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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F
管理番号 1238044
審判番号 不服2009-22839  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2009-11-24 
確定日 2011-06-08 
事件の表示 特願2004-163382「スロットマシン」拒絶査定不服審判事件〔平成17年12月15日出願公開、特開2005-342106〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一.手続の経緯
本願は、平成16年6月1日の出願であって、最初の拒絶理由通知に対応して平成21年5月28日に手続補正書が提出され、その後なされた拒絶査定に対し、同年11月24日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、手続補正がなされた。
審判合議体は、平成22年4月5日付けで審査官による前置報告書の内容を添付して審尋を行い、請求人から同年6月4日に回答書が提出された。
そして、審判合議体によって同年10月25日付けで、平成21年11月24日付けの手続補正が却下されるとともに拒絶理由が通知され、これに対して平成22年12月24日に手続補正がなされた。

第二.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成22年12月24日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「 一般的な遊技である一般遊技と、遊技者にとって一般遊技よりも有利な遊技である特別遊技とを実行可能に形成され、
一般遊技中に、特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられると、一般遊技から特別遊技へ移行するように形成され、
一般遊技中に、特別遊技への移行確率が異なる複数のモード間でのモード移行処理を行う高確率モード制御手段を設けているスロットマシンであって、
情報を表示するための表示装置と、
一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数をカウントするための特別遊技間遊技回数カウンタと、
特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたときに、一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を示す情報と、一の特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたときの一般遊技中のモードを示す情報と、を対応させて記憶するための特別遊技間情報記憶手段と、
特別遊技間情報記憶手段の記憶に基づき、一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を、一の特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたときの一般遊技中のモードによって表示の態様を変えて、表示装置に表示させることにより、一般遊技中のいずれのモードから一の特別遊技へ移行したのかがわかるようにするための表示制御手段とを備えていることを特徴とするスロットマシン。」

第三.特許要件(特許法第29条第2項)の検討
1.引用刊行物記載事項
審判合議体が通知した拒絶理由に引用された特開2002-191753号公報(以下「引用文献A」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。

