• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1237530
審判番号 不服2008-16923  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-03 
確定日 2011-05-26 
事件の表示 特願2002- 92566「固体電解コンデンサの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月17日出願公開,特開2003-297683〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成14年3月28日の出願であって,平成20年3月24日に手続補正がされ,同年5月28日付けで拒絶査定がされ,それに対して同年7月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同年8月4日に手続補正がされ,その後,平成22年12月17日付けで審尋がされ,平成23年2月17日に回答がされたものである。

第2 平成20年8月4日付けの手続補正について
1 本件補正の内容
平成20年8月4日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は,補正前の特許請求の範囲の請求項1を,補正後の特許請求の範囲の請求項1と補正するものであって,補正前後の特許請求の範囲は,以下のとおりである。

(1)補正前
「【請求項1】 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に,重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて,
前記酸化剤として,o-トルエンスルホン酸塩,m-トルエンスルホン酸塩,p-トルエンスルホン酸塩が混在し,p-トルエンスルホン酸の純度が90%以上の酸化剤を用いることを特徴とする固体電解コンデンサ。
…(中略)…
【請求項4】 前記チオフェン誘導体が,3,4-エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサ。」

(2)補正後
「【請求項1】 陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に,重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて,
前記酸化剤として,o-トルエンスルホン酸塩,m-トルエンスルホン酸塩,p-トルエンスルホン酸塩が混在し,p-トルエンスルホン酸塩の純度が90%以上の酸化剤を用いることを特徴とする固体電解コンデンサ。
…(中略)…
【請求項4】 前記チオフェン誘導体が,3,4-エチレンジオキシチオフェンであることを特徴とする請求項3に記載の固体電解コンデンサ。」

2 補正事項の整理
本件補正の補正事項を整理すると,以下のとおりである。
補正前の請求項1の「p-トルエンスルホン酸の純度」を,補正後の請求項1の「p-トルエンスルホン酸塩の純度」と補正すること。

3 新規事項の追加の有無及び補正の目的の適否について
(1)新規事項の追加の有無について
「p-トルエンスルホン酸塩の純度」が90%以上であることについては,本願の願書に最初に添付した明細書(以下「当初明細書」という。)に「p-トルエンスルホン酸塩の純度が90%以上,より好ましくは95%以上である」(段落【0011】)と記載されている。
したがって,本件補正は,当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから,特許法第17条の2第3項(平成14年法律第24号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第3項をいう。以下同じ。)に規定する要件を満たすものである。

(2)補正の目的の適否について
この補正は,「p-トルエンスルホン酸」とあるのを,「p-トルエンスルホン酸塩」と補正するものであるところ,本願の明細書の段落【0011】の記載に照らして,前者は誤まりであり,後者が正しいことは明らかであるから,特許法第17条の2第4項(平成14年法律第24号改正附則第2条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項をいう。以下同じ。)第3号に掲げる特許請求の範囲の誤記の訂正を目的とするものに該当する。

3 補正の検討のまとめ
したがって,本件補正は特許法第17条の2第3項及び第4項に規定する要件を満たすものであり,補正要件を満たす。

第3 本願発明
本願発明は,平成20年8月4日付けの手続補正の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものである。

「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に,重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて,
前記酸化剤として,o-トルエンスルホン酸塩,m-トルエンスルホン酸塩,p-トルエンスルホン酸塩が混在し,p-トルエンスルホン酸塩の純度が90%以上の酸化剤を用いることを特徴とする固体電解コンデンサ。」

第4 引用例に記載された発明
1 引用例:特開2001-110681号公報
本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開2001-110681号公報(以下「引用例」という。)には,図1とともに,以下の記載がある(下線は当審にて付加したものである。以下同じ。)。

(1)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は,固体電解コンデンサおよびその製造方法に関し,更に詳しくは,導電性高分子を電解質とした固体電解コンデンサに関するものである。
【0002】
【従来の技術】周知のように,巻回型電解コンデンサは,図1に例示されているように,それぞれ電気的な引出しリード1,2を設けた陽極電極箔3と陰極電極箔4をセパレータ紙5を介して巻回してコンデンサ素子6を形成し,実質上陰極となる電解液をセパレータ紙にしみ込ませ,アルミケースに入れ,ゴム等で封止して作られている。」

