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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01N
管理番号 1237777
審判番号 不服2010-6482  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-26 
確定日 2011-05-30 
事件の表示 特願2007- 8704「光学式検知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 6日出願公開、特開2007-225600〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成19年1月18日(パリ条約による優先権主張 2006年1月18日 (DE)ドイツ)の出願であって,平成21年11月25日付けで拒絶査定がされ,これに対し,平成22年3月26日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに,同日付けで手続補正がされたものである。

第2 平成22年3月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

1 補正却下の決定の結論
平成22年3月26日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1)本願補正発明
本件補正は,特許請求の範囲の請求項1を,
「光学式検知装置であって,
第1及び第2部分部材(16,18)と,前記光学式検知装置を,パネル(22)のうち対向する片面に結合するための結合面(20)と,を有する光伝導体構造と,
光ビームを前記第1部分部材(16)に接続する光学式送信部(10)と,
前記第2部分部材(18)から出射する光ビームを受ける光学式受信部(12)と,
前記光学式送信部(10)及び前記光学式受信部(12)が配置されたプリント回路基板(14)と,を備える光学式検知装置において,
前記プリント回路基板(14)は,前記結合面(20)に対して平行に配置されており,
前記光学式送信部(10)の中心光(28)が,前記結合面(20)に対して垂直に前記第1部分部材(16)の第1非球面レンズ(24)へ入射し,かつ前記結合面(20)に対して垂直に前記第2部分部材(18)の第2非球面レンズ(26)から出射するように,前記光伝導体構造は構成されており,
前記光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第1部分部材(16)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向され,また第2の全反射後に,前記結合面(20)に向けて指向されるようになっており,
前記光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第2部分部材(18)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向され,かつ第2の全反射後に,前記結合面(20)に対して垂直に指向されるようになっており,また 前記第1非球面レンズ(24)は前記光学式送信部(10)の外側光(38,40)も前記中心光(28)に平行に前記第1部分部材(16)に入射するような形状となっており,かつ前記第1部分部材(16)と第2部分部材(18)とは対称である, ことを特徴とする光学式検知装置。」とする補正を含むものである(下線部は補正箇所を示す。)。

上記請求項1についての補正は,補正前の請求項1及び2を削除する補正と,補正前の請求項3における「中心光(28)」について「第2の全反射後に,前記結合面(20)に向けて指向されるようになっており」との限定を付加し,補正前の請求項3における「第1非球面レンズ(24)」について「光学式送信部(10)の外側光(38,40)も前記中心光(28)に平行に前記第1部分部材(16)に入射するような形状となっており」との限定を付加し,補正前の請求項3における「第1部分部材(16)」と「第2部分部材(18)」について両者が「対称である」との限定を付加するものであって特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
したがって,上記請求項1についての補正は,平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前(以下,「平成18年改正前」という。)の特許法17条の2第4項第1号及び第2号の,請求項の削除及び特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで,上記請求項1に記載された発明(以下,「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物およびその記載事項
ア 本願の優先権主張前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である,実願昭58-47431号(実開昭59-152446号)のマイクロフィルム(以下,「刊行物1」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている(以下,下線は当審において付記したものである)。

(ア-1)
「ウィンドウガラス等の透明体の内側に受光部を配置すると共に,該透明体の内面にプリズムを取り付けて,光源から光を透明体に照射し,該光の光路が透明体の外面に付着した雨滴等により変化したときこれを受光部で検知するように構成した雨滴センサにおいて,前記プリズムに,前記透明体から該プリズムに入射した外光が前記受光部に入射しないように規制する面を形成してなることを特徴とする雨滴センサ。」(第1頁第5?13行)

(ア-2)
「本考案は例えば車両用ワイパに装備される雨滴センサに関し,ウィンドウガラス等に雨滴が付着したときこれを検知するものである。」(第1頁第15?17行)

(ア-3)
「第2図は本考案の雨滴センサの一例を示す略解図である。図中第1図に示す部分と同一部分には同一符号を付してその説明を省略する。本実施例では,プリズム6に反射面6b,6c,6e,6fが形成されている。これら反射面6b,6c,6e,6fは入射光を全反射するようにそれぞれ所定角度で傾斜している。すわち,反射面6b,6fは,ウィンドウガラス2の内面に接着された面6dに対し角度45°で傾斜し,また反射面6c,6eは,面6dに対し角度15°で傾斜している。なお,面6dはウィンドウガラス2の界面で反射が生じないように接着されている。また,プリズム6の面6h,6i,6j,6kには黒色の塗料等により光吸収層7が設けられている。面6h,6kは面6dとほぼ平行に設定されている。投光部3から面6aを通ってプリズム6内に入射した光は,反射面6b,6cで反射を繰り返した後,面6dからウィンドウガラス2に入射される。」(第3頁第4行?第4頁第4行)

