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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1238065
審判番号 不服2008-6677  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-03-18 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2001-321147「記録再生装置およびディスクカートリッジ」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 9月13日出願公開、特開2002-260367〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成13年10月18日(優先権主張 平成12年12月27日)の出願であって、平成16年7月13日付けの手続補正の後、平成19年10月19日付けで通知された拒絶の理由に対して平成19年12月20日付けで手続補正されたが、平成20年2月13日付けで拒絶査定され、これに対し、平成20年3月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで明細書について手続補正がされたものである。
その後、当審において、審査官の作成した前置報告書(特許法164条第3項)の内容を利用した審尋を行ったところ、平成22年7月22日付けで回答書が提出された。


第2 平成20年3月18日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成20年3月18日付けの手続補正を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正
平成20年3月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「【請求項1】
回転状態にあるディスクに対して、レーザ光を照射し、情報の記録・再生を行う記録再生装置において、
上記ディスクに対向して配され、かつ、揺動可能に支持される、対向平面を有する安定化スライダーと、
上記ディスクを介して、上記安定化スライダーに対向するように配された安定化板とが設けられ、
上記安定化板は、揺動可能に支持される、対向面を有するスライダーからなり、このスライダーは、上記ディスクに照射されるレーザ光を集光するための集光手段が設けられた集光スライダーであり、
上記安定化板は、上記集光手段に、弾性を有する弾性部材を介して固定されていることを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
上記集光スライダーには、集光手段としての第1レンズと第2レンズとが所定の間隔で配置され、かつ、該第1レンズと第2レンズの間隔を制御するための圧電素子層が設けられていることを特徴とする請求項1記載の記録再生装置。
【請求項3】
上記安定化スライダーには、磁界を発生する磁界発生素子が設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
上記安定化板には、磁界を発生する空芯コイルが設けられていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の記録再生装置。
【請求項5】
上記安定化スライダーには、軟磁性体が設けられていることを特徴とする請求項4記載の記録再生装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか1項に記載の記録再生装置で使用されるディスクがカートリッジに収納され、かつ、記録再生時にディスクが露出されるディスクカートリッジであって、該ディスクカートリッジの内壁面が、上記ディスク回転時に、該ディスクとの間の空間を減圧状態とし得る安定化板であることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項7】
ディスクとディスクカートリッジの両方の内壁面との距離が、それぞれ、10μm以上200μm以下であることを特徴とする請求項6記載のディスクカートリッジ。
【請求項8】
光源と、該光源から出射されたレーザ光を、ディスクに集束して照射する集光手段と、
上記ディスクを回転駆動する回転駆動手段とを備えた記録再生装置において、
上記ディスクと上記集光手段との間に配され、該集光手段と連動する第1安定化板と、
上記ディスクを挟んで上記第1安定化板と対向するように配され、かつ、揺動可能に支持される、対向平面を有するスライダーとを備え、
上記第1安定化板は、上記集光手段に、弾性を有する弾性部材を介して固定されていることを特徴とする記録再生装置。
【請求項9】
上記集光手段は、少なくとも2つのレンズを組み合わせた群レンズであることを特徴とする請求項8に記載の記録再生装置。
【請求項10】
上記スライダーは、磁界を発生する磁界発生素子を備えたことを特徴とする請求項8または9に記載の記録再生装置。
【請求項11】
上記第1安定化板は、透明であることを特徴とする請求項8から10のいずれか1項に記載の記録再生装置。
【請求項12】
上記ディスクに対向し、かつ、上記ディスク回転時には、該ディスクとの間の空間を減圧状態とし得る位置に第2安定化板をさらに配設したことを特徴とする請求項8から11のいずれか1項に記載の記録再生装置。
【請求項13】
上記第2安定化板には、記録再生時にスライダーまたは第1安定化板がディスクに近接するための開口部が形成されていることを特徴とする請求項12に記載の記録再生装置。
【請求項14】
請求項12または13に記載の記録再生装置で使用されるディスクがカートリッジに収納され、かつ、記録再生時にディスクが露出されるディスクカートリッジであって、上記ディスクに対する第2安定化板がカートリッジの一方の内壁面で構成されていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項15】
請求項12または13に記載の記録再生装置で使用されるディスクがカートリッジに収納され、かつ、記録再生時にディスクが露出されるディスクカートリッジにおいて、ディスクに対向し、かつ、上記ディスク回転時には、該ディスクとの間の空間を減圧状態とし得る位置にカートリッジの両方の内壁面で構成される第2安定化板が設けられていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項16】
上記ディスクとカートリッジの両方の内壁面との距離が、それぞれ、10μm以上、かつ、200μm以下であることを特徴とする請求項15に記載のディスクカートリッジ。
【請求項17】
カートリッジの両方の内壁面には、
記録再生時にディスクを露出し、かつ、記録再生装置で用いられる集光手段と上記ディスクとの間に配され、該集光手段と連動する第1安定化板と、上記ディスクを挟んで上記第1安定化板と対向するように配され、かつ、揺動可能に支持される、対向平面を有するスライダーとを上記ディスクに近接するための開口部が形成されていることを特徴とする請求項15または16に記載のディスクカートリッジ。
【請求項18】
上記ディスクは、可撓性を有していることを特徴とする請求項1から5、8から13の何れか1項に記載の記録再生装置。」
とあったものを、

