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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A61B 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61B |
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管理番号 | 1237555 |
審判番号 | 不服2010-23214 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2010-10-14 |
確定日 | 2011-05-26 |
事件の表示 | 特願2004-240959「内視鏡用光源装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月 2日出願公開、特開2006- 55409〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成16年8月20日の出願であって,平成22年8月13日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成22年10月14日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正がされたものである。 第2 平成22年10月14日付けの手続補正についての補正却下の決定 1 補正却下の決定の結論 平成22年10月14日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1)本願補正発明 本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を, 「陰極と陽極との間でアークを放電するアークランプと, 前記アークランプを挟着保持する一対のヒートシンクと, ベース上に固定される,前記一対のヒートシンクに対応する一対のステーと, 前記ベース上の一対のステーに対して前記一対のヒートシンクを着脱可能に固定する固定手段と, 発生する磁界によって前記アークの経路を制御する磁界発生手段と,を備え, 前記一対のヒートシンクを前記ベース上の一対のステーから外した状態で該一対のヒートシンクに挟着保持されたアークランプを交換可能な内視鏡用光源装置において, 前記ベース上の一対のステーの一方または双方に前記磁界発生手段を固定したこと,及び前記一対のステー及び該一対のステーに固定された磁界発生手段は,前記アークランプの交換のために前記一対のヒートシンクを該一対のステーから外したとき,前記ベース上に残存すること,を特徴とする内視鏡用光源装置。」とする補正を含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。 上記請求項1についての補正は,補正前の請求項1における「磁界発生手段」について「前記一対のステー及び該一対のステーに固定された磁界発生手段は,前記アークランプの交換のために前記一対のヒートシンクを該一対のステーから外したとき,前記ベース上に残存する」との限定を付加するものであって特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 したがって,上記請求項1についての補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで,上記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 (2)刊行物およびその記載事項 ア 本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である,特開2001-340294号公報(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている(以下,下線は当審において付記したものである)。 (ア-1) 「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は内視鏡に照明光を供給するための内視鏡用光源装置に関する。」 (ア-2) 「【0015】図1?図8は本発明の第1の実施形態を示している。図1には,本実施形態に係る内視鏡用光源装置1のランプ装着部分が示されている。図示のように,光源装置1のシャーシ2上には,絶縁部材で形成された光学ベース3が取付けられている。また,この光学ベース3にはランプハウス(筐体)4が立設され,ランプハウス4内には,ランプユニット6cが所定の装着状態で着脱自在で装着されている。ランプユニット6cは,光源ランプとしての円筒形状のキセノンランプ5と,キセノンランプ5を保持し且つ放熱機能を有する陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6bとから成る。陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6bはそれぞれ,キセノンランプ5の陽極および陰極のそれぞれの電極部に取り付けられている。」 (ア-3) 「【0018】図2および図3に示されるように,ランプユニット6cの各ヒートシンク6a,6bにはそれぞれ棒状の締結部材13が挿通されている。この締結部材13の一端側には,各ヒートシンク6a,6bの一端側に位置して,円柱状のツマミ部11が形成されている。また,締結部材13の他方側には,各ヒートシンク6a,6bの他端側に位置して,雄ネジ部12が形成されている。