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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1238075
審判番号 不服2008-16905  
総通号数 139 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2011-07-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2008-07-03 
確定日 2011-06-09 
事件の表示 特願2001-252042「張り合わせシリコン基板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月 7日出願公開、特開2003- 68996〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成13年8月22日の出願であって、平成20年5月29日付けで拒絶査定がされ、それに対して、同年7月3日に審判が請求された。その後、平成22年12月24日付けで当審により拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、これに対して、平成23年3月7日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。


第2 本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりである。

「【請求項1】 活性層用シリコンウェーハおよび支持基板用シリコンウェーハをアルカリ性エッチング液によりアルカリエッチするエッチング工程と、
上記エッチング工程後、活性層用シリコンウェーハおよびアルカリエッチされた支持基板用シリコンウェーハの各表面を鏡面研磨する鏡面研磨工程と、
上記鏡面研磨工程後、これらの活性層用シリコンウェーハの鏡面と支持基板用シリコンウェーハの鏡面とを重ね合わせてこれらの活性層用シリコンウェーハと支持基板用シリコンウェーハとを張り合わせることにより、張り合わせウェーハを得る張り合わせ工程と、
上記張り合わせ工程後、この張り合わせウェーハを熱処理する熱処理工程とを備えた張り合わせシリコン基板の製造方法において、
上記張り合わせ工程直前における、外力を加えていない条件で平面にこれらの活性層用シリコンウェーハおよび支持基板用シリコンウェーハを載置したときの外周立ちは、これらの活性層用シリコンウェーハおよび支持基板用シリコンウェーハの各表面中央部よりも、その外周縁部分の6mmの領域が0.6μm以下の高さとする張り合わせシリコン基板の製造方法。」


第3 引用例の記載と引用発明
1 引用例とその記載内容
当審拒絶理由に引用された、本願の出願日前に日本国内において頒布された刊行物である特開平4-226031号公報(以下「引用例」という。)には、「半導体ウエハの製造方法および該ウエハから成る半導体装置の製造方法」(発明の名称)について、次の記載がある(下線は当審で付加。以下同じ。)。

