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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1237814
審判番号 不服2008-1112  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-01-15 
確定日 2011-06-01 
事件の表示 特願2004-546221「サッカリドタイプの化合物及び皮膜形成剤を含む熱活性化永続的スタイリング組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 5月 6日国際公開、WO2004/037217、平成18年 3月16日国内公表、特表2006-508937〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯・本願発明
本願は、平成14年10月22日を国際出願日とする出願であって、平成19年10月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成20年1月15日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
そして、その請求項1ないし14に係る発明は、平成19年8月24日受付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められ、そのうち請求項1に係る発明は次のとおりである。
「【請求項1】
(a)少なくとも一つの皮膜形成剤;及び
(b)キシロース
を含む、少なくとも一つのケラチン繊維の永続的な非パーマネント状の成型、または少なくとも一つのケラチン繊維の非パーマネント状の形状の永続的な維持のための組成物であって、
前記少なくとも一つの皮膜形成剤と前記キシロースは、前記少なくとも一つのケラチン繊維に永続的な非パーマネント状の形状を与えるのに、または前記少なくとも一つのケラチン繊維の非パーマネント状の形状を永続的に維持するのに有効量で存在する、組成物。 」(以下、「本願発明」という。)

2 引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である国際公開第02/078655号(以下、「刊行物1」という。)には、次の事項が記載されている(なお、原文は英文であるので訳文で示す。下線は当審で付与)。
(1a)「本発明は、ヒトのケラチン繊維を含む少なくとも一つのケラチン繊維を手入れ、トリートメント又は持続的にコンディショニングするための組成物、これらの組成物をからなるキット、及び方法に関し、(i)少なくとも2つの第4級アンモニウム基を有する、少なくとも一つの化合物、及び(ii)C_(3)ないしC_(5)糖類、少なくとも一つのC_(1)ないしC_(2)の炭素鎖で置換された、C_(3)ないしC_(5)単糖類、及び少なくとも一つのアミノ基で置換された、少なくとも一つのC_(5)ないしC_(7)糖単位を有する一つの化合物から選択される、少なくとも一つの糖からなる。これらの組成物は、ケラチン繊維の手入れ、トリートメント及び持続的なコンディショニングに使用され得る。」(1ページ6行?14行)
(1b)「ここで使用される「コンディショニング」とは、髪梳き性、操作容易性、水分保持性、光沢、輝き、柔軟性及びボディー(body)の少なくとも一つを毛髪に付与することを意味する。
ここで使用される「持続的にコンディショニング」とは、処理後、少なくとも6回シャンプーしても、処理された毛髪が、未処理の毛髪と比較して、よりコンディショニングされた状態を保持していることを意味する。コンディショニングの状態は、髪梳き仕事量についての、処理された毛髪と未処理の毛髪との髪梳きの容易性、及び/又は毛髪へのコンディショニング剤の付着性を測定し比較することにより評価することができる(例えば実施例8を参照)。」(5ページ23行?30行)
(1c)「「加熱」とは、高い温度(すなわち100℃以上)の使用を称する。一実施態様では、本発明の方法における加熱は、少なくとも一つのケラチン繊維を熱源に直接接触させることにより、例えば少なくとも一つのケラチン繊維をヒートスタイリングすることによりなされうる。限定するものではないが、少なくとも一つのケラチン繊維と直接接触させるヒートスタイリングの例には、高い温度を使用するフラットアイロン施術(flat ironing)及びカーリング(例えば、毛髪をカーラーにセットして加熱する、及びカーラー用アイロン及び/又はホットローラーでカールする)が含まれる。他の実施態様では、本発明の方法における加熱は、少なくとも一のケラチン繊維と直接接触しない熱源により、該少なくとも一つのケラチン繊維を加熱することによりなされ得る。限定するものではないが、少なくとも一のケラチン繊維と直接接触しない熱源の例には、ブロードライヤー、フードドライヤー、加熱キャップ及びスチーマーが含まれる。 ここで使用される「熱活性化された」組成物とは、組成物の適用中又は適用後に加熱されない同じ組成物よりも、少なくとも一つのケラチン繊維をより良好な状態にする組成物を称する。他の例には、適用中又は適用後に加熱されない同じ組成物よりも、少なくとも一つのケラチン繊維をより良好に手入れ又はトリートメントする組成物が含まれる。
またここで定義される「ケラチン繊維」はヒトのケラチン繊維であってよく、例えば毛髪から選択され得る。」(6ページ1行?20行)
