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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1238059
審判番号 不服2008-2576  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-02-06 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 平成11年特許願第314333号「マルチカロチノイドを含有する飲料」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月15日出願公開、特開2001-128651〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

この出願は,平成11年11月4日の出願であって,平成19年3月16日付けで拒絶理由が通知され,同年5月21日に意見書及び手続補正書が提出されたが,同年12月20日付けで拒絶査定がなされ,平成20年2月6日に拒絶査定を不服とする審判が請求されるとともに,同年3月7日に手続補正書及び審判請求書の手続補正書が提出され,平成22年8月6日付けで審尋が通知され,同年10月12日に回答書が提出され,平成23年1月19日付けで拒絶理由が通知されると同時に,平成20年3月7日付け手続補正の却下の決定がなされ,平成23年3月25日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明

この出願の請求項1ないし3に係る発明は,平成23年3月25日付けの手続補正により補正された明細書(以下,「本願明細書」という。)の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ,請求項1に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,次のとおりのものであると認める。

「野菜汁および果汁のいずれか又は両方の,「カロチノイドを含有する濾液」,「カロチノイドを含有する濾滓」,「遠心分離体の一部であるカロチノイドを含む画分」及び「遠心分離体の一部であるカロチノイドを含む分離固形物」からなる群より選ばれる2以上を原料成分とし,適宜混合することによって,マルチカロチノイド含有野菜飲料,果実飲料または野菜果実飲料を製造する方法。」

第3 平成23年1月19日付け拒絶理由通知の拒絶の理由の概要

理由1 本願発明は,その出願前に日本国内又は外国において,頒布された下記の刊行物に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

理由2 本願発明は,その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて,その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


特開平11-56314号公報(以下,「刊行物1」という。)

第4 刊行物に記載された事項

この出願前に頒布された刊行物である刊行物1には,以下の事項が記載されている。

1a「【請求項1】かんきつ類の果実を搾汁してろ過(篩別)した後,軽遠心分離操作により沈降部を除去して得られる上清部を,さらに重遠心分離操作により,沈降部と上清部に分離した後,この沈降部を通常のジュースと適宜混合することにより,カロチノイド含量を所定のレベルに調整することを特徴とするカロチノイド高含有ジュースの製造方法。
・・・(中略)・・・
【請求項4】以下の工程;
(1)かんきつ類の果実を搾汁してろ過(篩別)した後,軽遠心分離操作によりジュースを沈降部(A)と上清部(B)に分離する工程,
(2)必要により,沈降部(A)を上記(1)の遠心分離操作よりも強い遠心強度で重遠心分離操作を行い沈降部(C)と上清部(D)に分離する工程,
(3)上清部(B)を上記(1)の遠心分離操作よりも高い遠心強度で重遠心分離操作を行い沈降部(E)と上清部(F)に分離する工程,
(4)必要により,上清部(D)と上清部(F)を混合する工程,
(5)上記工程で得られた上清部(D),上清部(F)または上清部(D+F)と沈降部(E)を適宜混合してカロチノイド含量を所定のレベルに調整する工程,からなるカロチノイド高含有ジュースの製造方法。」

1b「【0005】・・とりわけ果汁中に含有されるカロチノイドとパルプ分について徹底した研究を行った結果,かんきつ果汁中のカロチノイドは,パルプ分に均一に付着または吸着して存在しているのではなく,微細なパルプ分にカロチノイドの存在割合が高いという知見を得た。・・(中略)・・
すなわち,かんきつ果汁を軽遠心分離処理することにより不要なパルプ分を除去し,さらに重遠心分離処理することによりカロチノイドを高レベルで含有する微細なパルプ分を主体とした沈降部を得,この沈降部と通常のジュースを適宜混合することにより,品質を低下させることなくカロチノイド高含有ジュースの製造が低コストかつ簡便に行うことが可能となる。
本発明は,かんきつ類の果実を搾汁して得られるジュースのカロチノイド含量を所定のレベルに調整して,通常のジュースよりも高いレベルのカロチノイドを含有するカロチノイド高含有ジュースを製造する方法を提供することを目的とする。」

1c「【0007】・・これらのかんきつ類果実の中で,温州みかん果実の果肉は,カロチノイド含量が高いだけではなく特にβ-クリプトキサンチンを多量に含有していることで知られているが,このβ-クリプトキサンチンは,プロビタミンAとしての栄養成分特性を備えているだけでなく,最近の抗がん研究においては,にんじんなどの緑黄色野菜に含まれているカロチノイドであるβ-カロチンよりも強い発がん抑制効果がある(Biol.Pharm.Bull.18,2,227,1995)ことが判明している。これらのことより,温州みかん果実は特に好適なものとして例示される。」

