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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1237546
審判番号 不服2009-25791  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-12-25 
確定日 2011-05-26 
事件の表示 特願2003-114738「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-313613〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成15年4月18日の出願であって、平成21年9月29日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成21年12月25日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正がされ、当審において、平成22年10月7日付で、平成21年12月25日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶の理由が通知され、これに対し平成22年12月8日付けで手続補正がされた。

2.本願発明
平成22年12月8日付けの手続補正により特許請求の範囲は、
「【請求項1】第1の始動検知手段における遊技球の検知を契機に行われる第1の変動演出によって導出される図柄組み合わせを構成する第1図柄と、第2の始動検知手段における遊技球の検知を契機に行われる第2の変動演出によって導出される図柄組み合わせを構成する第2図柄とを同一の表示手段における単一の表示領域内に表示可能とされた遊技機であって、前記表示領域の対向する側縁のうちの一方から他方に達するまで前記第1図柄を変動させる第1の変動演出を表示する第1図柄の表示領域と、複数の前記第2図柄の表示領域とを、前記単一の表示領域内に設け、当該複数の第2図柄の表示領域は、特定の第2の始動検知手段による遊技球の検知に基づき行われる前記第2の変動演出によって導出される図柄組み合わせの構成図柄を表示する領域であり、当該各第2図柄の表示領域には1列又は複数列の第2図柄が表示されると共に、前記各第2図柄の表示領域を、前記第1図柄の変動方向に対して直交する方向で全列の第1図柄を挟んだ外側であり、かつ前記表示手段の単一の表示領域における角部又は角部近傍に固定した状態で離間配置した遊技機。
【請求項2】前記第1の変動演出によって導出される図柄組み合わせは3列の第1図柄によって構成され、前記第1の変動演出によって導出される図柄組み合わせが、前記3列のうちの中列を挟んだ2列の第1図柄でリーチを形成する場合には、前記2列の第1図柄が前記角部又は角部近傍から離れた位置で縮小表示され、前記第2図柄の各表示領域は、前記縮小表示される第1図柄に重ならない位置に配置された請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】前記縮小表示される第1図柄は、前記単一の表示領域の一方の側縁寄りで縮小表示され、前記第2図柄の各表示領域は、前記単一の表示領域の他方の側縁寄りに配置された請求項2に記載の遊技機。」
と補正された。
そして、上記請求項1に係る発明を、以下「本願発明」という。

3.引用文献に記載された事項
当審が通知した拒絶の理由において引用文献1として引用した特開2001-346974号公報には、図面とともに、以下の記載がある。

(ア)「【0013】図柄表示ユニット2の区切り壁23によって囲まれた内側には、縦横に十字に特別図柄表示部3が配置され、特別図柄表示部3は、左方の左特別図柄表示部4と、縦方向に配置される中特別図柄表示部6と右方の右特別図柄表示部5とに区分され、さらに、中特別図柄表示部6は、上より下に向かって最上部6a,中上部6b,中下部6c,最下部6dの4つに区分され、中特別図柄表示部6の中下部6cは左特別図柄表示部4と右特別図柄表示部5との間に位置し、左特別図柄表示部4と中特別図柄表示部6の中下部6cと右特別図柄表示部5とは横一列となっている。そして、左特別図柄表示部4の下側には、左普通図柄表示部12が配置され、右特別図柄表示部5の下側には右普通図柄表示部13が配置されている。さらに、左普通図柄表示部12の下側と右普通図柄表示部13には、前述した普通電動役物7よりなる第1種始動口9への遊技球の入賞個数を最高4個迄点灯表示する記憶数表示LED19が2個ずつ配設されている。」