(ア-4)
「本実施例では,反射面6bの傾斜角が45°,反射面6cの傾斜角15°に設定されていることから,入射角θは60°となる。従って,雨滴5が付着していないときには,ウィンドウガラス2に入射した光は境界面M_(1)で全反射されて再びプリズム6内に入射し,反射面6e,6fで反射を繰り返した後,面6gから出射し受光部4に入射される。また,雨滴5が付着すると,ウィンドウガラス2に入射した光は境界面M_(2)から雨滴5に入射される。雨滴5に入射した光は,雨滴5とその外側の空気との境界面で全反射されるものを除いて外部に漏れる。このため,反射光量,すなわち受光部4の受光量が減少する。」(第4頁第16行?第5頁第9行)

(ア-5)
第2図は本考案の一実施例を示すものであり,この図には,投光部3の投光面及び受光部4の受光面が,面6dに対してほぼ平行に配置され,投光部3から出射された光の光軸が面6dに対してほぼ垂直であり,面6b及び面6eで全反射された光の光軸が面6dに対してほぼ平行であり,受光部4へ入射する光の光軸が面6dに対してほぼ垂直である形態が記載されている。

イ 本願の優先権主張前に頒布され,原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である,特表平11-509932号公報(以下,「刊行物2」という。)には,図面とともに,次の事項が記載されている。

(イ-1)
「【特許請求の範囲】
1.板ガラスシートの反対側の表面の水滴を検出する前記板ガラスシートの表面に取り付けるための水滴センサであって,
(a)間隔をおいて配置された一対のプリズム屈折領域を含む,前記板ガラスシートの内側面に取り付けるためのカプラと,
(b)前記カプラに固定されたハウジングと,
(c)前記ハウジングに固定されて,前記板ガラスシートの前記内側面に概ね平行に配置されたデバイス面を備えた平坦な回路基板と,
(d)前記デバイス面に取り付けられた,前記回路基板の前記デバイス面に概ね直交する光学的な軸を備えた光ビームを放射するエミッタと,
(e)前記ハウジングに取り付けられて,前記エミッタと前記カプラの第1のプリズム領域との間に配置されて,反射面を備えたエミッタレンズと,
(f)その受容角度内の角度で入射する光ビームを検出し,前記光ビームに対応した制御信号を発生する,前記デバイス面に取り付けられたディテクタと,
(g)前記ハウジングに取り付けられて,前記ディテクタと前記カプラの第2のプリズム領域との間に配置された,反射面を備えたディテクタレンズとを有し,
前記エミッタレンズと,プリズム屈折領域を備えた前記カプラと,前記ディテクタレンズとが,前記エミッタから,前記板ガラスの外側面への,そして前記ディテクタへ戻る光学的な経路を形成するように配置されて,前記光ビームが,前記回路基板と概ね直交する角度で放射され,前記板ガラスシートに入射されて,前記板ガラスシートによって40°から50°の間の角度で反射され,前記ディテクタによって,前記ディテクタの前記受容角度内の角度で受け取られることを特徴とする水滴センサ。」(第2頁第1?25行)

(イ-2)
「発明の開示
本発明に基づけば,ウインドシールドの内側面に取り付けるために,小型の水滴センサが提供される。この水滴センサは,コリメータレンズと,ウインドシールドの内側面に平行に配置されたプリント回路基板にエミッタとディテクタとを取り付けることを容易にする取り外し可能なプリズムカプラとを有する。
本発明の薄型かつ軽量のカプラは,ウインドシールドに接着されて取り付けられる。センサのハウジングは,カプラの上側エッジ部分に取り外し可能に取り付けられる。センサのハウジング内には,表面に取り付けられた赤外線エミッタ,ディテクタ,及び信号処理回路が,全てハウジング内に取り付けられた1つのプリント回路基板に取り付けられている。センサのハウジングがカプラに取り付けられた時,プリント回路基板は,ウインドシールドの内側面に平行に配置される。コスト的及び空間的に極めて効率によい表面取付型エミッタ及びディテクタは,回路基板と直交する初期の光学的な軸を有するように,回路基板に取り付けられている。」(第12頁第13?26行)

