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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1238051
審判番号 不服2011-1341  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2011-01-19 
確定日 2011-06-08 
事件の表示 特願2010-180409「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成22年11月 4日出願公開、特開2010-247001〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年8月11日の出願(平成12年5月22日に出願した特願2000-150678号の一部を平成19年6月6日に新たな特許出願としたもの、の一部を平成20年3月7日に新たな特許出願としたもの、の一部を平成21年2月23日に新たな特許出願としたもの、の一部を平成21年6月22日に新たな特許出願とした特願2009-147882号の分割出願)であって、平成22年11月9日付け(発送:11月15日)で拒絶査定され、これに対し、平成23年1月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、同日付けで手続補正がなされたものである。


2.平成23年1月19日付け手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成23年1月19日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)補正の内容
平成23年1月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は、平成22年10月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲である、
「【請求項1】
大当りが発生する確率が普通確率状態で普通入賞口にパチンコ球が入賞すると、発生させた乱数の値により確率変動大当り、普通大当り又はハズレを決定すると共に、変動表示ゲームを開始して、表示装置を変動させた後に前記決定された大当り又はハズレに対応して停止表示し、停止表示により確率変動大当りとなった場合には、変動入賞装置を開放する大当りゲームを行った後、普通確率状態よりも高確率で大当りが発生する確率変動状態になって、変動表示ゲームを行う一方、停止表示により普通大当りとなった場合には、その後の変動表示ゲームを普通確率状態で行う遊技機において、
パチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過すると変動を開始する第1表示器と、
チューリップからパチンコ球が特別入賞口に入賞すると変動を開始する第2表示器と、
遊技機の遊技制御を行う制御部とを具備し、
前記制御部は、普通確率状態においてパチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過して、第1表示器が第1特定表示状態で停止した場合に一定の時間だけ前記チューリップを開くように制御する一方、特別入賞口にパチンコ球が入賞すると、前記第2表示器を変動させた後に停止させ、第2特定表示状態で停止表示した場合、その後に行う変動表示ゲームで所定時間又は所定ゲーム数だけ普通確率状態を前記確率変動状態にすると共に、確率変動状態においては、パチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過すると、普通確率状態よりも第1表示器が第1特定表示状態で停止しやすくし、且つ第1表示器が第1特定表示状態で停止した場合には、前記一定の時間よりもチューリップの開放時間を向上させ、さらに、パチンコ球が特別入賞口に入賞すると、前記第2表示器を変動させた後に停止させ、第2特定表示状態で停止表示した場合、その後に行う変動表示ゲームで所定時間又は所定ゲーム数だけ前記確率変動状態にすること、
を特徴とする遊技機。」

から、

「【請求項1】
大当りが発生する確率が普通確率状態で普通入賞口にパチンコ球が入賞すると、発生させた乱数の値により確率変動大当り、普通大当り又はハズレを決定すると共に、変動表示ゲームを開始して、表示装置を変動させた後に前記決定された大当り又はハズレに対応して停止表示し、停止表示により確率変動大当りとなった場合には、変動入賞装置を開放する大当りゲームを行った後、普通確率状態よりも高確率で大当りが発生する確率変動状態になって、変動表示ゲームを行う一方、停止表示により普通大当りとなった場合には、その後の変動表示ゲームを普通確率状態で行う遊技機において、
パチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過すると変動を開始する第1表示器と、
チューリップからパチンコ球が特別入賞口に入賞すると変動を開始する第2表示器と、
大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力する出力手段と、遊技機の遊技制御を行う制御部とを具備し、
前記制御部は、普通確率状態においてパチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過して、第1表示器が第1特定表示状態で停止した場合に一定の時間だけ前記チューリップを開くように制御する一方、チューリップから特別入賞口にパチンコ球が入賞すると、前記第2表示器を変動させた後に停止させ、第2特定表示状態で停止表示した場合、その後に行う変動表示ゲームで所定時間又は所定ゲーム数だけ普通確率状態を前記確率変動状態にし、出力手段に大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力させると共に、確率変動状態においては、パチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過すると、普通確率状態よりも第1表示器が第1特定表示状態で停止しやすくし、且つ第1表示器が第1特定表示状態で停止した場合には、前記一定の時間よりもチューリップの開放時間を向上させ、さらに、パチンコ球がチューリップから特別入賞口に入賞すると、前記第2表示器を変動させた後に停止させ、第2特定表示状態で停止表示した場合、その後に行う変動表示ゲームで所定時間又は所定ゲーム数だけ前記確率変動状態にすること、
を特徴とする遊技機。」
に補正された。