(イ)「【0019】第1種始動口入賞検出スイッチSW1,普通図柄作動スイッチSW2,SW2大入賞口入賞検出スイッチSW3,特定領域入賞検出スイッチSW4の各々は、スイッチ検出部33を介してCPU30に接続され、また、左,中,右図柄表示部4,6,5及び左,右普通図柄表示部12,13の各々は各LED表示回路37を介してCPU30に接続され、CPU30により個別にまたは同時に駆動制御されるようになっている。普通電動役物7を開閉駆動する普通電動役物開放ソレノイドSOL1はソレノイド駆動回路35を介しCPU30に接続され、大入賞口8を開閉駆動する大入賞口開閉ソレノイドSOL2は、ソレノイド駆動回路36を介しCPU30に接続され、CPU30により個別にまたは同時に駆動制御されるようになっている。また、クロック・リセット回路38はCPU30の処理周期を規定する。」

(ウ)「【0032】図11乃至図16に示すタスク2の処理は、左ゲート10または右ゲート11への遊技球通過検出処理と、左右ゲート10,11への遊技球通過検出による左,右普通図柄表示部12,13の図柄変動に関する処理及び左,右普通図柄表示部12,13における停止図柄の図柄一致に基づく第1種始動口9としての普通電動役物7の開放動作に関する処理である。
【0033】タスク2の処理を開始したCPU30は、ステップb1乃至ステップb9迄の処理において左普通図柄及び右普通図柄に関する左普通図柄用乱数データの値と右普通図柄用乱数データの値を作成する。
【0034】CPU30は、左普通図柄データ記憶レジスタR1の値をタスク2の処理周期毎に1つインクリメントし(ステップb1)、左普通図柄データ記憶レジスタR1の値が10に達したか否かを判別して(ステップb2)、判定結果が偽ならばステップb4に移行する一方、左普通図柄データ記憶レジスタR1の値が10に達すると、左普通図柄データ記憶レジスタR1の値を0クリアして(ステップb3)、ステップb4に移行する。この結果、左普通図柄データ記憶レジスタR1には、0乃至9の値のうちのいずれかが記憶される。
【0035】ステップb4に移行したCPU30は、左普通図柄処理カウンタC6の値を1つインクリメントし(ステップb4)、次いで、左普通図柄処理カウンタC6の値が10に達したか否かを判別し(ステップb5)、ステップb5の処理の判定結果が偽であるならばステップb10に移行する一方、左普通図柄処理カウンタC6の値が10に達している場合には、CPU30は、左普通図柄処理カウンタC6の値を0セットして初期化し(ステップb6)、右普通図柄データ記憶レジスタR2の値を1つインクリメントし(ステップb7)、右普通図柄データ記憶レジスタR2の値が10に達したか否かを判別して(ステップb8)、判定結果が偽ならばステップb10に移行する一方、右普通図柄データ記憶レジスタR2の値が10に達すると、右普通図柄データ記憶レジスタR2の値を0クリアして(ステップb9)、ステップb10に移行する。この結果、右普通図柄データ記憶レジスタR2には、0乃至9の値のうちのいずれかが記憶される。
【0036】ここで、左普通図柄処理カウンタC6の値は、毎回の左普通図柄データ記憶レジスタR1の値を1つインクリメントする処理の後に1つ更新されるカウンタであり、左普通図柄データ記憶レジスタR1の値が10回更新されると、左普通図柄処理カウンタC6の値も10となって、右普通図柄データ記憶レジスタR2の値を更新する処理が行われる。即ち、左普通図柄データ記憶レジスタR1の値が10回更新されると、右普通図柄データ記憶レジスタR2の値が1回更新されることとなる。」