1d「【0012】・・前記したように,温州みかんは,β-クリプトキサンチンの含量が高いが,このようにβ-クリプトキサンチンを高レベルに含有しているかんきつ類は希であり,その他の果実類,野菜類についても同様である。このため,にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュースに温州みかんの沈降部(E)を混合,調整することにより,マルチプロビタミンAのカロチノイドを高レベルで含有する果実・野菜ミックスジュースを製造することができる。また,バレンシアオレンジジュースに温州みかんの沈降部(E)を混合,調整することにより,温州みかん特有の一次機能(β-クリプトキサンチンのプロビタミン作用),二次機能(色調の改善),三次機能(β-クリプトキサンチンの抗がん性)を付与することが可能となる。その他にも各種飲料への適用が可能であるが,サプリメントなどの原料資材としても有用である。」

第5 当審の判断

1 刊行物1に記載された発明

刊行物1は,「かんきつ類の果実を搾汁してろ過(篩別)した後,軽遠心分離操作により沈降部を除去して得られる上清部を,さらに重遠心分離操作により,沈降部と上清部に分離した後,この沈降部を通常のジュースと適宜混合することにより,カロチノイド含量を所定のレベルに調整することを特徴とするカロチノイド高含有ジュースの製造方法」(摘示1a 請求項1)に関し記載するものであり,この「カロチノイド高含有ジュースの製造方法」により製造される「カロチノイド高含有ジュース」として,「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュースに温州みかんの沈降部(E)を混合,調整することにより,マルチプロビタミンAのカロチノイドを高レベルで含有する果実・野菜ミックスジュースを製造することができる」(摘示1d)が記載されている。

したがって,刊行物1には,

「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュースに温州みかんの沈降部(E)を混合,調整することにより,マルチプロビタミンAのカロチノイドを高レベルで含有する果実・野菜ミックスジュースを製造する方法。」

の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

2 本願発明と引用発明との対比

本願発明と引用発明を対比すると,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」は,野菜汁であるにんじんなどのジュースで,カロチノイドの一種であるβーカロチンを含有している液といえる。
それ故,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」は,本願発明の「野菜汁の」「液からなる」「カロチノイドを含有する」「液」に相当する。

引用発明の「温州みかんの沈降部(E)」に関し,「沈降部(E)」とは,摘示1a 請求項4に記載のカロチノイド高含有ジュースの製造方法において「(1)かんきつ類の果実を搾汁してろ過(篩別)した後,軽遠心分離操作によりジュースを沈降部(A)と上清部(B)に分離する工程,・・(中略)・・,(3)上清部(B)を上記(1)の遠心分離操作よりも高い遠心強度で重遠心分離操作を行い沈降部(E)と上清部(F)に分離する工程」により得られる「沈降物(E)」のことであるから,引用発明の「温州みかんの沈降部(E)」は,温州みかんの果実を搾汁してろ過(篩別)後,遠心分離操作を行うことにより得られる沈殿物すなわち分離固形物のことといえる。
そして,引用発明の「温州みかんの沈降部(E)」がカロチノイドを含むかどうかについて,刊行物1の,「温州みかん果実の果肉は,カロチノイド含量が高いだけではなく特にβ-クリプトキサンチンを多量に含有」(摘示1c)という記載,及び,「かんきつ果汁中のカロチノイドは・・微細なパルプ分にカロチノイドの存在割合が高い・・。・・かんきつ果汁を軽遠心分離処理することにより不要なパルプ分を除去し,さらに重遠心分離処理することによりカロチノイドを高レベルで含有する微細なパルプ分を主体とした沈降部」(摘示1b)という記載から,引用発明の「温州みかんの沈降部(E)」はカロチノイドを含んでいるといえる。
そうすると,引用発明の「温州みかんの沈降部(E)」は,本願発明の「果汁の遠心分離体の一部である「カロチノイドを含む分離固形物」」に相当する。

引用発明の「マルチプロビタミンAのカロチノイドを高レベルで含有する果実・野菜ミックスジュース」は,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュースに温州みかんの沈降部(E)を混合,調整」したものであり,この「果実・野菜ミックスジュース」は,にんじんなどの,プロビタミンAのカロチノイドの一種であるβーカロチン(桜井芳人編「総合食品辞典(第三版)」(昭和51年3月15日)同文書院 発行 第740頁「[プロビタミンA]・・植物色素のカロチノイド・・のうち,・・α,β,γーカロチン(carotene)およびクリプトキサンチンの4種は,体内においてAに変わるので,Aの作用がある.それでこれらを<プロビタミンA>という.」参照。)を含有するにんじん(野菜)ジュースと,温州みかんの,プロビタミンAのカロチノイドの一種であるβークリプトキサンチン(「温州みかん果実の果肉は・・特にβ-クリプトキサンチンを多量に含有」(摘示1c)参照)を含有する遠心分離固形物とを混合して得られる果汁・野菜ミックスジュースであるから,少なくとも2種以上の多‘種類’カロチノイドを含有する,マルチカロチノイド含有の野菜果実飲料であるといえる。
そうすると,引用発明の「マルチプロビタミンAのカロチノイドを高レベルで含有する果実・野菜ミックスジュース」は,本願発明1の「マルチカロチノイド含有」「野菜果実飲料」に相当する。

