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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65G
管理番号 1237543
審判番号 不服2009-18655  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-10-02 
確定日 2011-05-26 
事件の表示 特願2000-511369「食料品のための輸送装置」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月25日国際公開、WO99/13729、平成13年10月 2日国内公表、特表2001-516685〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、1998年9月15日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1997年9月15日、オランダ国)を国際出願日とする出願であって、平成12年3月14日付けで国内書面とともに明細書及び要約の翻訳文が提出され、平成20年9月8日付けで拒絶の理由が通知され、これに対し平成21年3月16日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年5月22日付けで拒絶をすべき旨の査定がなされ、これに対し同年10月2日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同時に手続補正書が提出されて明細書を補正する手続補正がなされ、その後、当審において、平成22年4月26日付けで書面による審尋がなされ、これに対し、同年11月18日付けで回答書が提出されたものである。


第2.平成21年10月2日付けの明細書を補正する手続補正
1.本件補正の内容
平成21年10月2日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正により補正される前の(すなわち、平成21年3月16日付けで提出された手続補正書により補正された)明細書の下記(a)に示す特許請求の範囲を下記(b)に示す特許請求の範囲と補正するものを含んでいる。
(a)本件補正前の特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 加工処理を受けるべき食料品を輸送するための輸送装置であって、加工用の食料品のためのキャリアを、加工場所を通過して延びるルートに沿って前進させる少なくとも1つの前進要素に固定した輸送装置において、 上記ルートの少なくとも1つに沿って上記キャリアを導き、かつ上記キャリアが接触して当該キャリアの重量を受けるようにしたガイド手段を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項2】 請求項1による輸送装置において、
上記前進要素は無端で、上記ルートは閉じていることを特徴とする輸送装置。
【請求項3】 請求項1による輸送装置において、
上記ルートは直線で、上記前進要素は互いに逆向きの方向に上記キャリアを交互に輸送するのに適合していることを特徴とする輸送装置。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1つによる輸送装置において、
上記輸送装置は、上記前進要素を導くだけのための第2ガイド手段を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項5】 請求項1乃至4のいずれか1つによる輸送装置において、
上記キャリアは、上記前進要素に回転可能に搭載されていることを特徴とする輸送装置。
【請求項6】 請求項5による輸送装置において、
上記ガイド手段は、上記キャリアの位置に従って夫々のキャリアの回転姿勢を定めるのに適合していることを特徴とする輸送装置。
【請求項7】 請求項5または6による輸送装置において、 上記輸送装置は、上記キャリアを定められた位置に向って動かすための矯正装置を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項8】 請求項1乃至7のいずれか1つによる輸送装置において、
上記ルートは少なくとも第2加工場所を通って延びて、第1および第2加工場所 はト
ンネルによって接続されていて、このトンネルの長さは動作方向におけるキャリアの間隔の最大距離と少なくとも同じであり、動作の横断方向における上記 トンネルの寸法は、この方向においてキャリアから突出し得る製品を含めたキャリアの寸法の1.5倍よりも小さいことを特徴とする輸送装置。
【請求項9】 請求項1乃至8のいずれか1つによる輸送装置において、
上記前進要素は、少なくとも1つのスプリングベルトを備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項10】 請求項4乃至8のいずれか1つによる輸送装置において、
前進手段は、中空リンクを備える少なくとも1つのチェーンからなり、上記各々のキャリアは上記中空リンク内に延びる突起部を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項11】 請求項1乃至10のいずれか1つによる輸送装置において、
上記キャリアは、動作の横断方向に延びる側面において、ワイヤメッシュを夫々備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項12】 請求項11による輸送装置において、
動作方向に平行に延びる上記キャリアの側面は、少なくとも実質的に閉じた壁からなる
ことを特徴とする輸送装置。
【請求項13】 請求項1乃至12のいずれか1つによる輸送装置において、
上記キャリアは、ガイド手段の1部を形成するガイド支持部によって、キャリアを定められた位置にまで導くためのガイド要素を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項14】 請求項13による輸送装置において、
上記キャリアの位置を変えるために、上記ガイド支持部は移動可能であることを特徴とする輸送装置。
【請求項15】 請求項1乃至14のいずれか1つの輸送装置に用いるキャリア。
【請求項16】 請求項13によるキャリアであって、上記食料品を支持するために、動作の横断方向に延びる側面に配置されたワイヤメッシュを備えるキャリアにおいて、
上記キャリアは、ガイド要素を備えることを特徴とするキャリア。
【請求項17】 請求項16によるキャリアにおいて、
上記ガイド要素は、上記キャリアの外側に配置されていることを特徴とするキャリア。
【請求項18】 請求項16または17によるキャリアにおいて、
