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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B41J
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B41J
管理番号 1237893
審判番号 不服2010-12814  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2010-06-11 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2007-157262「ワイヤドットプリンタヘッド及びワイヤドットプリンタ」拒絶査定不服審判事件〔平成19年 9月 6日出願公開、特開2007-223337〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成16年3月12日出願した特願2004-70483号の一部を平成19年6月14日に新たな特許出願としたものであって、平成22年2月18日付けで手続補正がなされ、同年3月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年6月11日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。
なお、請求人は、当審における平成22年10月13日付け審尋に対して同年12月15日付けで回答書を提出している。

第2 平成22年6月11日付け手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成22年6月11日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成22年6月11日付け手続補正(以下「本件補正」という。)は、特許請求の範囲及び発明の詳細な説明についてするもので、特許請求の範囲については、本件補正前の請求項1に、

「コイルが巻回され、磁極面を有するコアと、
印字用ワイヤを支持し、前記磁極面に当接する被吸引面を有するアーマチュアと、
前記被吸引面を前記コアに対向させ、窒化処理が施された板状のピンサポートプレートを介して前記アーマチュアを揺動自在に保持する支持部材と、
を具備し、
前記コアにより前記被吸引面に作用する吸引力の吸引方向とその吸引力により前記被吸引面が移動する移動方向とを略一致させるようにしたワイヤドットプリンタヘッド。」とあったものを、

「コイルが巻回され、磁極面を有するコアと、
印字用ワイヤを支持し、前記磁極面に当接する被吸引面を有するアーマチュアと、
前記被吸引面を前記コアに対向させ、磁路を最短距離で構成する為の板状のピンサポートプレートを介し前記アーマチュアを揺動自在に保持する支持部材と、
を具備し、
前記ピンサポートプレートは窒化処理が施されていると共に、前記コアにより前記被吸引面に作用する吸引力の吸引方向とその吸引力により前記被吸引面が移動する移動方向とを略一致させるようにしたワイヤドットプリンタヘッド。」とする補正を含んでいる(「下線は審決で付した。以下同じ。)。

(2)本件補正後の請求項1に係る上記(1)の補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「窒化処理が施された板状のピンサポートプレート」について、「磁路を最短距離で構成する為の」との限定を付加するものである。

2 本件補正の目的
本件補正後の請求項1に係る上記1(2)の補正は、本件補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第2号の「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものである。
そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

3 刊行物の記載
原査定の拒絶の理由に引用された「本願の出願前に頒布された刊行物である米国特許出願公開第2003/175064号明細書(以下「引用例」という。)」には、次の事項が図とともに記載されている。
(1)「[0021] A first embodiment of the present invention will be described with reference to FIGS. 1 to 3 .
[0022] First, the entire structure of a wire dot printer head 1 will be described with reference to FIG. 1 . The wire dot printer head 1 is formed with a front case 2 , a circuit board 3 , a yoke 4 , an armature spacer 5 , a rear case 6 , plural armatures 7 , a wire guide 8 and the like. The front case 2 and the rear case 6 are connected to each other by attachment screws (not shown), and the circuit board 3 , the yoke 4 , the armature spacer 5 , the armature 7 and the wire guide 8 are held between the front case 2 and the rear case 6 . The plural armatures 7 are radially provided. 」
(日本語訳)
「[0021]本発明の第1の実施の形態を図1ないし図3を参照して説明する。
[0022]まず、ワイヤドットプリンタヘッド1の全体の構成について図1を参照して説明する。ワイヤドットプリンタヘッド1は、フロントケース2、回路基板3、ヨーク4、アーマチュアスペーサ5、リヤケース6、複数のアーマチュア7、ワイヤガイド8などから構成されている。フロントケース2とリヤケース6とは互いに取付ねじ(図示せず)によって結合され、回路基板3、ヨーク4、アーマチュアスペーサ5、アーマチュア7及びワイヤガイド8がフロントケース2及びリヤケース6の間に保持されている。複数のアーマチュア7は放射状に配置されている。」