本件補正は、補正前の請求項1における「特別入賞口にパチンコ球が入賞すると」および「パチンコ球が特別入賞口に入賞すると」という事項を、「チューリップから特別入賞口にパチンコ球が入賞すると」および「パチンコ球がチューリップから特別入賞口に入賞すると」に変更し、そして、請求項1に「大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力する出力手段」および「出力手段に大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力させる」という事項を付加したものである。
このうち、前者の変更については、特別入賞口への入賞を「チューリップから」と限定したものと認めることができる。
一方、後者の付加、すなわち「大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力する出力手段」および「出力手段に大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力させる」という事項を付加した点については、請求項の削除あるいは誤記の訂正に該当しないことは明らかであり、また、補正前に明りょうでなかった事項があったために追加された事項でもないから、明りょうでない記載の釈明にも該当しない。
さらに、上記事項は、新たに追加された構成であって、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものにも該当しない。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
しかしながら、事案に鑑み、本件補正が特許法第17条の2第5項の規定に違反しないものと仮定して、本件補正により補正された請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて、以下検討を続けることとする。

(2)引用文献に記載された事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された特開平5-177041号公報には、図面とともに、以下の記載がある。

(ア)「【0009】図1は、遊技機の一例のパチンコ遊技機における遊技領域に配設された各種機器や装置を示す正面図である。
【0010】遊技盤1の前面に形成された遊技領域2には図示しない打球装置によりパチンコ玉が1つずつ打込まれる。この遊技領域2には、複数種類の識別情報が可変表示可能な普通可変表示装置4と、複数種類の識別情報が可変表示可能な特別可変表示装置14とが一体に設けられている。さらに、遊技領域2には、1対の可動翼片9が普通電役物ソレノイド10によって開閉されることにより打玉が入賞しやすい遊技者にとって有利な第1の状態と打玉が入賞できない遊技者にとって不利な第2の状態とに変化する普通可変入賞球装置8が設けられている。この普通可変入賞球装置8は、電動ヤクモノ式始動入賞口を構成しており、第1の状態に変化した後所定期間(たとえば5.9秒)の経過または打玉の所定個数(6個)の入賞のうちいずれか早いほうの条件が成立することにより第2の状態に切替わり打玉が入賞できない状態になる。なお、この普通可変入賞球装置8が第2の状態になれば、打玉がまったく入賞できないのではなく入賞しにくいように構成してもよい。また、第1の状態として所定期間開成させる代わりに所定回数を開閉させるようにしてもよい。
【0011】遊技領域2の下方位置には、開閉板19が開閉することにより打玉が入賞しやすい遊技者にとって有利な第1の状態と打玉が入賞しない遊技者にとって不利な第2の状態とに変化可能な特別可変入賞球装置17が設けられている。なお、この特別可変入賞球装置17が第2の状態では打玉が入賞不可能ではないが入賞困難となるように構成してもよい。さらに遊技領域2には、始動通過口5a,5b、始動入賞口12、通常の入賞口36,37,38が設けられている。
【0012】遊技領域2内に打込まれたパチンコ玉が始動通過口5a,5bを通過すれば、その通過玉が始動通過玉検出器6a,6bにより検出され、その検出出力に基づいて普通可変表示装置4の左普通図柄表示器4a,中普通図柄表示器4b,右普通図柄表示器4cが可変開始し、所定時間の経過により、左普通図柄表示器4a,中普通図柄表示器4b,右普通図柄表示器4cの順序で可変表示が停止する。

(中略)