上記ワイヤメッシュは、65%以上の通過率を有するように製造されていることを特徴とするキャリア。
【請求項19】 請求項16乃至18のいずれか1つによるキャリアであって、
食料品を支持するためのワイヤメッシュを備えるキャリアにおいて、 上記ワイヤメッシュは、織られていることを特徴とするキャリア。
【請求項20】 請求項16乃至19のいずれか1つによるキャリアにおいて、
上記ワイヤメッシュは、最大で0.25WK-1m-1の熱伝導率を有する材料から製造さ
れていることを特徴とするキャリア。
【請求項21】 請求項16乃至20のいずれか1つによるキャリアにおいて、
上記ワイヤメッシュは、ポリエステルのメッシュなどのプラスチックメッシュであることを特徴とするキャリア。
【請求項22】 請求項16乃至21のいずれか1つによるキャリアにおいて、
上記ワイヤメッシュは、動作の横断方向に延びる端部が、容器の中に収容されていることを特徴とするキャリア。
【請求項23】 請求項22によるキャリアにおいて、
上記容器は、上記ガイド要素に取外し可能に連結されていることを特徴とするキャリア。
【請求項24】 請求項16乃至24のいずれか1つによるキャリアにおいて、 上記ガイド要素は、プラスチックから製造されることを特徴とするキャリア。
【請求項25】 請求項23によるキャリアに用いられるガイド要素。
【請求項26】 請求項1乃至15のいずれか1つによる加工処理のために食料品を輸送するための輸送装置を、少なくとも2つ備える複合輸送装置において、
両方の輸送装置は、集合積換え装置によって連結されていることを特徴とする複合輸送装置。
【請求項27】 請求項26による複合輸送装置であって、請求項1乃至16のいずれか1つによる輸送装置を少なくとも2つ備える複合輸送装置において、
上記積換え装置は、1部において平行に延びた上記両方の輸送装置のルートによって形成されて、平行の軌道におけるガイド手段は、第1輸送装置のキャリアの 中身が第2輸送装置のキャリアに移されるように、キャリアの位置を決定するのに適合していることを特徴とする複合輸送装置。
【請求項28】 請求項27による複合輸送装置において、
上記両方の輸送装置のルートは、第1輸送装置のキャリアの中身が第2輸送装置のキャリアに移されるように延びていることを特徴とする複合輸送装置。
【請求項29】 請求項27または28による複合輸送装置において、
上記平行の軌道は、弧をなして延びることを特徴とする複合輸送装置。
【請求項30】 請求項26乃至29のいずれか1つによる複合輸送装置において、
第1輸送装置から第2輸送装置に食料品を積換える第1積換え装置と、第2輸送装置から第1輸送装置に食料品を積換える第2積換え装置とによって特徴づけられる複合輸送装置。
【請求項31】 供給手段によって積載装置に供給される食料品を、輸送装置のキャリアの中に積載するための積載装置であって、上記キャリアは請求項1乃至15のいずれか1つの輸送装置の1部を形成しているキャリアか、あるいは請求項16乃至24のいずれか1つによるキャリアであり、上記供給手段から上記キャリアに食 料品を移動するための積換え手段を備える積載装置において、
上記積換え手段は、閉じたルートに沿って駆動手段によって駆動されるスライド要素を備え、
上記ルートは1つの部分を有し、その部分において、上記供給手段によって供給された食料品が、上記キャリアの中に上記スライド要素によって移されることを 特徴とする積載装置。
【請求項32】 請求項31による積載装置において、
上記スライド要素は、上記ルートをたどるときに、鉛直面に位置する通路をたどることを特徴とする積載装置。
【請求項33】 請求項31または32による積載装置において、
上記ルートは実質的に水平な部分を有し、その部分において、上記スライド要素が食料品を移すことを特徴とする積載装置。
【請求項34】 請求項33による積載装置において、
上記スライド要素は、最下端にスコップ要素を備えることを特徴とする積載装置。
【請求項35】 請求項33または34による積載装置において、
上記スライド要素は、最初に加速されて、その後、上記ルートの実質的に水平な部分をたどる間に減速されることを特徴とする積載装置。
【請求項36】 請求項31乃至35のいずれか1つによる積載装置において、
上記スライド要素は、上記ルートの1部をたどる間、上記運搬装置の容器を実質的に覆うように駆動手段に接続されていることを特徴とする積載装置。
【請求項37】 請求項36による積載装置において、
上記スライド要素は、上記ルートの1部において、比較的遅い速度を有するか、あるいは静止したままであることを特徴とする積載装置。
【請求項38】 請求項31乃至36のいずれか1つによる積載装置において、
上記駆動手段は、回転駆動可能なクランクを有する棒の集合体からなることを特徴とする積載装置。
【請求項39】 請求項31乃至38のいずれか1つによる積載装置において、
上記供給手段は、上記輸送装置の輸送方向の横断方向に延びるコンベヤベルトを備えることを特徴とする積載装置。
【請求項40】 少なくとも部分的に湾曲した形状を有する生産部材と、請求項31乃至39のいずれか1つによる供給手段によって形成されて上記生産部材に連結する輸 送装置とからなる生産装置において、
上記輸送装置は、少なくとも1部分で上記生産部材と共に湾曲していることを特徴とする生産装置。
【請求項41】 請求項40による生産装置において、
上記生産部材は、ソーセージ製造装置のクリンパホイールによって形成されていることを特徴とする生産装置。
【請求項42】 請求項1乃至14のいずれか1つによる輸送装置を備えるソーセージ製造装置において、
加工装置は、乾燥装置に形成されていることを特徴とするソーセージ製造装置。
【請求項43】 請求項42によるソーセージ製造装置において、
輸送装置は、請求項26乃至30のいずれか1つによる複合輸送装置であり、第1加工装置は、乾燥装置に形成されていることを特徴とするソーセージ製造装置。
【請求項44】 請求項43によるソーセージ製造装置において、
第2加工装置は、燻製装置に形成されていることを特徴とするソーセージ製造装置。
【請求項45】 請求項42によるソーセージ製造装置において、
ソーセージを曲げるための曲げ装置によって特徴づけられるソーセージ製造装置。
【請求項46】 請求項43によるソーセージ製造装置において、
曲げ装置は、通過するソーセージを選択的に曲げる、または曲げないように適合されていることを特徴とするソーセージ製造装置。
【請求項47】 請求項45または46によるソーセージ製造装置において、
上記ソーセージ曲げ装置の前には、ソーセージの位置決めをする位置決め装置があることを特徴とするソーセージ製造装置。
【請求項48】 請求項47によるソーセージ製造装置において、
上記位置決め装置は、ソーセージが浮いた状態で位置決めするのに適合していることを特徴とするソーセージ製造装置。」

