• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04M
管理番号 1238032
審判番号 不服2008-32716  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-12-25 
確定日 2011-06-08 
事件の表示 特願2004-512425「無線アドホック通信ネットワークにおけるポータブル・デバイス用のデューティ・サイクル限度を有するMACプロトコル及びこれを使用する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年12月18日国際公開、WO03/105494、平成17年 9月29日国内公表、特表2005-529561〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は平成15年6月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理,2002年6月5日及び同年12月16日,米国)を国際出願日とする出願であって,その請求項1?22に係る発明は,明細書及び図面の記載からみて,請求の範囲の請求項1?22の各請求項に記載されたとおりのものと認められるところ,その請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりである。
「無線ノードを運用し通信ネットワーク内で通信を行う時に前記ノードのための比吸収率(SAR)レベルを維持する方法であって,前記方法は,
現在の比吸収率を最大の比吸収率レベルと比較し,
前記現在の比吸収率が前記最大の比吸収率レベルより大きい場合トポロジ依存機能の少なくとも1つを調整することにより前記現在の比吸収率を前記最大の比吸収率レベルに合うように加減する,方法。」

2.引用発明
これに対して,原査定の拒絶の理由に引用された,本願の優先権主張の日前に頒布された特開2001-244843号公報(以下,「引用文献」という。)には,図面とともに以下の事項が記載されている。
(ア)「【請求項1】 異なる強度の無線信号を生成するように制御されうる無線信号生成部と,
ユーザの身体への当該通信機器の接近状態を検出する検出器と,
この検出器の検出に基づいて前記無線信号の強度を設定するコントローラとを備えた通信機器。」(第2頁第1欄)。
(イ)「【0002】
【発明の背景】コードレス電話,遠隔制御器,PCS機器,およびセルラー電話といった代表的なコンシューマー向き通信機器では,無線周波数(RF)を使って情報を送信している。RF送信の速度および明瞭度は,電力レベルが高くなるにつれて向上する。しかしながら,電力レベルが増大すると,ユーザはより大量のRF放射にさらされることになる。
【0003】ユーザの健康を保護するため,RF機器からのRF放射被爆は米国法典47 C.F.R.§2.1093によって規制されている。RF放射被爆は比吸収率(SAR),すなわちユーザの身体組織1kgが吸収するRF放射電力量によって測定される。TDMAなどの特定の送信スキームでは,送信機の固有プロパティまたはデューティサイクルによって吸収率を時間平均化してSARを求める。」(第2頁第1?2欄)
(ウ)「【0006】
【発明の概要】本発明は,異なる強度の無線信号を生成するように制御されうる無線信号生成部と,ユーザの身体への当該通信機器の接近状態を検出する検出器と,この検出器の検出に基づいて前記無線信号の強度を設定するコントローラとを備えた通信機器を特徴とする。」(第2頁第2欄)
(エ)「【0011】また,本発明は,通信機器によって送信される無線信号の強度を調節する方法であって,ユーザの身体への通信機器の接近状態を検出し,検出された状態に基づいて無線信号の強度を制御し,通信機器がユーザの身体に近接した状態にあるときは無線信号の強度を低く,通信機器がユーザの身体から遠い状態にあるときは無線信号の強度を高くする無線信号強度の調節方法を特徴とする。」(第3頁第3欄)
(オ)「【0013】
【発明の実施の形態】
図1は,ユーザの発話を電子信号35に変換し,検出器7に送出する内部マイクロフォン15を備えるセルラー電話22を示している。検出器7は,電子信号35を通信回路6に伝送する。通信回路6は,電子信号35を送信機入力信号36に変換する。通信回路6は,送信機入力信号36を送信機3に伝送する。送信機3は,送信機入力信号36をアンテナドライブ信号37に変換する。アンテナドライブ信号37は,アンテナ1へ伝送され,無線波(無線信号)43として放射される。
【0014】送信機3は,コントローラ4の制御情報18に基づいてアンテナドライブ信号37の信号レベルを制御する。
【0015】アンテナ1はまた,遠隔地からの無線波41を受信し,これを受信機入力信号38に変換し受信機2に伝送する。受信機2は,受信機入力信号38を通信回路入力信号39に変換し,通信回路6に送る。通信回路6は,通信回路入力信号39を音声レベルの信号19に変換する。この音声レベルの信号19は,内部スピーカ16によって再生される。」(第3頁第3欄)
(カ)「【0023】図5は,送信の際に使用する無線信号レベルを決定するコントローラロジック5が用いる処理を示している。まずコントローラ4は,コンピュータ用コンセント14にコンピュータ23が接続されているか否かを判定する(ステップ27)。接続されている場合,コントローラ4は,コンピュータ用コンセント14が使用中であるかどうか確認する(ステップ32)。使用中の場合,送信には高信号レベルが使用される(ステップ34)。そうでない場合,低信号レベルが使用される(ステップ33)。
【0024】コンピュータ用コンセント14にコンピュータ23が接続されていない場合,コントローラ4は,ヘッドセット用コンセント12にヘッドセット24が接続されているか否かを判定する(ステップ28)。接続されている場合,コントローラ4は,ヘッドセット用コンセント12が使用中であるかどうか確認する(ステップ32)。使用中の場合,送信には高信号レベルが使用される(ステップ34)。そうでない場合,低信号レベルが使用される(ステップ33)。
【0025】ヘッドセット用コンセント12にヘッドセット24が接続されていない場合,コントローラ4は,自動車用コンセント13にカーキットが接続されているか否かを判定する(ステップ29)。カーキットが接続されている場合,送信には高信号レベルが使用される(ステップ34)。そうでない場合,コントローラ4は,スピーカフォンスイッチ9が起動しているか否かを判定する(ステップ30)。起動している場合,送信には高信号レベルが使用される(ステップ34)。そうでない場合,代わりに低信号レベルが使用される(ステップ31)。」(第4頁第5欄)
(キ)「【0026】図5のプロセスは,送信電力に影響を与える条件に変化があるたびに発生する。例えば,ヘッドセット24を利用してセルラー電話22を使用しているユーザがヘッドセット24をコンセント12から引き抜いたが,頭部に装着したままの場合,検出器7は,この情報をコントローラ4に伝送し,コントローラ4はステップ27において送信電力レベルの決定を開始する。上記の例では,高電力のための条件を全く満足しないため,送信電力レベルが低減される。」(第4頁第5?6欄)