【0013】遊技領域2内に打込まれたパチンコ玉が普通可変入賞球装置8に入賞すれば始動入賞玉検出器11により検出され、その検出出力に基づいて特別可変表示装置14が可変開始される。なお、この始動入賞玉検出器11は、普通可変入賞球装置8内に入賞した入賞玉の個数を計数するための検出スイッチにも兼用される。さらに、打込玉が始動入賞口12に入賞すればその入賞玉が始動入賞玉検出器13により検出され、その検出出力に基づいて特別可変表示装置14が可変開始される。この特別可変表示装置14の可変表示は、所定時間の経過により、左特別図柄表示部14a,右特別図柄表示部14c,中特別図柄表示部14bの順序で停止する。

(中略)

【0014】普通可変表示装置4の可変停止時の表示結果が予め定められた識別情報(たとえば3,7,Fのいずれかの図柄からなるぞろ目)となれば、普通可変入賞球装置8の可動部材9が開成して第1の状態になる。この普通可変入賞球装置8への打玉の入賞確率が向上して特別可変表示装置14が可変開始される確率が向上する。この特別可変表示装置14には、中央横およびななめ右上りおよびななめ右下がりの合計3列の当り列(組合せ有効列)が定められおり、この特別可変表示装置14の可変停止時の表示結果が、この3列の当り列上のいずれかにおいて特定の識別情報の組合せ(たとえば777等の大当り図柄)が成立した場合には特定遊技状態が発生し、特別可変入賞球装置17のソレノイド20が励磁されて開閉板19が開成した第1の状態となり、大当り状態となる。」
(イ)「【0015】一方、特別可変表示装置14の停止時の表示結果が大当り図柄となり、大当り状態が発生してその大当り状態が終了したときに、確率変動用可変表示器24が所定時間(たとえば2秒)可変表示した後停止する。その停止時の表示結果が、たとえば3または7のぞろ目からなる確率向上図柄の場合に確率変動条件が成立して、特別可変表示装置14の停止時の表示結果が予め定められた所定の識別情報(たとえば7,F,G等のいずれかの大当り図柄からなるぞろ目)となる確率が向上するように制御され、たとえば3,7以外の数字のぞろ目からなる確率向上図柄の場合に確率変動条件が成立して普通可変表示装置4の停止時の表示結果が予め定められた所定の識別情報(たとえば3,7,Fのいずれかの図柄からなるぞろ目)となる確率が向上するように制御される。なお、確率変動用の専用の表示器で確率変動図柄表示を行なってもよい。」
(ウ)「【0031】S9では、スイッチ入力処理が行なわれ、S10に進み、ランダム1,ランダム2,ランダム4のそれぞれのランダムカウンタを更新する処理が行なわれる。ランダム1カウンタとは、特別可変表示装置14の停止時の表示結果を大当りにするか否かを決定するための1次抽選用のカウンタであり、かつ、確率変動用可変表示器24の表示結果を確率変動図柄(当り図柄)にしないことが決定された場合に確率変動図柄以外の図柄(はずれ図柄)を決定するためのカウンタでもある。ランダム2カウンタとは、特別可変表示装置14の停止時の表示結果を大当りにするか否かを決定するための2次抽選用のランダムカウンタであり、かつ、確率変動用可変表示器24の表示結果を確率変動図柄にするか否かを決定するための抽選用のカウンタであり、かつ、確率変動図柄にする旨の決定に基づいて表示すべき確率変動図柄の種類を決定するカウンタにも兼用されている。
【0032】ランダム1カウンタのとり得る値の範囲は0?99であり、そのうちの当りとなる値の個数は通常時と確率向上時とで異なる。通常時には当り個数は4個であり、確率向上時は40個となる。すなわち、確率向上時には大当りか否かを決定するための1次抽選の際の当りとなる確率は通常の10倍となる。一方、ランダム2カウンタの取り得る値の範囲は0?659であり、そのうちの当り個数は確率設定用スイッチの設定が1?3のいずれであるかによって異なる。すなわち確率設定用スイッチ75が設定1となっている場合には当り個数は57個、設定2となっている場合には60個、設定3となっている場合には65個となるように制御される。
【0033】したがって、ソフト上の大当り確率は、通常時と確率向上時、および確率設定スイッチ75の設定によって、6通りに変化することになる。このうち通常時の大当り確率は次のようになる。確率設定スイッチ75が設定1となっている場合には、1次抽選当り確率は4/100、2次抽選当り確率は57/660である。1次抽選および2次抽選のいずれとも当りの場合のみ大当りとなるわけであるから、設定1の場合には大当り確率は4/100×57/660≒1/289.5となる。同様に設定2の場合には2次抽選当り確率が60/660となるため、大当り確率は4/100×60/660=1/275となる。設定3の場合には2次抽選当り確率は65/660であり、大当り確率は4/100×65/660≒1/253.8となる。
【0034】確率変動用可変表示器24の可変停止時の表示結果が3または7のぞろ目からなる確率向上図柄となった場合には、前述のように1次抽選の当り確率が4/100から40/100に向上する。したがって設定1?3の場合の大当り確率もそれぞれ10倍となる。