(b)本件補正後の特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 加工処理を受けるべき食料品(15)を輸送するための輸送装置であって、加工用の食料品のためのキャリア(32)を、加工場所(5、6、7、9)を通過して延びるルートに沿って前進させる少なくとも1つの前進要素(31)に固定した輸送装置(4,8)において、
上記ルートの少なくとも1つに沿って、上記前進要素に回転可能に搭載された上記キャリア(32)を導き、かつ上記キャリアが接触して当該キャリアの重量を受けるようにし、かつ上記キャリア(32)の位置に従って夫々のキャリアの回転姿勢を定めるのに適合したガイド手段(33)を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項2】 請求項1による輸送装置(4,8)において、
上記前進要素(31)は無端で、上記ルートは閉じていることを特徴とする輸送装置。
【請求項3】 請求項1による輸送装置(4,8)において、
上記ルートは直線で、上記前進要素(31)は互いに逆向きの方向に上記キャリア(32)を交互に輸送するのに適合していることを特徴とする輸送装置。
【請求項4】 請求項1乃至3のいずれか1つによる輸送装置(4,8)において、
上記輸送装置は、上記前進要素(31)を導くだけのための第2ガイド手段(33)を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項5】 請求項1による輸送装置(4,8)において、 上記輸送装置は、上記キャリア(32)を定められた位置に向って動かすための矯正装置(77)を備えることを特徴とする輸送装置。
【請求項6】 請求項1乃至5のいずれか1つによる輸送装置(4,8)において、
上記ルートは少なくとも第2加工場所(6)を通って延びて、第1および第2加工場所 (5,6)はトンネル(42)によって接続されていて、このトンネルの長さは動作方向におけるキャリア(32)の間隔の最大距離と少なくとも同じであり、動作の横断方向における上記 トンネルの寸法は、この方向においてキャリアから突出し得る製品(15)を含めたキャリア(32)の寸法の1.5倍よりも小さいことを特徴とする輸送装置。
【請求項7】 請求項1乃至6のいずれか1つによる加工処理のために食料品(15)を輸送するための輸送装置(4,8)を、少なくとも2つ備える複合輸送装置において、
両方の輸送装置は、集合積換え装置(43、54)によって連結されていることを特徴とする複合輸送装置。
【請求項8】 請求項7による複合輸送装置であって、請求項1乃至6のいずれか1つによる輸送装置(4,8)を少なくとも2つ備える複合輸送装置において、
上記積換え装置(43、54)は、1部において平行に延びた上記両方の輸送装置(4,8)のルートによって形成されて、平行の軌道におけるガイド手段(33)は、第1輸送装置(4)のキャリア(32)の 中身が第2輸送装置(8)のキャリア(32)に移されるように、キャリアの位置を決定するのに適合していることを特徴とする複合輸送装置。
【請求項9】 請求項8による複合輸送装置において、
上記両方の輸送装置(4,8)のルートは、第1輸送装置(4)のキャリア(32)の中身が第2輸送装置(8)のキャリア(32)に移されるように延びていることを特徴とする複合輸送装置。
【請求項10】 請求項1乃至6のいずれか1つによる輸送装置(4,8)を備えるソーセージ製造装置(1)において、
加工装置は、乾燥装置に形成されていることを特徴とするソーセージ製造装置。
【請求項11】 請求項10によるソーセージ製造装置(1)において、
輸送装置(4,8)は、請求項7乃至9のいずれか1つによる複合輸送装置であり、第1加工装置(5)は、乾燥装置に形成されていることを特徴とするソーセージ製造装置。
【請求項12】 請求項11によるソーセージ製造装置(1)において、
第2加工装置(6)は、燻製装置(46,55)に形成されていることを特徴とするソーセージ製造装置。」(アンダーラインは補正個所を示すためのものである。)