(1d)「上述したように、糖類はそれらの水分保持性のために、毛髪の手入れ用組成物及び他のトリートメント剤に使用されている。しかしながら、本発明者は予期しないことに、水分保持性に加えて、あるクラスの皮膜形成化合物とあるクラスの糖類とを組合せると、ケラチン繊維への使用を特に望ましいものにする他の特性があることを見出した。特に毛髪に関し、少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物と、C_(3)ないしC_(5)単糖類、少なくとも一つのC_(1)ないしC_(22)炭素鎖で置換されたC_(3)ないしC_(5)単糖類、及び少なくとも一つのアミノ基で置換された少なくとも一つのC_(5)ないしC_(7)糖単位を有する一つの化合物から選択される、少なくとも一つの糖を含有する組成物は、毛髪を持続的にコンディショニングし、また毛髪の手入れ及びトリートメントに有用であることが見出された。さらにこれらの組成物は、少なくとも一つのこのような化合物を含有する組成物でトリートメントした後に、少なくとも一のケラチン繊維をシャンプーしても、少なくとも一のケラチン繊維を持続的にコンディショニングし得る。これは、組成物が毛髪に適用され、ついで毛髪が加熱された場合に顕著である。」(7ページ8行?23行)
(1e)「また本発明は、(i)少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物と、(ii)C_(3)ないしC_(5)単糖類;・・・を含有する組成物を少なくとも一つのケラチン繊維に適用し、該少なくとも一つのケラチン繊維を加熱することを含む、少なくとも一つのケラチン繊維を手入れ又はトリートメントする方法を提供する。組成物は、加熱前又は加熱中に適用されてもよい。さらに、少なくとも一つの化合物及び少なくとも一つの糖は、実施態様に応じて、少なくとも一つのケラチン繊維を手入れ又はトリートメントするのに有効な量で存在する。・・・
さらに本発明は、(i)少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物と、(ii)C_(3)ないしC_(5)単糖類・・・を含有する組成物を少なくとも一つのケラチン繊維に適用し;少なくとも一つのケラチン繊維を加熱することを含む、少なくとも一つのケラチン繊維を持続的にコンディショニングする方法を提供する。組成物は、加熱前又は加熱中に適用されてもよい。さらに、少なくとも一つの化合物及び少なくとも一つの糖は、実施態様に応じて、少なくとも一つのケラチン繊維を持続的にコンディショニングするのに有効な量で存在する。・・・」(8ページ4行?17行)
(1f)「少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物の非限定的例は、(i)ここで記載された少なくとも一つの第4級アンモニウム基を有するビニルモノマー、及び(ii)アクリルアミド、メタクリルアミド、アルキルアクリルアミド類、ジアルキルアクリルアミド類、アルキルメタクリルアミド類、ジアルキルメタクリルアミド類、アクリル酸アルキル、メタクリル酸アルキル、ビニルカプロラクトン、ビニルピロリドン、ビニルエステル、ビニルアルコール、無水マレイン酸、プロピレングリコール、及びエチレングリコールから選択される少なくとも一つの付加的なモノマーから誘導されるコポリマーである。例えば、少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物は、・・・(i)1-ビニル-2-ピロリドン、及び(ii)1-ビニル-3-メチルイミダゾリウム塩から誘導されるコポリマー(CTFA表示:ポリクオタニウム-16)、・・・である。」(10ページ24行?11ページ14行)
(1g)「少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物の他の非限定的例は、多糖類ポリマーの誘導体であり、例えば、カチオン性セルロースを含むカチオン性セルロース誘導体、これには、アメルコール・コーポレーション・・・から入手可能な、トリメチルアンモニウム置換エポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロース塩(CTFA表示:ポリクオタニウム-10)としてのポリマーである、ポリマーJR(登録商標)、LR(登録商標)及びSR(登録商標))シリーズのポリマー、商品名ポリマーLM-200(登録商標)として入手可能な、ラウリルジメチルアンモニウム置換エポキシドと反応したヒドロキシエチルセルロースのポリマー性第4級アンモニウム塩(CTFA表示:ポリクオタニウム-24)が含まれる。」(12ページ1行?9行)
(1h)「本発明の少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物は、組成物の全重量に対して、一般的に0.01重量%?10重量%の活性物質、例えば0.1重量%?0.5重量%の活性物質としての範囲の量で存在し得る。」(13ページ14行?17行)
(1i)「本発明において、少なくとも一つの糖は、組成物の全重量に対して、一般的に0.01重量%?10重量%、例えば0.1重量%?5重量%の範囲の量で組成物中に存在している。」(17ページ23行?26行)
(1j)「【実施例】
特に示さない限り、熱活性化された持続的なコンディショニングの測定に使用されるプロトコルは次の通りである:脱色された毛髪を少なくとも一つのコンディショニング剤を含有する溶液(0.4g溶液/毛髪)で3分間処理し、ついでふき取り乾燥させた。処理された毛髪を1分間、フラットカーリングアイロンで加熱し、ついで、10%のSLES溶液(ラウリルエーテル硫酸ナトリウム)で6回シャンプーした。非加熱実験では、この工程を省略する。特に示さない限りは、全ての溶液は溶媒として水を含む。
湿った毛髪を梳くのに必要な力を、処理前、処理及び乾燥後、及びシャンプーサイクル後に測定した。各データポイントは2回の実験の平均を表す。
実施例1.キシロースとポリクオタニウム-10との水溶液の熱活性化されたコンディショニング効果 上述したプロトコルに従い、毛髪を、少なくとも二の第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物(すなわちポリクオタニウム-10=アメルコール社のユーケア(UCARE)ポリマーJR125)及び/又はC_(3)ないしC_(5)単糖類から選択される少なくとも一つの糖(すなわちキシロース)を含有する溶液又は水で処理した。各溶液の適用に続いて、毛髪を加熱した。湿った状態での髪梳き性テストの結果を表1に示す。