(2)「 [0023] The yoke 4 is made of magnetic material. The yoke 4 has an outer cylindrical part 9 and an inner cylindrical part 10 , and plural cores 11 are formed between the cylindrical part 9 and the cylindrical part 10 . Each of these cores 11 has a magnetic pole surface 12 at an end in an axial direction. A coil 13 is attached around an outer periphery of each core 11 . Plural cavities 14 corresponding to the cores 11 are formed in the outer cylindrical part 9 of the yoke 4 . The number of the cores 11 , that of the cavities 14 and that of the armatures 7 are the same. The respective armatures 7 are provided to be opposed to the respective cores 11 and the respective cavities 14 .
[0024] The armature 7 is formed with an arm 15 , a wire 16 wax-bonded to one end side of the arm 15 and a magnetic circuit formation member 17 welded to both side surfaces of the arm 15 . The armature 7 is supported to be capable of rocking by a support shaft 18 . The armature 7 is capable of rocking between a printing position and a standby position about the support shaft 18 . When the armature 7 rocks between the printing position and the standby position, the wire 16 guided by the wire guide 8 slides. When the armature 7 rocks to the printing position, the end of the wire 16 collides against a print sheet and performs printing. An end guide 19 which arrays the end of the slidable wire 16 in a predetermined pattern and hold it is provided at an end of the front case 2 .
[0025] The rocking of the armature 7 is made by intermittent energization to the coil 13 , and when the coil 13 is energized, the armature rocks to the printing position about the support shaft 18 . FIG. 1 shows a status where two armatures 7 both have rocked to the printing position. When energization to the coil 13 is stopped, the armature 7 rocks to the standby position by biasing force of biasing means (not shown).
[0026] A ring shaped armature stopper 20 is attached to the center of the rear case 6 . The attachment of the armature stopper 20 to the rear case 6 is made by inserting the armature stopper 20 to an attachment recess part 21 formed in the rear case 6 . The armature stopper 20 has a function of defining the standby position of the armature 7 by contact between the arm 15 as a part of the armature 7 with the armature stopper 20 when the armature 7 rocks from the printing position to the standby position. 」
(日本語訳)
「[0023]ヨーク4は磁性材料により形成されている。ヨーク4は、外周側の筒状部9及び内周側の筒状部10と、外周側の筒状部9と内周側の筒状部10との間に環状に配置された複数のコア11を有している。各コア11は、それぞれ軸心方向の一端に磁極面12を有している。各コア11の外周にはコイル13が装着されている。複数のコア11に対応する複数の窪み14がヨーク4の外周側の筒状部9に形成されている。コア11の数と、窪み14の数と、アーマチュア7の数とは同数である。各アーマチュア7は、それぞれのコア11及び窪み14に対向するように設けられている。
[0024]アーマチュア7は、アーム15、アーム15の一端にロウ付けされているワイヤ16、アーム15の両側面に溶接された磁気回路形成部材17を備えている。アーマチュア7は、支持軸18を中心として揺動自在な状態で支持されている。アーマチュア7は、支持軸18を中心として印字位置と待機位置の間で揺動可能である。アーマチュア7が印字位置と待機位置との間で揺動すると、ワイヤ16はワイヤガイド8にガイドされてスライドする。アーマチュア7が印字位置へ揺動した場合に、ワイヤ16の先端部が印字媒体に衝突して印刷を実行する。ワイヤ16の先端部を所定のパターンで整列させるとともにワイヤ16を摺動自在にガイドする先端ガイド19がフロントケース2の先端に設けられる。
[0025]アーマチュア7はコイル13に断続的に通電することにより揺動し、そしてコイル13が付勢されたとき、アーマチュアは支持軸18を中心として印字位置へ揺動する。図1は2つのアーマチュア7の両方が印字位置へ揺動している状態を示している。コイル13への通電が停止されると、アーマチュア7は付勢手段(不図示)の付勢力により待機位置へ揺動される。
[0026]リヤケース6の中心部分には、環状のアーマチュアストッパ20が取付けられている。リヤケース6へのアーマチュアストッパ20の取付は、リヤケース6に形成された取付用凹部21へアーマチュアストッパ20を嵌め込まれることにより行う。アーマチュア7が印字位置から待機位置へ揺動すると、アーマチュア7の一部であるアーム15とアーマチュアストッパ20とが当接するので、このことにより、アーマチュアストッパ20はアーマチュア7の待機位置を定める機能を有する。」