2.本件補正の目的
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の請求項1を引用した請求項5をさらに引用した請求項6に係る発明と実質的に同一であり、また、本件補正により本件補正前の請求項1、5、6は削除されたから、本件補正は、平成18年法律第55号附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。


第3.原査定の拒絶の理由に引用された引用文献
1.特開昭49-21881号公報(以下、「引用文献1」という。)
(1)引用文献1の記載事項
引用文献1には、次の事項が図面とともに記載されている。なお、引用文献1の明細書及び図面は、昭和51年7月21日付けで補正されている。
(ア)「図面について説明すると、(1)はエンドレスに張設せるチエンであつて、図面の如く配設された(2)のチエンホイルに懸回されて多段循環をなすようになつている。(3)は箱型容器であつて箱の両側中央上部に(6)のピンが取付いており、(1)のチエンのリングプレートの中央部に開けられた孔(11)、即ちピボツトに差込まれて(3)の箱型容器は懸垂され、かつ、けん引されるようになつている。(4)は(7)の水平走行レール上を走行する中央車輪であつて、(6)のピンを廻転軸として取付けられている。(5)は補助用車輪であつて、(3)の箱型容器に(4)の中央車輪を中心とし、両側に等距離に同一水平面位置に夫々2個宛取付けられていて、(7)の水平走行レール上に乗り(3)の箱型容器の水平を保持する。」(昭和51年7月21日付けで補正された公報第2ページ右上欄第17行ないし同ページ左下欄第11行)
(イ)「本発明を実施せる結果、比較的簡単容易な方法を以つてピボツト式チエンコンベアーに第1図(イ)又は第1図(ロ)の如く箱の深さが浅い場合にも、深い場合にも箱に相当重量物を積載し相当の高速運転をなすことができるので、比較的小なるチエンを用い多段循環式に箱型容器を取付けたチエンコンベヤーを円滑に高速に相当の重荷重の許に一般の物資の格納倉庫、冷蔵庫、乾燥室或いは蚕の飼育装置等に利用できるようになつた。」(昭和51年7月21日付けで補正された公報第3ページ左下欄第20行ないし同ページ右下欄第9行。なお、半角の「イ」及び「ロ」は全角で代用している。)