データには、ポリクオタニウム-10のコンディショニング効果が、キシロースの存在下でさらに改善されていることが示されている。さらに、湿った状態での処理された毛髪を梳くのに必要な仕事量は、毛髪を6回シャンプーした後でさえ、未処理の毛髪を梳くのに必要な仕事量より低かった。よって、キシロース及びポリクオタニウム-10を適用し、続いて毛髪を加熱することにより、毛髪は持続的にコンディショニングされる結果となった。」(21ページ11行?22ページ14行)
(1k)「実施例8.熱活性化コンディショニングにおけるポリクオタニウム-10の直接付着性
上述したプロトコルに従い、毛髪を、以下に示すような、ポリクオタニウム-10(アメルコール社のユーケア・ポリマーJR-125)及び/又はキシロースを含有する溶液、又は水で処理し、溶液の適用に続いて加熱処理した。6回シャンプーした後の毛髪の材料見本をユニオン・ガーバイド社(Union Carbide)に送り、毛髪に対するポリクオタニウム-10の直接付着性を測定した。湿った状態での髪梳き性テストの結果を表8に示す。

データには、ポリクオタニウム-10がキシロースの存在下にあり、適用に続いて毛髪が加熱されることにより、コンディショニング効果が改善され、より持続的であることが示されている。」(29ページ5行?20行)
(1l)「実施例12.2つの工程により活性された持続的なコンディショニング
脱色された毛髪を、6%のポリクオタニウム-22を含有する溶液で処理し、ついで温水ですすいだ。ついで、1%のキシロースを含有する溶液を毛髪に適用し、ふき取り乾燥させ、1分間、フラットアイロンで加熱した。毛髪を2、4及び6回シャンプーした後に、髪梳き性テストを実施した。対照としてキシロースの代わりに水を使用した。湿った状態での髪梳き性テストの結果を表12に示す。
表12(省略)
データには、キシロース/加熱処理を、少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの化合物を含有する毛髪に適用すると、熱活性化された持続的なコンディショニングが達成されることが示されている。」(32ページ6行?33ページ4行)

3 対比、判断
刊行物1には、上記「2」の記載によれば、次の発明が記載されていると認められる。
「少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの皮膜形成剤;及びキシロースを含む、少なくとも一つのケラチン繊維の手入れ、トリートメント及び持続的なコンディショニングに使用するための組成物であって、
前記少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する少なくとも一つの皮膜形成剤と前記キシロースは、前記少なくとも一つのケラチン繊維の手入れ、トリートメント又はコンディショニングするのに有効な量で存在する、組成物。」