(3)「[0028] Referring to FIG. 3 , the detailed shapes of the yoke 4 , the armature spacer 5 and the armature 7 will be described. The respective cores 11 formed in the yoke 4 are provided radially with respect to the center of the yoke 4 . The cavity 14 is provided on a phantom straight line B connecting the center of the yoke 4 and the center of the magnetic pole surface 12 of the core 11 . The magnetic circuit formation member 17 of the armature 7 is made of magnetic material. The magnetic circuit formation member 17 has a supported part 25 inserted into the cavity 14 formed in the yoke 4 and an attracted surface 26 attracted by the magnetic pole surface 12 of the core 11 . The support shaft 18 is removably engaged in a round through hole (not shown) formed in the supported part 25 and the arm 15 . The both ends of the support shaft 18 abut against both sides of the cavity 14 in the outer cylindrical part 9 .
[0029] The armature spacer 5 is provided between the yoke 4 and the rear case 6 for formation of space to enable rocking of the armature 7 . Plural grooves 27 in which the respective support shafts 18 are engaged and plural guide grooves 28 in which the armatures 7 are engaged are formed in the armature 5 . These grooves 27 define positions of the respective support shafts 18 in contact on the yoke 4 in an axial direction and positions in a direction orthogonal to the axial direction. 」
(日本語訳)
「[0028]図3を参照して、ヨーク4、アーマチュアスペーサ5およびアーマチュア7の詳細な形状について説明する。ヨーク4に形成されたそれぞれのコア11がヨーク4の中心に対して放射状に設けられている。窪み14はヨーク4の中心部とコア11の磁極面12の中心を結ぶ仮想の直線B上に設けられている。アーマチュア7の磁気回路形成部材17は、磁性材料で作られている。磁気回路形成部材17は、ヨーク4に形成された窪み14に嵌め込まれる被支持部25と、コア11の磁極面12に吸引される被吸引面26とを有する。支持軸18は、被支持部25とアーム15に形成された貫通孔(不図示)に着脱可能に入っている。外周側の筒状部9の窪み14の両側に対して支持軸18の両端が当接する。
[0029]
アーマチュアスペーサ5は、アーマチュア7の揺動を有効にするための空間を形成するために、ヨーク4とリアケース6との間に設けられる。各支持軸18が収容される複数の溝27と各アーマチュア7が収容される複数のガイド溝28とがアーマチュアスペーサ5内に形成される。これらの溝27は、ヨーク4に接触してそれぞれの支持軸18の軸方向の位置を定義し、軸方向と直交する方向の位置を定める。」

(4)ワイヤドットプリンタヘッドを示すFIG.1の記載から、ワイヤドットプリンタヘッド1について次のア及びイのことが見て取れる。
ア アーマチュア7の磁気回路形成部材17の被吸引面26と、外周にコイル13が装着されているコア11の磁極面12との間に、FIG.1において上下方向の吸引力が作用すること。
イ コア11の吸引力により前記被吸引面26が支持軸18を中心として揺動して移動する方向はFIG.1において上下方向であること。

(5)上記(1)ないし(4)から、引用例には、次の発明が記載されているものと認められる。
「フロントケース、回路基板、ヨーク、アーマチュアスペーサ、リヤケース、複数のアーマチュア、ワイヤガイドなどから構成されているワイヤドットプリンタヘッドであって、
前記フロントケースと前記リヤケースとは互いに取付ねじによって結合され、前記回路基板、前記ヨーク、前記アーマチュアスペーサ、前記アーマチュア及び前記ワイヤガイドが前記フロントケース及び前記リヤケースの間に保持され、
前記ヨークは、磁性材料により形成され、外周側の筒状部及び内周側の筒状部と、前記外周側の筒状部と前記内周側の筒状部との間に環状に配置された複数のコアとを有し、
各コアは、それぞれ軸心方向の一端に磁極面を有し、かつ、各コアの外周にはコイルが装着されており、
複数の前記コアに対応する複数の窪みが前記外周側の筒状部に形成され、前記コアの数と、前記窪みの数と、前記アーマチュアの数とは同数であり、各アーマチュアは、それぞれのコア及び窪みに対向するように設けられており、
前記アーマチュアは、アーム、該アームの一端にロウ付けされているワイヤ、前記アームの両側面に溶接された磁気回路形成部材を備え、支持軸を中心として揺動自在な状態で支持されており、
前記アーマチュアは、前記支持軸を中心として印字位置と待機位置の間で揺動可能であって、該アーマチュアが印字位置と待機位置との間で揺動すると、前記ワイヤは前記ワイヤガイドにガイドされてスライドし、該アーマチュアが印字位置へ揺動した場合に、前記ワイヤの先端部が印字媒体に衝突して印刷を実行するようになっており、
前記窪みは、前記ヨークの中心部と前記磁極面の中心を結ぶ仮想の直線上に設けられ、
前記磁気回路形成部材は、磁性材料で作られていて、前記窪みに嵌め込まれる被支持部と、前記磁極面に吸引される被吸引面とを有し、
前記支持軸は、前記被支持部と前記アームに形成された貫通孔に着脱可能に入っていて、その両端が前記窪みの両側に対して当接し、
前記アーマチュアスペーサは、前記アーマチュアの揺動を有効にするための空間を形成するために、前記ヨークと前記リアケースとの間に設けられおり、
各支持軸が収容される複数の溝27と各アーマチュアが収容される複数のガイド溝28とが前記アーマチュアスペーサ内に形成されており、
各溝27は、前記ヨークに接触して各支持軸の軸方向の位置を定義し、かつ、軸方向と直交する方向の位置を定めるものであり、
前記被吸引面と前記磁極面との間に作用する吸引力の方向と前記被吸引面が前記支持軸を中心として揺動して移動する方向とは、同一の方向となっている、ワイヤドットプリンタヘッド。」(以下「引用発明」という。)