(2)引用文献1に記載された発明
上記(1)及び第1ないし3図の記載を総合すると、引用文献1には、
「物資を輸送するためのピボット式バケットチエンコンベヤーであって、物資のための箱形容器(3)を、ルートに沿って前進させる少なくとも1つのチエン(1)に固定したピボット式バケットチエンコンベヤーにおいて、
上記ルートの少なくとも1つに沿って、上記チエン1に回転可能に搭載された上記箱形容器(3)を導き、かつ上記箱形容器(3)が接触して当該箱形容器(3)の重量を受けるようにした水平走行レール(7)を備えるピボット式バケットチエンコンベヤー。」
なる発明(以下、「引用文献1に記載された発明」という。)が記載されている。

2.特開昭52-33276号公報(以下、「引用文献2」という。)
(1)引用文献2の記載事項
引用文献2には、次の事項が図面とともに記載されている。
(カ)「図面に於いて、ピボテツドバケツトコンベヤ(1)は公知の如く等間隔を存して平行し且つ周回する2条のチエーン走行ガイド(10)(10)に、バケツト(3)に合せて等間隔にピボツト(21)(21)を内向きに対向突設した搬送用エンドレスチエーン(2)(2)を摺動可能に係合しており、対向するピボツト(21)(21)間に搬送用バケツト(3)を回転自在に枢止している。」(公報第2ページ左上欄第7ないし13行)
(キ)「搬送用バケツト(3)は、前壁(31)及び後壁(32)を互いに傾斜させ底部を狭め開口面を拡大した筐状をなし、…(中略)…一方の側壁(33)の前部隅部には反転用突子(38)及び他方の側壁(33)の後部隅部にはラツプチエンジ用突子(39)を夫々突設しており、両突子(38)(39)をコンベア経路適所に配設せるトリツパ(4)、ガイドレール(5)に適宜係合させることによつて上記ピボツト(21)を中心にバケツト(3)を傾動、回転せしめバケツト(3)の反転、或いはラツプチエンジを行なうものである。」(公報第2ページ左上欄第14行ないし同ページ右上欄第10行)
(ク)「空荷バケツト(3)(3)は反転してコンベヤ経路の復通路(16)を移行してガイドレール(5)にて適宜ラッップチエンジを行い」(公報第3ページ左上欄第4ないし6行)

(2)上記(1)及び図面からわかること
上記(1)(キ)及び(ク)並びに第1図から、「ガイドレール(5)」は、「バケツト(3)が接触して当該バケツト(3)の重量を受けるようにし、かつ上記バケツト(3)の位置に従って夫々のバケツト(3)の回転姿勢を定めるのに適合し」ていることがわかる。

(3)引用文献2に記載された発明
上記(1)及び(2)並びに図面の記載を総合すると、引用文献2には、
「搬送物を搬送するための搬送装置であって、搬送物のためのバケツト(3)をルートに沿って前進させる2条の搬送用エンドレスチエーン(2)(2)に固定した搬送装置において、
上記ルートの少なくとも1つに沿って、上記搬送用エンドレスチエーン(2)(2)に回転可能に搭載された上記バケツト(3)を導き、かつ上記バケツト(3)が接触して当該バケツト(3)の重量を受けるようにし、かつ上記バケツト(3)の位置に従って夫々のバケツト(3)の回転姿勢を定めるのに適合したガイドレール(5)を備える搬送装置。」
なる発明(以下、「引用文献2に記載された発明」という。)が記載されている。

