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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B65B
管理番号 1237877
審判番号 不服2010-5751  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-03-16 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2004-255726「容器詰め内容物の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 3月16日出願公開、特開2006- 69623〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成16年9月2日の出願であって、平成21年12月15日付けで拒絶査定がされ、これに対し、平成22年3月16日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に特許請求の範囲を対象とする手続補正がなされた。

第2.平成22年3月16日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成22年3月16日付けの手続補正(以下、「本件補正」という)を却下する。
[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の請求項3に
「口部非結晶ポリエステル容器の少なくとも内面を湿熱加熱殺菌した後、40℃以上で容器の含水率によって定まるガラス転移温度未満の温度範囲内の充填温度により内容物を容器に充填して密封する容器詰め内容物の製造方法において、
前記口部非結晶ポリエステル容器の少なくとも内面を湿熱加熱殺菌する工程及び内容物を容器に充填する工程は、温水及び/又は蒸気により空間内壁全面および空間内に設置された装置表面が湿熱加熱殺菌されるとともに無菌エアーにより陽圧保持される無菌閉鎖空間に口部非結晶ポリエステル容器を導入して行われるとともに、容器成形を行った後、成形された容器を前記無菌閉鎖空間において容器の少なくとも内面を殺菌する工程に直接移送するものであり、さらに該製造方法は、容器の成形後容器に内容物を充填する前に容器の含水率を減少させる工程を備えることを特徴とする容器詰め内容物の製造方法。」
とあるのを、
「口部非結晶ポリエステル容器の少なくとも内面を湿熱加熱殺菌した後、40℃以上で容器の含水率によって定まるガラス転移温度未満の温度範囲内の充填温度により内容物を容器に充填して密封する容器詰め内容物の製造方法において、
前記口部非結晶ポリエステル容器の少なくとも内面を湿熱加熱殺菌する工程及び内容物を容器に充填する工程は、温水及び/又は蒸気により空間内壁全面および空間内に設置された装置表面が湿熱加熱殺菌されるとともに無菌エアーにより陽圧保持される無菌閉鎖空間に口部非結晶ポリエステル容器を導入して行われるとともに、容器成形を行った後、成形された容器を前記無菌閉鎖空間において容器の少なくとも内面を殺菌する工程に直接移送するものであり、さらに該製造方法は、容器の予備成形物を成形し、成形された予備成形物を容器成形工程に直接移送する工程と、容器の成形後容器に内容物を充填する前に容器の含水率を減少させる工程を備えることを特徴とする容器詰め内容物の製造方法。」
とすると共に、補正前の請求項1及び請求項2を削除する(したがって、補正前の請求項3は2つ繰り上がって、補正後の請求項1になる)補正を含むものである。

2.目的要件等
上記補正は、補正前の請求項3の発明を特定するために必要な事項である「製造方法」を「容器の予備成形物を成形し、成形された予備成形物を容器成形工程に直接移送する工程」を備えるものに限定するものであり、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項3に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、当該補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。

3.独立特許要件
そこで、本件補正後の前記特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正付則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

本願補正発明は、本件補正後の明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項(上記「1.本件補正」の補正後の請求項1参照)により特定されるとおりのものと認める。

3-1.引用文献及び引用発明
(1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-218128号公報(以下「引用文献1」という。)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0014】次に、このような容器1内に飲料を無菌充填する装置の一実施形態を図3および図4を参照して説明する。この装置は無菌チャンバ10を備えており、この無菌チャンバ10内には無菌空気供給機構11から滅菌された空気が所定の圧力で供給され、この無菌チャンバ10内全体を常時陽圧の無菌雰囲気に維持するように構成されている。
【0015】そして、この無菌チャンバ10内には、容器搬送機構12が設けられている。…。
【0016】そして、この容器搬送機構12の搬送経路に沿って、上記の容器1の飲口5から内部に滅菌のための薬剤たとえば過酸化水素のガスを噴射してその内面を滅菌する内面滅菌機構21、この容器1内に高温の空気を噴出して乾燥させる乾燥機構22が設けられている。さらに、この容器搬送機構12に沿って、容器1内に滅菌された飲料等を充填する充填機構23が設けられている。
…。
【0017】また、…さらにシール機構25が設けられている。
【0018】このシール機構25は、容器1の上端壁部3の上面にアルミ箔と樹脂との積層フイルム等からなるシール蓋6を熱溶着してこの容器1の開口すなわち飲口5を密封するものである。」