(中略)

【0038】ランダム4カウンタとは、普通可変表示装置4の停止時の表示結果を当りにするか否かを決定するための抽選用のランダムカウンタである。普通可変表示装置4の停止時の表示結果を当りとする当り確率も、確率設定スイッチ75の設定によって変化される。その変化の制御の方法は以下のようである。」
(エ)「【0090】レール飾りランプ41の列の「確率向上時」とは、前記S145またはS146により停止図柄が当りとなる確率が向上した確率向上時のことを意味する。スピーカ62の効果音の列における「確率向上時」も同じ意味である。なお、効果音Jは確率向上時一定期間だけ発生し、レール飾りランプ41の点滅は、確率向上状態の期間中ずっと行なわれる。
【0091】動作状態が始動口入賞の場合における当り列表示LED16は、256msを1周期として点灯移動するように表示制御される。リーチ時においては、当り列表示LED16は、当りの図柄の組合わせが成立する可能性のある当り列の両端に位置するLEDのみが(a′)の態様で点滅表示される。また、大当り状態においても、当り列表示LED16は、大当りの図柄の組合わせが成立した当り列の両端に位置するLEDのみが(a′)の態様で点滅制御される。
【0092】V表示LED26は、大当りにおける特定入賞口へのパチンコ玉の入賞後および可変入賞球装置の開放後に(b)の態様で点滅表示されるが、可変入賞球装置17の繰返し継続制御の最終回においては、この表示VLED26は何ら表示制御されない。スピーカ62からは、図示するように、A?Jの10種類の効果音がそれぞれの動作状態に応じて発せられる。なお、パチンコ玉の始動口入賞に基づく特別可変表示装置の可変表示中において発せられるBの種類の効果音は、その始動口入賞に基づいて可変表示された特別可変表示装置14の各図柄の停止時にのみ発せられる。また、大当りにおける特定入賞口へのパチンコ玉の入賞後に発せられるGの種類の効果音は、パチンコ玉が1回の開放において最初に特定入賞口21に入賞したときにのみ発せられる。また、このGの種類の効果音は、可変入賞球装置14の繰返し継続制御の最終回においては発せられない。その他、確率向上時には入賞個数表示器25(図1参照)が「F」を点滅表示する。この点滅は、まず256msだけOFF状態となり次に256msだけOFF状態となるタイミングで点滅制御される。
【0093】なお、図28において「確率向上時」と表示してあるのは、特別図柄の確率向上時、普通図柄の確率向上時の両方を指しているが、これらを別々にし、特別図柄の確率向上時と普通図柄の確率向上時とで報知の態様を別々にしてもよい。」
(オ)「【0095】特別図柄と普通図柄との確率変動条件は、少なくとも確率変動用可変表示器24の表示図柄が所定の図柄に揃った場合に変動するものであれば、それ以外の条件の成立時にも変動させるようにしてもよい。その場合の確率向上条件としては、以下のものが考えられる。
【0096】(1) 電源投入後普通可変表示装置4または特別可変表示装置14により所定回数の可変表示が行なわれた場合に確率向上させてもよい。また、特別可変表示装置14の表示結果が大当り図柄と異なる確率向上図柄の組合せあるいは大当り図柄のうちの或る図柄と同じ確率向上図柄の組合せになった場合に確率を向上させてもよい。また、前述したリーチ状態が発生した場合に確率を向上させてもよい。さらに、普通可変表示装置の表示結果が所定の識別情報となった場合に確率を向上させてもよい。この所定の識別情報とは当りとなる表示のうち予め定められた表示や当りとなる表示以外の予め定められた表示、さらには普通可変表示装置4の当りとなるすべての表示等が考えられる。なお、特別可変表示装置14が大当りとなる識別情報の組合せとなった場合に確率を向上させる際においては、大当りの発生とともに確率を向上させてもよい。
【0097】(2) 普通可変入賞球装置8や始動入賞口12や始動通過口5a,5bに打玉が入賞したときに抽出したランダムカウンタの値が予め定める値であった場合に確率を向上させてもよい。
【0098】(3) 特定の通過領域を打玉が1個または所定個数通過した場合に確率を向上させてもよい。この特定の通過領域とは、遊技領域内に設けられたものであってもよく、特別可変入賞球装置17内に設けられたものであってもよく、さらには普通可変入賞球装置8内に設けられたものであってもよい。
