号を設定する機能を設けることに何ら格別な困難性はない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献1?4の技術、及び周知技術1?3から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献1?4の技術、及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおりであるので、本願発明は、引用発明、引用文献1?4の技術、及び周知技術1?3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2011-03-16 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-03-31 
出願番号 特願2003-305823(P2003-305823)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉田 綾子  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 井上 昌宏
川島 陵司
発明の名称 遊技島設備の管理システム  

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