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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G03G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G03G
管理番号 1237553
審判番号 不服2010-9150  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-28 
確定日 2011-05-26 
事件の表示 特願2005-246122「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 3月 8日出願公開、特開2007- 58073〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成17年8月26日の出願であって、平成20年10月10日付けで通知された拒絶理由に対し、同年12月5日に手続補正がなされ、これに対して、平成21年5月20日付けで再度通知された拒絶理由に対し、同年7月22日に手続補正がなされたが、平成22年1月29日付けで、かかる手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年4月28日付けで審判請求がされるとともに、同日付けで手続補正がなされ、その後、当審から送付した審尋に対し、同年11月1日付けで回答書が提出されたものである。

2.平成22年4月28日付け手続補正についての補正却下の決定

[補正の却下の決定の結論]
平成22年4月28日付け手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正事項
平成22年4月28日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、本件補正前の平成20年12月5日付け手続補正により補正された、

「【請求項1】
複数の感光体と、
前記感光体ごとに設けられ、当該感光体の静電潜像を可視像化する複数の現像手段と、
前記各現像手段を、前記感光体に接近する現像位置と、離間する離間位置とに変位させる変位手段と、
前記複数の感光体に対向する像担持体からなる共通像担持体と、
前記共通像担持体をクリーニングするクリーニング手段と、
を備え、
前記共通像担持体に、前記各現像手段からの現像剤が転写可能とされており、
複数の前記現像手段のうちの第1現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第1現像手段の対向位置を第1位置とし、前記第1現像手段とは異なる第2現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第2現像手段の対向位置を第2位置とし、更に、前記共通像担持体における前記第1位置に対応する部分を第1対応部分とし、前記第2位置に対応する部分を第2対応部分とした場合、
前記変位手段は、
前記第1対応部分と前記第2対応部分との距離が、前記第1現像手段と前記第2現像手段とが同タイミングで前記感光体に接近したときの基準距離よりも小さくなるように、前記第1現像手段及び前記第2現像手段の変位タイミングを制御することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニング手段は、前記共通像担持体に対して接触及び離間可能な接触部品を備えた構成であり、
前記接触部品の接触タイミングを制御可能な制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記第1現像手段は、前記第2現像手段よりも上流側に配されており、
前記変位手段は、前記共通像担持体において、前記第1対応部分が、前記第2対応部分よりも上流側となるように制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1現像手段及び前記第2現像手段とは異なる1又は複数の他の現像手段が設けられており、
前記他の現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記他の現像手段の対向位置を第3位置とし、前記共通像担持体における前記第3位置に対応する部分を第3対応部分とした場合、
前記変位手段は、前記共通像担持体において、前記第1対応部分、前記第2対応部分、及び全ての前記第3対応部分が同一位置となるように制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1現像手段及び前記第2現像手段とは異なる1又は複数の他の現像手段が設けられており、
前記第1現像手段は、全現像手段において最上流に配されており、
前記他の現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記他の現像手段の対向位置を第3位置とし、前記共通像担持体における前記第3位置に対応する部分を第3対応部分とした場合、
前記変位手段は、前記共通像担持体において、前記第2対応部分及び全ての前記第3対応部分が、前記第1対応部分の下流側で同一位置となるように制御を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1現像手段は、前記第2現像手段よりも上流側に配されており、
前記変位手段は、前記第2現像手段よりも早いタイミングで前記第1現像手段を前記現像位置に変位させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変位手段は、レーザ光照射手段から出射されるタイミング検出用のレーザ光に基づく静電潜像が、前記現像手段の対向位置を通過した後に、前記現像手段を前記現像位置へ変位させることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。」