【0099】(4) 所定期間(所定時間の経過あるいは所定回数の可変表示)内に当りとなる識別情報の組合せが発生しなかった場合に確率を向上させてもよい。この当りとなる識別情報の組合せが発生しないとは、特別可変表示装置14の大当りとなる識別情報の組合せが発生しない場合と、普通可変表示装置4の当りとなる識別情報の組合せが発生しない場合と、両方の可変表示装置で共に当りとなる識別情報が発生しない場合との3通りが考えられる。
【0100】(5) 遊技領域内に打込んだ打玉と遊技機に補給した補給玉との差である差玉数や景品玉の出玉率が所定の値に達した場合に確率を向上させてもよい。この差玉数や出玉率は、開店時からのものであってもよくまた所定時からのものであってもよい。
【0101】なお、前記(1)?(5)の条件が成立した場合に、当り外れ決定時における当り範囲を拡大する代わりに、特別可変入賞球装置17や普通可変入賞球装置8を開成させる表示結果の組合せ数を増加させるようにしてもよい。」
(カ)「【0102】次に、確率向上状態を終了させる条件として、以下のものを終了条件にしてもよい。
【0103】(1) 特別可変表示装置14や普通可変表示装置4の表示結果が所定の識別情報となった場合に終了させてもよい。この所定の識別情報とは、当りとなる表示のうち予め定められた表示や当りとなる表示以外の予め定められた表示が考えられる。また、前述したリーチ状態の発生により終了されるようにしてもよい。
【0104】(2) 普通可変入賞球装置8や始動入賞口12あるいは始動通過口5a,5bに打玉が入賞したときに抽出したランダムカウンタの値が予め定める値であった場合に終了させてもよい。
【0105】(3) 特定の通過領域を打玉が1個またまは所定個数通過した場合に終了させてもよい。この特定の通過領域とは、遊技領域内に形成されたもの、特別可変入賞球装置17内に形成されたものあるいは普通可変入賞球装置8内に形成されたもの等が考えられる。
【0106】(4) 確率向上状態の開始後において、(a)所定時間が経過した場合、(b)普通可変表示装置4や特別可変表示装置14の可変表示が所定回数行なわれた場合、(c)所定時間の経過または普通可変表示装置4や特別可変表示装置14の所定回数の可変表示のうちいずれか早い方の条件が成立した場合、(d)普通可変表示装置4の当りが所定回数発生した場合に、確率向上状態を終了させてもよい。なお、前記(a)?(d)の場合において、所定の繰返し継続条件が成立した場合に確率向上状態が繰返し継続制御されるようにしてもよい。
【0107】(5) たとえば、普通可変入賞球装置8の開成中の入賞玉数が0または一定数以下だった場合等のように入賞玉数が所定数に達しなかった場合、または特定の通過領域を打玉が通過しなかった場合に終了させてもよい。
【0108】(6) 普通可変入賞球装置8や始動入賞口12への打玉の入賞個数の記憶あるいは始動通過口5a,5bへの打玉の始動通過個数の記憶がなくなった場合に終了させてもよい。
【0109】(7) 差玉数や出玉率が所定値に達した場合に終了させてもよい。なお、この差玉数や出玉率は開店時からのものであってもよく、また所定時からのものであってもよくさらには確率向上状態の開始時からのものであってもよい。」
(キ)「【0112】また、本実施例では、特別可変表示装置14の表示結果が特定の識別情報の組合せとなって大当りが発生しその大当りが終了したときに確率変動用可変表示器を可変表示・停止させるようにしたが、確率変動用可変表示器の可変開始・可変停止の条件は、たとえば遊技領域に設けられた所定の通過領域をパチンコ玉が通過したことや発射玉数や打込玉数が所定数に達したこと、あるいは特別可変表示装置14や普通可変表示装置4の表示結果が所定の表示結果になったこと等、どのような条件であってもよい。
【0113】
【発明の効果】本発明は、表示部の表示結果が所定の識別情報となった場合に、可変表示部の表示結果が特定の識別情報となる確率を変動させるようにしているために、確率変動による変化に富んだ面白味を遊技者に提供でき、かつ、その確率変動が生じたことを遊技者が表示部の表示結果を視認することにより容易に認識できる遊技機を提供し得るに至った。」