(エ)「【0039】ステップb10以降の処理では、CPU30は、普通図柄動作フラグfaの現在値に従って、左ゲート10あるいは右ゲート11への遊技球の通過が検出されれば左,右普通図柄表示部12,13の図柄変動を開始し、停止された左,右普通図柄表示部12,13(当審で「15,16」は「12,13」の誤記と認めた。)の図柄が左右で同じ図柄となる場合には、普通電動役物7の開閉動作を行う。
【0040】普通図柄動作フラグfaの値は、0で左,右ゲート10,11への遊技球の通過待ち、1で左,右普通図柄表示部12,13の変動処理中、2で右普通図柄表示部13の変動処理中、3及び4で普通電動役物7の開閉動作処理中を規定するものである。CPU30は、普通図柄動作フラグfaの現在値をステップb10,ステップb17,ステップb25及びステップb35の判別処理により判定する。
【0041】CPU30は、まず普通図柄の変動を行うことが可能であるか否かを、普通図柄動作フラグfaの値が0であるか否かを判別することにより判定する(ステップb10)。普通図柄動作フラグfaの値が0であれば、左,右ゲート11,12への遊技球の通過待ちであるので、普通図柄作動スイッチSW2,SW2のいずれかからの信号入力があるか否かを判別し(ステップb11)、普通図柄作動スイッチSW2よりの信号入力がある場合には、左普通図柄データ記憶レジスタR1と右普通図柄データ記憶レジスタR2の各値を左確定普通図柄データ記憶レジスタr3と右確定普通図柄データ記憶レジスタr4の各々に格納して記憶し(ステップb12)、普通図柄の変動を開始するべく、変動時間を規定するパラメータt1に所定値Aを設定すると共に(ステップb13)、タイマT1を作動させて経過時間の測定を開始し(ステップb14)、普通図柄動作フラグfaの値を1に切替え(ステップb15)、左,右普通図柄の変動処理を開始し(ステップb16)、当該周期の処理を終了する。
【0042】ステップb11の判別処理において、普通図柄作動スイッチSW2,SW2のいずれかからの信号入力が検出されない場合には、CPU30は、当該周期のタスク2の処理を終了する。この場合には、普通図柄の図柄変動は行われない。
【0043】普通図柄の変動処理を開始した場合には、CPU30は、図3に示すタイミングチャートに従って左,右普通図柄表示部12,13の図柄変動処理を行うこととなる。なお、左,右普通図柄の移行順序は図5に示す通りである。次周期以降の処理では、普通図柄動作フラグfaの値が1となっているので、CPU30は、ステップb10の処理とステップb17の判別処理後、ステップb18に移行し、変動表示開始後の経過時間T1がパラメータt1にセットされた値Aに達するまでの間、ステップb10およびステップb17乃至ステップb18の判別処理と左,右の普通図柄表示部12,13の図柄変動に関するステップb19の処理を所定の処理周期で繰り返し実行することとなる。実施形態の場合、パラメータt1にセットされる値を6.000秒としている。
【0044】また、普通図柄変動開始後は、普通図柄動作フラグfaの値が0以外の値となっているため、左ゲート10または右ゲート11に遊技球が通過した場合であっても、ステップb11の判別処理が実行されないので、新たに普通図柄の変動が開始されることはない。
【0045】変動表示開始後の経過時間T1がパラメータt1にセットされた値Aに達すると、CPU30は、左,右ゲート11,12への遊技球の通過時に記憶しておいた左確定普通図柄データ記憶レジスタr3の図柄に切替えて左普通図柄表示部12の図柄変動を停止する(ステップb20)。
【0046】次いで、CPU30は、左普通図柄停止から右普通図柄停止迄の変動時間を規定するパラメータt1に所定値Bを設定すると共に(ステップb21)、タイマT1を作動させて経過時間の測定を開始し(ステップb22)、普通図柄動作フラグfaの値を2に切替え(ステップb23)、右普通図柄の変動処理を継続し(ステップb24)、当該周期の処理を終了する。
【0047】次周期以降の処理では、普通図柄動作フラグfaの値が2となっているので、CPU30は、ステップb10,ステップb17およびステップb25の判別処理後、ステップb26に移行し、左普通図柄停止表示後の経過時間T1がパラメータt1にセットされた値Bに達するまでの間、ステップb10,ステップb17およびステップb25至ステップb26の判別処理と右普通図柄表示部13の図柄変動に関するステップb27の処理を所定の処理周期で繰り返し実行することとなる。実施形態の場合、パラメータt1にセットされる値を1.000秒としている。
【0048】左普通図柄停止表示後の経過時間T1がパラメータt1にセットされた値Bに達すると(ステップb26)、CPU30は、左,右ゲート11,12への遊技球の通過時に記憶しておいた右確定普通図柄データ記憶レジスタr4の図柄に切替えて左普通図柄表示部13の図柄変動を停止する(ステップb28)。
【0049】左右の普通図柄を停止させたCPU30は、左普通図柄と右普通図柄が同図柄で一致しているか否かを判定することとなる。即ち、CPU30は、左確定普通図柄記憶レジスタr3の値と右確定普通図柄記憶レジスタr4の値が等しいか否かを判別し(ステップb29)、左確定普通図柄記憶レジスタr3の値と右確定普通図柄記憶レジスタr4の値が等しくなければ、普通図柄動作フラグfaの値を0セットして初期化し(ステップb37)、この周期のタスク2の処理を終了する。この場合、次周期以降のタスク2の処理では、普通図柄動作フラグfaの値が0となるために、左ゲート10または右ゲート11へ遊技球が通過した時には、ステップb11の判別処理で遊技球のゲート通過が検出されることとなり、普通図柄表示部12,13の図柄変動が開始されることとなる。
【0050】ステップb29の判別処理において、左確定普通図柄記憶レジスタr3の値と右確定普通図柄記憶レジスタr4の値が等しいと判定された場合には、CPU30は、図4に示されるような動作タイミングチャートに従って普通電動役物7の開閉動作を行う。」

