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審決分類 審判 査定不服 特39条先願 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1237767
審判番号 不服2007-24388  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-05 
確定日 2011-05-31 
事件の表示 特願2002- 68432「4”-置換-9-デオキソ-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA誘導体」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月31日出願公開、特開2002-316933〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、1998年5月29日(パリ条約による優先権主張 1997年6月11日,米国)を国際出願日とする出願である特願平11-501935号(以下、「原出願」という。)の一部を平成14年3月13日に新たな特許出願としたものであって、平成18年5月18日付けの拒絶理由通知書に対して、同年8月22日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、同年9月13日付けの拒絶理由通知書に対して、平成19年3月20日付けで上申書が提出されたが、同年6月5日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月29日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

本願の請求項1に係る発明は、平成18年8月22日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであり、請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、次のとおりである。
「【請求項1】 式10

[ここで、Rはn-プロピルアミノである]の化合物、またはその製剤的に許容される塩。」


2.引用出願に係る発明

本出願は,特許法第44条第2項の規定により,原出願である特願平11-501935号(この出願は特許第3315704号として既に登録済みである。)の出願の時に出願されたものとみなされることから,該原出願と同日の出願に該当するものである。
上記原出願の請求項1?5に係る発明は当該特許の願書に添付された明細書の特許請求の範囲に記載された事項により特定されるとおりのものであって,次のように記載されている(上記原出願に対応する特許の特許公報参照)。(なお、下線は当審において付したものである。)

「 【請求項1】 次式:

{式中、R^(1)は、H、ヒドロキシ、又はメトキシ;
R^(2)は、ヒドロキシ;
R^(3)は、…、-CH_(2)NR^(8)R^(15)、…;

R^(4)は、H、-C(O)R^(9)、…;

各R^(8)は、独立してH、C_(1)-C_(10)アルキル、…;

R^(15)は、H、C_(1)-C_(10)アルキル、…;
…}の化合物、又はその製薬学的に許容しうる塩。
【請求項2】 R^(4)がH、アセチル、又はベンジルオキシカルボニルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】 R^(1)がヒドロキシ、R^(2)がヒドロキシ、R^(3)が-CH_(2)NR^(15)R^(8)又は-CH_(2)SR^(8)である、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】 R^(3)が-CH_(2)NR^(15)R^(8)で、R^(15)及びR^(8)が、H、C_(1)-C_(10)アルキル、C_(2)-C_(10)アルケニル、及びC_(2)-C_(10)アルキニルから独立して選ばれ、前記R^(15)及びR^(8)基が、Hを除いて、場合により、ヒドロキシ、ハロ、及びC_(1)-C_(6)アルコキシから独立して選ばれた1又は2個の置換基で置換されている、請求項3に記載の化合物。
【請求項5】 R^(15)及びR^(8)が、それぞれ独立して、H、メチル、エチル、アリル、n-ブチル、イソブチル、2-メトキシエチル、シクロペンチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、n-プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、シクロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-プロピニル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びn-ヘキシルから選ばれる、請求項4に記載の化合物。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】?【請求項5】)

そうすると、原出願の請求項5に係る発明は、「【請求項1】に記載される【化1】で示される化合物において、R^(1)がヒドロキシ、R^(2)がヒドロキシ、R^(3)が-CH_(2)NR^(8)R^(15)、R^(4)がHである化合物であって、R^(15)及びR^(8)が、それぞれ独立して、H、メチル、エチル、アリル、n-ブチル、イソブチル、2-メトキシエチル、シクロペンチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、n-プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、シクロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-プロピニル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びn-ヘキシルから選ばれる化合物。」の発明(「以下、「原出願発明」という。)であるといえる。


3.対比

本願発明と原出願発明を対比すると、原出願発明のR^(15)及びR^(8)が、それぞれ独立して、H、n-プロピルである化合物は、本願発明の「【請求項1】 式10

[ここで、Rはn-プロピルアミノである]の化合物、またはその製剤的に許容される塩。」を少なくとも一化合物として含む点で一致し、一方、本願発明は、上記化合物のみであるのに対し、原出願発明は、上記化合物を含めて、「【請求項1】に記載される【化1】で示される化合物において、R^(1)がヒドロキシ、R^(2)がヒドロキシ、R^(3)が-CH_(2)NR^(8)R^(15)、R^(4)がHである化合物であって、R^(15)及びR^(8)が、それぞれ独立して、H、メチル、エチル、アリル、n-ブチル、イソブチル、2-メトキシエチル、シクロペンチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、n-プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、シクロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-プロピニル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びn-ヘキシルから選ばれる化合物」とされている点で一応相違する。


