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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1237884
審判番号 不服2010-7587  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-04-09 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2006- 32637「半導体ウエハ貼付け支持方法およびこれを用いた半導体ウエハ貼付け支持装置」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 8月23日出願公開、特開2007-214357〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、平成18年2月9日の特許出願であって、同21年9月14日付けで拒絶の理由が通知され、同21年11月6日に意見書及び手続補正書が提出されたが、同22年1月18日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対し、同22年4月9日に本件審判の請求と同時に手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 本件補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
本件補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲及び明細書について補正をするものであって、補正前後の請求項1の記載は、以下のとおりである。

(1) 補正前の請求項1
「支持用粘着テープにワークを貼り付けて支持するワーク貼付け支持方法において、
支持用粘着テープを加温して引き伸ばし、当該緊張状態を維持したまま支持用粘着テープの粘着面に加熱されたワークを貼付け支持する
ことを特徴とするワーク貼付け支持方法。」

(2) 補正後の請求項1
「支持用粘着テープに半導体ウエハを貼り付けて支持する半導体ウエハ貼付け支持方法において、
前記支持用粘着テープをテープ加温手段で所定時間予め加熱する予備加温過程と、
予備加熱された前記支持用粘着テープを引き伸ばして緊張状態にする引き伸ばし過程と、
前記引き伸ばし過程で伸びきった前記支持用粘着テープの緊張状態を維持したまま支持用粘着テープの粘着面に加熱された半導体ウエハを貼付け支持する支持過程とを備えた
ことを特徴とする半導体ウエハ貼付け支持方法。」

2 補正の適否
請求項1における補正は、「ワーク」が「半導体ウエハ」であり、「支持用粘着テープを加温して引き伸ばし」が「支持用粘着テープをテープ加温手段で所定時間予め加熱する予備加温過程と、予備加熱された前記支持用粘着テープを引き伸ばして緊張状態にする引き伸ばし過程」であり、「当該緊張状態を維持したまま支持用粘着テープの粘着面に加熱されたワークを貼付け支持する」が「前記引き伸ばし過程で伸びきった前記支持用粘着テープの緊張状態を維持したまま支持用粘着テープの粘着面に加熱された半導体ウエハを貼付け支持する支持過程」であるという限定事項を付加するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、以下検討する。

(1) 補正発明
補正発明は、本件補正により補正がされた明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記1の(2)の補正後の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものと認める。

(2) 刊行物記載事項
この出願前に頒布された刊行物である特開2003-234392号公報(以下「刊行物」という。)には、以下のとおり記載されている。

ア 11欄3-7行
「【発明の実施の形態】<第1実施例>以下、図面を参照してこの発明の一実施例を説明する。なお、本実施例では、半導体ウエハマウント装置内で半導体ウエハ(以下、単に「ウエハW」という)が搬送される搬送装置を例に採って説明する。」

イ 14欄20-38行
「【0086】テープ処理部18は、ダイシング用テープDTを供給するテープ供給部19、ダイシング用テープDTにテンションをかける引張機構20、ダイシング用テープDTをリングフレームfに貼り付ける貼付ユニット21、リングフレームfに貼り付けられたダンシング用テープDTを裁断するカッター機構24、カッター機構24によって裁断された後の不要なテープをリングフレームfから剥離する剥離ユニット23、および裁断後の不要な残存テープを回収するテープ回収部25とを備えている。
【0087】引張機構20は、ダイシング用テープDTを幅方向の両端から挟み込んで、テープ幅方向にテンションをかけるようになっている。つまり、柔らかいダイシング用テープDTを用いると、テープ供給方向に加わるテンションによって、その供給方向に沿ってダイシング用テープDTの表面に縦皺が発生してしまう。この縦皺を回避してリングフレームfにダイシング用テープDTを均一に貼り付けるために、テープ幅方向側からテンションをかけている。」