本件補正により
「【請求項1】
光源と、該光源から出射されたレーザ光を、ディスクに集束して照射する集光手段と、
上記ディスクを回転駆動する回転駆動手段とを備えた記録再生装置において、
上記ディスクと上記集光手段との間に配され、該集光手段と連動する第1安定化板と、
上記ディスクを挟んで上記第1安定化板と対向するように配され、かつ、揺動可能に支持される、対向平面を有するスライダーとを備え、
上記第1安定化板は、上記ディスクと所定の距離をおいて配され、且つ、上記集光手段に、弾性を有する弾性部材を介して固定されていることを特徴とする記録再生装置。
【請求項2】
上記集光手段は、少なくとも2つのレンズを組み合わせた群レンズであることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。
【請求項3】
上記スライダーは、磁界を発生する磁界発生素子を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の記録再生装置。
【請求項4】
上記第1安定化板は、透明であることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の記録再生装置。
【請求項5】
上記ディスクに対向し、かつ、上記ディスク回転時には、該ディスクとの間の空間を減圧状態とし得る位置に第2安定化板をさらに配設したことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の記録再生装置。
【請求項6】
上記第2安定化板には、記録再生時にスライダーまたは第1安定化板がディスクに近接するための開口部が形成されていることを特徴とする請求項5に記載の記録再生装置。
【請求項7】
請求項5または6に記載の記録再生装置で使用されるディスクがカートリッジに収納され、かつ、記録再生時にディスクが露出されるディスクカートリッジであって、上記ディスクに対する第2安定化板がカートリッジの一方の内壁面で構成されていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項8】
請求項5または6に記載の記録再生装置で使用されるディスクがカートリッジに収納され、かつ、記録再生時にディスクが露出されるディスクカートリッジにおいて、ディスクに対向し、かつ、上記ディスク回転時には、該ディスクとの間の空間を減圧状態とし得る位置にカートリッジの両方の内壁面で構成される第2安定化板が設けられていることを特徴とするディスクカートリッジ。
【請求項9】
上記ディスクとカートリッジの両方の内壁面との距離が、それぞれ、10μm以上、かつ、200μm以下であることを特徴とする請求項8に記載のディスクカートリッジ。
【請求項10】
カートリッジの両方の内壁面には、
記録再生時にディスクを露出し、かつ、記録再生装置で用いられる集光手段と上記ディスクとの間に配され、該集光手段と連動する第1安定化板と、上記ディスクを挟んで上記第1安定化板と対向するように配され、かつ、揺動可能に支持される、対向平面を有するスライダーとを上記ディスクに近接するための開口部が形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載のディスクカートリッジ。
【請求項11】
上記ディスクは、可撓性を有していることを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の記録再生装置。」
と補正しようとするものである。

すると、本件補正は、補正前の請求項1ないし7を削除して、請求項8ないし18の項番を繰り上げて新たな請求項1ないし11とし、さらに請求項1において、「第1安定化板」について「上記ディスクと所定の距離をおいて配され」との限定を加えて特許請求の範囲を減縮するものであって、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものと認める。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開平3-137830号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(a)
[産業上の利用分野]
本発明は、光記録媒体の回転に伴う空気流により浮動すると共に光源からの集束光を光記録媒体の収束面へ収束させる光学ヘッドを備えた光学的記録装置に係り、特に、この光学ヘッドの安定した浮動走行が図れる光学的記録装置の改良に関するものである。(2頁左上欄11行?17行)