(1)産業上の利用分野等
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,いわゆるオリエンテーションフラット(oriantation flat:OF)やノッチ(notch)のような位置決め手段が設けられた半導体ウエハおよびこのウエハを用いて製造される半導体装置に関する。
【0002】半導体装置の高集積化,高速度化,小型化の傾向は益々急速になりつつある。これに伴って半導体装置の構成要素のパターンが縮小しているが,半導体ウエハ上にサブミクロン規模の微細パターンを形成するために,ウエハ表面の平坦性および厚さの均一性に対して1μmないしそれ以下の値が要求されるようになっている。また,いわゆるSOI(Silicon-on-Insulator)構造による高性能半導体装置の実用化において,二枚のシリコンウエハを絶縁層を挟んで結合(bonding)した基板(substrate)を用いるアプローチが,現在のところ最も有望視されているが,この基板は,一方のシリコンウエハを数μmの厚さに薄くすることが必要とされている。」
(2)従来技術等
「【0003】
【従来の技術】上記のような半導体ウエハは,通常,図2に示すような工程に従って作製される。すなわち,(a)例えばCzochralski(CZ: チョコラルスキー)法によって所望の組成を有する半導体単結晶のインゴットを引き上げ,(b)このインゴットを適当な長さに粗切りする。そして,(c)インゴットの側面を円筒状に加工し,さらに,円筒の軸に平行な平面を側面に形成する。この平面が,後述するOFを構成する。次いで,(d)回転刃式のスライサにより前記インゴットを多数の円板にスライスし,(e)円板の周囲の面取り(chamfer,または,beveling)を行ったのち,(f)少なくとも将来半導体装置が形成される面をラッピングし,さらに,(g)薬液によるエッチング,および,(h)いわゆる化学的・機械的研磨による鏡面仕上げを行い,最後に,(i)洗浄して完了する。この鏡面仕上げされた表面は,半導体装置を形成するのに適した平滑さと結晶性を有している。上記工程によって作製された半導体ウエハは,円周上の一部に例えば直線状の切り欠き部,すなわち,OFが設けられた円板である。
【0004】上記(g)におけるエッチングは,(f)のラッピングにおいてウエハ表面に生じた結晶欠陥を除去するために行われるのであるが,このときにエッチング液の循環や温度の不均一による表面におけるエッチング速度の相違によってむしろ平坦性が劣化する。しかし,(h)の研磨により平坦性が回復される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし,上記従来の工程によって作製された半導体ウエハの平坦性は,ウエハ表面の高さの最大値と最小値の差で表したTTV(total thickness variation)の値で2μm程度が限界であり,このため,前述のような1μmないしそれ以下の平坦性の要求に応じられるウエハの収率が極めて低かった。このことは,前述のようなSOI構造の基板を作製する工程において,接合された一方のウエハを厚さ数μm以下に均一に薄くすることが困難であることをも意味する。
【0006】したがって,本発明は,高い平坦性,具体的には1μm以下のTTV値を有する半導体ウエハを収率よく作製可能とする実用的な方法を提供することを目的とする。また,本発明は,絶縁層を介して二つの半導体基板を接合して成るSOI構造の基板における一方のウエハを数μm以下の均一な厚さに形成可能とする方法を提供することを目的とする。」
(3)実施例
「【0027】二枚の半導体ウエハを接合して成るSOI基板を本発明により作製する工程について,図10を参照して説明する。図1における(a)?(g)の工程に従って少なくとも片面が化学的・機械的研磨された二枚のシリコンウエハを用意する。なお,これらのウエハの側面に,結晶方位を表示するマークを前述のようにして形成しておく。
【0028】次いで,図10Aに示すように,上記二枚のシリコンウエハ20または21の少なくとも一方のウエハの表面に,例えば周知の熱酸化法により,図10Aに示すように厚さ約1μmの酸化膜22を形成する。そして,これらシリコンウエハ20および21を,前記研磨面が対向するように重ね合わせ,窒素ガス雰囲気中1100℃で熱処理を施す。熱処理の前に,シリコンウエハ20と21間にパルス電圧を印加して接合力を高める方法も知られている。これにより,シリコンウエハ20および21は,酸化膜22を介して互いに強固に結合される。なお,シリコンウエハ20と21を重ね合わせるときに,それぞれの側面に残っている前記マーク11を基準にして,相互の結晶方位を関係付けておく。図10Bは重ね合わされたシリコンウエハ20と21の平面図であり,円形の平坦面と,その周囲の面取り領域が示されている。
【0029】次いで,例えばシリコンウエハ21を3?4μmの厚さまで平面研削して,さらに,化学的・機械的研磨を施す。これにより,図11Cに示すように,シリコンウエハ21の厚さを均一に2μmまで薄くする。そののち,シリコンウエハ20の側面に残っている前記マーク11を基準にして,図11Dの断面図に示すように,シリコンウエハ20および21を切断してOF21aを形成する。図11Eは,対応する平面図である。シリコンウエハ21の側面におけるマーク11は,酸化膜22の形成や前記平面研削あるいは研磨により薄くする工程において消失してしまう可能性がある。したがって,シリコンウエハ20と21を重ね合わせるときに,上記のように前記マーク11を基準にして相互の結晶方位を関係付けておけば,OF21aからシリコンウエハ21の結晶方位を知ることができる。このようにして,絶縁層を介して厚さ数100μmのシリコンウエハにより支持された厚さ2μmのシリコン単結晶層から成るSOI基板が完成する。」

2 引用発明
上記(1)及び(2)によれば、引用例には、従来技術として、SOI構造の基板を作製するために、半導体単結晶のインゴットを円板にスライスし,薬液によるエッチング,および,化学的・機械的研磨による鏡面仕上げを行い,少なくとも片面が化学的・機械的研磨された二枚のシリコンウエハを用意することが記載されている。
また、上記(3)によれば、引用例には、二枚のシリコンウエハからSOI構造の基板を作製するための具体的な工程として、シリコンウエハ20および21を,前記研磨面が対向するように重ね合わせ,熱処理を施す、二枚の半導体ウエハを接合して成るSOI基板を作製する工程が記載されている。
そうすると、引用例には、次の発明が記載されているといえる(以下、この発明を「引用発明」という。)。

「半導体単結晶のインゴットを円板にスライスし、薬液によるエッチング、および、化学的・機械的研磨による鏡面仕上げを行うことで、二枚のシリコンウエハを用意し、これらシリコンウエハ20および21を研磨面が対向するように重ね合わせ、熱処理を施すことにより、二枚の半導体ウエハを接合して成るSOI基板の製造方法。」