引用発明の「混合,調整することにより」は,本願発明の「適宜混合することによって」に相当する。

そうすると,両者は,

「野菜汁の液からなる「カロチノイドを含有する液」,及び,果汁の遠心分離体の一部である「カロチノイドを含む分離固形物」を混合することによって,マルチカロチノイド含有野菜果実飲料を製造する方法。」

である点で一致するが,以下の点で一応相違するといえる。

野菜汁の‘液’からなる「カロチノイドを含有する‘液’」が,
本願発明は,「‘濾’液」であるのに対し,
引用発明は,明らかでない点(以下,この相違点を「相違点」という。)

3 相違点についての判断

(1)相違点についての判断1

一般に,にんじんジュースは,にんじんをブランチングした後,破砕又は磨砕して,搾汁することにより得られるものであることは,本願出願当時,周知事項であった(例えば,特開8-214846号公報(原査定における引用文献2)「従来,人参ジュースの製造方法として一般に,人参をブランチングした後,破砕又は磨砕して,搾汁することが行なわれている」(段落【0002】),特開平10-313835号公報「従来のニンジンジュースの製造方法は,ニンジンを沸騰水中で加熱(ブランチング)して酵素失活させた後,破砕乃至磨砕して搾汁する方法が一般的であった」(段落【0002】)参照)。
そして,搾汁する(汁を搾る)ことにより得られるにんじんのジュース分は,汁と滓を分離して得られる汁(ジュース分)のことであり,汁と滓を分離することは,通常,濾材を通過させて透過液として汁を得ることといえるから,その透過液(ジュース分)は,濾液といえる。

そうすると,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」は,上記周知事項を勘案すると,一般に,にんじんなどを破砕又は磨砕後に搾汁したジュース分,すなわち‘濾液’であるといえる。
したがって,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」である,野菜汁の‘液’からなる「カロチノイドを含有する‘液’」は,‘濾液’であるから,相違点は実質的な相違点であるとはいえない。

したがって,上記相違点1は,実質的な相違点であるとはいえず,本願発明は,刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができない。

(2)相違点についての判断2

仮に,上記相違点が実質的な相違点であるとした場合に,本願発明が引用発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるか否かについても,以下に検討する。

上述のように,一般に,にんじんジュースは,にんじんをブランチングした後,破砕又は磨砕して,搾汁することにより得られるものであることは,本願出願当時,周知事項であった。また,一般に,搾汁して野菜汁や果汁を得る際,搾汁中の滓分を除去しようとして搾汁を濾過(篩別)することは,本願出願当時,周知技術であった(例えば,刊行物1の「かんきつ類の果実を搾汁してろ過(篩別)した・・」(摘示1a 請求項1)を参照。)。
そうすると,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」として,該周知事項及び周知技術を適用し,にんじん等を破砕又は磨砕後に搾汁し濾過(篩別)したジュース分である濾液を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。

また,本願発明の効果については,本願明細書の段落【0006】及び段落【0042】に記載されるように,「βーカロチン以外の多種類のカロチノイドを同時に含有する野菜飲料,果実飲料または野菜果実飲料を提供する」ことにより,「消費者はその嗜好に関わらず各々の健康状態に必要とされるカロチノイドを摂取することができる」ものである。
しかしながら,上記(1)で述べたように,引用発明は「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュースに温州みかんの沈降部(E)を混合,調整することにより得られる・・果汁・野菜ミックスジュース」で,この「果実・野菜ミックスジュース」は,にんじんなどの(主に)βーカロチンを含有する野菜ジュースと,温州みかんの(主に)βークリプトキサンチンを含有する遠心分離固形物とを混合して得られる果汁・野菜ミックスジュースであり,少なくとも2種以上の多‘種類’カロチノイドを含有する,マルチカロチノイド含有の野菜果実飲料である。それ故,引用発明は,βーカロチン以外の多種類のカロチノイドを同時に含有する野菜果実飲料として提供できるものであり,消費者は嗜好に関わらず各々の健康状態に必要とされるカロチノイドを摂取することができることは,当業者であれば容易に予測し得る効果である。
したがって,上記効果は,格別顕著なものであるということはできない。

したがって,仮に,上記相違点が実質的な相違点であったとしても,本願発明は,刊行物1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができない。