以上の記載及び図面によれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認めることができる。
「容器の少なくとも内面を薬剤で殺菌した後、飲料を容器に充填してシールする容器詰め飲料の製造方法において、
前記容器の少なくとも内面を殺菌する工程及び飲料を容器に充填する工程は、無菌エアーにより陽圧保持される無菌チャンバに容器を導入して行われる容器詰め飲料の製造方法。」

(2)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-278404号公報(以下「引用文献2」という)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0006】本発明は、口栓部の白化結晶化を省略しても熱変形を許容範囲に抑えることが可能な充填方法、充填システムおよびそれに適した口栓部の密封構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上述した課題を解決するため、本発明の発明者らはボトルの耐熱性について種々の検討を行い、その結果、樹脂製のボトルの耐熱性はボトルを放置するに従って徐々に低下し、その耐熱性の低下はボトルの水分の吸収と相関関係があることを見いだした。そして、ボトルの成形は高温に加熱された金型内で行われるためにその雰囲気からの水分の吸収は殆どなく、成形後にボトルを金型から取り出して周囲の雰囲気に触れさせると水分の吸収が始まって耐熱性が徐々に低下することを確認した。以上の知見に基づいて、ボトルの成形後の経過時間と耐熱性との関係を検証した結果、ボトルの成形後、すなわち成形後のボトルを金型から取り出して水分を含む周囲の環境に触れさせた後20分以内に内容物の充填を完了すれば、その内容物が95°Cの高温であっても口栓部の変形を許容範囲に抑えられることが判明した。」
(b)「【0013】請求項5の発明は、請求項1?4のいずれかに記載の樹脂製ボトルの内容物充填方法において、ボトルを成形する際の予備成形体の口栓部の含水率を2500p.p.m.以下に制限することを特徴とする。また、請求項6の発明は、樹脂製の予備成形体からボトルを成形し、その成形されたボトルに内容物を充填する樹脂製ボトルの内容物充填方法において、前記ボトルを成形する際の予備成形体の口栓部の含水率を2500p.p.m.以下に制限することを特徴とする。
【0014】これらの発明は、成形直後のボトルの含水率が予備成形体の含水率と相関することに着目して、予備成形体の好ましい含水率を検討した結果として得られたものである。すなわち、過剰に水分を吸収している予備成形体から成形されたボトルは、その成形直後に内容物を充填しても変形が免れないことがある。これに対して予備成形体の段階での含水率を2500p.p.m.以下に制限した場合には、口栓部を白化結晶化しなくても高温の内容物を充填できるだけの耐熱性を成形直後のボトルに確実に与えることができ、成形後一定時間(例えば20分以内)に充填を行えばボトルの熱変形を確実に防止できる。」

(3)同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-132041号公報(以下「引用文献3」という)には、次の事項が記載されている。
(a)「【0003】… また内容物を包装容器外において熱交換等の手段により高温短時間加熱殺菌し、殺菌後の内容物を、過酸化水素や過酢酸を含む水溶液により滅菌処理された包装容器に充填・密封する方法もあるが、この方法では、格別の水溶液を使用しなければならず、さらに、すすぎ等のために大量の無菌水を使用しなければならないという問題がある。
【0004】したがって本発明の目的は、特に酸性飲料のPETボトルへの無菌充填を、冷却工程を必要とせず、連続生産に適しており、また格別の水溶液を使用することなく行うことが可能な方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明によれば、65ないし85℃の熱水を用いて、PETの少なくとも内壁全面が濡れるように間欠的に洗浄し」

3-2.対比
本願補正発明と引用発明とを比較すると、引用発明の「飲料」、「シール」、「無菌チャンバ」は本願補正発明の「内容物」、「密封」、「無菌閉鎖空間」に相当する。
したがって、本願補正発明と引用発明を対比すると、両者は、
「容器の少なくとも内面を殺菌した後、内容物を容器に充填して密封する容器詰め内容物の製造方法において、
前記容器の少なくとも内面を殺菌する工程及び内容物を容器に充填する工程は、無菌エアーにより陽圧保持される無菌閉鎖空間に容器を導入して行われる容器詰め内容物の製造方法。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願補正発明では、口部非結晶ポリエステル容器に、40℃以上で該容器の含水率によって定まるガラス転移温度未満の温度範囲内の充填温度により内容物を充填するのに対して、引用発明では、容器の種類及び充填温度に関してこのような規定のない点。
[相違点2]
本願補正発明では、容器の少なくとも内面を湿熱加熱殺菌するのに対して、引用発明では、薬剤で殺菌する点。
[相違点3]
本願補正発明では、温水及び/又は蒸気により無菌閉鎖空間内壁全面および無菌閉鎖空間内に設置された装置表面が湿熱加熱殺菌されるのに対して、引用発明では、このような規定のない点。
[相違点4]
本願補正発明では、容器の成形後容器に内容物を充填する前に容器の含水率を減少させる工程を備えるのに対して、引用発明では、このような工程を備えていない点。
[相違点5]
本願補正発明では、容器の予備成形物を成形し、成形された予備成形物を容器成形工程に直接移送し、さらに、容器成形を行った後、成形された容器を前記無菌閉鎖空間において容器の少なくとも内面を殺菌する工程に直接移送するのに対して、引用発明では、予備成形、容器成形及び殺菌の工程間の移送に関してこのような規定のない点。

