• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1237888
審判番号 不服2010-9507  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-05-06 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2004- 92297「パター」拒絶査定不服審判事件〔平成17年10月 6日出願公開、特開2005-270565〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年3月26日の出願であって、平成21年11月16日付けで手続補正がなされ、平成22年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年5月6日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、その請求と同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成22年5月6日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成22年5月6日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成22年5月6日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、明細書、特許請求の範囲及び図面についてするもので、特許請求の範囲の請求項1については、本件補正前に、

「ヘッドと、該ヘッドに取り付けられたシャフトとを具備するパターにおいて、前記ヘッドは、少なくともフェース側に存在する前側部材と、バック側に存在する、前記前側部材よりも比重の小さい材料により形成された後側部材とを有し、前記ヘッドの重心は前記シャフトの中心軸より前方に位置しているとともに、ヘッドのフェース面と直角をなす方向におけるシャフトの中心軸と重心との間の距離mが5?30mmであり、フェース面と直角をなす方向におけるシャフトの中心軸とフェース面との間の距離nが3?40mmであり、前記ヘッドのフェース面とバック面との間の距離aと、前記ヘッドのフェース面とシャフト取付孔の中心軸との間の距離bとの比a:bが1:0.3?1:0.7であることを特徴とするパター。」
とあったものを、

「ヘッドと、該ヘッドに取り付けられたシャフトとを具備するパターにおいて、前記ヘッドは、少なくともフェース側に存在する前側部材と、バック側に存在する、前記前側部材よりも比重の小さい材料により形成された後側部材とを有し、前記シャフトは前記後側部材に取り付けられており、前記ヘッドの重心は前記シャフトの中心軸より前方に位置しているとともに、ヘッドのフェース面と直角をなす方向におけるシャフトの中心軸と重心との間の距離mが5?30mmであり、フェース面と直角をなす方向におけるシャフトの中心軸とフェース面との間の距離nが3?40mmであり、前記ヘッドのフェース面とバック面との間の距離aと、前記ヘッドのフェース面とシャフト取付孔の中心軸との間の距離bとの比a:bが1:0.3?1:0.7であることを特徴とするパター。」
とするものである(下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)上記(1)の請求項1に係る本件補正は、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である「ヘッドに取り付けられたシャフト」を、「前記後側部材に取り付けられて」いるものと限定するものである。

2 本件補正の目的
請求項1に係る本件補正は、上記1(2)のとおり、本件補正前の請求項1に係る発明を特定するために必要な事項を限定して、本件補正後の請求項1とするものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法(以下「旧特許法」という。)第17条の2第4項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(旧特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下検討する。

3 独立特許要件
(1)本願補正発明
本願補正発明は、上記1(1)に本件補正後の請求項1として記載したとおりのものである。

(2)引用刊行物及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特表2002-525184号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

ア 「【0013】
図1は、シャフト7と、打撃面3を有するパターヘッド1とを備える本発明によるゴルフパターを示している。シャフト7とパターヘッド1との間には、上記パターヘッドを上記シャフトに取り付けるためのL字形の取付け手段2が存在する。
【0014】
シャフト7は、上記シャフト内に実質上同軸的に位置する想像中心線8を有している。シャフトは、下方へと先細りになる円形断面を有している。L字形の取付け手段2は、水平に伸長するロッド形状部分6Aと、垂直に伸長するネック部分6Bとを備えている。シャフトは、垂直に伸長するネック部分6Bの上端5に、好適には接着剤によって接続されている。パターヘッド1は、水平に伸長するロッド形状部分6Aにねじ穴10で取り付けられ、ねじ穴10では、ねじ11がロッド6Aに締め付けられている。ロッド形状部分6Aは、重心xを介して上記パターヘッド1の全長を突き抜けるため、端面6Cは打撃面3の一部を形成している。水平に伸長するロッド形状部分6Aの可視部分は、パターでゴルフボールを直線に沿って打つ場合に動作の正確さを追加するための伸長されたサイトラインを形成している。さらに、クラブヘッドの上面には、従来的な方法でサイトラインがマークされて配置されている(図2の1B参照)。」

イ 「【0020】
本発明の設計によるパターは、シャフトの取付ポイントとパターヘッドの重心との間にかなりの距離があり、ストロークの間に不正確に配置された場合にはこれがモーメント、即ちシャフトのトルク力を発生させるため、使用中にパターがサイトラインから外れて動作されるとシャフトのトルクを発生させる。」