(2)「【0009】バイエル社から出された3,4エチレンジオキシチオフェンをパラトルエンスルホン酸第二鉄で化学重合して得られるポリエチレンジオキシチオフェンを電解質とするコンデンサが提案されているが(特開平2-15611号,特開平9-293639号公報参照),これらはモノマーと酸化剤を予め混合した液にコンデンサ素子を含浸している。ところが,この方法では酸化剤の濃度が高い場合は重合液の粘度が高く,コンデンサ素子の細孔の中まで混合液を送り込むことが難しく,容量出現率が低く,等価直列抵抗(ESR)も高くなる。また,酸化剤の濃度が低い場合は重合液の粘度が低くなり,コンデンサ素子の細孔の奥まで混合液が入るようになるが,1回の重合では必要な量の電解質を得ることができなく,繰り返しの重合が必要となる。また,得られる電解質も多層になるため,層間での剥離および接触抵抗の増大という問題が発生し,コンデンサの等価直列抵抗(ESR)は7,7,8,8-テトラシアノキノジメタン(TCNQ)錯塩により作成されるコンデンサの値が得られない。」

(3)「【0013】
【発明の実施の形態】本発明の実施の形態について説明すると,本発明に係る固体電解コンデンサおよびその製造方法は,図1に例示された固体電解コンデンサにおいて,有機高分子モノマー(ピロール,チオフェン,アニリンおよびその誘導体等)と酸化剤(パラトルエンスルホン酸第二鉄,ドデシルベンゼンスルホン酸第二鉄等)を重合反応に最適なモル比にて混合し,当該混合液をコンデンサ素子(タンタル焼結体でもよい)に含浸し,減圧によりコンデンサ素子の細孔中の空気を抜き,続いて加圧により細孔の奥深くまで混合液を送り込むことにより充填し,加温により有機高分子モノマーと酸化剤を化学重合反応させて細孔の奥深くまで導電性高分子の電解質を形成する。これにより,粘度が高く,混合液が細孔の奥まで入り難い場合でも確実に混合液を細孔内部に送り込むことが可能となり,容量出現率の高く,等価直列抵抗(ESR)の低い固体電解コンデンサが得られる。
【0014】
【実施例】以下に具体的実施例について説明する。
実施例1
6.3V680μF用(Ф10×10.5mm)の巻き上げ済コンデンサ素子6をアジピン酸アンモン,リン酸系の化成液で化成し,純水洗浄して高温熱処理し,これを2回実施した。その後,再び化成,純水洗浄して,125℃で60分間乾燥した。次いで,コンデンサ素子6を,3,4エチレンジオキシチオフェンモノマーとパラトルエンスルホン酸第二鉄/1-ブタノール(50wt%)を混合した液に到達真空度10?20mmHgで5分間減圧浸漬し,常圧復帰後直ちに49Paに加圧して5分間浸漬した。常圧復帰後40?80℃で3?12時間化学重合反応を実施した。よって得られたコンデンサ素子をアルミケースに挿入し,エポキシ樹脂を入れ,加温硬化させて封止し,スリーブを嵌着して固体電解コンデンサを完成させた。」

(4)「【0020】
【発明の効果】しかして,請求項1の発明によれば,従来の導電性高分子を電解質に用いた固体電解コンデンサに比し,容量出現率,誘電損失(tanδ),等価直列抵抗(ESR)等の電気的諸特性が向上し,かつ静電容量が増大し,その改善効果が顕著である。」

以上を総合すると,引用例には,次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「陽極電極箔3と陰極電極箔4をセパレータ紙5を介して巻回してコンデンサ素子6を形成し,モノマーと酸化剤を予め混合した液にコンデンサ素子を含浸して,導電性高分子を電解質とした固体電解コンデンサにおいて,
酸化剤としてパラトルエンスルホン酸第二鉄を用いた固体電解コンデンサ」

第5 対比
以下に,本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明の「モノマー」は,引用例の記載(上記第4,1,(3)参照)によれば,「有機高分子モノマーと酸化剤を化学重合反応」させていることから,本願発明の「重合性モノマー」に相当し,引用発明の「導電性高分子」は,本願発明の「導電性ポリマー」に相当する。
また,引用例の「1回の重合では必要な量の電解質を得ることができなく,繰り返しの重合が必要となる。また,得られる電解質も多層になる」との記載(上記第4,1,(2)参照)によれば,重合することで,電解質の層が形成されることが分かる。そして,重合した後は導電性高分子は固体であることは明らかであるから,引用発明の重合した後の「電解質」は,本願発明の「固体電解質層」に相当する。
また,酸化剤の「パラトルエンスルホン酸第二鉄」は,「p-トルエンスルホン酸」の金属塩であることは当業者にとって明らかであるから,引用発明の「パラトルエンスルホン酸第二鉄」は,本願発明の「p-トルエンスルホン酸塩」に相当する。