4 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。
(1)引用発明の「ワイヤドットプリンタヘッド」、「コイル」、「磁極面」、「コア」、「『先端部が印字媒体に衝突して印刷を実行』する『ワイヤ』」、「被吸引面」、「アーマチュア」、「『アーマチュアスペーサ』、『ヨーク』及び『リアケース』」、「吸引力」、「吸引力の方向」及び「移動する方向」は、それぞれ、本願補正発明の「ワイヤドットプリンタヘッド」、「コイル」、「磁極面」、「コア」、「印字用ワイヤ」、「被吸引面」、「アーマチュア」、「支持部材」、「吸引力」、「吸引方向」及び「移動方向」に相当する。

(2)引用発明において、「ワイヤドットプリンタヘッド」は、ヨーク、アーマチュアスペーサ、リヤケース及び複数の「アーマチュア」を含んで構成されており、前記ヨークは複数の「コア」を有しており、かつ、上記(1)に照らせば、前記アーマチュアスペーサ、前記ヨーク及び前記リアケースが本願補正発明の「支持部材」に相当するから、引用発明の「ワイヤドットプリンタヘッド」と本願補正発明の「ワイヤドットプリンタヘッド」とは、「コアと、アーマチュアと、支持部材と、を具備し」ている点で一致する。

(3)引用発明において、各コアは、それぞれ軸心方向の一端に「磁極面」を有し、かつ、各コアの外周には「コイル」が装着されており、一般にコイルは巻回されているものであるから、引用発明の「コア」と本願補正発明の「コア」とは「コイルが巻回され、磁極面を有する」点で一致する。

(4)引用発明において、前記「アーマチュア」は、アーム、該アームの一端にロウ付けされている「印字用ワイヤ(ワイヤ)」、前記アームの両側面に溶接された磁気回路形成部材を備え、前記磁気回路形成部材は、磁性材料で作られていて、前記窪みに嵌め込まれる被支持部と、前記「磁極面」に吸引される「被吸引面」とを有しているから、引用発明の「アーマチュア」と本願補正発明の「アーマチュア」とは、「印字用ワイヤを支持し、前記磁極面に当接する被吸引面を有する」点で一致する。

(5)引用発明において、前記窪みは、前記ヨークの中心部と前記磁極面の中心を結ぶ仮想の直線上に設けられ、前記磁気回路形成部材は、磁性材料で作られていて、前記窪みに嵌め込まれる被支持部と、前記磁極面に吸引される被吸引面とを有し、前記支持軸は、前記被支持部と前記アームに形成された貫通孔に着脱可能に入っていて、その両端が前記窪みの両側に対して当接し、前記アーマチュアスペーサは、前記アーマチュアの揺動を有効にするための空間を形成するために、前記ヨークと前記リアケースとの間に設けられおり、各支持軸が収容される複数の溝27と各アーマチュアが収容される複数のガイド溝28とが前記アーマチュアスペーサ内に形成されており、各溝27は、前記ヨークに接触して各支持軸の軸方向の位置を定義し、かつ、軸方向と直交する方向の位置を定めるものであるから、前記「被吸引面」と前記「コア」の前記「磁極面」とが対向しているといえ、かつ、前記アーマチュアは、前記支持軸の両端が、前記窪みの両側でヨークとリアケースとの間に保持されるとともに、アーマチュアスペーサ内の溝27により軸方向及び軸方向と直交する方向についての位置を定められることにより、揺動できるように保持されているといえる。
したがって、引用発明の「支持部材(アーマチュアスペーサ、ヨーク及びリアケース)」と本願補正発明の「前記被吸引面を前記コアに対向させ、磁路を最短距離で構成する為の板状のピンサポートプレートを介し前記アーマチュアを揺動自在に保持する支持部材」とは、「前記被吸引面を前記コアに対向させ、前記アーマチュアを揺動自在に保持する」点で一致する。