【0011】図1は本実施形態によるスロットマシン1の外観を示す正面図であり、図2はこのスロットマシン1の前面扉37を開けたキャビネット38の内部を示す図である。・・・
【0016】また、表示窓5?7の直ぐ下方には7インチの液晶表示装置22が設けられている。この液晶表示装置22には後述するように種々の情報が表示される。・・・
【0033】(1)一般遊技
一般遊技時においては、シンボル「パンチングボール」、「ゴング」の3個のシンボル組み合わせが入賞ラインに並ぶか、または1個のシンボル「チェリー」が第1リールの入賞ラインに停止すると小当たり入賞となり、上述した各配当が遊技者に払い出されて1ゲーム終了となる。また、シンボル「リベンジ」の3個のシンボルの組み合わせが入賞ラインに揃うと、メダル投入をしなくてももう一度ゲームを行うことができる。また、入賞ライン上に並んだシンボル組合せが図7に示す配当表のいずれにも該当しない場合には、「はずれ」(配当無し)となる。また、シンボル「セブン」、「上グローブ」、または「下グローブ」の3個のシンボル組み合わせが入賞ラインに揃うと、上述した枚数のメダルが払い出された後、複数回の高配当ゲームがまとめて発生する下記のB・B(大当たり)ゲームに移行する。また、シンボル「上グローブ」2個と「セブン」とからなるシンボル組み合わせ、またはシンボル「下グローブ」2個と「セブン」とからなるシンボル組み合わせが入賞ラインに揃うと、上述した枚数のメダルが払い出された後、1回の高配当ゲームが行える下記のR・B(中当たり)ゲームに移行する。
【0034】(2)R・Bゲーム
R・Bゲームは、一般遊技中に上記のシンボル組み合わせが入賞ライン上に並ぶと発生する。R・Bゲームでは、ジャックゲームと呼ばれるメダル一枚掛けのゲームを複数回行える。このジャックゲームにおいて入賞ラインL1上にシンボル「リベンジ」の3個の組合せが並ぶとジャックゲーム入賞が発生し、8枚のメダルが払い出される。ジャックゲームには「はずれ」も発生するが、ジャックゲーム入賞は約9/10という高い確率で発生する。このR・Bゲームは、例えばジャックゲーム入賞が8回発生するか、またはR・Bゲーム中に実行された通算のジャックゲーム数が例えば12回に達すると終了する。
【0035】(3)B・Bゲーム
B・Bゲームは、上記のR・Bゲームと一般遊技とが一組になったものが複数回(本実施形態では2回)で構成されている。B・Bゲームが発生すると、まず、一般遊技が実行される。このB・Bゲーム中の一般遊技では「はずれ」も発生するが、シンボル「セブン」、「上グローブ」、「下グローブ」の3個のぞろ目による小当たり、「パンチングボール」、「ゴング」、「チェリー」による小当たりが、B・Bゲーム中以外の一般遊技時に比べて高い確率で発生する。さらに、このB・Bゲーム中の一般遊技では、上述した一般遊技時には発生しない1つのシンボル「上グローブ」、「下グローブ」による小当たりも発生する。
【0129】サポートメニュー画面から抜け出すには、1?6の設定値を設定した後にスタートレバー30をオンにし、さらに、設定用鍵型スイッチ54を反時計方向に90度回動してオフする。設定値は、メインスイッチ52を一度オフの状態にし、設定用鍵型スイッチ54をオンにした状態でメインスイッチ52をオンにし、その後、リセットスイッチ53を押す毎に順次変更される。・・・
【0139】つまり、演出画面中に遊技者によって十字キー23が上操作されると、上述したショートカット処理によって液晶表示装置22にメダル情報画面が現れ、十字キー23が下操作されるとリーチ目画面が現れる。また、十字キー23が左操作されるとボーナス入賞回数画面、右操作されるとボーナス間情報画面が液晶表示装置22に現れる。・・・
【0185】まず、遊技開始コマンド(スタート・コマンド)がメイン制御基板61から受信されたか否かがサブCPU82によって判断される(図64,ステップ241)。スタート・コマンドが受信された場合には、RAM84のメモリ領域に形成されたボーナス間カウンタのカウント値が+1され、更新される(ステップ242)。次に、メイン制御基板61からBBまたはRBの入賞コマンドが受信されたか否かが判断される(ステップ243)。BBまたはRBの入賞コマンドが受信された場合には、その時のボーナスカウンタの値およびボーナスの種類がRAM84に格納され(ステップ244)、引き続いてその時の時刻がRAM84に格納される(ステップ245)。その後、RAM84に形成されたボーナスカウンタがクリアされる(ステップ246)。
【0186】図32(a)は、ボーナス間の詳細情報を示しており、今回、前回、および前々回の過去3回分のボーナスゲームについて、それぞれのボーナスゲームで行われたゲーム数と、そのボーナスを発生させたシンボルを表すボーナス種類とを示している。このゲーム数およびボーナス種類は、図64のステップ244でRAM84に格納されたボーナスカウンタの値およびボーナス種類である。
【0190】上記のボーナス間のゲーム数情報は、図64のステップ244でRAM84に格納されたボーナスカウンタの値およびボーナス種類に基づいて表示されている。また、当日、前日、および前々日の各日付データは、前述した図63に示した日付データ更新処理によって取得されている。
【0199】図36はボーナス当選確率表示画面を示しており、その遊技機に搭載されているボーナスゲームの当選確率を示している。同画面から、例えば、シンボル「セブン」の3個の組合せによって発生するBBゲームは、設定値1および設定値2として同じ当選確率297.89が設定されており、設定値3として当選確率282.48、設定値4,5,6としてそれぞれ当選確率264.26,252.06,240.94が設定されていることが把握される。ここで、当選確率は、乱数発生器69で発生される全乱数範囲のうち、その当選に割り当てられた乱数範囲を表している。
【0210】図40は、副遊技が行われる際に液晶表示装置22に表示されるミニゲーム画面を示している。このミニゲーム画面には、1?6までの数字を選ぶことが出来るルーレットが表示されている。サブCPU82は、内部レジスタを乱数発生器として乱数抽選を行い、反転表示される数字を回転させ、抽選された数字の位置に反転表示を停止させ、ルーレットゲームを行う。遊技店はこのミニゲームを利用してイベントを行うことが出来る。このルーレットの遊技結果は主遊技とは関係のないものであるが、例えば、遊技店は、このルーレットゲームで数字の6に当選した遊技者に、遊技台の確率抽選の設定値を高い確率抽選値に設定変更してあげるといった特典を与えるようにしてもよい。
【0213】ミニゲームとしては、上記のルーレットゲームの他、内部レジスタを用いた乱数抽選によって抽選された0?9のいずれかの数字を液晶表示装置22に表示するだけのラッキーナンバーゲームや、乱数抽選によって選択された○か×を表示する○×ゲームなどが考えられる。このような副遊技は、主遊技の遊技結果とは関係なく進行させられるため、主遊技にない斬新さを持たせることが出来、主遊技の飽きは十二分に充足させられる。