第4 対比
1 本願発明と引用発明とを対比すると、
(1)引用発明において、「二枚のシリコンウエハ」は、接合して「SOI基板」を製造することから、本願発明の「活性層用シリコンウェーハ」および「支持基板用シリコンウェーハ」に相当することは、当業者にとって明らかである。
そして、引用発明では、「化学的・機械的研磨による鏡面仕上げ」を行うことにより、「シリコンウエハ」を用意していることから、「シリコンウェーハ」の表面を鏡面研磨することも明らかである。
そうすると、引用発明の「半導体単結晶のインゴットを円板にスライスし、薬液によるエッチング、および、化学的・機械的研磨による鏡面仕上げを行うことで、二枚のシリコンウエハを用意」することは、本願発明の「活性層用シリコンウェーハおよび支持基板用シリコンウェーハをエッチング液によりエッチするエッチング工程と、上記エッチング工程後、活性層用シリコンウェーハおよびエッチされた支持基板用シリコンウェーハの各表面を鏡面研磨する鏡面研磨工程」に相当する。
(2)引用発明の「研磨面」は、「鏡面仕上げ」がされていることから、引用発明の「二枚のシリコンウエハを用意し、これらシリコンウエハ20および21を研磨面が対向するように重ね合わせ」ることは、本願発明の「活性層用シリコンウェーハの鏡面と支持基板用シリコンウェーハの鏡面とを重ね合わせてこれらの活性層用シリコンウェーハと支持基板用シリコンウェーハとを張り合わせること」に相当する。

2 したがって、本願発明と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりとなる。

〈一致点〉
「活性層用シリコンウェーハおよび支持基板用シリコンウェーハをエッチング液によりエッチするエッチング工程と、上記エッチング工程後、活性層用シリコンウェーハおよびエッチされた支持基板用シリコンウェーハの各表面を鏡面研磨する鏡面研磨工程と、上記鏡面研磨工程後、これらの活性層用シリコンウェーハの鏡面と支持基板用シリコンウェーハの鏡面とを重ね合わせてこれらの活性層用シリコンウェーハと支持基板用シリコンウェーハとを張り合わせることにより、張り合わせウェーハを得る張り合わせ工程と、上記張り合わせ工程後、この張り合わせウェーハを熱処理する熱処理工程とを備えた張り合わせシリコン基板の製造方法。」

〈相違点〉
相違点1について
本願発明では、「アルカリ性エッチング液によりアルカリエッチする」のに対し、引用発明では、「薬液によるエッチング」であり、該薬液について特定がされていない点。

相違点2について
本願発明では、「張り合わせ工程直前における、外力を加えていない条件で平面にこれらの活性層用シリコンウェーハおよび支持基板用シリコンウェーハを載置したときの外周立ちは、これらの活性層用シリコンウェーハおよび支持基板用シリコンウェーハの各表面中央部よりも、その外周縁部分の6mmの領域が0.6μm以下の高さとする」のに対し、引用発明では、外周立ちについて規定がされていない点。


第5 相違点についての検討
・相違点1に対して、
ウェーハの作製におけるラッピング後のエッチングにおいて、ラッピングにより生じる加工歪を除去するために、薬液として、アルカリ性エッチング液を用いることは、例えば、周知例1、周知例2に記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
そして、引用例の 段落【0003】の「【従来の技術】上記のような半導体ウエハは,通常,図2に示すような工程に従って作製される。すなわち,(a)例えばCzochralski(CZ: チョコラルスキー)法によって所望の組成を有する半導体単結晶のインゴットを引き上げ,(b)このインゴットを適当な長さに粗切りする。そして,(c)インゴットの側面を円筒状に加工し,さらに,円筒の軸に平行な平面を側面に形成する。この平面が,後述するOFを構成する。次いで,(d)回転刃式のスライサにより前記インゴットを多数の円板にスライスし,(e)円板の周囲の面取り(chamfer,または,beveling)を行ったのち,(f)少なくとも将来半導体装置が形成される面をラッピングし,さらに,(g)薬液によるエッチング,および,(h)いわゆる化学的・機械的研磨による鏡面仕上げを行い,最後に,(i)洗浄して完了する。」との記載から、引用発明の「薬液によるエッチング」は、ラッピング後のエッチングであるので、ラッピングにより生じる加工歪が生じ、それを除去するという技術的課題を有するものである。
そうすると、引用発明において、ラッピングにより生じる加工歪を除去するために、薬液として、上記周知技術であるアルカリ性エッチング液を用いることは、当業者が容易になし得たものである。