本願発明と刊行物1記載の発明を対比すると、両者は、
「(a)少なくとも一つの皮膜形成剤;及び
(b)キシロースを含む、少なくとも一つのケラチン繊維のための組成物。」である点で一致するが、次の点で一応相違する。
[相違点]
本願発明は、ケラチン繊維のための組成物が、永続的な非パーマネント状の成型、または非パーマネント状の形状の永続的な維持のためのものであって、「少なくとも一つの皮膜形成剤とキシロース」は、少なくとも一つのケラチン繊維に永続的な非パーマネント状の形状を与えるのに、または少なくとも一つのケラチン繊維の非パーマネント状の形状を永続的に維持するのに有効量で存在するのに対し、
刊行物1記載の発明は、ケラチン繊維のための組成物が、ケラチン繊維の手入れ、トリートメント及び持続的なコンディショニングのためのものであって、永続的な非パーマネント状の成型、あるいは非パーマネント状の形状を永続的に維持するためのものであることは明示されていない点。

そこで、上記一応の相違点について検討する。
ア 本願発明の組成物の使用目的である「永続的な非パーマネント状の成型」、「永続的な非パーマネント状の形状を与える」あるいは「非パーマネント状の形状を永続的に維持する」について、本願の発明の詳細な説明には、次のように記載されている。
「【0002】・・・ケラチン繊維の非パーマネント状の成型方法は、例えば市販のスタイリング製品を任意に使用する、ブラッシング、毛髪をすくこと、毛髪を編むこと、ヘアローラーの使用、及び加熱スタイリングを含む。加熱スタイリングの非制限的な例は、ブロー乾燥、縮れを施すこと、及び高温を使用するカーリング方法(例えばカーラーでヘアをセットし加熱すること、及びカーリングアイロン及び/またはホットローラーでカールすること)を含む。」
「【0017】
ここで使用される「形状の永続的な維持」は、処理の後の少なくとも6回のシャンプーの後、スタイリングの後の特定の形状を維持する非処理毛髪の能力と比較して、処理された毛髪が依然として、スタイリングの後の特定の形状を維持する能力を維持することを意味する。
【0018】
ここで使用される「永続的な成型」は、ケラチン繊維を水及び/またはシャンプーで洗浄するまで、ケラチン繊維の形状を保持またはキープすることを指す。形状の維持は、カール効力の観点から処理した毛髪と未処理の毛髪の高い相対湿度の条件下でのカールの維持の能力を測定して比較することによって評価できる(例えば実施例1及び2を参照)。
【0019】
「加熱」は高温の使用を指す(即ち100℃超)。一つの実施態様では、本発明の方法における加熱は、例えば少なくとも一つのケラチン繊維の加熱スタイリングによって、熱源と少なくとも一つのケラチン繊維を直接接触させることによって提供されて良い。少なくとも一つのケラチン繊維との直接接触による加熱スタイリングの非制限的な例は、フラットアイロン処理、及び高温を使用するカール方法を含む・・・。別の実施態様では、本発明における加熱は、少なくとも一つのケラチン繊維と直接には接触しなくて良い、熱源での少なくとも一つのケラチン繊維の加熱によって提供されても良い。少なくとも一つのケラチン繊維と直接には接触しない熱源の非制限的な例は、ブロードライヤー、フードドライヤー、加熱キャップ、及びスチーマーを含む。」
「【0062】
実施例1及び2
・・・以下の実施例では以下の方法が使用された。毛髪の見本(2グラム、6.5-7.5インチ)を、皮膜形成剤/XYLIANCEの溶液(毛髪のグラム当たり0.5グラムの溶液)で処理し、次いでブロー乾燥した。次いで毛髪の見本を1分間カーリングアイロンでスタイリングし、固まった見本を90%の相対湿度で1時間湿度チェンバーに配置した。」
「【0074】
他に記載が無ければ、毛髪を処理し、カールの垂れ下がりを測定するために使用された方法は、以下の通りである:毛髪の見本(2グラム、6.5-7.5インチ)を、皮膜形成剤/キシロース(毛髪のグラム当たり0.5gの溶液)の溶液で処理し、次いでブロー乾燥した。次いで毛髪の見本を1分間フラットアイロンで加熱し、次いで10%ナトリウムラウレススルファート(SLES)でシャンプーした。この処理を記載されたように8回まで繰り返した。毛髪の見本を30秒間カーリングアイロンでスタイリングし、90%の相対湿度で湿度チェンバーに配置し、熱活性化試験のためのカールの垂れ下がりを測定した(実施例1から8)。永続性試験のため(実施例9)、毛髪の見本を6回までシャンプーし、次いでスタイリングして湿度チェンバーに配置した。カールは湿度チェンバー中でゆっくりと解け始め、毛髪の見本の長さを毎分(15分まで)測定した。」