引用文献Aにおける記載事項及び図面を総合的に勘案すれば、引用文献Aには、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
なお、引用文献Aの段落【0185】【0186】【0190】及び図64には「ボーナス間カウンタ」と「ボーナスカウンタ」が混在しているが、明細書の記載全体からみてこれらは同じカウンタのことを指しており、そのカウンタはボーナス間情報を得るためのものであるから、本審決では「ボーナス間カウンタ」に統一した。

「 一般遊技と、R・Bゲームと、B・Bゲームとを行うことができ、
一般遊技中に所定のシンボル組み合わせが入賞ライン上に並ぶと、一般遊技からR・Bゲーム又はB・Bゲームに移行し、
主遊技の遊技結果とは関係なく進行させられるルーレットゲームで数字の6に当選した遊技者に、遊技台の確率抽選の設定値を高い確率抽選値に設定変更してあげるといった特典を与えるようにしてもよいスロットマシン1であって、
種々の情報が表示される液晶表示装置22と、
スタート・コマンドが受信された場合には、カウント値が+1され、BBまたはRBの入賞コマンドが受信された場合には、その時のカウント値がRAM84に格納され、その後クリアされるボーナス間カウンタと、
前記BBまたはRBの入賞コマンドが受信された場合に、その時の前記ボーナス間カウンタの値、ボーナスの種類及び時刻が格納されるRAM84とを備え、
前記RAM84に格納された前記ボーナス間カウンタの値およびボーナス種類に基づいて、今回、前回、および前々回の過去3回分のボーナスゲームについて、それぞれのボーナスゲーム間で行われたゲーム数と、そのボーナスを発生させたシンボルを表すボーナス種類とを示すボーナス間情報画面が前記液晶表示装置22に現れるスロットマシン1。」

2.引用発明と本願発明との対比
本願発明と引用発明とを比較する。
引用発明の「一般遊技」は、本願発明の「一般的な遊技である一般遊技」に相当し、以下同様に、
「行うことができ」は「実行可能に形成され」に、
「所定のシンボル組み合わせが入賞ライン上に並ぶと」は「特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられると」に、
「移行し」は「移行するように形成され」に、
「スロットマシン1」は「スロットマシン」に、
「種々の情報が表示される」は「情報を表示するための」に、
「液晶表示装置22」は「表示装置」に、
「前記RAM84に格納された前記ボーナス間カウンタの値およびボーナス種類に基づいて」は「特別遊技間情報記憶手段の記憶に基づき」に、
「ボーナスゲーム間で行われたゲーム数」は「一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数」に、
「前記液晶表示装置22に現れる」は「表示装置に表示させる」に、それぞれ相当する。
さらに、引用文献Aの記載や図面等からみて、以下のことが言える。

a.引用発明の「R・Bゲームと、B・Bゲーム」は、引用文献Aの段落【0034】及び【0035】等の記載から、本願発明の「遊技者にとって一般遊技よりも有利な遊技である特別遊技」に相当するものといえるから、引用発明は、本願発明の「一般的な遊技である一般遊技と、遊技者にとって一般遊技よりも有利な遊技である特別遊技とを実行可能に形成され」に相当する機能を設けたスロットマシンであるということができる。

