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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1238028 |
審判番号 | 不服2008-26362 |
総通号数 | 139 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2011-07-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2008-10-14 |
確定日 | 2011-06-08 |
事件の表示 | 特願2000-558557「シリコン薄膜,集積化された太陽電池,モジュール,及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 1月13日国際公開、WO00/02253、平成14年 7月 9日国内公表、特表2002-520818〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、1999年(平成11年)7月1日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1998年7月2日、アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成13年2月7日付けで手続補正がなされたが、平成20年7月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月14日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、同日付け及び同年11月13日付けで手続補正がなされた後、平成21年8月26日付けで特許法第163条第2項の規定に基づく拒絶理由通知がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項に係る発明は、平成20年11月13日付け手続補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。 「(a) 電気的に絶縁性の基板と、 (b) 第1の導電型を有する電気的に高導電性の材料を備え、上記基板上あるいは内に形成された第1のオーミックコンタクト層、ここで該第1のオーミックコンタクト層は、少なくとも、珪素、炭素、およびグラファイトからなるグループから選択された1つの材料を含む、と、 (c) 上記第1のオーミックコンタクト層と同様の第1の導電型を有し、上記第1のオーミックコンタクト層上に形成された第1の半導体材料ドープ層と、 (d) 上記第1の半導体材料ドープ層とは逆の導電型を有し、上記第1の半導体材料ドープ層との間にp-n接合を形成するように、上記第1の半導体材料ドープ層上に形成された第2の半導体材料ドープ層と、 (e) 上記第1のオーミックコンタクト層から物理的に分離され、上記第2の半導体材料ドープ層上に形成された第2のオーミックコンタクト層と、を備えた、 ことを特徴とする太陽電池。」 3 刊行物の記載 平成21年8月26日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の優先日前に頒布された刊行物である特開平10-117006号公報(以下「引用刊行物」という。)には、以下の記載がある。 「【0012】 【発明の実施の形態】図1において、本発明の1つの実施の形態による薄膜光電変換装置が模式的な断面図で概略的に図解されている。この薄膜光電変換装置は、ガラス基板1上に順次積層された下地導電層2,金属反射層3,多結晶光電変換層4,および透明導電層5を含んでいる。 【0013】下地導電層2としては、たとえば500℃以上の温度において熱CVD法を用いて、高濃度にリンがドープされたn^(+) 型多結晶シリコン層をガラス基板1上に堆積することができる。このとき、熱CVD条件(温度,圧力,反応ガス流量等)を適切に調節することによって、下地導電層2の自由表面2Sに微細な凹凸を含むテクスチャ構造を形成することができる。これらの凹凸は、たとえば0.05?3μmの範囲内の高低差で形成し得る。 ・・・ 【0015】実質的に多結晶の光電変換層4は、プラズマCVD法によって形成され得る。ここで、「実質的に多結晶」とは、完全な多結晶体を意味するのみならず、少量のアモルファスを含む多結晶体をも含むことを意味している。たとえば、光電変換層4は、体積結晶化分率80%以上の多結晶シリコンで形成され得る。多結晶光電変換層4として、n型層4n,i型層4i,およびp型層4pが順次堆積される。プラズマCVD条件としては、たとえば、0.01?5Torrの圧力と50?550℃の温度の範囲を利用することができる。また、n型層4nは、たとえばホスフィン,シラン,および水素を含む混合ガスを用いたプラズマCVD法によって形成され得る。次に、実質的に真性の半導体であるi型層4iは、導電型不純物を含まないシランガスと水素との混合ガスを用いたプラズマCVD法によって堆積される。さらにp型半導体層4pは、ジボラン,シラン,および水素を含む混合ガスを用いるプラズマCVD法によって堆積される。」 4 引用発明 上記3によれば、引用刊行物には、次の発明が記載されているものと認められる。 「ガラス基板1上に順次積層された下地導電層2、金属反射層3、多結晶光電変換層4、および透明導電層5を含む薄膜光電変換装置において、前記下地導電層2は、高濃度にリンがドープされたn^(+) 型多結晶シリコン層であり、前記多結晶光電変換層4は、n型層4n、i型層4i、及びp型層4pが順次堆積されたものである薄膜光電変換装置。」(以下「引用発明」という。) 5 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「ガラス基板1」は、本願発明の「電気的に絶縁性の基板」に相当する。 そして、引用発明の「『高濃度にリンがドープされたn^(+) 型多結晶シリコン層』である『下地導電層2』」及び「n型層4n」は、それぞれ、本願発明の「『少なくとも、珪素、炭素、およびグラファイトからなるグループから選択された1つの材料を含む』『第1の導電型を有する電気的に高導電性の材料を備え、上記基板上あるいは内に形成された第1のオーミックコンタクト層』」及び「上記第1のオーミックコンタクト層と同様の第1の導電型を有し、上記第1のオーミックコンタクト層上に形成された第1の半導体材料ドープ層」に相当する。 (2)引用発明の「p型層4p」は、「上記第1の半導体材料ドープ層とは逆の導電型を有し、上記第1の半導体材料ドープ層上に形成された第2の半導体材料ドープ層」である点で、本願発明の「上記第1の半導体材料ドープ層とは逆の導電型を有し、上記第1の半導体材料ドープ層との間にp-n接合を形成するように、上記第1の半導体材料ドープ層上に形成された第2の半導体材料ドープ層」と一致する。 (3)引用発明の「透明導電層5」及び「薄膜光電変換装置」は、それぞれ、本願発明の「上記第1のオーミックコンタクト層から物理的に分離され、上記第2の半導体材料ドープ層上に形成された第2のオーミックコンタクト層」及び「太陽電池」に相当する。 (4)以上によれば、両者は、 「電気的に絶縁性の基板と、 第1の導電型を有する電気的に高導電性の材料を備え、上記基板上あるいは内に形成された第1のオーミックコンタクト層、ここで該第1のオーミックコンタクト層は、少なくとも、珪素、炭素、およびグラファイトからなるグループから選択された1つの材料を含む、と、 上記第1のオーミックコンタクト層と同様の第1の導電型を有し、上記第1のオーミックコンタクト層上に形成された第1の半導体材料ドープ層と、 上記第1の半導体材料ドープ層とは逆の導電型を有し、上記第1の半導体材料ドープ層上に形成された第2の半導体材料ドープ層と、 上記第1のオーミックコンタクト層から物理的に分離され、上記第2の半導体材料ドープ層上に形成された第2のオーミックコンタクト層と、を備えた、 太陽電池。」 である点で一致し、 「本願発明は、第2の半導体材料ドープ層が第1の半導体材料ドープ層との間にp-n接合を形成するものであるのに対して、引用発明は、n型層4n、i型層4i、及びp型層4pが順次堆積されたものである点。」(以下、単に「相違点」という。) で相違するものと認められる。 6 判断 光電変換層として、p-n接合を形成するものは、例示するまでもなく、本願優先日当時において周知の技術であるから、引用発明の「n型層4n、i型層4i、及びp型層4pが順次堆積された」構成に代えてp-n接合を形成するものとし、相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が適宜なし得ることである。 よって、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものというべきである。 7 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2011-01-06 |
結審通知日 | 2011-01-11 |
審決日 | 2011-01-25 |
出願番号 | 特願2000-558557(P2000-558557) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 浩一、吉野 三寛 |
特許庁審判長 |
服部 秀男 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 杉山 輝和 |
発明の名称 | シリコン薄膜,集積化された太陽電池,モジュール,及びその製造方法 |
代理人 | 早瀬 憲一 |