(周知例1:特開平10-92777号公報、当審拒絶理由で引用。)
上記周知例1には、次の記載がある。
「【0002】
【従来の技術】従来、ラッピングや平面研削により平坦化されたウェハには、その表裏両面に平坦化処理による加工歪が生じるため、これを除去するためにエッチングされている。このエッチングのエッチング液としては、KOHやNaOHなどのアルカリエッチング液と、混酸などの酸エッチング液とがある。
【0003】ここで、それぞれのエッチングについて比較する。例えば、アルカリエッチング液としてNaOHの40%水溶液を使用した場合のエッチングレートは4.0μm/分である。一方、酸エッチング液として混酸が40%の混酸液を使用した場合のエッチングレートは10μm/分である。したがって、同程度の濃度のエッチング液であっても、酸エッチングのレートがかなり大きいと言える。
【0004】さらに、アルカリエッチングの特徴としては、上記したように酸エッチングに比べてそのエッチングレートが遅いのに加え、図4に示すように、表面のP-V値は高く、いわゆるラフネスの大きな状態となるものの、ラッピングで得られた平坦度は維持される。その一方、酸エッチングにおいてはエッチングレートが大きいことから、図5に示すように、平坦度が損なわれやすく、TTV値が高い。その反面、表面は滑らかでP-V値は小さくなるのが特徴である。この酸エッチングにより平坦度を確保する方法としては、スピンエッチングなどの方法があるが、これは枚葉式であるためバッチ方式に比べるとその生産性が悪い。
【0005】そこで、デバイス工程における歩留りの向上を意図して、近年のバッチ方式のエッチング工程においては平坦度の維持が容易なアルカリエッチングが多く採用されるようになってきている。」
「【0012】
【実施例】以下、本発明の各実施例を図面に基づいて説明する。
実施例1
図1は実施例1の製造方法の工程図、図2は実施例1の製造方法により製造された半導体ウェハの金属汚染レベルの変化を示すグラフである。
【0013】図1に示すように、本実施例1の製造方法は次の工程からなる。
(1)半導体インゴットを切断しウェハを得る。
(2)切断されたウェハの周縁部を面取りする。
(3)面取りされたウェハの表面および裏面の切断面をラッピングにより平坦化する。この際、ラッピングにより表面および裏面には加工歪が生じる。
【0014】(4)平坦化されたウェハをアルカリエッチングし、ラッピングにより生じた加工歪を除去する。このアルカリエッチング液としてはNaOHを使用し、その取代として片面を5?30μm程度エッチングすることにより、加工歪は取り除かれる。さらに、ウェハ全体としての平坦度は維持され、このアルカリエッチング後のTTV値は約1.0μm程度となる。」

(周知例2:特開2001-85648号公報、当審拒絶理由で引用。)
上記周知例2には、従来の技術として、次の記載がある。
「【0010】PWの製造方法は従来から知られている通り、シリコンインゴットをスライスし、得られたシリコンウエーハに少なくとも面取り、ラッピング、酸エッチング、片面鏡面研磨および洗浄する工程から構成されている。これらの工程は目的により、その一部の工程が入れ替えられたり、複数回繰り返えされたり、あるいは熱処理、研削等他の工程が付加、置換されたりして、種々の工程が行われる。ここで、上記の工程の内、酸エッチングは、スライス、面取り、ラッピング等の機械的加工時に導入された表面加工変質層の除去を目的として行われ、例えば、フッ酸、硝酸、酢酸、水からなる混酸水溶液により表面から数?数十μmエッチングする工程であるが、次のような問題点が指摘されている。
【0011】すなわち、1)ラッピング後の、TTV[Total ThicknessVariation](μm)、LTVmax [Local ThicknessVariation](μm)等で表現される厚さのバラツキを示すウエーハの平坦度が、エッチング代が多い程損なわれる。
2)エッチング表面に周期がmmオーダーのうねりやピールと呼ばれる凹凸が発生する。
3)エッチングにより有害なNOx が発生する。等であり、これらの問題点を考慮してアルカリエッチングが用いられる場合がある。
【0012】このアルカリエッチングの得失を列挙すると、先ず利点は、a)ラッピング後の平坦度が、エッチング後も維持される。・・・」
「【0014】この様な理由から、従来、貼り合わせウエーハのベースウエーハ用のPWとしては、平坦度の優れたアルカリエッチングを行った化学エッチングウエーハ(以下CWということがある)の一方の面を鏡面研磨したPWが用いられていた。・・・」