b.引用発明の「R・Bゲームと、B・Bゲーム」は、上記a.で述べたように、本願発明の「遊技者にとって一般遊技よりも有利な遊技である特別遊技」に相当するものといえるから、引用発明は、本願発明の「一般遊技中に、特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられると、一般遊技から特別遊技へ移行するように形成され」に相当する機能を設けたスロットマシンであるということができる。

c.引用文献Aの図36や段落【0199】の記載から、引用発明の「設定値」には設定値1?6があり、それぞれボーナスゲーム(B・Bゲーム又はR・Bゲーム)の当選確率が異なることが分かる。
また、引用発明の「R・Bゲームと、B・Bゲーム」は、上記a.で述べたように、本願発明の「遊技者にとって一般遊技よりも有利な遊技である特別遊技」に相当するから、引用発明は本願発明の「特別遊技への移行確率が異なる複数のモード」に相当する構成を有している。
さらに、引用発明において「遊技台の確率抽選の設定値を高い確率抽選値に設定変更してあげる」ことは、例えば、設定値1から設定値5への変更(移行処理)を行う、ということであるから、本願発明の「複数のモード間でのモード移行処理を行う」ことに相当するものといえる。
そうすると、引用発明と本願発明は“特別遊技への移行確率が異なる複数のモード間でのモード移行処理を行うスロットマシン”である点で共通しているということができる。

d.引用発明の「ボーナス間カウンタ」は、その動作態様からみてBBまたはRBの入賞コマンドの受信と同コマンドの次の受信までの間に行われたゲーム数をカウントするものである。
そして、引用発明の「BBまたはRBの入賞コマンド」がB・BゲームまたはR・Bゲームの契機となることは明らかであり、上記a.及びc.で述べたように、引用発明の「R・Bゲームと、B・Bゲーム」は、本願発明の「特別遊技」に相当するから、引用発明の「ボーナス間カウンタ」は、本願発明の「一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数をカウントするための特別遊技間遊技回数カウンタ」に相当する。

e.上記d.後段で述べたことから、引用発明の「前記BBまたはRBの入賞コマンドが受信された場合」は、本願発明の「特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたとき」に相当するものといえる。
また、引用発明の「RAM84」は、BBまたはRBの入賞コマンドが受信された場合に、「その時の前記ボーナス間カウンタの値」を格納すなわち記憶するために用いられている。
そして、上記d.で述べたことからみて、引用発明の「その時の前記ボーナス間カウンタの値」は、本願発明の「一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を示す情報」に相当するから、引用発明と本願発明は、“特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたときに、一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を示す情報を記憶するための記憶手段”を備えている点で共通する。

f.引用発明は「ボーナス間情報画面が前記液晶表示装置22に現れる」ものであるから、ボーナス間情報画面を液晶表示装置22に表示させるための表示制御手段を備えていることは明らかである。
そして、引用発明と本願発明の各構成の相当関係を考慮すると両者は、“特別遊技間情報記憶手段の記憶に基づき、一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を、表示装置に表示させるための制御手段を備えている”点で共通する。

以上を総合すると、両者は、
「 一般的な遊技である一般遊技と、遊技者にとって一般遊技よりも有利な遊技である特別遊技とを実行可能に形成され、
一般遊技中に、特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられると、一般遊技から特別遊技へ移行するように形成され、
特別遊技への移行確率が異なる複数のモード間でのモード移行処理を行うスロットマシンであって、
情報を表示するための表示装置と、
一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数をカウントするための特別遊技間遊技回数カウンタと、
特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたときに、一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を示す情報を記憶するための記憶手段と、
特別遊技間情報記憶手段の記憶に基づき、一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を、表示装置に表示させるための制御手段を備えているスロットマシン。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願発明の「スロットマシン」は、「一般遊技中に、特別遊技への移行確率が異なる複数のモード間でのモード移行処理を行う高確率モード制御手段を設けている」のに対し、引用発明の「スロットマシン1」は、遊技台の確率抽選の設定値を高い確率抽選値に設定変更してあげるときの遊技状態が不明であるとともに、どのような手段によって設定変更するのか明らかでない点。