(b)
[発明が解決しようとする課題]
ところで、この種の光学的記録装置においては上述したようにその光学ヘッド(h)が光記録媒体(a)の回転に伴う空気流により光記録媒体(a)面より浮動する構成となっているが、この空気流は上記光学ヘッド(h)に作用する以外に光記録媒体(a)面にも作用することになるため、上記光学ヘッド(h)を浮動させる浮動圧と同等の押圧力が光学ヘッド(h)側から光記録媒体(a)面へ向は加わるようになっている。
このため、上記光記録媒体(a)の基材がプラスチック等可撓性材料により構成されているような場合、上記押圧力を受けて第9図に示すようにこの光記録媒体(a)が変形してしまうことがあり、この変形に伴い光学ヘッド(h)の浮動走行が不安定となって記録誤動作を引起こす問題点があった。
[課題を解決するための手段]
本発明は以上の問題点に着目してなされたもので、その課題とするところは、光記録媒体面に加わる光学ヘッド側からの押圧力を打消して光学ヘッドの安定した浮動走行が図れるようにした光学的記録装置を提供することにある。(2頁左下欄13行?右下欄15行)

(c)
◎第一実施例
この実施例に係る光学的記録装置は、第1図?・第3図に示すように光ディスク(1)を挟んで各々配設された光学ヘッド(2)と押圧手段(3)とでその主要部が構成されているものである。
まず、上記光学ヘッド(1)は、駆動装置(4)と、この駆動装置(4)にその基端側が取付けられ光ディスク(1)側へ10?20gf程度の力で付勢するバネ状サスペンション(5)と、このバネ状サスペンション(5)に支持されその底面側の空気流入端と空気流出端に空気の流入と流出をスムーズにさせるテーバ(61) (62)が、又、底面側中央部に光学ヘッドの浮動走行を安定化させる中央逃げ部(図示せず)が夫々設けられていると共に、光源である半導体レーザ(7)からのレーザ光を光ディスク(1)側へ導入する光路用開口部(63)が開設されたアルミナセラミックス製の浮動本体(6)と、この浮動本体(6)の光路用開口部(63)上に設けられ半導体レーザ(7)からのレーザ光を光ディスク(1)側へ反射させるプリズム(8)と、上記光路用開口部(63)内のプリズム(8)と隣接する側に嵌合して取付けられた対物レンズ(9)とでその主要部が構成されている。
また、上記駆動装置(4)はボイスコイルモータ等で構成されており、この駆動装置(4)に入力されるトラッキングエラー信号等制御信号に基づいで上記バネ状サスペンション(5)を光ディスク(1)の半径方向へ移動し、このバネ状サスペンション(5)に支持された浮動本体(6)を光ディスク(1)の所定トラック上へ移動制御するようになっている。
一方、上記押圧手段(3)は、ボイスコイルモータ等で形成された駆動装置(31)と、この駆動装置(31)にその基端側が取付けられ光ディスク(1)側へ10?20gf程度の力で付勢するバネ状サスペンション(32)と、このバネ状サスペンション(32)に支持されその底面側の空気流入端と空気流出端にテーバ(33) (34)が又その中央部に中央逃げ部(35)が夫々設けられていると共に上記浮動本体(6)と略同-寸法に設定されたアルミナセラミックス製の浮動基材(36)とでその主要部が構成されており、かつ、この駆動装置(31〕には上記光学ヘッド(2)側の駆動装置(4)と同一の制御信号が入力され、これによって上記浮動基材(36)が光学ヘッド(2)の移動操作に同期して光ディスク(1)の半径方向に亘って移動操作されるようになっている。
この様に構成された光学的記録装置においては、光ディスク(1)の回転に伴って上記光学ヘッド(2)の浮動本体(6)と押圧手段(3)の浮動基材(36)が夫々反対方向へ1μm程度浮動する一方、上記光学ヘッド(2)のプリズム(8)面へ駆動装置(4)の移動方向と平行に照射されたレーザ光(λ)が入射され、かつ、対物レンズ(9)を介し光ディスク(1)の収束面へ収束されて情報の記録操作がなされ、また、光ディスク(1)面からの反射レーザ光(λ)が同一光路を通って図示外のフォトダイオード側へ入射されて再生操作がなされるものである。
そして、この実施例に係る光学的記録装置においては、バネ状サスペンション(5)の付勢力(10?20gf)に抗して光学ヘッド(2)が1μm程度浮動するに伴いこの光学ヘッド(2)を浮動させる浮動圧と同等の押圧力(10?20gf)が光学ヘッド(2)側から光ディスク(1)面へ向は作用することになるが、光ディスク(1)を挾んでこの光学ヘッド(2)の対向部位に押圧手段(3)の浮動基材(36)が配設されており、この浮動基材(36)側から光ディスク(1)面へ向は浮動基材(36)を浮動させる浮動圧と同等の押圧力(10?20gf)が作用し、この浮動基材(36)からの押圧力により光学ヘッド(2)側からの押圧力が打消されることになるため光ディスク(1)が変形を起こすことがない。(4頁右上欄10行?5頁右上欄9行)