ウ 18欄12行-19欄14行
「【0111】<ステップS8> ダイシング用テープの貼り付け
リングフレームfがリングフレーム搬送機構17によって保持されてダイシング用テープDTの貼付位置にあると、テープ供給部19からダイシング用テープDTの供給が開始される。同時に貼付ローラ22が貼付開始位置に移動する。
【0112】貼付開始位置に貼付ローラ22が到達すると、ダイシング用テープDTの幅方向の両端を引張機構20が保持し、テープ幅方向にテンションをかける。
【0113】次いで貼付ローラ22が上昇し、ダイシング用テープDTをリングフレームfの端部に押圧して貼り付ける。リングフレームfの端部にダイシング用テープDTを貼り付けると、貼付ローラ22は待機位置であるテープ供給部19側に向かって転動する。このとき、貼付ローラ22は、ダイシング用テープDT(非接着面)を押圧しながら転動し、リングフレームfにダイシング用テープDTを貼り付けてゆく。貼付ローラ22が貼付位置の終端に到達すると、引張機構20によるダイシング用テープDTの保持が開放される。
【0114】同時にカッター機構24が上昇し、リングフレームfに沿ってダイシング用テープDTを裁断する。ダイシング用テープDTの裁断が終了すると、剥離ユニット23がテープ供給部19側に向かって移動し、不要なダイシング用テープDTを剥離する。
【0115】次いでテープ供給部19が作動してダイシング用テープDTを繰り出すとともに、裁断された不要部分のテープは、テープ回収部25へと送り出される。ことのとき、貼付ローラ22は、次のリングフレームfにダイシング用テープDTを貼り付けるように、貼付開始位置に移動する。
【0116】<ステップS9> マウントフレームの作製
ダイシング用テープDTが貼り付けられたリングフレームfは、リングフレーム昇降機構26によってフレーム部が吸着保持されて上方へ移動する。このとき、チャックテーブル15も降下する。つまり、チャックテーブル15とリングフレーム昇降機構26とは、互いにウエハWを貼り合わせる位置まで移動する。具体的には、図13に示すように、ウエハWを吸着保持したチャックテーブル15の底面が、リングフレーム昇降機構26の中央に設けられた開口部に収まるようになる。このとき、ウエハWとダイシング用テープDTの接着面とが近接するようになっている。
【0117】各機構15、26が所定位置に到達すると、それぞれが図示しない保持機構によって保持される。次いで、貼付ローラ28が、図14に示すように、ダイシング用テープDTの貼付開始位置に移動し、図15に示すように、リングフレームf底面に貼り付けられているダイシング用テープDTの非接着面を押圧しながら転動し、ダイシング用テープDTをウエハWに貼り付けてゆく。その結果、リングフレームfとウエハWとが一体化されたマウントフレームMFが作製される。」

上記摘記事項より、刊行物には、次の事項が記載されていると認める。
「ダイシング用テープ(DT)に半導体ウエハ(W)を貼り付けて支持する半導体ウエハ貼付け支持方法において、
皺が発生しないように前記ダイシング用テープ(DT)のテープ供給方向にテンションをかけるとともにテープ幅方向にテンションをかける過程と、
前記テンションをかける過程でテンションをかけられてリングフレーム(f)に貼り付けられた前記ダイシング用テープ(DT)の接着面に半導体ウエハを貼り付ける過程とを備えた
半導体ウエハ貼付け支持方法。」(以下「刊行物記載の発明」という。)

(3) 対比
補正発明と刊行物記載の発明とを対比すると、刊行物記載の発明の「ダイシング用テープ」及び「接着面」は、補正発明の「支持用粘着テープ」及び「粘着面」にそれぞれ相当している。
また、刊行物記載の発明の「皺が発生しないように前記ダイシング用テープのテープ供給方向にテンションをかけるとともにテープ幅方向にテンションをかける過程」は、「前記支持用粘着テープを引き伸ばして緊張状態にする引き伸ばし過程」であることに限り、補正発明の「予備加熱された前記支持用粘着テープを引き伸ばして緊張状態にする引き伸ばし過程」に一致している。
さらに、刊行物記載の発明の「テンションをかけられてリングフレームに貼り付けられた支持用粘着テープ」が、緊張状態を維持したままであることは、技術常識より明らかであるので、刊行物記載の発明の「テンションをかける過程でテンションをかけられてリングフレームに貼り付けられた前記支持用粘着テープの粘着面に半導体ウエハを貼り付ける過程」は、「引き伸ばし過程で引き伸ばされた前記支持用粘着テープの緊張状態を維持したまま支持用粘着テープの粘着面に半導体ウエハを貼付け支持する支持過程」であることに限り、補正発明の「引き伸ばし過程で伸びきった前記支持用粘着テープの緊張状態を維持したまま支持用粘着テープの粘着面に加熱された半導体ウエハを貼付け支持する支持過程」に一致している。
以上のとおりであるので、両者の一致点及び相違点は、次のとおりのものとなる。

ア 一致点
支持用粘着テープに半導体ウエハを貼り付けて支持する半導体ウエハ貼付け支持方法において、
前記支持用粘着テープを引き伸ばして緊張状態にする引き伸ばし過程と、
前記引き伸ばし過程で引き伸ばされた前記支持用粘着テープの緊張状態を維持したまま支持用粘着テープの粘着面に半導体ウエハを貼付け支持する支持過程とを備えた
半導体ウエハ貼付け支持方法。