以上、(ア)ないし(キ)の記載、および図面を総合すると、引用文献1には、

「1 パチンコ遊技機における遊技領域には、普通可変表示装置4、特別可変表示装置14、および確率変動用可変表示器24が設けられており、また、パチンコ玉の通過ないし入賞を検出するための、始動通過口5(a,b)、始動入賞口12、および可動部材9(チューリップ)を備えた普通可変入賞球装置8が設けられている。そして、当該パチンコ遊技機で行われる遊技の制御を行う遊技制御装置(図5)を備えている。
2 始動入賞口12にパチンコ玉が入賞すると、ランダムカウンタの値により大当り、またはハズレを決定すると共に、特別可変表示装置14が変動を開始し、決定された大当り、またはハズレに応じた停止表示態様(大当りの場合は777のぞろ目)で停止して、大当り状態またはハズレとなる。
3 また、始動通過口5をパチンコ玉が通過すると、普通可変表示装置4が変動を開始し、所定の確率で特定の図柄列(3,7,Fのぞろ目)で停止表示されると、可動部材9が所定期間(たとえば5.9秒)開成する。可動部材9の開成により普通可変入賞球装置8からパチンコ玉が入賞すると、始動入賞口5への入賞と同様に、特別可変表示装置14が変動を開始し、停止した表示態様で大当り、またはハズレとなる。
4 大当り状態が発生して大当りゲームを行った後、確率変動用可変表示器24が変動・停止し、その停止表示結果が特定の表示態様(3または7のぞろ目)となった場合、特別可変表示装置14で大当りとなる確率を向上させるか、または普通可変表示装置4が特定の表示列となる確率を向上させるか、あるいはその両方の確率を向上させる。また、特別可変表示装置14の表示結果が大当り図柄のうちの或る図柄と同じ確率向上図柄の組合せになった場合に確率を向上させてもよい。
5 確率向上時には、レール飾りランプ41が点滅し、効果音が発生され、また、入賞個数表示器25が点滅する。
6 確率向上状態の開始後、所定時間経過した場合、あるいは普通可変表示装置4や特別可変表示装置14が所定回数可変表示した場合、確率向上状態を終了させる。」

という発明が開示されていると認めることができる。
(以下、この発明を「引用発明」という。)

(3)対比
引用発明と本件補正発明を対比する。
引用発明の普通可変表示装置4は、始動通過口5をパチンコ玉が通過すると、変動を開始し、所定の確率で特定の図柄列(3,7,Fのぞろ目)で停止表示されると、可動部材9(チューリップ)を所定期間(たとえば5.9秒)開成して、普通可変入賞装置8からパチンコ球が入賞できるようになるのであるから、引用発明の「普通可変表示装置4」、「始動通過口5」、「普通可変入賞装置8」は、それぞれ本件補正発明の「第1表示器」、「ディジタルスタートチャッカー」、「特別入賞口」に相当する。
引用発明の特別可変表示装置14は、始動入賞口12にパチンコ玉が入賞すると変動を開始し、ランダムカウンタの値に応じて大当り、またはハズレを決定し、該決定に応じて大当りの表示態様で停止すると、大当り状態となるものであるから、引用発明の「特別可変表示装置14」、「始動入賞口12」は、それぞれ本件補正発明の「表示装置」、「普通入賞口」に相当する。
引用発明の「確率変動用可変表示器24」は、変動を開始した後、停止して特定の表示態様(3または7のぞろ目)となった場合、特別可変表示装置14で大当りとなる確率、普通可変表示装置4が特定の表示列となる確率を向上させるものであるから、本件補正発明における「第2表示器」に相当する。
そして、引用発明は、特別可変表示装置14の表示結果が大当り図柄のうちの或る図柄と同じ確率向上図柄の組合せになった場合に確率を向上させてもよいのであるから、引用発明の特別可変表示装置14の停止表示態様には、ハズレの態様と、大当りの態様と、大当りであってかつ確率を向上させる態様があることは明らかである。
してみると、引用発明は、ランダムカウンタの値によって、ハズレ、普通の大当り又は確率向上を伴う大当りを決定するものといえる。