(イ-3)
「 本発明の他の目的は,全ての電気光学的なコンポーネントと信号処理回路とを1つの平坦な回路基板に取り付けることにより,センサの製造コストを低減することである。表面取り付け技術と,チップオンボード技術とが,回路基板を製造するための自動化された組立技術と組み合わされることで,センサを製造する工程での,改善された効率と,製造コストの低減とが達成される。本発明の構造によって,複数の回路基板と,光学的な装置へのリード線の取り付け工程とを用いることが省略される。」(第14頁第19?25行)

(イ-4)
「第2図及び第3図に例示されているように,水滴センサ10は,プリズムカプラ24と,電気光学的コンポーネント及び信号処理回路を取り付けるための回路基板26と,回路基板26を収容し且つカプラ24に取り付けるためのセンサハウジング28とを含む。」(第15頁第27行?第16頁第2行)

(イ-5)
「 回路基板26は,第3図に例示されているように,センサハウジング28のベース48に取り付けられている。センサハウジング28は,硬質プラスチック若しくはその他の堅い材料から形成されていて,ベース48から延出する4つの垂直な壁50を有する。本発明の目的の1つは,センサハウジングの寸法を,とりわけ,ウインドシールド18の内側面30から延出する壁50の高さを,最小にすることである。」(第17頁第19?24行)

(イ-6)
「第3図を参照すると,センサの断面図によって,1つのエミッタ56とディテクタ58の対が表されている。追加の(別個の)エミッタ56及びディテクタ58の対が,同様に回路基板26に取り付けられてもよい。光ビーム60の光線として平行化された光ビーム60の光学的な経路が,エミッタ56からウインドシールド18の外側面へ,更にディテクタ58へ向けて,第3図に例示されているように形成される。」(第18頁第10?15行)

(3)当審の判断
ア 対比・判断
刊行物1の記載事項(ア-1)?(ア-5)を総合すると,刊行物1には次の発明が記載されているものと認められる。
「雨滴センサであり,
ウィンドウガラス2の内面に接着された面6dと,入射光を全反射する反射面6b,6c,6e,6fと,を有するプリズム6と,
プリズム6の面6aを通って光を入射させる投光部3と,
プリズム6の面6gから出射した光が入射する受光部4とを備え,
投光部3からの光は面6aを通ってプリズム6内に入射し,反射面6b,6cで全反射を繰り返した後,面6dからウィンドウガラス2に入射され,ウィンドウガラス2に入射した光は境界面M_(1)で全反射された後,再びプリズム6内に入射し,反射面6e,6fで全反射を繰り返した後,面6gから出射し受光部4に入射する雨滴センサ。」(以下,「刊行物1発明」という。)

そこで,以下に本願補正発明と刊行物1発明を対比する。

(ア)本願補正発明の「光学式検知装置」は,本願明細書の「【0001】・・・本発明は・・・特に,自動車のワイドスクリーン,に結合するための結合面・・・」,「【0014】光学式検知装置は,自動車のワイドスクリーンに配設される雨滴センサとして,特に,適しているが,用途はこれに限られない。」との記載から雨滴を検知する装置を含むものであるから,刊行物1発明の「雨滴センサ」はこれに含まれる。

(イ)刊行物1発明の「ウィンドウガラス2」及び「面6d」は,本願補正発明の「パネル(22)」及び「結合面(20)」に相当するものであり,刊行物1発明の「プリズム6」が光伝導体として機能するのは明らかであるから,刊行物1発明の「ウィンドウガラス2の内面に接着された面6d」「を有するプリズム6」と,本願補正発明の「第1及び第2部分部材(16,18)と,前記光学式検知装置を,パネル(22)のうち対向する片面に結合するための結合面(20)と,を有する光伝導体構造」とは,「光学式検知装置を,パネル(22)のうち対向する片面に結合するための結合面(20)」「を有する光伝導体構造」である点で共通する。

(ウ)本願補正発明の「第1部分部材(16)」は「光伝導体構造」の一部であり,光を入射させる面を有するものであるから,刊行物1発明の「プリズム6の面6aを通って光を入射させる投光部3」は,本願補正発明の「光ビームを前記第1部分部材(16)に接続する光学式送信部(10)」に相当する。

(エ)本願補正発明の「第2部分部材(18)」は「光伝導体構造」の一部であり,光を出射させる面を有するものであるから,刊行物1発明の「プリズム6の面6gから出射した光が入射する受光部4」は,本願補正発明の「第2部分部材(18)から出射する光ビームを受ける光学式受信部(12)」に相当する。