4.当審の判断

そこで、この相違点について、以下に検討する。
原出願明細書には、実施例70として、本願発明の式10で示される化合物の調整例が具体的に開示され、反応時間、収率、質量スペクトルが記載されている。また、原出願明細書には、実施例70の他にも、原出願発明の化合物の複数の調整例、ならびに、その反応時間、収率、質量スペクトルが同様に記載されている。
そうすると、先願明細書の記載及び当業者の技術常識に照らしてみれば、原出願発明において、原出願発明に係る種々の置換基を有する複数の化合物は、実質的に同等なものとして認識されていたということができる。
してみれば、本願発明の化合物は、原出願発明の請求項1において【化1】で定義される化合物において、R^(15)及びR^(8)の選択肢として記載されるH,n-プロピルを置換基として有する化合物であり、原出願発明の「…R^(15)及びR^(8)が、それぞれ独立して、H、メチル、エチル、アリル、n-ブチル、イソブチル、2-メトキシエチル、シクロペンチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、n-プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、シクロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-プロピニル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びn-ヘキシルから選ばれる化合物」の事実上の選択肢となっている一化合物にすぎないものである。
したがって、上記相違点は実質的な相違点であるとはいえない。

なお、請求人は、審判請求書の請求の理由(平成19年11月29日付け手続補正書)において、次の点を主張する。
(i)特許法第39条第2項の規定は、「特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみ」と規定しているように、複数の特許出願人が同日に同一発明について特許出願をした場合に適用されると解され、本願のように、親出願と分割出願の出願人が同一の場合、39条2項でいう“一の特許出願人”であり、本願は特許法第39条第2項の規定に反したものではない旨、また、同一出願人が一の出願とすれば共に権利化されるべき発明が、親出願と分割出願という別の出願に記載されているという理由で拒絶されるようなことは、特許法第39条第2項は想定しておらず、同一出願人による同日出願であることから、両者に権利を付与しても特許権の権利期間の延長の問題も生じず、第三者が不利益を被るなどの問題が生じることはないことから、親出願と分割出願の出願人が同一の場合にまで、特許法第39条第2項の規定が適用されると解することはできない旨、
(ii)先願の請求項には多くの化合物が含まれ、本願請求項1に記載の化合物はその一例にすぎず、このような関係にある先後願については、請求項に係る発明の範囲が顕著に異なっており、特許法第39条での同一発明には該当しない旨
この点、特許庁の特許・実用新案審査基準の第4章の3.4「同日に出願された二つの出願の各々の請求項に係る発明どうしが同一か否かの判断手法」には、「例えば発明Aが下位概念の発明で、発明Bが上位概念の発明である場合のように、発明Aが先願で発明Bが後願であるときには後願発明Bを先願発明Aと同一とするが、発明Bが先願で発明Aが後願であるときには後願発明Aを先願発明Bと同一としないような発明A、Bが同日に出願された場合、両発明を同一の発明であるとすることは、先後願の場合には後願の発明Aを先願の発明Bと同一としないことからみて適切ではない。」と記載され、両発明が上位と下位の関係であり、別々の日に出願されていれば権利化されない後願発明Bが、発明Aの出願と同日であれば別途重複して権利化されることを意味し、同様に、本ケースのようなその発明の範囲が顕著に異なっている場合にも、特許法第39条第2項でいう同一発明とは扱わず、両者に権利を付与すべきである旨