ウ 「【0023】
図2は、本発明によるゴルフパターのある好適な実施形態を示している。図1との主な相違点は、パターヘッド1がその低部における後方に伸長する突出部1Aを伴って配置されていることにある。またこの場合、伸長されたサイトラインは、1つの水平に伸長するロッド形状部分6Aを備えるL字形の取付け装置2を有することによって実現されている。ロッド形状部分6Aは、実質的にヘッド1の後方に面する部分1Cの中央に取付けられている。ネックである他のロッド形状部分6Bは、上記シャフト7の上記中心線8と正確に同軸で伸長してはいないが、劣角を形成して、その想像中心線がストロークの間にプレーヤーがサイトラインを置くのと同一平面になるように配置され得ることを実現している。水平に伸長するロッド形状部分6Aの想像中心線9はパターヘッドの打撃面3に対して実質上垂直に伸長し、直線に沿って動作するパターヘッドでゴルフボールを打つと、動作の追加精度のための上記伸長されたサイトラインが形成される。図示されているように、サイトライン1Bは、黒くされた溝によってヘッド1の上面を伸長されている。さらに、水平なロッド6Aの下の広い領域1Cは精度を増すために黒くされているが、これはロッド6Aの金属表面に対して生まれるコントラストによって達成される。
【0024】
図3には、本発明の修正された実施形態が示されている。本設計は基本的には図2に示されたものと同じであるが、ロッド形状の水平部分6Aは上記パターヘッド1の一体部分を形成している。従って、このヘッドは好適には、例えば鋳造によってロッド形状の水平部分6Aを含む単一部分として製造される。好適には、ロッド形状の水平部分6Aは、上述のような明確な手応えの感覚をもたらすようにパターヘッド1の他の部分とは異なる材質で製造される。従って、こうしたロッド形状部分6Aの前端6Cは打撃面3の一部を形成する。図3から分かるように、ロッド6Aは、その前端6Cが打撃面3の垂直中心線3Aの中心となるように配置されている。図3は、シャフト7とヘッド1との間のネック部分の形式である取付け装置2の使用を示しているが、当業者には明白であるように、この取付けは、シャフトを直接ヘッド1に取り付けて達成することができる。さらに図3は、サイトライン1Bを延長してロッド形状部分6A沿いにも走らせることにより、さらなる精度が取得され得ることを示しており、無論これは他の実施形態に関しても利用できる。」

エ 上記イの「本発明の設計によるパターは、シャフトの取付ポイントとパターヘッドの重心との間にかなりの距離があり」との記載に照らせば、図3から、パターヘッド1の重心は、シャフト7の取付ポイントより打撃面3に近いことが見て取れる。

オ 上記アないしエから、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「シャフトと、打撃面を有するパターヘッドとを備えるパターであって、
前記シャフトは、前記パターヘッドに直接取り付けられており、
前記パターヘッドの重心は、前記シャフトの取付ポイントより打撃面に近く、
前記パターヘッドの上面には、パターでゴルフボールを直線に沿って打つ場合に動作の正確さを追加するためのサイトラインが伸長されており、
前記シャフトの取付ポイントと前記パターヘッドの重心との間にかなりの距離があり、ストロークの間に不正確に配置された場合にはこれがモーメント、即ちシャフトのトルク力を発生させるため、使用中にパターが前記サイトラインから外れて動作されるとシャフトのトルクを発生させる、
パター。」

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「打撃面」、「パターヘッド」及び「パターヘッドの重心」は、それぞれ、本願補正発明の「フェース面」、「ヘッド」及び「ヘッドの重心」に相当する。

イ 引用発明において、パターは、シャフトと、打撃面を有する「ヘッド(パターヘッド)」とを備え、前記シャフトは、前記「ヘッド」に直接取り付けられているから、引用発明の「パター」と本願補正発明の「パター」とは、「ヘッドと、該ヘッドに取り付けられたシャフトとを具備する」ものである点で一致する。

ウ 引用発明において、「ヘッドの重心(パターヘッドの重心)」は、シャフトの取付ポイントより打撃面に近いところ、パターを含むゴルフクラブにおいては打撃面側を前側と称することが普通であり、かつ、前記シャフトを前記取付ポイントに取り付ければ、該シャフトの中心軸も該取付ポイントに配置されることは明らかであるから、引用発明の「ヘッドの重心」と本願補正発明の「ヘッドの重心」とは、「シャフトの中心軸より前方に位置している」ものである点で一致する。