なお,締結部材13は,任意の材質で形成されているが,ヒートシンク6a,6bと後述する電極ブロック15との電気的接続をより強めるため,好ましくは導電性部材で形成されている。 【0019】また,ランプハウス4内には,ここに装着される各ヒートシンク6a,6bとそれぞれ当接状態で接続可能な導電性の一対の電極ブロック15が配置されている。ヒートシンク6a,6bと当接する電極ブロック15の当接面には,締結部材13の雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部14と,突起部16とが設けられている。また,電極ブロック15の前記当接面と当接する各ヒートシンク6a,6bの面には,電極ブロック15の突起部16が挿入接続される穴部17が設けられている。」 (ア-4) 「【0023】図7および図8には,ランプ5側から見た陰極側ヒートシンク6bが示されている。図示のように,陰極側ヒートシンク6bには円筒形状の磁性体26が設けられている。この磁性体26は,キセノンランプ5が点灯する際に生じる輝点位置の地磁気によるズレを調整し,安定した光量が得られるようにする。磁性体26の一方側は,金属板を箱形状に折り曲げて形成された保持部材27によって5方向を覆われている。この場合,保持部材27は,磁性体26の他方端が陰極側ヒートシンク6bに設けられた溝部28内に嵌まり込むように,陰極側ヒートシンク6bに固定されている。なお,保持部材27は,金属板に限らず,磁性体26の一方側を覆い且つヒートシンク6bに固定できるものであれば,形状や材質を問わない。」 (ア-5) 「【0024】次に,上記構成の内視鏡用光源装置1のランプ交換時の動作について説明する。 【0025】まず,図3の(a)に示されるようにランプユニット6cを正規の向きでランプハウス4内に挿入し,締結部材13のツマミ部11を回動させて,締結部材13の雄ネジ部12を電極ブロック15の雌ネジ部14に螺合すると,ヒートシンク6a,6bが電極ブロック15の当接面に押し付けられて,ランプユニット6cがその挿入方向で位置決め固定されるとともに,電気的な接続がなされる。その状態が図3の(b)に示されている。また,この時,電極ブロック15の突起部16がランプユニット6cの穴部17に挿入接続されることにより,ランプユニット6cの挿入方向以外の方向での位置決めもなされる。また,この状態では,ヒートシンク6a,6bの少なくとも一方に設けられた突起状の挿入方向規制部18がランプハウス4の係合部と良好に係合し,ランプユニット6cが正規の装着状態に位置される。」 (ア-6) 第1図は,第1実施形態に係る内視鏡用光源装置の主要部を一部断面で示す側面図であり,この図には,陽極側ヒートシンク6aと陰極側ヒートシンク6bとの間にキセノンランプ5を挟んだ状態で保持した形態が記載されている。 (ア-7) 第3(a)図はランプユニットをランプハウス内へ挿入する過程を示す正断面図であり,第3(b)図はランプユニットをランプハウス内に完全に装着した状態を示す正断面図であり,これらの図には,光学ベース3の上に一対の電極ブロック15が配置された形態が記載されている。 (ア-8) 第7図は陰極側ヒートシンクをランプ側から見た側面図であり,第8図は第7図の陰極側ヒートシンクの主要部の斜視図であって,これらの図には,陰極側ヒートシンク6bの電極ブロック15と当接する端部に,上記当接面を電極ブロック15側に超えて磁性体26を配置した形態が記載されている。 (3)当審の判断 ア 対比・判断 刊行物1の記載事項(ア-1)?(ア-8)を総合すると,刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる。 「キセノンランプ5と, キセノンランプ5を保持し且つ放熱機能を有する陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6bと, キセノンランプ5と陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6bとから成るランプユニット6cが所定の装着状態で着脱自在で装着されているランプハウス4が立設された光学ベース3と, ランプハウス4内に配置された,ヒートシンク6a,6bとそれぞれ当接状態で接続可能な導電性の一対の電極ブロック15とを備え, 一対の電極ブロック15は光学ベース3の上に配置され, ヒートシンク6a,6bと当接する電極ブロック15の当接面には,ヒートシンク6a,6bに挿通された棒状の締結部材13の雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部14と,突起部16とが設けられ, 電極ブロック15の前記当接面と当接するヒートシンク6a,6bの面には,電極ブロック15の突起部16が挿入接続される穴部17が設けられ, 陰極側ヒートシンク6bには,キセノンランプ5が点灯する際に生じる輝点位置の地磁気によるズレを調整し,安定した光量が得られるようにするための磁性体26が設けられ, ランプ交換時には,ランプユニット6cを正規の向きでランプハウス4内に挿入し,締結部材13の雄ネジ部12を電極ブロック15の雌ネジ部14に螺合すると,ヒートシンク6a,6bが電極ブロック15の当接面に押し付けられて,ランプユニット6cがその挿入方向で位置決め固定されるとともに,電気的な接続がなされ,電極ブロック15の突起部16がランプユニット6cの穴部17に挿入接続されることにより,ランプユニット6cの挿入方向以外の方向での位置決めもなされる, 内視鏡用光源装置」(以下,「刊行物1発明」という。) そこで,以下に本願補正発明と刊行物1発明を対比する。 (ア)本願補正発明の「アークランプ」はアーク放電を伴うランプとして様々なものを含み,その一種である「キセノンランプ」も含むものであり,本願明細書にも「【0014】・・・内視鏡用光源装置150には光源としてキセノンランプ(アークランプ)30が配設されている。」と記載されているとおりである。 そしてキセノンランプが陰極と陽極との間でアークを放電するランプであるのは明らかである。 よって,刊行物1発明の「キセノンランプ5」は,本願補正発明の「陰極と陽極との間でアークを放電するアークランプ」に相当する。 (イ)刊行物1発明の「陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6b」は,記載事項(ア-6)から,両者の間にキセノンランプ5を挟んだ状態で保持するものであるから,刊行物1発明の「キセノンランプ5を保持し且つ放熱機能を有する陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6b」は,本願補正発明の「アークランプを挟着保持する一対のヒートシンク」に相当する。 (ウ)刊行物1発明の「一対の電極ブロック15」は,ヒートシンク6a,6bのそれぞれと当接状態で接続可能なものであり,光学ベース3の上に配置されたものである。また,刊行物1発明の「光学ベース3」は,本願補正発明の「ベース」に相当する。 そして,ヒートシンク6a,6bと当接する電極ブロック15の当接面には,ヒートシンク6a,6bに挿通された棒状の締結部材13の雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部14と,突起部16とが設けられ,電極ブロック15の前記当接面と当接するヒートシンク6a,6bの面には,電極ブロック15の突起部16が挿入接続される穴部17が設けられ,ランプ交換時に,上記雄ネジ部12を上記雌ネジ部14に螺合すると,ヒートシンク6a,6bが電極ブロック15の当接面に押し付けられてランプユニット6cがその挿入方向で位置決め固定されるとともに電気的な接続がなされ,上記突起部16が上記穴部17に挿入接続されることにより,ランプユニット6cの挿入方向以外の方向での位置決めもなされるのであるから,「一対の電極ブロック15」は,ランプユニット6cの有するキセノンランプ5を位置決めする機能,及び,ランプユニット6cの有するヒートシンク6a,6bを着脱可能に固定する固定手段を有するものであるといえる。 一方,本願補正発明の「一対のステー」は,「一対のヒートシンクに対応する」ものである。そして,明細書の「【0022】・・・1対のステー50a,50bは,ベース70上に固定されており,ヒートシンク組み付けネジ40a,40bと螺合するネジ孔51a,51bが穿設されている。ヒートシンク組み付けネジ40a,40bをネジ孔51a,51bと螺合すると,キセノンランプ30は,ヒートシンク20a,20bを介してそれぞれステー50a,50bに固定される。つまり,キセノンランプ30と磁石60は,1対のステー50a,50bに固定されて,位置関係が規定されている。」を参酌すると,「一対のステー」は,キセノンランプ30の位置を規定し,ヒートシンク20a,20bを固定する機能を有するものであることが理解される。 そうすると,刊行物1発明の「一対の電極ブロック15」は,本願補正発明の「一対のステー」と同じ位置決め機能及び固定機能を有するものであるから,前者は後者に相当するといえる。 以上より,刊行物1発明の「ランプハウス4内に配置された,ヒートシンク6a,6bとそれぞれ当接状態で接続可能な導電性の一対の電極ブロック15」と,本願補正発明の「ベース上に固定される,前記一対のヒートシンクに対応する一対のステー」とは,「ベース上に配置される,前記一対のヒートシンクに対応する一対のステー」である点で共通し, 刊行物1発明の「ヒートシンク6a,6bと当接する電極ブロック15の当接面には,ヒートシンク6a,6bに挿通された棒状の締結部材13の雄ネジ部12と螺合する雌ネジ部14と,突起部16とが設けられ,電極ブロック15の前記当接面と当接するヒートシンク6a,6bの面には,電極ブロック15の突起部16が挿入接続される穴部17が設けられ」「ランプ交換時には,ランプユニット6cを正規の向きでランプハウス4内に挿入し,締結部材13の雄ネジ部12を電極ブロック15の雌ネジ部14に螺合すると,ヒートシンク6a,6bが電極ブロック15の当接面に押し付けられて,ランプユニット6cがその挿入方向で位置決め固定されるとともに,電気的な接続がなされ,電極ブロック15の突起部16がランプユニット6cの穴部17に挿入接続されることにより,ランプユニット6cの挿入方向以外の方向での位置決め」を行うための手段は,本願補正発明の「ベース上の一対のステーに対して前記一対のヒートシンクを着脱可能に固定する固定手段」に相当する。 (エ)刊行物1発明の「陰極側ヒートシンク6b」に設けられた「キセノンランプ5が点灯する際に生じる輝点位置の地磁気によるズレを調整し,安定した光量が得られるようにするための磁性体26」は,その機能からみて,本願補正発明の「発生する磁界によって前記アークの経路を制御する磁界発生手段」に相当するのは明らかである。 (オ)刊行物1発明において「ランプ交換時に」「キセノンランプ5と陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6bとから成る」「ランプユニット6c」は「ランプハウス4内に挿入」され,その際に上記(ウ)で検討したとおり,電極ブロック15に対して位置決めされ固定されるのであるから,ランプ交換時,ランプを取りはずした状態において,「陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6b」を光学ベース3の上に配置された「一対の電極ブロック15」から外した状態となるのは明らかである。