(オ)「【0062】図17?図37に示すタスク3の処理は、左,右,中図柄表示部4,5,6の特別図柄の停止時の図柄判定に使用する大当り判定用乱数の作成と、第1種始動口9への遊技球の入賞に応じて大当り判定用乱数の値を記憶する処理と、左,右,中図柄表示部4,5,6の図柄変動処理と、大当り判定用乱数の値を記憶している記憶数が所定数であることを判定して各特別図柄表示部の変動時間を短時間に変更する変動時間短縮処理と、左,中,右図柄表示部4,6,5における停止図柄の組合わせを判定する処理と、左停止図柄と右停止図柄の一致不一致を判定して、一致した場合には中特別図柄表示部6の変動速度を高速と中速とで繰り返して行う処理と、記憶された大当り判定用乱数の値に基づいて大当りの判定を行って、大当りの場合には大入賞口8の開口動作を行う処理である。
【0063】タスク3の処理を開始したCPU30は、まず、タスク1の処理で作成した図柄データ記憶レジスタr0乃至r2に記憶された内部処理指標の値の全一致不一致を比較判定し(ステップc1)、図柄データ記憶レジスタr0乃至r2に記憶された内部処理指標の値がすべて一致した場合には、各内部処理指標のr0乃至r2の現在値を左,中,右大当り図柄データ記憶レジスタr0a乃至r2aの各々に格納し(ステップc2)、また、作成された内部処理指標の組合わせが不一致であり外れ図柄に関するものであれば各内部処理指標r0乃至r2の現在値を左,中,右外れ図柄データ記憶レジスタr0b乃至r2bの各々に格納する(ステップc3)。
【0064】次に、CPU30は、大当り用乱数記憶レジスタWの値を0乃至450の範囲でインクリメントし(ステップc4)、大当り用乱数記憶レジスタWの値が450に到達しているか否かを判別し(ステップc5)、大当り用乱数記憶レジスタWの値が450に到達する毎にレジスタWの値を0に初期化する(ステップc6)。このため実際には、大当り用乱数記憶レジスタWの値で450が記憶されることはない。」