エ 上記アないしウから、本願補正発明と引用発明とは、
「ヘッドと、該ヘッドに取り付けられたシャフトとを具備するパターにおいて、前記ヘッドの重心は前記シャフトの中心軸より前方に位置しているパター。」
である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
本願補正発明では、前記ヘッドが、「少なくともフェース側に存在する前側部材」と、「バック側に存在する、前記前側部材よりも比重の小さい材料により形成された後側部材」とを有し、前記シャフトが、前記後側部材に取り付けられ、前記ヘッドのフェース面と直角をなす方向における前記シャフトの中心軸と重心との間の距離mが、「5?30mm」であり、前記フェース面と直角をなす方向における前記シャフトの中心軸と前記フェース面との間の距離nが、「3?40mm」であり、前記ヘッドのフェース面とバック面との間の距離aと、前記ヘッドのフェース面とシャフト取付孔の中心軸との間の距離bとの比a:bが、「1:0.3?1:0.7」であるのに対して、
引用発明では、前記ヘッドの構造、前記距離m、前記距離n及び前記比a:bがいずれも明らかでない点。

(4)判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明は、パターヘッドの重心がシャフトの取付ポイントより打撃面に近く、前記シャフトの取付ポイントと前記パターヘッドの重心との間にかなりの距離があり、ストロークの間に不正確に配置された場合にはこれがモーメント、即ちシャフトのトルク力を発生させるため、使用中にパターが前記サイトラインから外れて動作されるとシャフトのトルクを発生させるものであるところ、前記シャフトの取付ポイント及び前記パターヘッドの重心をそれぞれどこに設定し、それらの間の距離をどの程度とするかは、当業者が、求められるシャフトのトルク力等に応じて適宜決定すべき設計事項というべきである。

イ 前側及び後側をそれぞれ比重の異なる部材で形成したパターヘッドは、本願の出願前に周知であり(以下「周知技術」という。例.特開平7-31698号公報特に【0091】及び【図11】、特開平3-224579号公報特に6頁左下欄5行?7頁左上欄2行及びFig.9参照。)、前記比重が前記パターヘッドの重心の位置に影響を及ぼすことは明らかである。

ウ 上記ア及びイから、引用発明において、シャフトの取付ポイントとパターヘッドの重心との間の距離を所望の値とするために、パターヘッドを、その前側及び後側をそれぞれ比重の比較的大きい部材及び比重の比較的小さい部材で形成したものとし、シャフトの取付ポイントを、前記後側の部材に設けることとするとともに、打撃面と直角をなす方向におけるシャフトの中心軸と前記重心との間の距離を、「5?30mm」とし、打撃面と直角をなす方向におけるシャフトの中心軸と打撃面との間の距離を、「3?40mm」とし、打撃面と該打撃面と反対側の面との間の距離と、打撃面とシャフトの取付ポイントの中心軸との間の距離との比を、「1:0.3?1:0.7」とし、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が周知技術に基づいて適宜なし得た設計上のことである。

エ 効果について
本願補正発明の奏する効果は、当業者が、引用発明の奏する効果及び周知技術の奏する効果から予測できた程度のものである。

オ まとめ
したがって、本願補正発明は、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 小括
以上のとおり、本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、旧特許法第17条の2第5項の規定に違反するものである。
したがって、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は、上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし7に係る発明は、平成21年11月16日付け手続補正により補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1ないし7にそれぞれ記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記第2〔理由〕3(2)に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明において、その発明特定事項である「シャフト」が「後側部材に取り付けられて」いるとの限定を省いたものに相当する(上記第2〔理由〕1(2)参照。)。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに上記限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記第2〔理由〕3に記載したとおり、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、当業者が、引用例に記載された発明及び周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-05 
結審通知日 2011-04-12 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2004-92297(P2004-92297)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63B)
P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 長島 和子
特許庁審判官 桐畑 幸▲廣▼
菅野 芳男
発明の名称 パター  
代理人 伊藤 高英  
代理人 鈴木 健之  
代理人 玉利 房枝  
代理人 中尾 俊輔  
代理人 大倉 奈緒子  
代理人 畑中 芳実  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