イ 相違点
(ア) 相違点1
補正発明では、「支持用粘着テープをテープ加温手段で所定時間予め加熱する予備加温過程」を備え、「予備加熱された支持用粘着テープを引き伸ばし過程で引き伸ばして緊張状態」にしているのに対し、刊行物記載の発明では、そのような予備加温過程を備えていない点。
(イ) 相違点2
引き伸ばし過程で引き伸ばされた支持用粘着テープの緊張状態が、補正発明では、「伸びきった」ものであるのに対し、刊行物記載の発明では、伸びきったものであるのか明らかではない点。
(ウ) 相違点3
支持用粘着テープの粘着面に貼付け支持される半導体ウエハが、補正発明では、「加熱された」ものであるのに対し、刊行物記載の発明では、加熱されているものではない点。

(4) 相違点の検討
各相違点について、以下検討する。

ア 相違点1について
加熱により伸びて皺が発生するものにおいて、加熱し引き伸ばして緊張状態にすることにより皺を取り除き、その状態を維持したままとすることは、特開2001-135623号公報(6欄32-49行参照)、特開2003-100728号公報(8欄1-7行参照)、特開2003-174022号公報(8欄9-13行参照)に、みられるごとく周知である。
また、支持用粘着テープにワークを貼り付けて支持するワーク貼付け支持において、支持用粘着テープを加熱することは、拒絶理由で引用した特開平10-112494号公報(11欄30-37行参照)、同じく特開2004-186240号公報(4頁31-33行参照)にみられるように周知である。
刊行物1発明において、支持用粘着テープ貼付けにあたり、皺の発生が好ましくないことは明らかである。
皺の発生は、貼付時に問題となることから、皺の効果的除去のためには、貼付に先立ち、加熱し引き伸ばして緊張状態とし皺を取り除くこと、すなわち、「支持用粘着テープをテープ加温手段で所定時間予め加熱する予備加温過程」、「予備加熱された支持用粘着テープを引き伸ばし過程で引き伸ばして緊張状態」とすることに、困難性は認められない。
請求人は、審判請求理由で、本願発明は「加熱」に先立つ「予備加温過程」を有する旨、主張するが、上記のとおり、「加温」を、課題解決のために適切なタイミングとすることは、適宜選択すべき設計的事項にすぎない。

イ 相違点2について
引き伸ばしは、皺が発生しないようにするために行うものであるから、引き伸ばし過程で引き伸ばされた支持用粘着テープの緊張状態を、伸びきったものとすることに格別の困難性はない。

ウ 相違点3について
支持用粘着テープの粘着面に加熱された半導体ウエハを貼付け支持することは、例えば、上記特開平10-112494号公報(半導体ウェハを加熱するヒータ234参照)、特開2004-186240号公報(4頁13-33行参照)等に記載されているように周知であるので、刊行物記載の発明において、支持用粘着テープの粘着面に貼付け支持される半導体ウエハを、加熱されたものとすることに格別の困難性はない。

エ 補正発明の作用効果について
補正発明が奏する作用効果は、刊行物記載の発明及び上記周知の各事項から当業者が予測できる程度のものであって格別のものではない。

したがって、補正発明は、刊行物記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

3 むすび
以上のとおりであるので、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

4 補正案について
なお、平成22年11月19日提出の回答書に、リングフレームが請求項1に必須な構成であるとして、リングフレームを付加した請求項1の補正案が示されているが、補正案には法的根拠はない。
一応検討するに、リングフレームは上記刊行物にも記載されているので、補正案の請求項1に係る発明についても、刊行物記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の請求項1ないし6に係る発明は、願書に添付された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものであると認めるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2の1の(1)の補正前の請求項1に示したとおりである。

2 刊行物記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由に上記刊行物が引用されており、その記載事項は、上記第2の2の(2)に示したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2の2で述べたとおり、補正発明の発明特定事項から、上記限定事項が省かれたものである。
そうすると、上記第2の2の(4)で検討したとおり、補正発明は、刊行物記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、補正発明の発明特定事項から上記限定事項が省かれた本願発明についても、同様の理由により、刊行物記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物記載の発明及び上記従来周知の各事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、この出願の請求項2ないし6に係る発明について判断するまでもなく、この出願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-15 
結審通知日 2011-03-22 
審決日 2011-04-21 
出願番号 特願2006-32637(P2006-32637)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲高▼辻 将人  
特許庁審判長 千葉 成就
特許庁審判官 鳥居 稔
所村 美和
発明の名称 半導体ウエハ貼付け支持方法およびこれを用いた半導体ウエハ貼付け支持装置  
代理人 杉谷 勉  
代理人 杉谷 勉  

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