上記引用例記載事項及び図面(特に第1図ないし第3図)を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されている。なお、上記摘記事項(c)に「再生操作」がなされることについても言及があることから「光学的記録再生装置」と認定した。

「光ディスクの回転に伴う空気流により浮動すると共に光源である半導体レーザからのレーザ光を光ディスクの収束面へ収束させる光学ヘッドを備えた光学的記録再生装置において、
光ディスク側へ10?20gf程度の力で付勢するバネ状サスペンションと、このバネ状サスペンションに支持され、光源である半導体レーザからのレーザ光を光ディスク側へ導入する光路用開口部が開設されたアルミナセラミックス製の浮動本体と、
この浮動本体の光路用開口部上に設けられ半導体レーザからのレーザ光を光ディスク側へ反射させるプリズムと、
上記光路用開口部内のプリズムと隣接する側に嵌合して取付けられた対物レンズとで構成され、対物レンズを介し光ディスクの収束面へ収束されて情報の記録操作がなされる光学ヘッドと、
光ディスク側へ10?20gf程度の力で付勢するバネ状サスペンションと、このバネ状サスペンションに支持されていると共に上記浮動本体と略同一寸法に設定されたアルミナセラミックス製の浮動基材とで構成される押圧手段と、
が配設され、
光ディスクを挾んで、光学ヘッドの対向部位に押圧手段の浮動基材が配設され、この浮動基材側から光ディスクへの押圧力により光学ヘッド側から光ディスクへの押圧力を打消すようにした、
光ディスクの回転に伴って上記光学ヘッドの浮動本体と押圧手段の浮動基材が夫々反対方向へ1μm程度浮動する
光学的記録再生装置。」