(3)請求人の主張について

ア 主張の概要

請求人は,平成23年3月25日付け意見書において,以下(i)(ii)を指摘し,「本願発明は,刊行物1の記載に基づいて当業者が容易に想到し得たものではない」と主張している。
(i)「刊行物1の野菜ジュース及びバレンシアオレンジジュースは,・・分離操作のない「濃縮ストレート」,つまりストレート野菜汁・果汁や濃縮野菜汁・果汁に該当するものであり,本発明の「濾液」,「濾滓」及び「画分」の2以上ではありません。」
(ii)「本願発明は,「マルチカロチノイド」,すなわち,多種類のカロチノイドを同時に含有する飲料の製造方法であるのに対し,刊行物1の発明は,単に,カロチノイド含有量の高いジュースの製造方法であり,本願発明とは目的が異なります。そして,刊行物1は,カロチノイド含有量を高める目的で,重遠心分離操作により得られる沈降物と,ジュースとを適宜混合して,カロチノイド高含有ジュースを製造することを開示するにすぎず,2種以上の分離処理結果物を適宜混合して所望の多種類のカロチノイドを所望の量だけ含む飲料を製造するという本願発明の技術思想については,記載も示唆もされていません。」

イ 検討

(i)について

引用発明の「温州みかんの沈降部(E)」は,上記2で示したように,温州みかんの果実を搾汁してろ過(篩別)後,遠心分離操作を行うことにより得られる沈殿物すなわち分離固形物のことといえ,カロチノイドを含んでいるから,本願発明の「果汁の遠心分離体の一部であるカロチノイドを含む分離固形物」に相当するものである。

また,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」については,上記3(1)で示したように,一般に,にんじんジュースは,にんじんをブランチングした後,破砕又は磨砕して,搾汁することにより得られるものであることは,本願出願当時,周知事項であり,搾汁する(汁を搾る)ことにより得られるにんじんのジュース分は,汁と滓を分離して得られる汁(ジュース分)で,通常,濾材を通過させて透過液として得られる汁といえ,その透過液(ジュース分)は濾液といえるから,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」は,上記周知事項を勘案すると,にんじんなどを破砕又は磨砕後に搾汁したジュース分,すなわち‘濾液’であるといえ,本願発明の「カロチノイドを含有する濾液」に相当するものといえる。

仮に,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」が‘濾液’に相当するものとはいえないとしても,上記3(2)で示したように,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」として,該周知事項及び周知技術を適用し,にんじん等を破砕又は磨砕後に搾汁し濾過(篩別)したジュース分である濾液(すなわち本願発明の「カロチノイドを含有する濾液」に相当)を適用することは,当業者が容易に想到し得たことである。

(ii)について

引用発明は,「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュースに温州みかんの沈降部(E)(β-クリプトキサンチンの含量が高い)を混合,調整することにより,マルチプロビタミンAのカロチノイドを高レベルで含有する果実・野菜ミックスジュースを製造することができる」(摘示1d)ものであり,βーカロチン及びβークリプトキサンチンという,少なくとも2種類のカロチノイドを同時に高レベルで含有する飲料の製造方法である。
そして,上述の「(i)について」で述べたように,引用発明の「温州みかんの沈降部(E)」は,本願発明の「果汁の遠心分離体の一部であるカロチノイドを含む分離固形物」に相当するものであり,また,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」は,にんじんなどを破砕又は磨砕後に搾汁したジュース分すなわち‘濾液’であり(仮に,‘濾液’に相当するものとはいえないとしても,上記3(2)で示したように,引用発明の「にんじんなどのβ-カロチン含量の高い野菜ジュース」として,該周知事項及び周知技術を適用し,にんじん等を破砕又は磨砕後に搾汁し濾過(篩別)したジュース分である濾液を適用することは,当業者が容易に想到し得たものである),本願発明の「カロチノイドを含有する濾液」に相当するものといえるから,2種以上の分離処理結果物を適宜混合して,所望の少なくとも2種類のカロチノイドを所望の量含む飲料を製造する方法が示唆されているといえる。

以上のとおりであり,かつ,上記2,3(1)(2)に示したとおりであるから,請求人の上記主張を採用することはできない。

第6 むすび

以上のとおり,本願発明は,刊行物1に記載された発明であるから,特許法第29条第1項第3号に該当し,特許を受けることができないものであり,仮に,実質的な相違点があったとしても,本願発明は,刊行物1に記載された発明に基いて,当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により,特許を受けることができないものであるので,その余について言及するまでもなく,この出願は,拒絶すべきものである。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-31 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-19 
出願番号 特願平11-314333
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
P 1 8・ 113- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 明照小柳 正之  
特許庁審判長 中田 とし子
特許庁審判官 細井 龍史
齊藤 真由美
発明の名称 マルチカロチノイドを含有する飲料  
代理人 正林 真之  

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