これらの記載によれば、本願発明における「永続的な非パーマネント状の成型」、「永続的な非パーマネント状の形状を与える」とは、組成物で処理したケラチン繊維を、ブラッシング、毛髪をすく、毛髪を編む、ヘアローラーを使用することによる非加熱スタイリング、あるいはカーリングアイロン等の加熱スタイリング処理をした後、湿度が高い状態においた場合にも、スタイリング形状が維持され、この形状は、ケラチン繊維が水及び/またはシャンプーで洗浄されるまで保持されることである。
また、本願発明における「非パーマネント状の形状を永続的に維持する」とは、組成物で処理したケラチン繊維は、6回のシャンプーの後、スタイリング処理をした場合に,湿度が高い状態に置いた場合でも、未処理のケラチン繊維について同様の処理をした場合よりも、スタイリング形状が維持されていること、すなわち、組成物で処理したことによる効果は、6回のシャンプーの後も維持されていることである。

イ 一方、刊行物1記載の発明も、組成物でケラチン繊維(毛髪)を処理した後、カーリングアイロン等で加熱処理をした後、湿った状態におかれても、髪梳き性が良好であること、すなわちコンディショニング効果が維持されるものである。
ここで、カーリングアイロン等の加熱処理は、本願発明におけるスタイリング処理に相当するから、刊行物1記載の発明の組成物は、スタイリング処理された状態が維持できるものであり、ケラチン繊維の永続的な非パーマネント状の成型をしているものということができる。
また、刊行物1記載の発明の組成物は、6回シャンプーした後も毛髪に残っているものであるから、その後にスタイリング処理した場合にも、作用効果が維持されるものと認められ、「非パーマネント状の形状を永続的に維持する」作用も有しているといえる。

ウ さらに組成物中の「少なくとも一つの皮膜形成剤とキシロース」の量は、ケラチン繊維に永続的な非パーマネント状の形状を与えるのに有効量で存在しているといえる。
また、組成物中に含まれる皮膜形成剤とキシロースの実際の量を見ても、本願明細書には、「少なくとも一つの皮膜形成剤は、組成物の全重量に対して0.01から30重量%の活性物質、例えば0.1から10重量%の活性物質の一般的な範囲の量で存在して良い。」(段落【0032】)、「少なくとも一つのサッカリドタイプの化合物は、組成物の全重量に対して一般的に0.01から10重量%の範囲、たとえば0.1から5重量%の範囲の量で組成物中に存在する。」(段落【0051】)と記載されているところ、刊行物1には、少なくとも二つの第4級アンモニウム基を有する皮膜形成剤は、組成物の全重量に対して、一般的に0.01重量%?10重量%の量であること(記載事項(1h)参照)、少なくとも一つの糖は、組成物の全重量に対して、一般的に0.01重量%?10重量%の量であること(記載事項(1i)参照)が記載され、実施例1には、皮膜形成剤の「ポリクオタニウム-10」2重量%と、キシロース1%を含有した組成物が記載されており、組成物中の量としても、両者に差異はない。

したがって、上記相違点は実質的な相違とはいえず、本願発明は、刊行物1記載の発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-27 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-17 
出願番号 特願2004-546221(P2004-546221)
審決分類 P 1 8・ 113- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 平林 由利子胡田 尚則  
特許庁審判長 山口 由木
特許庁審判官 川上 美秀
森井 隆信
発明の名称 サッカリドタイプの化合物及び皮膜形成剤を含む熱活性化永続的スタイリング組成物  
代理人 村山 靖彦  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  

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