3.対比
本願発明と引用文献1に記載された発明とを比較すると、引用文献1に記載された発明における「ピボット式バケットチエンコンベヤー」は、その技術的意義からみて、本願発明における「輸送装置」に相当し、以下同様に、「箱形容器(3)」は「キャリア(32)」に、「水平走行レール(7)」は「ガイド手段(32)」に、それぞれ相当する。
また、引用文献1に記載された発明における「物資」は、「搬送物」という限りにおいて、本願発明における「加工処理を受けるべき食料品(15)」に相当する。
してみると、本願発明と引用文献1に記載された発明は、
「搬送物を輸送するための輸送装置であって、搬送物のためのキャリアを、ルートに沿って前進させる少なくとも1つの前進要素に固定した輸送装置において、
上記ルートの少なくとも1つに沿って、上記前進要素に回転可能に搭載された上記キャリアを導き、かつ上記キャリアが接触して当該キャリアの重量を受けるようにしたガイド手段を備える輸送装置。」
の点で一致し、以下の(1)及び(2)の点で相違している。
(1)「搬送物」が、本願発明においては「加工処理を受けるべき食料品」であるのに対して、引用文献1に記載された発明においては「物資」にすぎない点(以下、「相違点1」という。)。
(2)「ガイド手段」が、本願発明においては「キャリアの位置に従って夫々のキャリアの回転姿勢を定めるのに適合し」ているのに対して、引用文献1に記載された発明においては、そのようにはなっていない点(以下、「相違点2」という。)。

4.相違点1及び2についての判断
(1)相違点1について
「搬送物」としてどのようなものを選択するかは、設計事項にすぎない。なお、「加工処理を受けるべき食料品を輸送するための輸送装置」は周知である(必要であれば、原査定の拒絶の理由に引用した実願昭61-145283号(実開昭63-52810号)のマイクロフィルム、特開平8-169518号公報を参照されたい。)。
(2)相違点2について
搬送装置において、「ガイド手段」を「キャリアの位置に従って夫々のキャリアの回転姿勢を定めるのに適合」するようにすることは、引用文献2に記載された発明が備えている。そして、引用文献1に記載された発明において、引用文献2に記載された発明を適用することにより、相違点2に係る本願発明の発明特定事項とすることは当業者が容易に想到することができたことである。
なお、搬送装置において、「ガイド手段」を「キャリアの位置に従って夫々のキャリアの回転姿勢を定めるのに適合」するようにすることは、平成22年4月26日付けの書面による審尋において提示した前置報告書に記載されているように、実願昭61-145283号(実開昭63-52810号)のマイクロフィルム、実願昭61-140189号(実開昭63-45710号)のマイクロフィルム、特公昭47-25674号公報、特開昭56-70205号公報及び特開平5-330622号公報にも記載されている。

そして、本願発明を全体としてみても、その作用効果は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明から当業者が予測できる範囲のものである。

5.まとめ
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。


第4.回答書における補正案に対する付記
平成22年11月18日付けで提出された回答書において、「新請求項1の補正案」なるものが記載されているので、その特許性について一応検討する。
当該補正案なるものは、上記平成21年10月2日付けの明細書を補正する手続補正によって補正された請求項1に(キャリアの)「前記回転によりキャリア内の食料品の位置を変化させ、」を追加しようとするものである。しかしながら、キャリアを回転させれば、そのキャリア内の物の位置が変化することは、ほとんどの場合に生ずることである(例えば、先に提示した特開平8-169518号公報の特に図3を参照されたい。)から、当該補正案なるものに進歩性は認められない。なお、上記追加しようとする事項は、出願当初の明細書又は図面に明記されているものではないので、いわゆる新規事項の追加となるおそれが皆無であるとはいえない。
したがって、「新請求項1の補正案」なるものも、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
 
審理終結日 2010-12-14 
結審通知日 2010-12-21 
審決日 2011-01-05 
出願番号 特願2000-511369(P2000-511369)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 見目 省二  
特許庁審判長 深澤 幹朗
特許庁審判官 金澤 俊郎
鈴木 貴雄
発明の名称 食料品のための輸送装置  
代理人 中馬 典嗣  
代理人 竹沢 荘一  
代理人 森 浩之  
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