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2000-36124号公報(以下、「第2引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(d)
「【0020】図1および図2は、本願発明に係る光ディスク装置用光学ヘッドのレンズアクチュエータ10の一例を示している。このレンズアクチュエータ10は、トラック方向(X方向)に移動可能なキャリッジ20上に搭載される。キャリッジ20は、ガイド部材21によってトラック方向に移動可能に支持されており、たとえば、直進型ボイスコイルモータなどの直進駆動機構によって適宜トラック方向に駆動される。キャリッジ20には、上記トラック方向とフォーカス方向(Z方向)とに駆動変位可能な二次元アクチュエータ30が支持され、かつこのアクチュエータ30には、後述するスライダ50に支持されるレンズ41と協働して対物レンズを構成するレンズ42が保持される。以下において、このようにアクチュエータ30に支持されるレンズを便宜上第2レンズ42、後述するスライダ50に支持されるレンズを便宜上第1レンズ41という。図に示す実施形態において第2レンズ42は1枚のレンズからなっているが、複数のレンズを組み合わせて構成してもよい。なお、図1中、符号MはX方向から照射されるレーザ光をZ方向に立ち上げる立上げミラーを、符号Hは浮上型磁気ヘッドを、それぞれ示す。
【0021】アクチュエータ30は、より詳しくは、キャリッジ20上の支持部材20aから略水平に延出する4本のバネ8aによって、フォーカス方向(Z方向)およびトラック方向(X方向)に弾性変位可能に支持されている。ただし、4本のバネ8a、支持部材20aおよびキャリッジ20がフォーカス方向とトラック方向の双方について平行四辺形パンタグラフリンクに似た構成となるために、アクチュエータ30は、フォーカス方向およびトラック方向に変位はしても、姿勢はあまり変化しない。このアクチュエータ30にはまた、キャリッジ20上の磁気回路の磁場中に位置するようにフォーカスコイル35とトラックコイル36が装備されており、フォーカスコイル35とトラックコイル36に電流を駆動することにより、フレミングの法則にしたがって、フォーカス方向とトラック方向の二次元方向に駆動可能である。
【0022】上記アクチュエータ30には、フォーカス方向の所定のバネ定数をもつ支持部材23を介してスライダ50が支持される。本実施形態では、この支持部材23は、くの字型に折り曲げられた板バネ23aを具備して形成されている。また、この実施形態では、上記板バネ23aの先端部とスライダ50との連結部に図4に示すようなジンバルバネ89が用いられており、板バネ23aに対してスライダ50の傾き姿勢が自由に変化しうるように構成されている。このジンバルバネ89は、枠部89aと、この枠部89aの内側に細状連結部89bを介して配置された中央連結部89cとを有しており、全体として薄板状の弾性部材を打ち抜いて形成されたものである。枠部89aに対して中央連結部89cは、平面方向の外力に対してはある程度の剛性を有するが、傾斜させようとする外力に対しては比較的弱い。したがって、たとえば、枠部89aを板バネ23aの先端に固定し、中央連結部89cをスライダ50の底面適部に固定すれば、このスライダ50は、ジンバルバネ89上に設定されるピボット点Pを中心として、全方向にほぼ自由に傾動しうる。したがって、スライダ50は、フォーカス方向に所定のバネ定数をもちつつ、かつ、自由度をもって傾動しうるように二次元アクチュエータ30に支持されることになる。
【0023】なお、スライダ50を二次元アクチュエータ30に対して支持するための具体的構成としては、図4に示す形態に限定されるものではなく、要は、前述したように、アクチュエータ30に対してフォーカス方向に所定のバネ定数をもち、かつ、自由度をもって傾動しうるようになっておればよく、たとえば、図5に示すように、渦巻き状に形成された複数本のバネ23Aによってスライダ50を支持することによっても、スライダ50の支持について本願発明が求める要件を満足することができる。また、図1および図2に示した本実施形態では、支持部材23が片持ち状であるが、図6に示すように両持ち状としてもよく、このようにすれば、両持ち状の支持部材23,23が弾性変形した場合のスライダの平面方向の変位が少なくなり、安定性が高まる。」

3.対比
本願補正発明を、引用例1発明と比較する。
両者は、「記録再生装置」に関する発明である点で一致する。
引用例1発明の「半導体レーザ」は、本願補正発明の「光源」に相当する。
引用例1発明では、「半導体レーザからのレーザ光を光ディスク側へ反射させるプリズム」を有し、前記レーザ光が「対物レンズを介し光ディスクの収束面へ収束されて情報の記録操作がなされる」ので、「プリズム」及び「対物レンズ」は、本願補正発明の「該光源から出射されたレーザ光を、ディスクに集束して照射する集光手段」に相当する。
引用例1発明の記録再生装置は、「回転する光ディスクにレーザ光を照射する」ので、「ディスクを回転駆動する回転駆動手段」を備えることは自明である。
引用例1発明の「浮動本体」は、光ディスク側へ10?20gf程度の力で付勢するバネ状サスペンションに支持され、押圧手段の浮動基材と光ディスクを挟んで押圧力を打ち消すように作用する点において、本願補正発明の「第1安定化板」に相当する。また、「半導体レーザからのレーザ光を光ディスク側へ導入する光路用開口部が開設され」、前記光路用開口部上にプリズムが、光路用開口部内のプリズムと隣接する側に対物レンズが、それぞれ取付けられているので、本願補正発明の「第1安定化板」が「上記ディスクと上記集光手段との間に配され、該集光手段と連動する」点でも一致する(なお、仮に、「ディスクと集光手段との間」に配されているとはいえないと認められる場合についても、後で検討する)。
引用例1発明では、「光ディスクの回転に伴って上記光学ヘッドの浮動本体と押圧手段の浮動基材が夫々反対方向へ1μm程度浮動する」ので、本願補正発明の「第1安定化板は、上記ディスクと所定の距離をおいて配され、且つ、上記集光手段に」「固定されている」との特定事項を備えている。
引用例1発明の「押圧手段」を構成する「浮動本体と略同一寸法に設定されたアルミナセラミックス製の浮動基材」は、「光ディスクを挾んで、光学ヘッドの対向部位に」配設され、「バネ状サスペンション」により「光ディスク側へ10?20gf程度の力で付勢」「支持」されているので、本願補正発明の「上記ディスクを挟んで上記第1安定化板と対向するように配され、かつ、揺動可能に支持される、対向平面を有するスライダー」に相当する。