上記摘記事項(ア)等における「無線信号の強度の設定」は,同摘記事項(イ)を参酌すると「ユーザの健康を保護するため」に「比吸収率レベル」を維持しようとするものであるから,上記摘記事項(ア)を基本に,(イ)?(ウ)の記載を参酌すると,引用文献には,
「無線信号を生成する通信機器を運用し通信ネットワーク内で通信を行う時に前記通信機器のための比吸収率レベルを維持する方法であって,前記方法は,
ユーザの身体への当該通信機器の接近状態を検出し,
前記ユーザの身体への当該通信機器の接近状態に基づいて送信無線信号の強度を設定する方法。」(以下,「引用発明」という。)が記載されている。

3.対比
そこで,本願発明と引用発明を対比検討すると,
引用発明中の「無線信号を生成する通信機器」は,ノードとリンクで構成されるネットワークとの観点に立てば,ノードの相当するものであり,しかも,無線信号を生成しているから,無線ノードであり,
本願発明の「トポロジ依存機能」は,具体的には請求項2,3等に記載されていることからも明らかなように,送信無線信号の強度に係るものであり,
引用発明において,「ユーザの身体への当該通信機器の接近状態を検出し,
前記ユーザの身体への当該通信機器の接近状態に基づいて無線信号の強度を設定する」ことも,本願発明の「現在の比吸収率を最大の比吸収率レベルと比較し,
前記現在の比吸収率が前記最大の比吸収率レベルより大きい場合トポロジ依存機能の少なくとも1つを調整することにより前記現在の比吸収率を前記最大の比吸収率レベルに合うように加減する」ことも,ユーザの健康の保護・安全を目的として,適切な比吸収率(SAR)となるように,送信無線信号の強度レベルを加減,調整することで共通するから,
両者は,
「無線ノードを運用し通信ネットワーク内で通信を行う時に前記ノードのための比吸収率(SAR)レベルを維持する方法であって,前記方法は,
適切な比吸収率(SAR)となるように,送信無線信号の強度を加減する方法。」の点で一致し,以下の2点で相違する。