(6)上記(1)に照らせば、引用発明の「前記被吸引面と前記磁極面との間に作用する吸引力の方向と前記被吸引面が前記支持軸を中心として揺動して移動する方向とは、同一の方向となっている」との事項は、本願補正発明の「前記コアにより前記被吸引面に作用する吸引力の吸引方向とその吸引力により前記被吸引面が移動する移動方向とを略一致させる」との事項に相当する。

(7)上記(1)ないし(6)によれば、本願補正発明と引用発明とは、
「コイルが巻回され、磁極面を有するコアと、
印字用ワイヤを支持し、前記磁極面に当接する被吸引面を有するアーマチュアと、
前記被吸引面を前記コアに対向させ、前記アーマチュアを揺動自在に保持する支持部材と、
を具備し、
前記コアにより前記被吸引面に作用する吸引力の吸引方向とその吸引力により前記被吸引面が移動する移動方向とを略一致させるようにしたワイヤドットプリンタヘッド。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:
前記支持部材が前記アーマチュアを、本願補正発明では「窒化処理が施されている、磁路を最短距離で構成する為の板状のピンサポートプレートを介し」保持するのに対して、引用発明ではそのようなピンサポートプレートを介していない点。

5 判断
上記相違点について検討する。
(1)アーマチュアを支持する支持部材の耐摩耗性を向上させるために、該アーマチュア及び支持部材の間に耐磨耗性に優れたシートを介在させることは、本願出願前に周知であり(以下「周知技術」という。例.原査定の理由で引用された特開平3-7351号公報(2頁右上欄6?14行、第11(C)図の「スペーサ17」参照。)、同じく原査定の理由で引用された特開平6-218954号公報(【0002】、【0003】及び図3、図4等の「耐摩擦性シート112」参照。)、また、耐摩耗性を向上させる手法として窒化処理することは常套手段である(例.特開昭63-145044号公報(5頁左下欄12?17行参照。)、特開昭63-153155号公報(3頁右下欄19行?4頁左上欄4行参照。)、特開平3-215055号公報(2頁左下欄2?4行参照。)、特開2001-255704号公報(【0053】参照。))から、引用発明において、前記「支持部材」が前記「アーマチュア」を支持する際、窒化処理して耐磨耗性を向上したシート状部材を介在させることは、当業者が周知技術及び常套手段に基づいて容易になし得た程度のことである。

(2)本願明細書の発明の詳細な説明には「ピンサポートプレート36は、ヨーク6のコア27とアーマチュア4との磁路を最短距離で構成するため、例えば厚さが0.20mm程度である板状に形成され、ヨーク6上に設けられている。」(【0031】)との記載がある。
この記載から、本願補正発明の「ピンサポートプレート」は、ヨークのコアとアーマチュアとの磁路を最短距離で構成するため、厚さの薄い板状のものであり、本願補正発明において「磁路を最短距離で構成する為の」とは「厚さの薄い板状の」ことを意味するものと解される。

(3)シート状部材は厚さの薄い板状のものであるといえるから、上記(2)からみて、上記(1)の「窒化処理して耐磨耗性を向上したシート状部材を介在させる」ことは、本願補正発明の「磁路を最短距離で構成する為の板状のピンサポートプレートを介し」かつ「前記ピンサポートプレートは窒化処理が施されている」に相当する。
したがって、引用発明において、上記相違点に係る本願補正発明の構成となすことは、上記(1)からみて、当業者が周知技術及び常套手段に基づいて容易になし得た程度のことである。

(4)本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果、周知技術の奏する効果及び常套手段の奏する効果から、当業者が予測できた程度のものである。

(5)以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術及び常套手段に基づいて容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 小括
以上のとおりであるから、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成22年2月18日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年2月18日付けで補正された明細書、特許請求の範囲及び図面の記載からみて、上記「第2〔理由〕1(1)」に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものと認める。

2 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2〔理由〕3」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願補正発明は、上記「第2〔理由〕2」で述べたとおり、本願発明を特定するために必要な事項について限定を付加したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含みさらに限定を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2〔理由〕5」に記載したとおり、当業者が引用例に記載された発明、周知技術及び常套手段に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、当業者が引用例に記載された発明、周知技術及び常套手段に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、当業者が引用例に記載された発明、周知技術及び常套手段に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-30 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-18 
出願番号 特願2007-157262(P2007-157262)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B41J)
P 1 8・ 121- Z (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大塚 裕一牧 隆志  
特許庁審判長 小牧 修
特許庁審判官 野村 伸雄
菅野 芳男
発明の名称 ワイヤドットプリンタヘッド及びワイヤドットプリンタ  
代理人 酒井 宏明  

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