[相違点2]本願発明の「特別遊技間情報記憶手段」は、一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を示す情報と、一の特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたときの一般遊技中のモードを示す情報と、を対応させて記憶するためのものであるのに対し、引用発明の「RAM84」は、その時の前記ボーナス間カウンタの値、ボーナスの種類及び時刻を格納(記憶)するためのものである点。

[相違点3]本願発明の「表示制御手段」は「一の特別遊技とその前の特別遊技との間の遊技回数を、一の特別遊技への移行に係る特別遊技入賞が引き当てられたときの一般遊技中のモードによって表示の態様を変えて、表示装置に表示させることにより、一般遊技中のいずれのモードから一の特別遊技へ移行したのかがわかるようにするための」ものであるのに対し、引用発明は一般遊技中の設定値によって表示の態様を変えておらず、一般遊技中のいずれの設定値からボーナスゲームへ移行したのかがわかるようになっていない点。

3.当審の判断
[相違点1について]
審判合議体が通知した拒絶理由に引用された特開平10-127886号公報(以下「引用文献B」という。)の段落【0026】には、「なお、大当り確率を高めて大当りを以後2回当りやすくする遊技(確率変動遊技)は特定の図柄で大当りとなった場合(特定の条件の成立した場合)に、所定期間だけその後の大当りの確率を通常よりも高確率に設定する特定遊技であり、役物制御回路100の制御過程においてなされる制御である。」と記載されている。
すなわち、引用文献Bには、役物制御回路100の制御により、特定の条件の成立した場合に、大当りの確率を通常よりも高確率に設定する技術(以下「引用文献B記載の技術1」という。)が開示されている。
ここで、引用発明は「主遊技の遊技結果とは関係なく進行させられるルーレットゲームで数字の6に当選した遊技者に、遊技台の確率抽選の設定値を高い確率抽選値に設定変更してあげるといった特典を与えるようにしてもよい」ものであるから、引用発明において、ルーレットゲーム当選による設定値の変更は、一般遊技中を含む遊技状態において行っても良いことが明らかである。
また、ルーレットゲーム当選による設定値の変更は、特典として与えてもよいというものであるから、その変更は引用文献Aの段落【0129】に記載される通常の手段によるものだけでなく、別の付加的手段によって行われるものを排除していないというべきである。
そして、引用発明と引用文献B記載の技術1は、いずれも抽選確率を変更できる遊技機に関するものである点で共通しているから、引用発明に引用文献B記載の技術1を適用し、引用発明において「遊技台の確率抽選の設定値を高い確率抽選値に設定変更してあげるといった特典を与える」に際して、ルーレットゲーム当選を受けて、一般遊技中に制御回路の制御により、設定値を高い確率抽選値とするようにして、相違点1に係る本願発明のような構成とすることは、スロットマシンの分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)にとって想到容易である。

なお、請求人は平成22年12月24日付けの意見書において、特許庁ホームページで提供されている「平成18年度 標準技術集 遊技機及びその関連技術」の記載を参酌して、引用発明についての解釈を行っているが、引用発明が標準技術集に記載された技術の枠内でなされたものか不明である。
特に、「主遊技の遊技結果とは関係なく進行させられるルーレットゲームで数字の6に当選した遊技者に、遊技台の確率抽選の設定値を高い確率抽選値に設定変更してあげるといった特典を与えるようにしてもよい」という引用発明の構成に関してみると、同標準技術集の1-4-1-1に、スロットマシンにおいては、例外的にしか確率の変動が認められていない旨記載されているから、標準的なスロットマシンの構成でないことが明らかである。
また、例外として、ボーナス中やリプレイタイム中において、確率の変動が認められる場合もあることから、スロットマシンにおいて、特定の条件が成立した場合に遊技機自体で確率を変動させる技術が、当業者にとって全く馴染みのないものということもできない。