以上のことから、引用発明と本件補正発明は、
<一致点>
「大当りが発生する確率が普通確率状態で普通入賞口にパチンコ球が入賞すると、発生させた乱数の値により確率変動大当り、普通大当り又はハズレを決定すると共に、変動表示ゲームを開始して、表示装置を変動させた後に前記決定された大当り又はハズレに対応して停止表示し、停止表示により確率変動大当りとなった場合には、変動入賞装置を開放する大当りゲームを行い、普通確率状態よりも高確率で大当りが発生する確率変動状態になって、変動表示ゲームを行う一方、停止表示により普通大当りとなった場合には、その後の変動表示ゲームを普通確率状態で行う遊技機において、
パチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過すると変動を開始する第1表示器と、
変動を開始する第2表示器と、
遊技機の遊技制御を行う制御部とを具備し、
前記制御部は、普通確率状態においてパチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過して、第1表示器が第1特定表示状態で停止した場合に一定の時間だけ前記チューリップを開くように制御する一方、前記第2表示器を変動させた後に停止させ、第2特定表示状態で停止表示した場合、その後に行う変動表示ゲームで所定時間又は所定ゲーム数だけ普通確率状態を前記確率変動状態にし、確率変動状態においては、パチンコ球がディジタルスタートチャッカーを通過すると、普通確率状態よりも第1表示器が第1特定表示状態で停止しやすくする遊技機。」
である点で一致しており、以下の点で相違している。

<相違点1>
本件補正発明は、普通入賞口にパチンコ球が入賞し、表示装置が確率変動大当りの停止表示態様になった場合、「変動入賞装置を開放する大当りゲームを行った後」に確率変動状態になるのに対して、
引用発明は、始動入賞口にパチンコ球が入賞し、表示装置が確率変動大当りに対応する停止表示になった場合に、いつから確率向上状態(確率変動状態)になるのか明らかでない点
<相違点2>
本件補正発明は、第2表示器が「チューリップから特別入賞口にパチンコ球が入賞する」と変動を開始するのに対して、
引用発明は、確率変動用可変表示器24が変動を開始する条件が異なる点
<相違点3>
本件補正発明は、「大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力する出力手段」を有しているのに対して、
引用発明は、上記構成を備えていない点
<相違点4>
本件補正発明は、確率変動状態において、「第1表示器が第1特定表示状態で停止した場合には、前記一定の時間よりもチューリップの開放時間を向上させ」るものであるのに対して、
引用発明は、上記構成を備えていない点
<相違点5>
本件補正発明は、確率変動状態において、「パチンコ球がチューリップから特別入賞口に入賞すると、前記第2表示器を変動させた後に停止させ、第2特定表示状態で停止表示した場合、その後に行う変動表示ゲームで所定時間又は所定ゲーム数だけ前記確率変動状態にする」、すなわち、確率変動状態であっても、第2表示器が第2特定表示状態で停止表示した場合は、所定時間又は所定ゲーム数だけ確率変動状態にするものであるのに対して、
引用発明は、確率向上状態においても、確率変動用可変表示器24が特定表示態様で停止表示すると確率向上状態となるのか不明である点