・相違点2に対して、
SOI基板の製造方法において、ウェーハの平坦性を高め、ボイド発生を防止することは、例えば、以下の周知例3、周知例4に記載されているように、当業者に当然求められる配慮事項であるから、引用発明のSOI基板の製造方法においても、ボイド発生を防止するためにウェーハの平坦性を高めることは、当業者に普通に期待できることである。
その際の平坦性の程度として、本願発明のように、シリコンウェーハの中央部よりも外周縁部分の6mmの領域において、0.6μm以下の高さとすることは、より望まれる高いの平坦性の数値範囲を明示したということ以上の技術的意義を認めることができない。このことは、「0.6μm以下の高さとする」数値限定が、本願明細書の詳細な説明の欄において、従来技術として記載されている、段落【0004】の「0.2?1.0μm程度」の外周立ちと一部重なることからも、裏付けられる。

(周知例3:特開平4-340215号公報、当審拒絶理由で引用。)
上記周知例3には、従来の技術として、次の記載がある。
「【0003】図2?図6は、直接基板接合法によりSOI構造基板を製造する方法を示した図である。SOI基板の作製には、先ず、図2に示したように表面を鏡面に仕上げたシリコン基板(Siウェハ)4を2枚用意する。次に、図3に示したように、1枚あるいは2枚のシリコン基板4の表面に酸化膜5を形成する(Oxidation工程)。さらに、図4に示すように、酸化膜を設けたシリコン基板1の鏡面を清浄な雰囲気中で互いに重ね合わせ、高温熱処理を施して接合し(bonding 工程)、つぎに、図5および図6に順次示すように、接合したシリコン基板1の片側を、必要なSOI膜厚を残して、ラッピングやポリッシングなどの方法で除去して(thinning工程)、これにより均一な膜厚のSOI基板6が形成される。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上記のような直接基板接合法は、接合界面にバルクと同程度の結晶性が得られるという点では他の接合法よりも優れているが、次のような問題点を有している。その1つは基板接合時に生じる接合不良である。すなわち、シリコン基板1を互いに重ね合わせる(コンタクト)とき、その表面にパーティクル(外来付着粒子)が存在する。また、シリコン基板1の表面の平坦度が悪いと、その後上記図4に示したような熱処理を経ても接合しないボイド領域が発生する。このようなボイド領域は、図5に示したように研磨により薄くする工程で、あるいはその後のデバイス製造工程で、剥離し、このような剥離が生じると、基板自体が不良品になり、歩留りが低下するだけでなく、関係するデバイスも汚染するという問題点がある。このように、SOI構造基板製造の接合工程において、基板を酸化炉から取出してそのまま接合するようにしていた従来の直接基板接合法においては、酸化炉への挿入、取出などの接合前の工程で基板表面にパーテイクルが付着し、したがって接合時にボイドが形成される確率が高く、上記のような問題点が生じていた。」

(周知例4:特開2000-315634号公報、当審拒絶理由で引用。)
上記周知例4には、従来技術として、次の記載がある。
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の張り合わせ基板の製造方法にあっては、シリコンウェーハ同士を張り合わせる際、これらのシリコンウェーハを硫酸・過酸化水素水の混合液中,王水または硝酸液中でボイルし、シリコンウェーハの各張り合わせ面のOH基の被覆率θを38%以下とし、これらを重ね合わせた後、880?1100℃という比較的低い温度で張り合わせ強化熱処理を行っていた。その結果、この熱処理時、ボイルにより平坦度が低下した張り合わせ界面からH_(2)Oが抜け出る際、このH_(2)Oが凝集してウェーハ外周部にボイド(未接合部分)が発生しやすくなっていた。これにより、良品基板の収率が低くなっていた。
【0004】
【発明の目的】そこで、この発明の目的は、ボイドの少ない強固な張り合わせを行うことができる張り合わせ基板の製造方法を提供するものである。また、この発明は、張り合わせ基板の製造のためのシリコンウェーハを提供することを、その目的としている。」

以上検討したとおり、本願発明は、周知技術を勘案することにより、引用発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


第6 結言
以上のとおりであるから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2011-04-05 
結審通知日 2011-04-08 
審決日 2011-04-25 
出願番号 特願2001-252042(P2001-252042)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 萩原 周治  
特許庁審判長 相田 義明
特許庁審判官 松田 成正
小野田 誠
発明の名称 張り合わせシリコン基板の製造方法  
代理人 安倍 逸郎  

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