3-3.当審の判断
上記相違点1について検討すると、口部非結晶ポリエステル容器に、40℃以上で該容器の含水率によって定まるガラス転移温度未満の温度範囲内の充填温度により内容物を充填する点は引用文献2に記載された事項であり(上記3-1.(2)(a)参照)、引用発明において、当該容器を用いて、当該充填温度で内容物を充填することは当業者が容易になし得たことにすぎない。
次に、上記相違点2について検討すると、容器の殺菌をするのに、薬剤で殺菌する代わりに、湿熱加熱殺菌する点は引用文献3に記載された事項であり(上記3-1.(3))、引用発明において、湿熱加熱殺菌を用いることは当業者が容易になし得たことにすぎない。
次に、上記相違点3について検討すると、温水及び/又は蒸気により空間内全体を湿熱加熱殺菌することは周知技術であって(特開昭57-128159号公報、特開平9-2434号公報参照)、引用発明において、温水及び/又は蒸気により無菌閉鎖空間内壁全面および無菌閉鎖空間内に設置された装置表面が湿熱加熱殺菌された無菌閉鎖空間に容器を導入して殺菌及び充填を行うことは当業者が容易になし得たことにすぎない。
次に、上記相違点4について検討すると、ポリエステル容器の成形後、容器に内容物を充填する前に容器の含水率を減少させる工程を設けることは周知技術であって(特開平1-139393号公報、特開平9-39105号公報参照)、この点はポリエステル容器に内容物を充填する際に、当業者が容易になし得たことにすぎない。
次に、上記相違点5について検討すると、上記引用文献2には「成形後のボトルを金型から取り出して水分を含む周囲の環境に触れさせた後20分以内に内容物の充填を完了すれば、その内容物が95°Cの高温であっても口栓部の変形を許容範囲に抑えられる」点が記載されると共に「過剰に水分を吸収している予備成形体から成形されたボトルは、その成形直後に内容物を充填しても変形が免れない」点が記載され(上記3-1.(2)(a)(b)参照)、ボトル成形前の予備成形体の段階から水分の吸収を抑えるべきことが示唆されており、また、容器の成形装置においては、予備成形手段に後続して容器成形手段を設ける構成が周知のものにすぎないので(特開平10-167226号公報、特開2002-254502号公報参照)、容器の予備成形物を成形し、成形された予備成形物を容器成形工程に直接移送して、ボトルの水分の吸収が少ないようにすること、さらに、容器成形を行った後も、成形された容器を前記無菌閉鎖空間において容器の少なくとも内面を殺菌する工程に直接移送して、ボトルの水分の吸収が少ないようにし、結局、充填までのボトルの水分の吸収が少ない状態が維持されるようにすることは当業者が容易になし得たものと認める。

また、本願補正発明の作用効果も、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載の事項、並びに周知技術から当業者が予測できる範囲のものであり、格別顕著なものと認められない。

したがって、本願補正発明は、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載の事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3.本願発明について
平成22年3月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項3に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成21年9月14日付け手続補正書で補正された請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものである(上記「第2」「1.」補正前の請求項3参照)。

第4.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献、引用発明は、前記「第2.」の3-1.に記載したとおりである。

第5.対比・判断
本願発明は、前記「第2.」で検討した本願補正発明における「製造方法」を「容器の予備成形物を成形し、成形された予備成形物を容器成形工程に直接移送する工程」を備えるものに限定するものとした限定を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含みさらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2.」の3.に記載したとおり、引用発明、引用文献2及び引用文献3に記載の事項、並びに周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、原査定は妥当であり、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-08 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2004-255726(P2004-255726)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B65B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 関谷 一夫岩崎 晋  
特許庁審判長 栗林 敏彦
特許庁審判官 熊倉 強
佐野 健治
発明の名称 容器詰め内容物の製造方法  
代理人 坂本 徹  
代理人 原田 卓治  

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