(相違点1)
送信無線信号の強度として,本願発明は「トポロジ依存機能の少なくとも1つ」を採用しているのに対して,引用発明では「送信無線信号の強度」であって,トポロジ依存機能の有無は不明である。
(相違点2)
適切な比吸収率(SAR)となるように,送信無線信号の強度を加減する方法に関して,
本願発明は「現在の比吸収率を最大の比吸収率レベルと比較し,
前記現在の比吸収率が前記最大の比吸収率レベルより大きい場合トポロジ依存機能の少なくとも1つを調整することにより前記現在の比吸収率を前記最大の比吸収率レベルに合うように加減」しているのに対し,
引用発明は「ユーザの身体への当該通信機器の接近状態を検出し,
前記ユーザの身体への当該通信機器の接近状態に基づいて,」送信無線信号の強度を加減している。

4.当審の判断
そこで,上記相違点について検討する。
(相違点1)について
引用発明の通信機器は典型的には摘記事項(イ)(オ)等に示されているセルラー電話であるが,送受信間の遠近によって,送信無線信号の強度を調整することは,例えばTCP等の送信電力制御技術などとして広く知られた周知技術である。また,本願の請求項2でより具体化された「デューティ・サイクル」についても,引用文献についての摘記事項(イ)に示唆があり,周知であることは明白である。
したがって,引用発明の送信無線信号の強度をトポロジ依存機能とする程度のことは,送受信間の距離が変動することが前提となる引用発明において,当然に採用される技術的事項にすぎず,格別な創意工夫が必要なものとは認められない。

(相違点2)について
例えば,引用文献の摘記事項(キ)に開示されているように,ユーザの身体が通信機器に最も接近したとされる場合には,送信無線信号の強度を低減しており,この低減の程度は,当然安全な「比吸収率(SAR)」以内となるようにしているものを解することができ,法律や安全基準などに準拠して実行されているというべきであるから,そのために,現在の比吸収率を最大の比吸収率レベルと比較した上で,現在の比吸収率が最大の比吸収率レベルより大きい場合に,送信無線信号の強度を加減することは,当然に導かれる技術的事項であるというべきである。
してみると,引用発明において,
「ユーザの身体への当該通信機器の接近状態を検出し,
前記ユーザの身体への当該通信機器の接近状態に基づいて送信無線信号の強度を設定する」に際して,上記「現在の比吸収率を最大の比吸収率レベルと比較した上で,現在の比吸収率が最大の比吸収率レベルより大きい場合に,送信無線信号の強度を加減する」との技術的事項を導入する程度のことは,単なる設計的事項の導入というべきであって,しかも,「送信無線信号の強度を加減」の具体的手法として,送信無線信号の強度をトポロジ依存機能とすることも,前記「(相違点1)について」で審究したように,格別な創意工夫を要するとも認められないから,引用発明の「ユーザの身体への当該通信機器の接近状態を検出し,
前記ユーザの身体への当該通信機器の接近状態に基づいて,」送信無線信号の強度を加減するとの構成を,「現在の比吸収率を最大の比吸収率レベルと比較し,
前記現在の比吸収率が前記最大の比吸収率レベルより大きい場合トポロジ依存機能の少なくとも1つを調整することにより前記現在の比吸収率を前記最大の比吸収率レベルに合うように加減」するとの構成にする程度のことに,格別な創意工夫を要するとまでいうことはできない。

そして,本願発明に関する作用・効果も,引用発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

してみると,本願発明は,引用発明及び周知技術に基づいて,当業者が容易に発明することができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおりであるから,本願の請求項1に係る発明は,引用文献に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められ,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2010-12-27 
結審通知日 2011-01-04 
審決日 2011-01-26 
出願番号 特願2004-512425(P2004-512425)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西脇 博志  
特許庁審判長 山本 春樹
特許庁審判官 高野 洋
新川 圭二
発明の名称 無線アドホック通信ネットワークにおけるポータブル・デバイス用のデューティ・サイクル限度を有するMACプロトコル及びこれを使用する方法  
代理人 浅村 肇  
代理人 林 鉐三  
代理人 浅村 皓  
代理人 清水 邦明  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