以上のことからすると、本願補正発明と、引用例1発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
「光源と、該光源から出射されたレーザ光を、ディスクに集束して照射する集光手段と、
上記ディスクを回転駆動する回転駆動手段とを備えた記録再生装置において、
上記ディスクと上記集光手段との間に配され、該集光手段と連動する第1安定化板と、
上記ディスクを挟んで上記第1安定化板と対向するように配され、かつ、揺動可能に支持される、対向平面を有するスライダーとを備え、
上記第1安定化板は、上記ディスクと所定の距離をおいて配され、且つ、上記集光手段に、固定されていることを特徴とする
記録再生装置。」である点。

一方で、以下の点で相違する。
(相違点)
本願補正発明では、第1安定化板は、集光手段に、「弾性を有する弾性部材を介して」固定されているのに対し、引用例1発明の「浮動本体」とプリズム及び対物レンズとは、弾性部材を介して固定されたものではない点。

4.判断
引用例2には、スライダ(50)に弾性部材(23)を介して、少なくとも集光手段の一部である第2レンズ(42)を固定したものが記載されている。すなわち、第2レンズは、フォーカス制御のためにアクチュエータ(30)に固定され、光ディスクDに対して、フォーカス方向に駆動制御されるのに対し、スライダ(50)は、光ディスクに対してほぼ一定の浮上量となるので、フォーカス制御される第2レンズとスライダとの間隔の変動を吸収できるように、両者の間に弾性部材が設けられているものである。
対物レンズをフォーカス制御することは、光学的な記録再生装置においてごく普通に採用される構成であるから、引用例1発明においても、対物レンズをフォーカス制御する構成を採用するために引用例2に記載された、アクチュエータとスライダとを、弾性部材を介して固定した構造を採用することにより、浮動本体を、「ディスクと上記集光手段との間に」配置し、集光手段に「弾性を有する弾性部材を介して」固定する構造とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
なお、上記対比において言及した、仮に「ディスクと集光手段との間」に配されているとはいえないと認められる場合についてであるが、引用例2では、スライダにも第1レンズが取り付けられているところ、第2レンズのみで集光する光学系を用いる場合には第1レンズが不要となることは自明であり、その場合、スライダは、光学的には、例えば特開2000-195041号公報に記載された光ピックアップで用いられている、対物レンズの前に置かれた単なるカバーガラスと同等であって、このような構成を採用することにより、スライダは「ディスクと上記集光手段との間に配され」ることとなるもは自明である。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、各引用例に記載された発明及び周知技術から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1及び引用例2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年法律第55号改正附則第3条第1項によりなお従前の例によるとされる同法による改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成20年3月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし18に係る発明は、平成19年12月20日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし18に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項8に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2 〔理由〕1.」に本件補正前の請求項8として掲げたとおりのものである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 〔理由〕2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 〔理由〕」で検討した本願補正発明から、第1安定化板について「上記ディスクと所定の距離をおいて配され」との限定を削除したものに相当する。

そうすると、本願発明を特定する事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理由〕4.」に記載したとおり、各引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、各引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項8に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-03-29 
結審通知日 2011-04-05 
審決日 2011-04-22 
出願番号 特願2001-321147(P2001-321147)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 松尾 淳一山崎 達也  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 石川 正二
▲吉▼澤 雅博
発明の名称 記録再生装置およびディスクカートリッジ  
代理人 特許業務法人原謙三国際特許事務所  

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