また,キセノンランプ5が陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6bの間に挟まれた状態で保持されているのは上記(イ)で検討したとおりである。 そうすると,刊行物1発明の「ランプ交換時に」「ランプユニット6cを正規の向きでランプハウス4内に挿入」可能な構成は,本願補正発明の「前記一対のヒートシンクを前記ベース上の一対のステーから外した状態で該一対のヒートシンクに挟着保持されたアークランプを交換可能」な構成に相当する。 以上より,刊行物1発明と本願補正発明とは, 「陰極と陽極との間でアークを放電するアークランプと, 前記アークランプを挟着保持する一対のヒートシンクと, ベース上に配置される,前記一対のヒートシンクに対応する一対のステーと, 前記ベース上の一対のステーに対して前記一対のヒートシンクを着脱可能に固定する固定手段と, 発生する磁界によって前記アークの経路を制御する磁界発生手段と,を備え, 前記一対のヒートシンクを前記ベース上の一対のステーから外した状態で該一対のヒートシンクに挟着保持されたアークランプを交換可能な内視鏡用光源装置」である点において一致し,以下の点で相違する。 (相違点1)「一対のステー」が,本願補正発明においては,「ベース上に固定される」ものであるのに対して,刊行物1発明においては,光学ベース3の上に配置されるものである点。 (相違点2)「内視鏡用光源装置」が,本願補正発明においては,「ベース上の一対のステーの一方または双方に前記磁界発生手段を固定した」ものであるのに対して,刊行物1発明において,磁性体26は陰極側ヒートシンク6bに設けられており,本願補正発明においては,「前記一対のステー及び該一対のステーに固定された磁界発生手段は,前記アークランプの交換のために前記一対のヒートシンクを該一対のステーから外したとき,前記ベース上に残存する」ものであるのに対して,刊行物1発明において,磁性体26についてこのような特定はなされていない点。 以下,上記相違点について検討する。 (相違点1について) 刊行物1発明において,光学ベース3上に配置された電極ブロック15は,上記「(ウ)」で検討したとおり,ランプユニット6cを位置決めし固定するものであるから,挿入されるランプユニット6cに対して電極ブロック15の位置を不動とすることが望ましいのは明らかである。よって,刊行物1発明において,一対の電極ブロック15を光学ベース3上に固定することは,当業者が容易に想到し得ることである。 (相違点2について) 本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用された刊行物2(特開2002-100322号公報)の【0001】,【0094】に,一般照明用や反射鏡と組み合わされてプロジェクタ用,自動車の前照灯用などに使用される高輝度放電ランプにおいて,高輝度放電ランプ53が反射鏡54内に設置され,フェライト永久磁石55が反射鏡54に取り付けられ,これにより寿命により高輝度放電ランプ53の交換を行う場合,フェライト永久磁石55の交換を行わずに,高輝度放電ランプ53本体だけを交換するだけで済むこと,製造コストを削減することができる効果について記載され,同じく,本願の出願前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用された刊行物3(特開平9-161725号公報)の【0001】,【0012】に,メタルハライドランプ等の光源装置であり,光源装置に電磁石を配設して集光効率の改善を図った光源装置において,光源装置1であるメタルハライドランプ2のランプリフレクターの背面部上方のランプ交換時に干渉しない位置に電磁界発生手段としての電磁石5を配設することについて記載されている。 このように,放電ランプであり,ランプ近傍に磁界発生手段を配置してアークを制御する放電ランプの交換において,交換されるランプ本体には磁界発生手段を配置せず,交換されない部材に磁界発生手段を配置することは,本願出願前に周知の技術であり,放電ランプの交換のための構造は内視鏡用の光源装置に限らない一般的な技術であるから,刊行物1発明において,交換されない部材に磁界発生手段を配置する上記刊行物2及び3に記載のような周知の技術事項を適用することは,当業者が容易になし得ることといえる。 そして,上の適用に際して,刊行物1発明の磁性体26を固定配置する場所となる,放電ランプの交換において交換されない部材について検討すると,刊行物1発明において磁性体26は,記載事項(ア-4),(ア-8)のとおり,陰極側ヒートシンク6bの電極ブロック15と当接する端部に,上記当接面を電極ブロック15側に超えて固定して配置されており,磁性体26を陰極側ヒートシンク6bに配置した状態と,これに当接する電極ブロック15に配置した状態とでは,磁性体26の配置位置が大きく異なるものとはならないこと,磁性体26の配置位置の変更の前後で,ランプの陰極・陽極に対する磁場の形成形態が極力変化しないように考慮するのは当業者であれば当然であることから,刊行物1発明の磁性体26を固定配置する場所となる放電ランプの交換において交換されない部材として,陰極側ヒートシンク6bに最も近く,陰極側ヒートシンク6bの磁性体26が配置される端部に当接する電極ブロック15を想到することは自然である。 