(オ)刊行物1発明において「投光部3」から出射した光は本願補正発明の「中心光(28)」に相当するものである。
また,刊行物1発明において,投光部3から出射された光の光軸が面6dに対して垂直なものとして想定され,面6b及び面6eで全反射された光の光軸が面6dに対して平行なものとして想定され,受光部4へ入射する光の光軸が面6dに対して垂直なものとして想定されていることは,(ア-4)の「本実施例では,反射面6bの傾斜角が45°,反射面6cの傾斜角15°に設定されていることから,入射角θは60°となる。・・・」という記載や,測定原理及び(ア-5)などから投光部3側と受光部4側においてプリズム6形状や光路が対称なものとして理解されることから,明らかである。よって,刊行物1発明の「面6aを通ってプリズム6内に入射」する「投光部3からの光」及び「面6gから出射し受光部4に入射する」光は,面6dに対して垂直であるといえる。
そうすると,刊行物1発明の「投光部3からの光は面6aを通ってプリズム6内に入射し」「面6gから出射し受光部4に入射する」ように構成された「プリズム6」と,本願補正発明の「光学式送信部(10)の中心光(28)が,前記結合面(20)に対して垂直に前記第1部分部材(16)の第1非球面レンズ(24)へ入射し,かつ前記結合面(20)に対して垂直に前記第2部分部材(18)の第2非球面レンズ(26)から出射するように」構成された「光伝導体構造」とは,「光学式送信部(10)の中心光(28)が,前記結合面(20)に対して垂直に入射し,かつ前記結合面(20)に対して垂直に出射するように」構成された「光伝導体構造」である点で共通する。

(カ)刊行物1発明において,「投光部3から」「プリズム6内に入射し,反射面6b」「で全反射」「した」光及び「再びプリズム6内に入射し,反射面6e」「で全反射」「した」光が面6dに対して平行であること,「反射面」「6fで」「全反射した後」「面6gから出射し受光部4に入射する」光が,面6dに対して垂直であることは,上記「(オ)」で判断したとおりである。
また,本願補正発明の「第1部分部材(16)における第1の全反射」,「第1部分部材(16)における」「第2の全反射」,「第2部分部材(18)における第1の全反射」が,それぞれ,刊行物1発明の「反射面6b」での「全反射」,「反射面6c」での「全反射」,「反射面6e」での「全反射」に相当するのは明らかである。
さらに,刊行物1発明において「光」が「反射面6c」での「全反射」の後に「面6d」に向けて指向されるのは明らかである。
そうすると,刊行物1発明の「投光部3からの光は面6aを通ってプリズム6内に入射し,反射面6b,6cで全反射を繰り返した後,面6dからウィンドウガラス2に入射され,ウィンドウガラス2に入射した光は境界面M_(1)で全反射された後,再びプリズム6内に入射し,反射面6e,6fで全反射を繰り返した後,面6gから出射し受光部4に入射する」構成は,本願補正発明の「光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第1部分部材(16)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向され,また第2の全反射後に,前記結合面(20)に向けて指向されるようになっており,前記光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第2部分部材(18)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向され,かつ第2の全反射後に,前記結合面(20)に対して垂直に指向されるようになって」いる構成に相当する。

以上より,刊行物1発明と本願補正発明とは,
「光学式検知装置であって,
光学式検知装置を,パネル(22)のうち対向する片面に結合するための結合面(20)を有する光伝導体構造と,
光ビームを前記第1部分部材(16)に接続する光学式送信部(10)と,
前記第2部分部材(18)から出射する光ビームを受ける光学式受信部(12)とを備える光学式検知装置において,
光学式送信部(10)の中心光(28)が,前記結合面(20)に対して垂直に入射し,かつ前記結合面(20)に対して垂直に出射するように前記光伝導体構造は構成されており,
前記光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第1部分部材(16)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向され,また第2の全反射後に,前記結合面(20)に向けて指向されるようになっており,
前記光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第2部分部材(18)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向され,かつ第2の全反射後に,前記結合面(20)に対して垂直に指向されるようになっている,
光学式検知装置。」である点において一致し,以下の点で相違する。

(相違点1)「光学式検知装置」の「光伝導体構造」が,本願補正発明においては,「第1及び第2部分部材(16,18)」を有し,「第1部分部材(16)と第2部分部材(18)とは対称である」のに対して,刊行物1発明においては,「プリズム6」がこのような構成を有していない点。