(4)判断
<相違点1>について
変動表示装置を備えたパチンコ遊技機において、始動口に遊技球が入賞し、抽選によってハズレ又は普通大当り又は確変大当りが決定されると、変動表示装置に抽選結果に対応する停止表示を行い、普通大当りの場合は大当りゲーム終了後に通常状態とする一方、確変大当りの場合は大当り終了後に確変状態とすることは、例を示すまでもない周知な技術であるから、引用発明において、確率向上を伴う大当りの場合、大当り終了後に確率向上状態とすることは適宜なし得たものと認められる。
<相違点2>について
引用発明は、普通可変入賞装置8(特別入賞口)にパチンコ球が入賞した場合、特別可変表示装置14(表示装置)を変動させ、大当りとなった場合に、大当りゲーム終了後、確率変動用可変表示器24(第2表示器)が変動するようになっている。
つまり、確率変動用可変表示器24は、「普通可変入賞装置8にパチンコ球が入賞した」という条件だけで変動を開始するものではないが、当該「普通可変入賞装置8にパチンコ球が入賞した」という条件が確率変動用可変表示器24を変動させる条件の一つであることは明らかである。
また、引用発明の(キ)「【0112】また、本実施例では、特別可変表示装置14の表示結果が特定の識別情報の組合せとなって大当りが発生しその大当りが終了したときに確率変動用可変表示器を可変表示・停止させるようにしたが、確率変動用可変表示器の可変開始・可変停止の条件は、たとえば遊技領域に設けられた所定の通過領域をパチンコ玉が通過したことや発射玉数や打込玉数が所定数に達したこと、あるいは特別可変表示装置14や普通可変表示装置4の表示結果が所定の表示結果になったこと等、どのような条件であってもよい。」にあるように、確率変動用可変表示器の変動条件は、様々な条件が考えられることが示唆されている。
これらのことから、確率変動用可変表示器を「普通可変入賞装置8にパチンコ球が入賞した」という条件のみで変動開始させる程度のことは当業者が容易に想到できたと言わざるを得ない。
<相違点3>について
引用発明は、遊技機が確率変動状態にあることを、レール飾りランプ41や、入賞個数表示器25の点滅、あるいは効果音によって報知するものであるが、変動表示装置(引用発明でいう「特別可変表示装置14」や本願補正発明でいう「表示装置」に対応するもの)を備えた遊技機において、変動表示装置に画像を表示することや、遊技状態の表示を画像で行うことなどは周知な技術にすぎないから、遊技機が確率変動状態にあることを変動表示装置の画像で表示することは適宜なし得たものと認められる。
<相違点4>について
この種遊技機において、確変状態でチューリップの開放時間を向上させることは周知技術にすぎないので、引用発明において、確率変動状態で普通可変表示装置4が特定の図柄列で停止表示された場合に、可動部材9(チューリップ)が開成する所定期間(5.9秒)を向上させることは適宜なし得たものと認められる。
<相違点5>について
そもそも引用発明では、「確率変動用可変表示器24が所定の表示態様となった場合、その後の遊技状態を所定時間あるいは所定ゲーム確率変動状態とする」ものであるから、「確率変動用可変表示器24が所定の表示態様」となる前の遊技状態が普通遊技状態であるか確率変動状態であるかに拘わらず上記のような条件で確率変動状態とすることは容易に想到できることである。

さらに、上記した全ての相違点および本件補正発明の作用効果を総合的に勘案しても、本件補正発明に格別のものを認めることができない。
以上のように、本件補正発明は、引用発明および周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際に独立して特許を受けることができない。

(5)本件補正発明についてのまとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであり、また仮に同規定に違反しないとしても、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


3.本件発明について
(1)本件発明及び引用文献に記載された発明
平成23年1月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明は、平成22年10月5日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのもの(「2.(1)補正の内容」参照のこと。以下、この発明を「本件発明」という。)である。

(2)対比・判断
本件発明は、前記2.で検討した本件補正発明から、「チューリップから」という事項、「大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力する出力手段」および「出力手段に大当り発生確率変動情報である画像データを前記表示装置に出力させる」という事項を削除したものである。
そうすると、本件発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加して発明を限定したものに相当する本件補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本件発明は、引用発明および周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-06 
結審通知日 2011-04-08 
審決日 2011-04-20 
出願番号 特願2010-180409(P2010-180409)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63F)
P 1 8・ 57- Z (A63F)
P 1 8・ 575- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小河 俊弥  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 吉村 尚
澤田 真治
発明の名称 遊技機  

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