から、

「【請求項1】
複数の感光体と、
前記感光体ごとに設けられ、当該感光体の静電潜像を可視像化する複数の現像手段と、
前記各現像手段を、前記感光体に接近する現像位置と、離間する離間位置とに変位させる変位手段と、
前記複数の感光体に対向する像担持体からなる共通像担持体と、
前記現像手段を前記離間位置から前記現像位置に変位させた後に、前記共通像担持体をクリーニングするクリーニング手段と、
を備え、
前記共通像担持体に、前記各現像手段からの現像剤が転写可能とされており、
複数の前記現像手段のうちの第1現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第1現像手段の対向位置を第1位置とし、前記第1現像手段とは異なる第2現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第2現像手段の対向位置を第2位置とし、更に、前記共通像担持体における前記第1位置に対応する部分を第1対応部分とし、前記第2位置に対応する部分を第2対応部分とした場合、
前記変位手段は、
前記第1対応部分と前記第2対応部分との距離が、前記第1現像手段と前記第2現像手段とが同タイミングで前記感光体に接近したときの基準距離よりも小さくなるように、前記第1現像手段及び前記第2現像手段の変位タイミングを制御し、
前記クリーニング手段は、前記第1対応部分及び前記第2対応部分のいずれか下流側の対応部分から前記共通像担持体のクリーニングを開始し、前記第1対応部分及び前記第2対応部分のいずれか上流側の対応部分で前記共通像担持体のクリーニングを終了することを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記クリーニング手段は、前記共通像担持体に対して接触及び離間可能な接触部品を備えた構成であり、
前記接触部品の接触タイミングを制御可能な制御手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記クリーニング手段は、画像データに基づく画像形成の準備段階において、前記共通
像担持体をクリーニングし、
前記第1現像手段は、前記第2現像手段よりも上流側に配されており、
前記変位手段は、前記共通像担持体において、前記第1対応部分が、前記第2対応部分よりも上流側となるように制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記第1現像手段及び前記第2現像手段とは異なる1又は複数の他の現像手段が設けられており、
前記他の現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記他の現像手段の対向位置を第3位置とし、前記共通像担持体における前記第3位置に対応する部分を第3対応部分とした場合、
前記変位手段は、前記共通像担持体において、前記第1対応部分、前記第2対応部分、及び全ての前記第3対応部分が同一位置となるように制御を行うことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記第1現像手段及び前記第2現像手段とは異なる1又は複数の他の現像手段が設けられており、
前記第1現像手段は、全現像手段において最上流に配されており、
前記他の現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記他の現像手段の対向位置を第3位置とし、前記共通像担持体における前記第3位置に対応する部分を第3対応部分とした場合、
前記変位手段は、前記共通像担持体において、前記第2対応部分及び全ての前記第3対応部分が、前記第1対応部分の下流側で同一位置となるように制御を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記第1現像手段は、前記第2現像手段よりも上流側に配されており、
前記変位手段は、前記第2現像手段よりも早いタイミングで前記第1現像手段を前記現像位置に変位させることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記変位手段は、レーザ光照射手段から出射されるタイミング検出用のレーザ光に基づく静電潜像が、前記現像手段の対向位置を通過した後に、前記現像手段を前記現像位置へ変位させることを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の画像形成装置。」

に補正された。なお、平成21年7月22日になされた手続補正は、平成22年1月29日付けで決定をもって却下されている。

(2)補正の適否について
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するための事項である「共通像担持体をクリーニングするクリーニング手段」に対して、「前記現像手段を前記離間位置から前記現像位置に変位させた後に」という限定を付加し、同じく「クリーニング手段」に対して、「前記クリーニング手段は、前記第1対応部分及び前記第2対応部分のいずれか下流側の対応部分から前記共通像担持体のクリーニングを開始し、前記第1対応部分及び前記第2対応部分のいずれか上流側の対応部分で前記共通像担持体のクリーニングを終了」するという限定を付加して、補正後の請求項1としたものである。
また、請求項3についても、補正前の請求項3に記載した発明を特定するための事項でもある「クリーニング手段」に対して、「前記クリーニング手段は、画像データに基づく画像形成の準備段階において、前記共通像担持体をクリーニングし」という限定を付加して、補正後の請求項3としたものである。
したがって、これらの補正事項は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(3)引用刊行物
本願の出願前に頒布された特開2001-318506号公報(原査定の平成21年5月20日付けの拒絶理由における引用文献1、以下、「引用刊行物」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(下線は当審で付与)。