そして,これにより,光学ベース3の上に配置された電極ブロック15の一方に磁性体26を配置し,一対の電極ブロック15及び一対の電極ブロック15に固定された磁性体26が,キセノンランプ5交換のために陽極側ヒートシンク6aおよび陰極側ヒートシンク6bを一対の電極ブロック15から外したとき,光学ベース3上に残存するのは明らかである。 イ 本願補正発明の効果について 本願補正発明の有する,明細書の【0006】に記載された「作業者に与える負担を軽減するためにマグネットを交換せずに廃棄すると,ショートアークランプの交換のたびに新しい高価なマグネットが必要となるため,装置のコストの上昇を招くことになる。」という課題が解決されるという効果については,刊行物2に「【0094】寿命により高輝度放電ランプ53の交換を行う場合,フェライト永久磁石55の交換を行わずに,高輝度放電ランプ53本体だけを交換するだけで済むので,製造コストを削減することができる効果がある。」と記載されている。また,本願補正発明の有する,明細書の【0012】に記載された「アークランプ交換にともない磁石を移し替える煩雑な作業をすることを必要としない。また,ヒートシンクユニットと磁石は個別独立して固定することができる。」という効果も,刊行物1ないし3の記載事項から当業者が予測できる範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。 したがって,本願補正発明は,刊行物1ないし3の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 なお,請求人は回答書において,アークランプ(の陰極と陽極)と磁界発生手段との位置関係を,「アークランプの陰極と陽極に対向させて,かつ陰極と陽極との間の距離が略等しくなるように磁界発生手段を配置した構成」と限定する補正案を提示しているが,明細書及び図面には上記距離については記載されおらず,請求人が根拠とする【0017】?【0021】及び第5図から上記の距離について読み取ることもできず,上記補正は新規事項を追加する不適法なものとなる。仮に上記補正が適法なものであるとしても,磁界発生手段をアークランプの陰極と陽極に対向させ,かつ陰極と陽極の中間付近に配置する形態は,例えば上記刊行物2の第1図に示されるように,その原理上当然の配置にすぎない。 (4)小括 以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 平成22年10月14日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1ないし5に係る発明は,平成22年7月28日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「陰極と陽極との間でアークを放電するアークランプと, 前記アークランプを挟着保持する一対のヒートシンクと, ベース上に固定される,前記一対のヒートシンクに対応する一対のステーと, 前記ベース上の一対のステーに対して前記一対のヒートシンクを着脱可能に固定する固定手段と, 発生する磁界によって前記アークの経路を制御する磁界発生手段と, を備え,前記一対のヒートシンクを前記ベース上の一対のステーから外した状態で該一対のヒートシンクに挟着保持されたアークランプを交換可能な内視鏡用光源装置において, 前記ベース上の一対のステーの一方または双方に前記磁界発生手段を固定したことを特徴とする内視鏡用光源装置。」 1 刊行物およびその記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1の記載事項は,前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。 2 対比・判断 本願発明は,前記「第2 2」で検討した本願補正発明における「磁界発生手段」についての「前記一対のステー及び該一対のステーに固定された磁界発生手段は,前記アークランプの交換のために前記一対のヒートシンクを該一対のステーから外したとき,前記ベース上に残存する」との限定事項を省くものである。 そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加し限定したたものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2(3)」にて述べたとおり,刊行物1ないし3の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1ないし3の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。 3 むすび 以上のとおり,本願発明は,刊行物1ないし3の記載事項に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく,本願は拒絶すべきものである。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-03-23 |
結審通知日 | 2011-03-29 |
審決日 | 2011-04-11 |
出願番号 | 特願2004-240959(P2004-240959) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A61B)
P 1 8・ 121- Z (A61B) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 東 治企 |
特許庁審判長 |
郡山 順 |
特許庁審判官 |
横井 亜矢子 後藤 時男 |
発明の名称 | 内視鏡用光源装置 |
代理人 | 三浦 邦夫 |
代理人 | 安藤 大介 |