[相違点2及び3について]
相違点2及び相違点3は関連するので、合わせて検討する。
引用文献Bには、図18とともに、次の事項が記載されている。

【0069】(d)呼出装置で大当りに関するデータを表示する具体例
次に、呼出装置300で大当りに関するデータを表示する具体例について説明する。
・通常状態中
通常状態中は、例えば図18(a)に示すように液晶表示器309に本日の大当り回数:12回、前回大当り後スタート回数:244回、というように文字情報で大当りに関するデータが表示されるとともに、さらに3回前、前々回、前回のそれぞれの大当り発生時刻、大当り図柄、スタート回転数(スタート回数のこと)が表示される。例えば、図18(a)の例では、3回前の大当り発生時刻:16:56(16時56分を表す)、3回前の大当り図柄「2」、3回前のスタート回転数:365回として表示される。以下、前々回、前回の情報についても同様のスタイルで表示される。・・・
【0070】・過去のデータを参照する場合・・・
図18(c)は過去のデータが確率変動大当りであった例であり、例えば7回前の大当り発生時刻、7回前の大当り図柄(確変図柄「3」)、7回前の大当り発生までのスタート回数(104回)が表示されている。
【0071】このとき、7回前の大当り図柄である確変図柄「3」は黒塗りで、その背景としての火の玉は網掛け表示が行われる。これにより、遊技者は確率変動中に確率変動図柄「3」による大当りがあったことが容易に識別することができる。6回前の大当りは確率変動中に発生した大当りになるので、6回前の大当り発生までのスタート回数は網掛け表示となり、同様に5回前の大当り発生までのスタート回数も網掛け表示となって、通常大当りの場合と区別される。・・・
【0079】(c)また、本発明は複数の識別情報を表示可能な画像表示装置を備え、該識別情報の停止表示態様が特別停止態様になったことに基づき特別遊技状態を発生可能なものであれば、いかなる機種の遊技機であってもよいこともいうまでもない。例えば、他の機種タイプのパチンコ機、アレンジボール機、雀球遊技機、スロットマシン等にも適用することができる。・・・

摘記した上記の記載等から、引用文献Bには、
「液晶表示器に、前回から7回前の大当り発生時刻、大当り図柄、前回大当り後スタート回数が表示されるとともに、前記前回大当り後スタート回数を網掛け表示とすることにより、確率変動中に大当りがあったことを容易に識別することができる技術」(以下「引用文献B記載の技術2」という。)が記載されていると認められる。
また、引用文献B記載の技術2が、大当りが発生した各回の大当り発生時刻と大当り図柄を示す情報を記憶するとともに、前回大当り後スタート回数を示す情報と確率変動中か否かを判断するための情報とを対応づけ可能に記憶するための記憶手段を備えていることは明らかである。
さらに、例えば、特開平11-300012号公報(特に、段落【0045】)や特開2000-14918号公報(特に、段落【0003】)に記載されるように、遊技機において、大当りの発生及び確率変動中か否かを示す情報を送信して管理することは、従来周知の技術(以下「周知技術」という。)である。
そして、引用発明はスロットマシンのボーナスに関する情報を表示するものであるとともに、引用文献Bには、その発明をスロットマシンにも適用することができる旨の記載があるので、引用発明に引用文献B記載の技術2及び周知技術を適用して、BBまたはRBの入賞コマンドが受信された場合に、その時のボーナス間カウンタの値と設定値を高い確率抽選値に設定変更しているか否かを示す情報とを対応させて記憶するとともに、ボーナスゲーム間で行われたゲーム数を網掛け表示とすることにより、設定値を高い確率抽選値に設定変更している時にR・Bゲーム又はB・Bゲームに移行したことを容易に識別することができるようにして、上記相違点2及び3に係る本願発明のような構成とすることは、当業者が容易に想到し得る。

[相違点の判断のまとめ]
本願発明の作用効果も、引用発明、引用文献B記載の技術1、2及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用発明、引用文献B記載の技術1、2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第四.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用文献B記載の技術1、2及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項(請求項2)について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-31 
結審通知日 2011-04-01 
審決日 2011-04-12 
出願番号 特願2004-163382(P2004-163382)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 小原 博生
特許庁審判官 吉村 尚
井上 昌宏
発明の名称 スロットマシン  
代理人 黒田 博道  

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