(カ)「【0067】ステップc9に移行したCPU30は、第1種始動口9への遊技球の入賞があるか否かを、第1種始動口入賞検出スイッチSW1よりの信号入力があるか否かにより判別し(ステップc9)、第1種始動口入賞検出スイッチSW1よりの信号入力がある場合には、入賞記憶数カウンタCの値を1つインクリメントすると共に(ステップc10)、入賞記憶数カウンタCの値が規定の入賞記憶数5に達しているか否かを判別し(ステップc11)、5に達していなければ入賞記憶数カウンタCの現在値が1であるか否かを判別し(ステップc101)、入賞記憶数カウンタCの現在値が1であれば、高速時間判定タイマGOTMに所定の値をセットする一方(ステップc12)、入賞記憶数カウンタCの現在値が1でなければそのままステップc13に移行し、入賞記憶数カウンタCの現在値に対応して、確定乱数記憶レジスタR1乃至R4に大当り用乱数記憶レジスタWの値を格納して記憶し(ステップc13?ステップc19)、ステップc20以降の処理に移行する。この結果、第1種始動口10への遊技球の入賞がある場合には、確定乱数記憶レジスタR1乃至R4に大当り用乱数記憶レジスタWの値が最高4個まで記憶されることとなる。
【0068】また、ステップc9の判別処理において、第1種始動口入賞検出スイッチSW1よりの信号入力が検出されなかった場合には、CPU30はステップc20以降の処理に移行し、ステップc11の判別処理において、入賞記憶数カウンタCの現在値が5以上であった場合にもCPU30は、ステップc20以降の処理に移行する。」

(キ)「【0077】また、各特別図柄の移行順序は、図7に示す通りであり、各特別図柄の移行速度は、各図柄共に高速時は、0.016秒で2/8図柄、即ち、0.064秒/図柄であり、中速時は、0.032秒で1/8図柄、即ち、0.256秒/図柄であり、低速時は、0.064秒で1/8図柄、即ち、0.512秒/図柄となっている。」

(ク)「【0079】各特別図柄表示部4,5,6の変動表示開始後の経過時間T2がパラメータhに設定した値に達すると(ステップc37)、CPU30は、確定値記憶レジスタR0に格納されている値が大当たりを規定する設定値200または201と一致するか否か、即ち、今回の図柄変動処理の開始刺激となった第1種始動口9の入賞検出時点における大当り用乱数記憶レジスタWの値が大当りに対応する設定値と一致するか否かを判別し(ステップc38)、確定値記憶レジスタR0の値が設定値200または201と一致すれば、左,中,右大当たり図柄データ記憶レジスタr0a乃至r2aの各値を左,中,右表示図柄データ記憶レジスタr0c乃至r2cに格納する一方(ステップc39)、確定値記憶レジスタR0の値が設定値200または201と一致しなければ、左,中,右外れ図柄データ記憶レジスタr0b乃至r2bの各値を左,中,右表示図柄データ記憶レジスタr0c乃至r2cの各々に格納して(ステップc40)、変動停止時に左,中,右特別図柄表示部4,6,5に表示すべき図柄を確定する。
【0080】本実施形態では、第1種始動口9の入賞に起因する特別図柄変動が大当たりとなる確率は、大当たり用乱数の取り得る範囲の数が0乃至449の450通りであるので、2/450となる。」

(ケ)上記(カ)の記載及び図9から明らかなとおり、「中図柄表示部6」は、表示領域の対向する側縁のうち一方から他方に達するまで図柄を変動させる表示領域を有することが記載されている。

(コ)図9から明らかなとおり、左,右普通図柄表示部12,13は、中図柄の変動方向に対して直交する方向で中図柄を挟んだ外側にあることが記載されている。

(サ)図9から明らかなとおり、左,右普通図柄表示部12,13が左,右,中図柄表示部4,5,6の最下部6dをはさんで角部近傍に固定した状態で離間配置されることが記載されている。