そこで、以下この点について付言する。
(i)について
特許制度は技術的思想の創作である発明の公開に対し、その代償として特許権者に一定期間独占権を付与するものであるから、一発明について二以上の権利を認めるべきではない。特許法第39条はそのような重複特許を排除する趣旨から、一発明一特許の原則を明らかにするとともに、一の発明について複数の出願があったときには、最先の出願人のみが特許を受けることができることを明らかにした規定である。そして、特許法第39条第2項は、「同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは、特許出願人の協議により定めた一の特許出願人のみがその発明について特許を受けることができる。…」と規定している。
上記したように、特許法第39条は一発明一特許の原則を規定したものと解釈されるから、同条第2項の規定も当然に一発明一特許の原則を踏まえた規定であると解釈すべきであって、二以上の同一発明についてそれぞれの発明に基づく複数の特許権を許容する規定であると解釈すること適切ではない。
加えて、同条第2項の「一の特許出願人のみが特許を受けることができる」なる記載は、その直前に記載の「同一の発明について同日に二以上の特許出願があつたときは」を前提としているのであって、あくまで「特許出願」が二以上であるときについての規定であるから、ここでいう「一の特許出願人のみ」なる表現は、「二以上の特許出願」と対をなす表現であると解されるので、「一の特許出願人のみ」とは、「一の特許出願の出願人のみ」、すなわち当該「一の特許出願」について特許を受けた場合にその特許権享有者となる「出願人のみ」、を意味するものと解釈すべきである。
なお、そもそも特許の審査審判に関しては、例えば、拒絶すべき査定について規定した特許法第49条及び特許をすべき査定について規定した特許法第51条を初めとして、特許法全体が、原則「特許出願」を基本単位として構成されていることから、特段の事情がない限り、「特許出願人」とは、あくまで特定の「特許出願」に対して対応づけられるものであって、異なる「特許出願」に対する「特許出願人」は、たとえ事実として同一の自然人又は法人による特許出願であったとしても、法的な位置づけとしては異なる「特許出願人」であると解すべきである。そして、特許法第39条第2項の解釈に際しても、これと異なる解釈をすべき事情は見当たらない。
したがって、特許法第39条第2項の規定は、同一の発明について二以上の特許出願があった場合に、出願人が同一であるか否かを問わず、出願人が同一であるときも出願人が異なる場合と同様に適用される規定である(特許・実用新案審査基準、第4章特許法第39条2.2.1並びに2.7.1)。
(ii)について
特許庁の特許・実用新案審査基準の第4章の「3.4 同日に出願された二つの出願の各々の請求項に係る発明どうしが同一か否かの判断手法」の(2)の上記請求人の引用した部分の(注)には、「同日に出願された二つの出願の発明を特定するための事項が二以上の選択肢を有する場合の取扱いは、3.3(3)の取扱いに準ずる。」と記載され、本願発明と原出願発明とは、この「二以上の選択肢を有する場合」に該当し、「3.3(3)の取扱いに準ずる」ものである。
そして、同審査基準の「3.3 出願日が異なる場合における請求項に係る発明どうしが同一か否かの判断手法」の「(3)先願発明又は後願発明の発明を特定するための事項が二以上の選択肢を有する場合」には、以下の事項が記載されている。
「先願発明の請求項が、発明を特定するための事項に関して形式上又は事実上の選択肢(注1)を有するものである場合には、当該選択肢中のいずれか一のみを発明を特定するための事項と仮定したときの発明と、後願発明との対比を行ったときに、発明を特定するための事項に相違点がないか、又は相違点があっても実質同一であれば(上記(1)(2))、両者は同一であるものとする。」
本願発明と原出願発明の関係は、まさに上記3.3(3)の場合に該当するものであって、原出願発明の事実上の選択肢である「…R^(15)及びR^(8)が、それぞれ独立して、H、メチル、エチル、アリル、n-ブチル、イソブチル、2-メトキシエチル、シクロペンチル、3-メトキシプロピル、3-エトキシプロピル、n-プロピル、イソプロピル、2-ヒドロキシエチル、シクロプロピル、2,2,2-トリフルオロエチル、2-プロピニル、sec-ブチル、tert-ブチル、及びn-ヘキシルから選ばれる化合物を包含するものである」を発明を特定するための事項と仮定したときの発明と本願発明は同一であるから、本願発明と原出願発明は同一であるというべきである。
よって、上記「4.当審の判断」は、同審査基準と何ら齟齬するものではなく、上記審判請求人の主張は採用することができない。

したがって、審判請求人の主張はいずれも採用できない。


5.まとめ

以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、この出願と同日に出願された特願平11-501935号に係る発明と同一と認められ、かつ、該特許出願に係る発明は特許第3315704号として特許登録されており協議を行うことができないから、特許法第39条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-28 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-19 
出願番号 特願2002-68432(P2002-68432)
審決分類 P 1 8・ 4- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中木 亜希  
特許庁審判長 星野 紹英
特許庁審判官 上條 のぶよ
内藤 伸一
発明の名称 4”-置換-9-デオキソ-9a-アザ-9a-ホモエリスロマイシンA誘導体  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小林 泰  
代理人 山本 修  
代理人 社本 一夫  
代理人 富田 博行  
代理人 小野 新次郎  
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