(相違点2)「光学式検知装置」が,本願補正発明においては,「光学式送信部(10)及び前記光学式受信部(12)が配置されたプリント回路基板(14)」を備え,「プリント回路基板(14)は,前記結合面(20)に対して平行に配置されて」いるのに対して,刊行物1発明においては,プリント回路基板を用いることやその配置について特定されていない点。

(相違点3)「光学式検知装置」の「光伝導体構造」が,本願補正発明においては,光学式送信部(10)の中心光(28)が,前記結合面(20)に対して垂直に入射する際「第1部分部材(16)の第1非球面レンズ(24)へ」入射し, 前記結合面(20)に対して垂直に出射する際「前記第2部分部材(18)の第2非球面レンズ(26)から」出射するように構成され,「第1非球面レンズ(24)は前記光学式送信部(10)の外側光(38,40)も前記中心光(28)に平行に前記第1部分部材(16)に入射するような形状となって」いるのに対して,刊行物1発明においては,「プリズム6」がこのような構成及び形状を有するものではない点。

以下,上記相違点について検討する。

(相違点1)
刊行物1発明においてプリズム6を単一の部材により形成するか,複数の部材により形成するかということは,機能において異なるところはなく設計事項にすぎない。また上記「(オ)」で検討したとおり,刊行物1発明のプリズム6の形状は,投光部3側と受光部4側において対称なものとして理解されるが,反射式のセンサにおいて投光部側と受光部側に配置されたプリズムなどの光伝導部材の形状を対称なものとすることは技術常識である。
よって,刊行物1発明において,「プリズム6」を,互いに対称な第1部分部材と第2部分部材によって形成するよう想到することは,当業者にとって容易である。

(相違点2)
刊行物2にはウインドシールドの内側面に取り付けられる光反射式の水滴センサにおいて,センサをより小型化しセンサの製造コストを低減するために,ウインドシールド内側面に対して平行に配置されたプリント回路基板上に,光ビームを放射するエミッタと光ビームを検出するディテクタを取り付けることについて記載されている。
ここで刊行物2においてエミッタの光放射面とディテクタの光検出面がウインドシールド内側面及び回路基板に対して平行であるのは明らかである。
一方,刊行物1発明においても,(ア-5)などから投光部3の投光面及び受光部4の受光面は面6dに対してほぼ平行であると理解される。
そして,特に車内に搭載されるような雨滴センサにおいてセンサの小型化やコストの低減は当然に要請されるものといえるから,刊行物1発明の雨滴センサにおいて,投光部3及び受光部4を面6dに対して平行に配置されたプリント回路基板上に配置するよう想到することは,当業者が容易になし得ることである。

(相違点3)
刊行物1発明において,投光部3からプリズム6の面6aに入射される光が如何なる形状であるのかは不明であるが,投光部が特別な構成を備えない限り通常は一定の広がりを有するものとなることは技術常識である。
一方,光源・光伝導体・検出器を備えた光反射式の雨滴センサにおいて,光源から出射された一定の広がりを有する光を,平行光に変換して光伝導体構造へ入射させ界面で反射させた後に出射させ,集光して検出することは,本願の優先権主張前における周知技術であり,刊行物2の(イ-6)や図3に記載され,さらに原査定の拒絶の理由において引用された刊行物である特開2005-31016号公報の【0002】,【0003】,【0017】,【0019】,第1図に「平行光変換レンズ」「集光レンズ」によって平行化され集光される光が記載されるとおりである。
また,このような広がりを有する光を平行光に変換する際や平行光を集光する際に非球面レンズを用いることについても,上記特開2005-31016号公報の「【0002】 車両のガラスの内面側に装着される雨滴検知装置として,LEDなど発光源からの光を平行光変換レンズにより平行光に変換してガラスに入射し,ガラスの外面(外側界面)で反射させ,その反射光を集光レンズにより集光してフォトダイオードなど受光素子で受光し,受光量によって雨滴を判定する雨滴検知装置が知られている。【0003】 そして,平行光変換レンズ及び集光レンズには,非球面レンズのレンズ形状を工夫し,図9に示すように焦点Fを一点に合わせた焦点一点型の非球面レンズ200を用いており,受光素子の検知面300に焦点がくるように平行光変換レンズ及び集光レンズを配置している。」(下線は当審において付記したものである)と記載されるとおり本願の優先権主張前における周知技術である。
さらに,平行光変換レンズや集光レンズを光伝導体であるプリズムの入射面及び出射面に形成することも,上記特開2005-31016号公報の「【0019】・・・プリズム6は,中央部に板状部8を有しており,板状部8の両側には,LED2及びPD3と対面するように平行光変換レンズ9及び集光レンズ10が形成されている。・・・」及び第1図に記載されるように,本願の優先権主張前における周知の技術事項にすぎない。
よって,刊行物1発明において,投光部3からプリズム6の面6aに入射される光を一定の広がりを有する光であるとして,プリズム6の入射面及び出射面に非球面レンズを配置し,入射面側の非球面レンズにおいて外側を通過する光も中心を通過する光と共に平行化してプリズム6へ入射するよう構成することは,当業者が容易になし得ることである。