摘記した上記(ア)?(ク)の記載や図面及び認定事項(ケ)?(サ)によれば、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「第1種始動口9への遊技球の入賞に応じて第1種始動口入賞検出スイッチSW1より信号入力され大当り判定用乱数の値を記憶する処理と、左,右,中図柄表示部4,5,6の図柄変動処理を行い、左,右,中図柄表示部4,5,6に表示すべき図柄を確定し変動停止し、左ゲート10あるいは右ゲート11への遊技球の通過が普通図柄作動スイッチSW2,SW2により検出されれば左,右普通図柄表示部12,13の図柄変動を開始し、停止された左,右普通図柄表示部12,13の図柄が左右で同じ図柄となる場合には、普通電動役物7の開閉動作を行い、左方の左特別図柄表示部4と、縦方向に配置される中特別図柄表示部6と右方の右特別図柄表示部5とに区分され、さらに、中特別図柄表示部6は、上より下に向かって最上部6a,中上部6b,中下部6c,最下部6dの4つに区分され、中特別図柄表示部6の中下部6cは左特別図柄表示部4と右特別図柄表示部5との間に位置し、左特別図柄表示部4と中特別図柄表示部6の中下部6cと右特別図柄表示部5とは横一列となるように縦横に十字に特別図柄表示部3と左,右普通図柄表示部12,13を含んで構成された図柄表示ユニット2を配備したパチンコ機であって、図柄表示ユニット2は、中図柄表示部6が表示領域の対向する側縁のうち一方から他方に達するまで図柄を変動させる表示領域を有し、普通図柄を表示する左,右普通図柄表示部12,13を設け、該左,右普通図柄表示部12,13は、左ゲート10あるいは右ゲート11への遊技球の通過が普通図柄作動スイッチSW2,SW2により検出されれば左,右普通図柄表示部12,13の図柄変動を開始し左普通図柄データ記憶レジスタR1と右普通図柄記憶レジスタR2の値に基づき0乃至9のいずれかの普通図柄を表示し、左,右普通図柄表示部12,13は、中図柄の変動方向に対して直交する方向で中図柄を挟んだ外側にあり、中図柄表示部6の最下部6dをはさんで図柄表示ユニット2の角部近傍に固定した状態で離間配置されるパチンコ機」

(2)引用発明と本願発明との対比
引用発明の「左,右,中図柄表示部4,5,6の図柄変動処理」及び「変動停止時に左,右,中図柄表示部4,5,6に表示すべき図柄を確定」は本願発明の「第1の変動演出によって前記当り判定の結果を導出する第1図柄」に相当し、以下同様に、
「左,右普通図柄表示部12,13の図柄変動を開始し、停止された左,右普通図柄表示部12,13の図柄」は「第2の変動演出によって導出される図柄組み合わせを構成する第2図柄」に、
「図柄表示ユニット2」は「同一の表示手段」に、
「パチンコ機」は「遊技機」に、
「特別図柄表示部3」は「第1図柄の表示領域」に、
「左,右普通図柄表示部12,13を設け」は「複数の前記第2図柄の表示領域とを」「設け」に、
「左ゲート10あるいは右ゲート11への遊技球の通過が普通図柄作動スイッチSW2,SW2により検出」は「特定の第2の始動検知手段による遊技球の検知」に、
それぞれ相当する。

本願の明細書の【0018】には「・・・(略)・・・本実施形態では、始動入賞口23と始動口センサSE1によって第1の始動検知手段を構成している。・・・(略)・・・」と記載されていることから、引用発明の「第1種始動口9」及び「第1種始動口入賞検出スイッチSW1」は、本願発明の「第1の始動検知手段」に相当し、同明細書の【0019】には「・・・(略)・・・本実施形態では、始動入賞ゲート26とゲートセンサSE2によって第2の始動検知手段を構成している。・・・(略)・・・」と記載されていることから、引用発明の「左ゲート10あるいは右ゲート11」及び「普通図柄作動スイッチSW2,SW2」は「第2の始動検知手段」に相当する。