(1a)「【0020】図1は本発明の一実施の形態によるカラー画像形成装置の構成を示す概略側面図である。
【0021】図1において、ドライブプーリ1aによって走行駆動される中間転写ベルト1が閉ループ状に配置され、この中間転写ベルト1の下方に配置された用紙カセット2からの用紙Pが転写ローラ1bと中間転写ベルト1との間を抜けて定着器3へ給紙される概略構成となっている。すなわち、中間転写ベルト1に形成されたカラーのトナー画像は転写ローラ1bとの間にニップされる用紙Pに転写され、転写トナー画像は定着器3によって用紙Pに定着される。そして、中間転写ベルト1の上方にはレーザーを画像情報に基づいて照射する露光器4が配置され、この露光器4と中間転写ベルト1との間にイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C),ブラック(K)の画像形成ユニット5,6,7,8が中間転写ベルト1の走行方向に順に配列されている。
【0022】各画像形成ユニット5?8は、いずれも同じ構成としたもので感光体ユニットと現像ユニットとに区分されたものである。感光体ユニットは、感光体ドラム5a,6a,7a,8aと、これらの感光体ドラム5a?8aの表面を帯電させるブラシ式の帯電器5b,6b,7b,8bと、残留トナーを感光体ドラム5a?8aの表面から除去するためのクリーニングブレード5c,6c,7c,8cとから構成されている。また、現像ユニットは、現像ローラ5d,6d,7d,8dと、これらの現像ローラ5d?8dの表面にトナータンク(図示せず)からトナーを供給するサプライローラ5e,6e,7e,8eと、現像ローラ5d?8d上のトナー層を均一薄層かつ所定の電位に帯電する薄層化ブレード5f,6f,7f,8fとを備えたものである。」

(1b)「【0025】このように、凹み10a-1を持つガイド10aにトリガ9のガイドローラ9bを連接することにより、ガイド10aの左右方向の移動により第2ハウジング5hを回動操作でき、感光体ドラム5aに対して現像ローラ5dを接触または離間させることができる。このようなトリガ9とガイド10aとによる第2ハウジング5hの回動操作のための構成は、後述するように、他の画像形成ユニット6?8についても全く同様である。」

(1c)「【0033】ここで、感光体ドラム5a?8aに形成された静電潜像を各色のトナーで現像するためには、現像ローラ5d?8dを感光体ドラム5a?8aに接触させてトナーを付着させる。このとき、現像ローラ5d?8dが感光体ドラム5a?8aに常に接触していると、先に述べたように摩耗の発生が大きく耐用性が低下する。
【0034】そこで、本発明では、感光体ドラム5a?8aが中間転写ベルト1の走行とともに回転して印字する期間のみ現像ローラ5d?8dを感光体ドラム5a?8aに接触させて回転駆動し、非印字期間では接触を外すとともに現像ローラ5d?8dの回転を停止させる。このような現像ローラ5d?8dの動作について図5?図13により説明する。
【0035】図5は先に述べたように非印字期間の状態であり、このときガイド部材11は図3に示すように右端側に位置している。そして、各画像形成ユニット5?8の第2ハウジング5h?8hに係合しているトリガ9のガイドローラ9bは全てガイド10a?10dの凹み10a-1?10d-1から離れている。したがって、各トリガ9の上端側は起立した姿勢となり、第2ハウジング5h?8hを支軸5i?8i周りに時計方向に回動させている。このとき、全ての現像ローラ5d?8dは感光体ドラム5a?8aから離れていて、回転駆動もされていない。
【0036】印字動作に入ると最初にイエロー(Y)の画像形成ユニット5の感光体ドラム5aに露光器4からのレーザーにより画像が書き込まれて感光体ドラム5aの表面に書き込まれる。この書き込みの直前に、感光体ドラム5aが回転及び中間転写ベルト1が走行をそれぞれ開始し、ガイド部材11がピニオン12bの回転により図3において一定距離だけ左に移動し、ガイド10a?10dと各画像形成ユニット5?8の位置関係は図6に示すようになる。すなわち、画像形成ユニット5のトリガ9のガイドローラ9bだけがガイド10aの凹み10a-1の中に落ち込み、トリガ9はピン9a周りに時計方向に回動する。これにより、第2ハウジング5hは支軸5i周りに反時計方向に回動し、現像ローラ5dが感光体ドラム5aに接触する。この接触時には感光体ドラム5aと現像ローラ5d及びサプライローラ5eはいずれも図6の矢印方向に回転駆動される。
【0037】このように現像ローラ5dが感光体ドラム5aに接触した後に、露光器4からレーザーが照射されて感光体ドラム5aの表面に静電潜像が書き込まれ、現像ローラ5dによるトナー付着によって顕像化される。そして、感光体ドラム5aの回転によってその周面のトナー像は中間転写ベルト1の表面にイエロートナー像として転写される。このような動作では、現像ローラ5dが感光体ドラム5aに接触してから露光器4による画像書き込みが行われるので、接触による振動の影響を受けない画像書き込みが可能となる。なお、他の画像形成ユニット6?8においては、現像ローラ6d?8dはいずれも停止していて感光体ドラム6a?8aには接触していない。
【0038】画像形成ユニット5よる中間転写ベルト1への転写動作の開始の後は、ガイド部材11は一定速度で図3において左側に移動していき、画像形成ユニット5では継続してイエロートナーの転写が継続される。そして、マゼンタの画像形成ユニット6による転写動作の直前の時期になると、ガイド10a?10dと各画像形成ユニット5?8の位置関係は図7に示すように変化する。すなわち、イエローの画像形成ユニット5のトリガ9のガイドローラ9bは凹み10a-1の中に含まれ、マゼンタの画像形成ユニット6のトリガ9のガイドローラ9bがガイド10bの凹み10b-1に落ち込む。これにより、画像形成ユニット5の場合と同様に、現像ローラ6dが感光体ドラム6aに接触し、この後露光器4による画像書き込みが行われる。そして、書き込まれた静電潜像は現像ローラ6dによって現像され先行して転写された中間転写ベルト1上のイエロートナー像の上にマゼンタトナー像が重ね合わせて転写される。
【0039】以降は、ガイド部材11の移動により、図8に示すようにシアンの画像形成ユニット7によるシアントナーの中間転写ベルト1への転写開始、これに引き続いて図9に示すブラックの画像形成ユニット8によるブラックトナーの中間転写ベルト1への転写開始がそれぞれ図6と図7と同じ動作によって行われる。図9の状態では、全ての画像形成ユニット5?8において現像ローラ5d?8dが感光体ドラム5a?8aに接触し、イエロー,マゼンタ,シアン,ブラックのトナーが同時に中間転写ベルト1に転写される。」