したがって,本願発明と引用発明の一致点と相違点は以下のとおりである。
(一致点)
「陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子に,重合性モノマーと酸化剤とを含浸して導電性ポリマーからなる固体電解質層を形成した固体電解コンデンサにおいて,
前記酸化剤として,p-トルエンスルホン酸塩を用いることを特徴とする固体電解コンデンサ。」

(相違点)
本願発明は,酸化剤が「o-トルエンスルホン酸塩,m-トルエンスルホン酸塩,p-トルエンスルホン酸塩が混在し,p-トルエンスルホン酸塩の純度が90%以上の酸化剤」であるのに対し,引用発明は「p-トルエンスルホン酸塩」のみである点。

第6 判断
1 相違点について
まず,p-トルエンスルホン酸塩を作る方法として,p-トルエンスルホン酸と塩基の酸塩基反応を利用することは,当業者が直ちに想起する方法である。そして,それに用いるp-トルエンスルホン酸を製造する方法として,硫酸とトルエンを反応させて合成することは,以下の周知例1,2にも記載されているとおり,当業者において周知の技術である。

周知例1:特開平1-261359号公報
「実施例1
加熱還流状態に維持したトルエン322部(重量部;以下同じ)に,98%硫酸100部を攪拌しながら1時間に亘って滴下した。
その後も攪拌,還流を続け,反応により生成した水をトルエンと共沸により除去した。
約4時間の後,20部の水が留出し,反応が終了した。
反応液は薄いピンク色で,トルエンにトルエンスルホン酸が均一に溶解した液であった。
得られた反応生成物は,トルエンスルホン酸(p体85%,o体13%,m体2%)であり,ジトルイルスルホンは痕跡量であった。
反応液を2分割し,その1方を70℃に冷却した後,水5.5部を攪拌しながら滴下した。
これを3時間で45℃まで冷却し,析出した結晶を濾過し,45℃に加熱したトルエン50部で洗浄した後,60℃で3時間真空乾燥をして,純度99.7%のp-トルエンスルホン酸-水和物結晶55.0部を得た。」(公報第4ページ右下欄7行?第5ページ左上欄6行)

周知例2:特開平2-1457号公報
「実施例1
加熱還流状態に維持したトルエン322部(重量部;以下同じ)に,98%硫酸100部を攪拌しながら,-時間に亘って滴下した。
その後も撹拌,還流を続け,反応の結果生成した水をトルエンとの共沸により除去し,水分離器で分離した。
これによって,約4時間で計20部の水が留出し,反応は完結した。
得られたトルエンスルホン酸異性体混合物の組成は,p体が85%,o体が13%,m体が2%であり,スルホンは痕跡量であった。
反応終了後の反応液中には,前記トルエンの還流により約230部のトルエンを含んでいるが,このトルエン溶媒を含む反応液を温度70℃に冷却し,水10.8部を攪拌しながら滴下した。
これを約3時間で45℃の温度まで冷却し,析出したp-トルエンスルホン酸の結晶を,4g/m^(3)の水分を含む乾燥窒素で置換したグローブボックス内で濾別した。
さらに,この結晶を,温度45℃のトルエンl00部で洗浄し,60℃の温度で3時間真空乾燥した。
かくして得られた結晶は,110.3部であり,その中のp体純度は99.9%であった。」(公報第3ページ左下欄12行?右下欄16行)

したがって,引用発明において酸化剤であるp-トルエンスルホン酸塩を,周知の製造方法を適用して製造したp-トルエンスルホン酸と塩基から作ったものとすることは,当業者にとって容易であったといえる。
そして,p-トルエンスルホン酸を上記の周知の方法で製造した場合に,構造異性体のo-及び,m-トルエンスルホン酸が混在すること,及びp-トルエンスルホン酸の純度が90%以上に精製されていることは,周知例1,2にも記載されているとおり明らかであり,そのp-トルエンスルホン酸を用いて作られたp-トルエンスルホン酸塩の純度が90%以上になることも,当業者にとって自明の事項である。

したがって,本願発明は,周知の技術事項を勘案することにより,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

第7 むすび
以上のとおりであるから,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶をすべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-25 
結審通知日 2011-03-29 
審決日 2011-04-11 
出願番号 特願2002-92566(P2002-92566)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 秀介佐久 聖子久保田 昌晴  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 西脇 博志
酒井 英夫
発明の名称 固体電解コンデンサの製造方法  
代理人 木内 光春  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