また、図9から明らかなとおり、左,右普通図柄表示部12,13には、それぞれ一桁(本願の明細書における「1列」)の数字が表示されるように構成されていることから、引用文献1には「1列又は複数列の第2図柄が表示される」ことが記載されている。

以上を総合すると、両者は、
「第1の始動検知手段における遊技球の検知を契機に行われる第1の変動演出によって導出される図柄組み合わせを構成する第1図柄と、第2の始動検知手段における遊技球の検知を契機に行われる第2の変動演出によって導出される図柄組み合わせを構成する第2図柄とを同一の表示手段に表示可能とされた遊技機であって、前記第1図柄を変動させる第1の変動演出を表示する第1図柄の表示領域と、複数の前記第2図柄の表示領域とを設け、当該複数の第2図柄の表示領域は、特定の第2の始動検知手段による遊技球の検知に基づき行われる前記第2の変動演出によって導出される図柄組み合わせの構成図柄を表示する領域であり、当該各第2図柄の表示部には1列又は複数列の第2図柄が表示されると共に、前記各第2図柄の表示領域を、前記表示手段における角部又は角部近傍に固定した状態で離間配置した遊技機。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
本願発明では、第1図柄と第2図柄とを同一の表示手段における単一の表示領域内に表示可能としているのに対して、引用発明では、同一の図柄表示ユニット2内に設けているものの、特別図柄表示部3と左,右普通図柄表示部12,13として別々に設けている点。

<相違点2>
本願発明では、第1図柄の表示領域が前記表示領域の対向する側縁のうちの一方から他方に達するまで前記第1図柄を変動させる第1の変動演出を表示するのに対して、引用発明では、中図柄表示部6は、図柄表示ユニット2の対向する側縁のうち一方から他方に達するまで図柄を変動させるものの、第1図柄の表示領域が前記表示領域の対向する側縁のうちの一方から他方に達するまで前記第1図柄を変動させる第1の変動演出を表示していない点。

<相違点3>
本願発明では、前記各第2図柄の表示領域を、前記第1図柄の変動方向に対して直交する方向で全列の第1図柄を挟んだ外側であり、かつ前記表示手段の単一の表示領域における角部又は角部近傍に固定した状態で離間配置しているのに対して、引用発明では、左,右普通図柄表示部12,13は、中図柄の変動方向に対して直交する方向で中図柄を挟んだ外側にあるものの、全列の第1図柄を挟んだ外側にはない点。

4.判断
<相違点1>について
特別図柄と普通図柄を、同一の表示手段における単一の表示領域内に、両者がお互いに邪魔をしないような表示領域として設けることは、当審が通知した拒絶の理由で引用文献2として引用した特開2001-37973号公報(特に、【0010】、【0011】及び図2を参照。)に記載されている。そして、遊技機の分野において、別々に設けていた表示手段を同一の表示手段における単一の表示領域内に表示可能として設けることは、特別図柄と普通図柄や、特別図柄と始動記憶数のように、広く行われていることであるから、引用発明において、左,右,中図柄表示部4,5,6及び左,右普通図柄表示部12,13として別々に設けられた表示部を同一の表示手段における単一の表示領域内に表示可能として、相違点1に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点2>について
遊技機の分野において、表示領域の対向する側縁のうちの一方から他方に達するまで図柄を変動させる変動演出を表示することは、例えば、当審が通知した拒絶の理由で引用文献3として引用した特開2002-346122号公報(特に、【0034】及び図7を参照。)にみられるように周知技術である。そして、遊技機の図柄変動をどのように行うかは、当業者が遊技者に与える印象等を考慮して従来より存在するものの中から適宜選択決定し得る程度のものに過ぎないことから、引用発明の図柄表示ユニット2の図柄変動の態様として、上記周知技術を採用して、相違点2に係る発明の構成とすることは当業者が容易になし得たことである。