(1d)「【0044】以上のように、各画像形成ユニット5?8において、露光器4からの露光がある直前で現像ローラ5d?8dを感光体ドラム5a?8aに接触させ、感光体ドラム5a?8aの静電潜像を現像して中間転写ベルト1にトナー像を転写した後に再び離間させる。すなわち、印字の全期間を通じて現像ローラ5d?8dが感光体ドラム5a?8aに接触するのではなく、感光体ドラム5a?8aにトナー像を形成する期間だけ接触させ、この期間以外では離間させるとともに現像ローラ5d?8dを停止させる。これにより、従来構造に比べると現像ローラ5d?8dは感光体ドラム5a?8aとの接触時間が短くなり、摩耗度を抑えることができる。また、離間時には現像ローラ5d?8dは回転が停止するので、薄層化ブレード5f?8fとの摺動摩擦もなくなり、同様に摩耗度が抑えられる。したがって、表面を導電性シリコンゴムで形成した現像ローラ5d?8dであっても接触摩擦傷などの発生や摩耗を抑えて耐用を向上させることができる。」

(1e)図1は以下のとおりである。

【図1】


図1における、画像形成ユニット5と転写ローラ1bとの間の部材については、引用刊行物中に特段の説明はないが、中間転写ベルトから用紙への転写を行う、いわゆる二次転写部の後で、画像形成ユニットの前に配置されており、図面の記載から中間転写ベルトに接触して設けられていることを勘案すると、中間転写ベルトをクリーニングするクリーニング部材であるものとするのが相当である。
これらを踏まえると、引用刊行物には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「複数の感光体ドラムと、
前記感光体ドラムごとに設けられ、当該感光体ドラムに形成された静電潜像を各色のトナーで現像する複数の現像ローラと、
感光体ドラムに対して現像ローラを接触または離間させるために、凹みを持つガイドにトリガのガイドローラを連接することにより、ガイドの左右方向の移動により第2ハウジングを回動操作させる機構と、
前記複数の感光体ドラムに対向する中間転写ベルトと、
前記中間転写ベルトをクリーニングするクリーニング部材と、
を備え、
前記中間転写ベルトに、前記各現像ローラからのトナーが転写可能となっており、
各感光体ドラムが中間転写ベルトの走行とともに回転して、露光器からのレーザーによる画像の書き込みの直前に現像ローラを感光体ドラムに接触させて回転駆動することによって、印字する期間のみ現像ローラを感光体ドラムに接触させ、非印字期間では接触を外すとともに現像ローラの回転を停止させるように、感光体ドラムに対して現像ローラを移動させ、
前記クリーニング部材は、前記中間転写ベルトのクリーニングを行うカラー画像形成装置。」

(4)対比・判断
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の、
「感光体ドラム」、
「トナー」、
「各色のトナーで現像する」、
「現像ローラ」、
「感光体ドラムに接触させる位置」、
「接触を外す位置」、
「中間転写ベルト」、
「クリーニング部材」、
「カラー画像形成装置」