イ 本願補正発明の効果について
本願補正発明の有する,より有利なコストで製造でき,より簡易かつ小型の構造を有する光学式検知装置を提供するという効果は,刊行物1及び刊行物2の記載事項,並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり,格別顕著なものとはいえない。

したがって,本願補正発明は,刊行物1及び刊行物2の記載事項,並びに周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願補正発明は特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)小括
以上のとおり,本件補正は,平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
平成22年3月26日付けの手続補正は上記のとおり却下されることとなったので,本願の請求項1ないし5に係る発明は,平成21年6月17日付け誤訳訂正書の特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ,その請求項1ないし3に係る発明は以下のとおりのものである。以下,請求項3に係る発明を,「本願発明」とする。

「【請求項1】光学式検知装置であって,
第1及び第2部分部材(16,18)と,前記光学式検知装置を,パネル(22)のうち対向する片面に結合するための結合面(20)と,を有する光伝導体構造と,
光ビームを前記第1部分部材(16)に接続する光学式送信部(10)と,
前記第2部分部材(18)から出射する光ビームを受ける光学式受信部(12)と,
前記光学式送信部(10)及び前記光学式受信部(12)が配置されたプリント回路基板(14)と,を備える光学式検知装置において,
前記プリント回路基板(14)は,前記結合面(20)に対して平行に配置されており,
前記光学式送信部(10)の中心光(28)が,前記結合面(20)に対して垂直に前記第1部分部材(16)の第1非球面レンズ(24)へ入射し,かつ前記結合面(20)に対して垂直に前記第2部分部材(18)の第2非球面レンズ(26)から出射するように,前記光伝導体構造は構成されている,光学式検知装置。」
「【請求項2】請求項1に記載の光学式検知装置において,
前記光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第1部分部材(16)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向される,ことを特徴とする光学式検知装置。」
「【請求項3】請求項2に記載の光学式検知装置において,
前記光学式送信部(10)の前記中心光(28)は,前記光伝導構造の第2部分部材(18)における第1の全反射後に,前記結合面(20)に対して平行に指向され,かつ第2の全反射後に,前記結合面(20)に対して垂直に指向される,ことを特徴とする光学式検知装置。」

1 刊行物およびその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である刊行物1の記載事項は,前記「第2 2(2)」に記載したとおりである。

2 対比・判断
本願発明は,前記「第2 2」で検討した本願補正発明における「中心光(28)」についての「第2の全反射後に,前記結合面(20)に向けて指向されるようになっており」との限定事項を省き,「第1非球面レンズ(24)」についての「光学式送信部(10)の外側光(38,40)も前記中心光(28)に平行に前記第1部分部材(16)に入射するような形状となっており」との限定事項を省き,「第1部分部材(16)と第2部分部材(18)」についての「対称である」との限定事項を省くものである。
そうすると,本願発明の構成要件をすべて含み,さらに他の構成要件を付加し限定したたものに相当する本願補正発明が,前記「第2 2(3)」にて述べたとおり,刊行物1及び刊行物2の記載事項,並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,本願発明も同様の理由により,刊行物1及び刊行物2の記載事項,並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものである。

3 むすび
以上のとおり,本願発明は,刊行物1及び刊行物2の記載事項,並びに周知技術に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく,本願は拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-01-04 
結審通知日 2011-01-05 
審決日 2011-01-18 
出願番号 特願2007-8704(P2007-8704)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01N)
P 1 8・ 575- Z (G01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 横尾 雅一  
特許庁審判長 後藤 時男
特許庁審判官 郡山 順
横井 亜矢子
発明の名称 光学式検知装置  
代理人 社本 一夫  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小野 新次郎  
代理人 富田 博行  
代理人 橋本 正男  
代理人 小林 泰  

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