<相違点3>について
「<相違点1>について」及び「<相違点2>について」で検討したとおり、引用発明において、左,右,中図柄表示部4,5,6及び左,右普通図柄表示部12,13として別々に設けられた表示部を同一の表示手段における単一の表示領域に表示可能とし、図柄表示ユニット2の図柄変動の態様として、上記周知技術を採用する際に、左,右,中図柄と左,右普通図柄とを、両図柄に関連した演出をさせる場合は別として、いわゆる特別図柄と普通図柄のように互いに独立して演出する場合には、遊技者の視認性を考慮して互いに邪魔にならないよう表示が重ならないようにして配置することは、当業者であれば当然想起し得ることであって、そのことは、引用文献2における特別図柄と普通図柄の配置関係においても見てとれる。
そして、引用発明における左,右に別れた普通図柄の配置関係を出発点として、左,右,中図柄表示部4,5,6及び左,右普通図柄表示部12,13として別々に設けられた表示部を同一の表示手段における単一の表示領域に表示可能とし、図柄表示ユニット2の図柄変動の態様として、上記周知技術を採用した場合には、左図柄の変動領域が上下方向に延び、右図柄の変動領域も上下方向に延びるため、左,右普通図柄は、図柄変動領域の外側(左普通図柄は図9の左方向、右普通図柄は同右方向、又は、ともに図9の下方向)に配置することが自然であるから、想定し得るそれら2つの選択肢の中で前者、すなわち、左,右,中図柄の変動領域の外側である左,右,中図柄の変動方向に対して直交する方向で左,右,中図柄を挟んだ外側であって表示領域の角部近傍に配置して、左,右,中図柄と左,右普通図柄とが重なった表示とすることは、仮に、後者とした場合には、左,右普通図柄の位置が、左,右,図柄の変動方向の延長線上となり視認性の観点から不利となることから、より自然な選択であるため、相違点3に係る発明の構成とすることは、当業者であれば容易に想起し得たことである。

なお、「特定の第2の始動検知手段」については、当審における平成22年10月7日付の補正の却下の決定で予備的に検討したところ、平成22年12月8日付の意見書において、その点について特に主張がなされていないものの、念のため、再度検討をすると、「特定」とは、一般に、「特にそれと指定すること。特に定められていること。[株式会社岩波書店 広辞苑第六版]」であり、「ある1つの」という特定事項であるとはいえないため、この点が引用発明との相違点とはならないものの、例えば、本願の明細書の【0019】には「また、始動入賞口23の左方には、始動入賞ゲート26が配設されている。始動入賞ゲート26の奥方には、当該始動入賞ゲート26を通過した遊技球を検知するゲートセンサSE2(図2に示す)が設けられている。・・・(後略)」と、始動入賞ゲートが1つ設けられる実施形態が記載されているため、「特定の」が「ある1つの」という意味であると解釈して予備的に検討すると、遊技機において普通図柄始動ゲートを2つ設けることは例示するまでもなく周知技術であって、また、2つではなく1つ設けることについても、例えば、特開2003-62210号公報(特に、【0036】及び図2)にみられるように周知技術であるため、引用発明において普通図柄を始動させるゲートを左ゲートか右ゲートのいずれか一方とすることは当業者が容易になし得たことである。

そして、本願発明の効果は、引用発明、引用文献2に記載の技術及び周知
技術から当業者が予測できる範囲のものである。

以上のように、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献2に記載の技術及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-24 
結審通知日 2011-03-29 
審決日 2011-04-12 
出願番号 特願2003-114738(P2003-114738)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安久 司郎  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 澤田 真治
吉村 尚
発明の名称 遊技機  
代理人 恩田 誠  
代理人 恩田 博宣  

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