は、それぞれ、本願補正発明の、

「感光体」、
「現像剤」、
「可視像化する」、
「現像手段」、
「現像位置」、
「離間位置」、
(像担持体からなる)「共通像担持体」、
「クリーニング手段」、
「画像形成装置」

に相当する。

また、引用発明の「凹みを持つガイドにトリガのガイドローラを連接することにより、ガイドの左右方向の移動により第2ハウジングを回動操作させる機構」は、全体として感光体ドラムに対して現像ローラを接触または離間させるための機構であるから、本願補正発明の、(各現像手段を、前記感光体に接近する現像位置と、離間する離間位置とに変位させる)「変位手段」に相当する。

してみると、両者は、
「複数の感光体と、
前記感光体ごとに設けられ、当該感光体の静電潜像を可視像化する複数の現像手段と、
前記各現像手段を、前記感光体に接近する現像位置と、離間する離間位置とに変位させる変位手段と、
前記複数の感光体に対向する像担持体からなる共通像担持体と、
前記共通像担持体をクリーニングするクリーニング手段と、
を備え、
前記クリーニング手段は、前記共通像担持体のクリーニングを行う画像形成装置。」

の点で一致し、

以下の点で一応相違する。

・相違点1
クリーニング手段が、本願補正発明では、現像手段を離間位置から現像位置に変位させた後に、共通像担持体をクリーニングしており、かつ、第1対応部分及び第2対応部分のいずれか下流側の対応部分から共通像担持体のクリーニングを開始し、前記第1対応部分及び前記第2対応部分のいずれか上流側の対応部分で前記共通像担持体のクリーニングを終了しているのに対し、引用発明では、共通像担持体のクリーニングを行っている期間が不明である点。

・相違点2
変位手段の変位のタイミングが、本願補正発明は、複数の前記現像手段のうちの第1現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第1現像手段の対向位置を第1位置とし、前記第1現像手段とは異なる第2現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第2現像手段の対向位置を第2位置とし、更に、前記共通像担持体における前記第1位置に対応する部分を第1対応部分とし、前記第2位置に対応する部分を第2対応部分とした場合に、前記第1対応部分と前記第2対応部分との距離が、前記第1現像手段と前記第2現像手段とが同タイミングで前記感光体に接近したときの基準距離よりも小さくなるように、前記第1現像手段及び前記第2現像手段の変位タイミングを制御しているのに対し、引用発明では、露光器からのレーザーによる画像の書き込みの直前に現像ローラを感光体ドラムに接触させて回転駆動し、非印字期間では接触を外すとともに現像ローラの回転を停止させるように、感光体ドラムに対して現像ローラを移動させているものの、本願補正発明のような変位タイミングで変位の制御を行っているのかどうか不明である点。

上記相違点について検討する。

・相違点1について
まず、引用発明のクリーニング部材は、引用刊行物の図1を参照すると、中間転写ベルトに接触しており、引用刊行物において、かかるクリーニング部材を、接近及び離間させるような特段の説明はないのであるから、かかるクリーニング部材は、常に中間転写ベルトに接しているものと考えるのが自然である。
次に、本願補正発明には、クリーニング手段のクリーニングの開始や終了といった規定はあるが、クリーニング手段そのものを接触及び離間等して、物理的にクリーニングが行い得る状態と行い得ない状態への切り換えを行うといったような、格別の限定はないのであるから、本願補正発明における、クリーニングの開始や終了は、どのような形であれ、クリーニングを始めることと、終わることであると解することができる。
これを踏まえると、引用発明におけるクリーニング部材は、常時中間転写ベルトに接触しているものであるから、実際にクリーニングを行うのは、現像手段が離間位置から現像位置に変位され、実際に現像が行われた後であり、各現像手段が中間転写ベルトに付着させた現像剤が所定の範囲に広がっている場合、その中の最も下流にある現像剤がクリーニング部材のところに来たときにクリーニングを開始し、逆に最も上流にある現像剤がクリーニング部材のところに来たときにクリーニングを終了するようになることは当然のことである。
よって、相違点1は実質的な相違点とはいえない。

・相違点2について
引用発明における各現像手段は、各感光体ドラムへの露光器からのレーザーによる 露光器からのレーザーによる画像の書き込みの直前に現像ローラを感光体ドラムに接触させているものである。
ここで、引用発明のような、いわゆるタンデム型のカラー画像形成装置は、従来のロータリー型などのカラー画像形成装置と比較して、画像形成ユニットが4つ必要であるため全体の大きさは大型化してしまうものの、画像形成が速くするという目的のために開発されたものである。そのようなスピードを重要視することを前提とすると、引用発明において、中間転写ベルト上にイエローの画像を形成した同一の部分に、わざわざ中間転写ベルトを1周させてから次のマゼンタの画像を形成するような構成とはせず、イエローの画像を形成した同一の部分に、マゼンタ、シアン、ブラックと画像を形成するようにすることが自然であるといえる。
そうすると、引用発明において、複数の現像手段における、露光器からのレーザーによる画像の書き込みと、現像ローラの感光体への接触のタイミングとの時間間隔が、仮に正確にそろっておらず、多少のずれがあったとしても、第1現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第1現像手段の対向位置を第1位置とし、前記第1現像手段とは異なる第2現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第2現像手段の対向位置を第2位置とし、更に、前記共通像担持体における前記第1位置に対応する部分を第1対応部分とし、前記第2位置に対応する部分を第2対応部分とした場合の、前記第1対応部分と前記第2対応部分との距離は、少なくとも前記第1現像手段と前記第2現像手段とが同タイミングで前記感光体に接近したときの基準距離よりは小さくなっているものと認められる。
よって、相違点2も実質的な相違点とはいえない。

したがって、本願補正発明と引用発明との間に実質的な相違点はなく、同一の発明であるといえる。なお、原査定においては、特許法第29条第2項、すなわち進歩性の規定によって拒絶をしているが、進歩性の判断においては、本願発明と引用発明との間の一致点、相違点を検討した上で判断を行っているものであるから、検討にあたっては、当然同一性も検討しているといえる。

したがって、本願補正発明は、引用刊行物に記載された発明と同一又は引用刊行物に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)補正の却下の決定についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について

(1)本願発明
平成22年4月28日付けの手続補正は上述のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、本件補正前の平成20年12月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
複数の感光体と、
前記感光体ごとに設けられ、当該感光体の静電潜像を可視像化する複数の現像手段と、
前記各現像手段を、前記感光体に接近する現像位置と、離間する離間位置とに変位させる変位手段と、
前記複数の感光体に対向する像担持体からなる共通像担持体と、
前記共通像担持体をクリーニングするクリーニング手段と、
を備え、
前記共通像担持体に、前記各現像手段からの現像剤が転写可能とされており、
複数の前記現像手段のうちの第1現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第1現像手段の対向位置を第1位置とし、前記第1現像手段とは異なる第2現像手段が前記現像位置に変位した時の、前記感光体における前記第2現像手段の対向位置を第2位置とし、更に、前記共通像担持体における前記第1位置に対応する部分を第1対応部分とし、前記第2位置に対応する部分を第2対応部分とした場合、
前記変位手段は、
前記第1対応部分と前記第2対応部分との距離が、前記第1現像手段と前記第2現像手段とが同タイミングで前記感光体に接近したときの基準距離よりも小さくなるように、前記第1現像手段及び前記第2現像手段の変位タイミングを制御することを特徴とする画像形成装置。」

(2)引用刊行物
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-318506号公報の記載事項は、前記2.(3)に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、「共通像担持体をクリーニングするクリーニング手段」に対して付加されていた「前記現像手段を前記離間位置から前記現像位置に変位させた後に」という限定を省き、同じく「クリーニング手段」に対して付加されていた「前記クリーニング手段は、前記第1対応部分及び前記第2対応部分のいずれか下流側の対応部分から前記共通像担持体のクリーニングを開始し、前記第1対応部分及び前記第2対応部分のいずれか上流側の対応部分で前記共通像担持体のクリーニングを終了」するという限定を省いたものに相当する。
してみると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用刊行物に記載された発明と同一か、引用刊行物に記載された発明基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用刊行物1記載された発明と同一か、又は引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、引用刊行物1に記載された発明と同一か、又は引用刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号に該当するか、又は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願は、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-22 
結審通知日 2011-03-29 
審決日 2011-04-13 
出願番号 特願2005-246122(P2005-246122)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G03G)
P 1 8・ 575- Z (G03G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 蔵田 真彦島▲崎▼ 純一  
特許庁審判長 柏崎 康司
特許庁審判官 住田 秀弘
一宮 誠
発明の名称 画像形成装置  
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